突然降りだした雨に対処出来ず焦るマリアに苦笑いをしながら、迎えを頼みカフェで落ち着かせた。
久しぶりの気分転換・・・子供を産む怖さを取ってあげたくてリンは彼女に付き合っていた。
買い物へ行きたいのに不安で出れなかったマリアだった。
ならば行こうと誘ったのはリンだ。
月野の部下二人が車を出してくれ・・・帰りの時間に迎えに来ると離れてくれていたのだ。
何度も謝るマリアの声に苦笑いしかない・・・
待てども来ない人達に、長い気分転換が出来ると気持ちを切り替えようと笑う。
そんな時に・・・見知る人が同じテーブルへ座った。
溢れた涙を優しく拭く雫に照れながら微笑んだ・・・久しぶりだとリンの頭を撫でたのはトウヤだった。
初めて逢いに来てくれた事に感激し声も出なかった。
不安だったマリア・・・大丈夫だった事に微笑んだ雫・・・その彼女の笑みにホッとしたのはリンとトウヤだった。
『(笑)リン・・・本当に使わなければ消えるの・・・』
突然言い出した雫の言葉に驚いた。
『信じられない?(笑)消せるのよ?』
『 ・・・』
答えられなかった・・・なぜと思えた自分に戸惑った。
良かったとホッとしたのはマリアだった・・・複雑な思いが残ると知るトウヤはリンの背を優しく撫でて落ち着けと小声で言った。
『彼を守れないという不安なら・・・彼に、本当に必要かを聞いてみればいい』
『言わない事は知ってるくせに・・・』
『リンが居ればいいと何度も声にして言ってた(笑)彼の言葉を信じてるからな』
トウヤの言葉に、確かにと思えた自分もいた・・・それでも自分を受け入れてくれた事の感謝は必要と勝手に思っていた事も事実だ。
危険の多い中で生きている彼を助けたい・・・数多くの人達が悲しむ事も避けたい・・・だから力が残った事に感謝もしていた。
知られずに呟く・・・他へ知られないようにもしてきた・・・なのにと思える自分が存在する・・・。
本当に時々だが見れず怪我をしてくる比嘉の姿に後悔する事もあった・・・なのに、彼は気にも止めず危なかった事や自分の声で思い止まれたと声にしてくれていた。
思っても声にもしていないのにだ・・・いつも心配しているから・・・そんな考えをした事もあった。
それは違うと分かるのに・・・本当にいいのかと迷う自分がいた。
静かになったリンに時間をと、雫とトウヤはマリアと話を続けた。
いまだ考えていたリンに苦笑いをし眺める雫の笑み・・・トウヤが送るとマリアを連れ立ち皆で帰る事になった・・・自宅へつけば笑み帰って行った二人へ礼を言えただけ。
安心した顔に戻っていたマリアを見送り今は考えるなと自分へ言ったトウヤの優しい声・・・そうかと笑み見送ったが・・・頭から離れない事に苦笑いしかなかった。
呼ばれた雨音は優しいのに、いつの間にか悲し気な音が響いていた。
目の前に舞い降る雨粒は本当に悲し気に舞っている気もして目が離せなくなった。
迷いながら手を伸ばしたが、雨に濡れる事はなかった・・・その先へ足が進まなかったから・・・
悲し気な目で静かに降る雨を眺めていたリンの姿に驚いた・・・泣きそうな顔・・・自分が近寄っても気づかないほど何が悲しいのか気になった。
自分でも駄目だと分かるのだろう・・・その手は震えていたのに、そっと雨の中に導くように伸ばしていった事に驚いた。
駄目だと思えた比嘉は迷わずに彼女の手を捕まえ腕の中へ抱いた。
驚きながらも溢れ頬へ伝う涙にキスをした・・・
『その迷いは何だ・・・悲しい雨には浸るな・・・大丈夫と頑張れる俺の声は聞こえなかったのか?』
『 ・・・』
比嘉の目が悲し気だった・・・自分が辛くさせたのだと気づけば答えようもなく彼の胸へ凭れた。
『使わなければ消えるって・・・
だけど良かったと思えなかった自分がいたの・・・
消したかったはずなのに・・・戸惑った自分が悲しかった・・・』
『俺の為・・・そうなのか?』
『 ・・・』
『リンが俺の隣で笑っててくれるなら平気だと信じれないか?』
言われて首をふるリン・・・大丈夫とわかるのに本当に消えてしまう怖さが変に沸き起こる自分に戸惑った。
『分かるの・・・信じてるもの・・・』
『今のリンが怖がる事は何だ・・・』
優しい声なのに悲し気に聞こえる比嘉に戸惑う・・・それでも話せという彼の目を見つめ声にした。
『分からない・・・雫の力が消えたって・・・少し前に悲しい雨が激しく降ったから・・・たぶん、その日だったと思う。
日によって悲しい雨が降る事が増えてた・・・何でか気になる自分もいて。
だけど気になった翌日に降ると無意識に自分が入り込む事が増えて・・・』
『理由を探して?』
『 ・・・違うと思う・・・ずっと思ってた事・・・何で雨なのか・・・
貰える答えもないのに・・・気になって・・・消えるって知って・・・怖くなって・・・』
『 ・・・答えが欲しかったんだな』
そうだと悲し気に笑むリンが頷く・・・誰も知らない事だった・・・知る人もいない・・・答えはないのだと気持ちを切り替えたはずなのに、その答えに囚われる自分が悲しかった。
『優しい雨だったから・・・
皆に優しく出来たリンだから雨が呟く想いを受け取れた・・・
リンだから・・・助けられると思えたから・・・それを見せてくれてた・・・
だけど利用する人が増えたから・・・悪用したから・・・それは雫やリンじゃなくても・・・そうなるならと終わりを告げただけ・・・』
『 ・・・』
『長く続かない事を知るから・・・優しい雨の主は悲しくて泣いてるんじゃないか?』
『頑張って・・・』
『ん・・・頑張って来たのは知ってる・・・だけど人は欲を出す・・・本人じゃなくても、恩恵を寄越せと悪用したいと思う人が増えたから・・・
だから力を渡す事も与える事も・・・本当は知らない雫に教えて終わらせたんじゃないのか?』
『 ・・・』
色んな事を受け止め自分で体験したからと雫は教えてくれていた・・・それは戸惑った事だったと自分が分かるほどの思いは聞いているだけで知れた。
『終わらせる方法・・・リンも知らないだろ・・・』
そうだったと頷くリンにキスを落とした。
『悩まなくてすむように・・・』
『悩むなら・・・』
声の重なりにフッと笑う比嘉は話を続けた。
『(笑)お互いに悩む事なら・・・消してくれないか?』
『ハル ・・・』
『(笑)・・・俺がいない不安をリンに与えるかもしれないが・・・大丈夫と信じて待っててくれたら、俺は必ず帰ると誓う(笑)・・・だから』
そう言う間に彼女が自分へ抱き付いた。
悲し気に震え、それでも頷くリンがいた。
『見れない不安で怖いけど・・・ずっと一緒にいたいから・・・ごめんなさい・・・』
『いい・・・気にすんな(笑)。怖がらせてる俺の方が気になるが・・・無事に帰るだけだ(笑)だから頑張れ・・・』
分かったと頷くリンに口付ける・・・抱き締めたままに彼女を見つめる・・・微笑んだリンに笑み返したのだった。
驚きながらリンが外へ振り向いた・・・
『よっ呼ばれた?』
慌てたように言った比嘉がいた・・・暫く聞き入るように眺めていたリンは嬉しそうな笑みで自分へ凭れた・・・
『ずっと・・・悲しい音が響いてたのに・・・急に優しい音に変わったの・・ だから驚いた』
『 ・・・』
そうかとも声にならなかった・・・それはまた、続けると気持ちを変えてしまうのかと怖かったからだ。
『(笑)ありがとう・・・』
雨を眺めながら呟いたリン・・・雨の主へ礼を言った気がした。
一人小さく呟いた・・・笑みながら、自分に凭れたままで言った。
無意識に呟いた気もした・・・それでホッと出来た比嘉だった。
笑みながら見つめる・・・そっと頬へ触れ目を合わせれば照れたような笑みのリンに口付けた。
自分の腰を掴み自分を預けるリンが愛しくて彼女を追った。
甘く囁く声音・・・目を潤ませた優しい笑みが自分へ注がれてくる・・・それだけで嬉しくて幸せだと思えた。
愛しさは増している自分も笑えると思えば、触れていた彼女の唇も微笑んだ事に気づいた。
愛してるという囁きに煽られ二人の時間だと入り込んだ比嘉だった。
長く続く霧雨のような優しい雨・・・物置から取り出したテントを庭先へ作った比嘉は二人で中へ入り込んだ。
庭に出してはいたが、全部に雨で濡れる事もない場所にして。
それでも重なる雨粒は小さく・・・少しずつ纏まりながらテントの地を滑り、そっと落ちて行った。
毛布にくるまり流れる様を感じる二人もいた・・・素早く脱がし肌を重ねていた比嘉・・・その温かさを感じながら、視線は溢れ流れていく様子をリンは見ていた。
跳ねた体に苦笑いするリン・・・巡る手の温かさを感じながら、幸せそうな笑みの比嘉を見つめた。
心から愛した人と分かる・・・一緒に過ごせる嬉しさに浸った・・・
- なんで、あめなの? -
幼い自分の声がする・・・
-優しいから・・・-
誰かの声が囁く・・・
-それで生きれるなら、してみるね-
その楽し気な声音は小さくなり消えていった気がした・・・・
全てに熱く吐き出すものさえ熱く感じる始める・・・それは嬉しくて比嘉もだと感じとれた。
浸る自分も心地いい・・・自分へくれる幸せも同じ心地良さで揺れる。
それは比嘉も同じだと知れた・・・優しい眼差しは自分を捉えて離さない・・・奥深く沈む場所まで共に浸れる・・・それは比嘉とだから出来るのだと思えた。
彼が見つけてくれた幸せに浸ろうと彼へ腕を回せば、優しく落とされるキスに笑む・・・
彼女の唇が微笑んだ・・・自分の中で浸るリンの笑みは自分だけに見せる。
その心地好さを味わうように微笑む彼女に口付けた・・・愛しくて全てへキスを落とす・・・足りないと彼女を捉え見つめれば自分から引き寄せ唇を重ねた。
昂りは激しく持っていく・・・煽りの上手いリンだと笑えば、照れた可愛い笑みで見返す・・・絡み付く彼女が余計に可愛いと、共に先へ生きるリンと浸った。
離すなと笑む・・・しないと抱く・・・分かると笑み見返す互いに深く沈んでいく二人だった。
-end-
※
お付き合い下さり感謝します。
飽きてENDへ持ち込んでしまいました。
2017・6から手直しし・・・捨て置かれたように眠っていたお話でした。
1話目の日付でビックリ!。
あー終わった(笑)!
素直に喜ぶ・・・無理やりENDへ運んだtamiでございました。
ありがとうございました-tami-