tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

or −28 -end-

2023-06-28 00:32:05 |  or



あれから暫くたちグランもだが周辺国まで進化していった・・・


トールは国際連合機関から指導が入り縮小された・・・その間に、慌て急ぐようにトール軍がラデルに仕掛けた。

待っていたように反撃するラデルはトール軍に押される事なく戦い、ラージ国の援護で畳みかけた。

ラデル国は、グランの加勢もあり有無なくトール軍は消えた・・・観光地という理由はトール皇室という場所だけが残り他はラージ国が引き受けた。

領地はラデルとラージが引き受けグランが間に入り友好国となった・・・その周辺国も大国となり、グランとオールとの繋がりで見識を広めた。

自然は残し観光地としても潤い始める・・・ほどほどの進化で良かったのだとホッとした綾音もいた。

オールでは伸びず危険と思えるモノを 素早く対処したのはレイル・・・グランの総統からの目は完全に取れない理由にもなってしまった。

それでも気にせず日々を楽しむライル達にホッとしたのは綾音の父だった。

人当たりも良かった・・・この父だけは総統から手も出されない事にはレイルがホッとした。

父のように接する事でライル達も自分の親のように接してくれる・・・家族が増えた嬉しさに浸る綾音もいた。



久しぶりだと仕事を休み自分を連れ出したレイル・・・ゆっくりとバイクを走らせる。

ようやくグラン国内へも繋がり専用道路は伸びていた・・・そこで乗り始めたライル達とレイルは楽しんだ。

だからか観光客は増え・・・落ち着きだした頃に綾音が妊娠し喜んだレイルだった。


その人の多さは妊婦には危険だと一人での散歩は出してくれず苦笑いしかない・・・

だから出なかったが、可哀想だと呟くリカの小言に考えたレイルはバイクをレンタルし遠出と連れ出してくれた。

最終地のレンタルショップの隣に可愛いホテルがあると聞いた事で選んだようだった。

海に面したホテル・・・静かで寛げる場所だと二人で向かっていた。
休憩だと休んでくれるレイルに感謝した。

『レアの時は・・・隠してたから動き回ってたろ・・・』
『(笑)確かに・・・秘密だったしね』

『何で産めた?』
『・・・ん?』
『戻れなかったら・・・一人で』
『(笑)レイルを愛したから・・・』
『・・・(笑)』

『貴方の子を大事に育てたかった(笑)・・・今は全部、人任せになってるけどね(笑)』
『・・・(笑)』

『それに(笑)戻るつもりはあったから・・・ただ、産む事の不安はあったかな(笑)・・・見張りが激しかったし・・・奪われないようにって事だけ必死だった』

『・・・(笑)今は?大丈夫か?』
『大丈夫に決まってる(笑)、レイルの隣にいるじゃない』

『・・・(笑)本当に女の子なのか?』
『(笑)信じてない』
『何で分かる?っていうか・・・進化してたな(笑)オールは。偶然にも確認した事は偉い(笑)』

『(笑)性別が知れたら、準備も楽かなって・・・ついでにって行っただけよ(笑)キー隊長の奥さんと会ったから』

『チームで世話になった人・・・』

『そ(笑)キノ副隊長だった人。偶然にも会ったら軍に戻ったって聞いたの(笑)、そしたら私のお腹みて奥さんの話をしてくれて(笑)一緒にね』

『へぇ(笑)』
『だから(笑)本当に女の子の名前を考えといてね』
『(笑)リョウが嬉しそうに準備し始めたぞ?』

『・・・(笑)まだ疲れさせるの?』
『(笑)楽しいとさ。娘のサキに手は出させないとか言ってたな(笑)・・・』

思い出しながら話す彼に笑み遥か先の水平線を眺めた・・・優しく自分を包む・・・暖かな手が自分のお腹へ伸び優しく撫でた。

『(笑)ゆっくり来い・・・待っ・・・て・・・これは蹴った?』
撫でている自分の手を眺めるレイルが驚き呟く・・・グッと僅かに膨れた綾音のお腹の変化に驚いた。

トントンと優しくつつく・・・フッと消えた後、暫く撫でれば感触があり眺めれば僅かに動いた。

楽し気に笑むレイルの様子に笑みを浮かべる・・・まだ見ない子と遊ぶ様子は笑えた。

反応するお腹の子は女の子と知った・・・この生活を楽しむ・・・レアの時には出来なかった生活を今は楽しんだ。

レアもまた女の子を待ち望んでいた事で優しく触れては話しかけていたのだ。

似た言動は笑えた・・・待ってると呟き頬をあてるレアに苦笑いした事もある。

それは不思議だとお腹を眺め彼をみた。

『(笑)出発』
『そーしよう(笑)』
そう言ってまたバイクを走らせるのだった。


二人の時間を楽しむレイル・・・優しい人と出会えた事に感謝する綾音だった。

幸せと、穏やかな日々にしてくれる彼をより幸せだと叫べるほどにしようと大事に過ごしてきた。

ようやく授かった子・・・欲しがった女の子だった・・・兄弟がいいなと思っていた綾音とは逆の二人に苦笑いしていた。

そうそう簡単に性別は選べないが、レアもレイルも女の子がいいのだと回りで妊婦を見た時に そう呟いていた。

それが叶う日が近い・・・変化し続ける地に自分がいる不思議さと、思いもよらない事が自分に向かい来た。

罰と出され・・・共に生きる人と出会えた・・・オールにいた自分だったが自分で選んだから出会えた。

自分なら・・・選んだなら、決めたなら自分を生かそうと頑張ってきた・・・忙しなさは面倒だった日々が嘘のようだ。

来てみれば激しく考え・・・動かなければ危うかった・・・それでも変に楽しかったのは、以外にも里琉と行動を共にした日々の事だった。

鬱陶しいほどに疲れ、殺したくなるほどに自身が拒否した・・・なのに一緒に来た途端・・・ストンと切ったように全てが消えた。

目線が変わったから・・・そういう里琉だと思い込んでいたのかと自分に驚いたことを思い出した。

彼女の今は、何処へでも気分で外出し好きな事・・・楽しい事を探し求めている。

不意に寂しくてリカやライル達に会いに来ては兄妹のように楽しんでいる・・・陽気な里琉だったのだと、改めて仲良くなれた事にも感謝だ。

新たに家族が出来る・・・母が眠る場所に行った帰りにキノ隊長達と偶然に会った・・・人の繋がりに感謝もした。

オールかグランか・・・全てはそこから考えた・・・選択した事で幸せになれたのだと嬉しくなった。

だから母へ大丈夫だと報告にも来たのだ・・・足りない何かを埋めるレイルと出会えた事でレアが産まれた。

寂しさを与える気もしたが グランを選んだ自分を思い出し行けるまで共にと産む事に決めた。

お腹の中で珍しく動く子に笑む・・・自分が嬉しいと感じていて楽しんでいるのかと想像する自分に苦笑いだった。



朝陽を眺めていれば優しく自分を抱く彼に笑み返した・・・柔らかな風まで自分を褒めてくれたように撫でていく。

眩しくて目が覚めたが、優しい笑みで朝陽を眺める綾音がいた・・・自分に笑みを浮かべる優しい目に見惚れた。

初めて会った日に・・・その楽し気な綾音の目が自分の記憶に残った・・・会うほどに自分が追う。

戸惑いはあったが、その時には綾音だけへ思いも向かっていたのだろうと思えば照れてしまう。

理由を作り堂々と確認した・・・無意識の行動も自身に驚いても止まらなかった。

その笑みは今も目の前にある・・・知れず子を守った・・・息子と願った思いが、後少しで叶う。

夢だった事が今は目の前にあるのだ・・・手にすると彼女を選び、遠回りはしたが仕事と本当にしたかった事も出来た。

日々が穏やかで心地好い・・・面倒は綾音と二人で片付ける事で、今は気も軽くなった。

重かった役・・・今はと頑張り引き継げた・・・彼女が居たから・・・そしてこれからも彼女と共にする幸せに変えられた。

自分で選んだ事で頑張れる・・・頑張るしかない・・・頑張り通す事で終わりがくるから。

豊かになっていく国が見れた・・・これからも見れる嬉しさもあり、一緒に見てくれる綾音がいる。

今は我が子を迎える準備が嬉しいと感じる・・・共に生きる綾音と出来る事も。

朝陽を眺めていたのに今は自分へ目を向けているレイルに気づいたが、何処かへ思いを馳せているようだった。

それは楽しい事なのだろう笑みの気がすれば苦笑いだ・・・今度は本当に目があった・・・照れた笑みに変わる。

自分を見ていた彼女に気づいた・・・思い出していた自分に苦笑いだ・・・笑えば優しい笑みが自分を撫でた。

口を引く・・・笑みながら近寄れば柔らかな笑みは自分へキスをした。

自分だけを捉える・・・口付ければ絡み付く・・・その唇も笑み頬へ触れた温かな手に微笑んだ。




-end-




お付き合い下さり、ありがとうございました。

放置、放置と繰り返し 話の流れも忘れた頃に繋ぐ日々・・・無理矢理ENDでまた・・・

これは2022・9頃からの話で・・・これまた、いっかな!の終わりで失礼致しました!

-tami-










or −27

2023-06-26 01:22:04 |  or





最後の給油所で満タンにしバイクを走らせる・・・グランに入れば驚く顔は数多く流れ苦笑いだ。

それでも予定より早く帰れる・・・2人乗りでも余裕で走らせる里瑠に口を引く・・・

綾音は里瑠の分も背負い運転していた・・・人と違った重さ・・・傾けば一気にバランスが崩れそうで笑えた。

だから余裕に慎重に走らせている綾音もいた・・・グランへ入れば道は整備はされているようで、自分が知る道路ではないが比較的に平らな状態は驚いた。


聞いた事もない音が響き出す・・・焦りながらも各自宅へ飛び込み逃げる人達に申し訳なくなる。

初めて聞く人には恐怖なのだろうと分かっていても停められない音だけに心の中で謝りながら走らせた。


リョウから知らされ何だと様子を見に門扉を開き音の聞こえる方を眺めた・・・遥か遠くのようだった音が近くなってきていた。

怖さはあるが何かを知りたい者達はいて家屋から出て理由は何だと様子を伺っていた。

見た事もない乗り物に跨がり頭に何かを被った人の姿も初めて見る・・・その背にあるモノで、家へ近付いている気もしたレイル。

もしかして・・・の、その言葉が過り直ぐに綾音だと思えば戻った事の嬉しさが自分にわいた。


待ち構えたように自分達を眺める人が微かに笑った・・・初めて見るはずの姿は珍しげな笑みで苦笑いだ。

目の前で停まった事で綾音だと余計に確信し眺めた・・・乗り物の音が消え顔を見せた彼女に笑み返す。

荷を門扉の近くに置いた綾音・・・さほど減っていなかった燃料に笑みバイクから降りたが待っていた彼の姿に笑み聞いてみた。

『(笑)少しだけど乗ってみる?』
『乗る(笑)』
『わーお(笑)』
『ん?帰りは大丈夫なの?』

『大丈夫みたい(笑)、これ燃費いー』
ユリに聞かれ確認した里瑠が呟いた・・・綾音はと眺めれば・・・

髪を一つに結った綾音・・・それからバイクへ乗ったが、レイルが後ろへ乗った。

エンジンをかけた綾音はレイルの手を自分へ回させ ゆっくりと走らせスピードをあげていった。


戻ったのは夕飯も済ませた頃・・・すでにバイクは敷地の中へしまわれ門扉は閉じていた。

皆へ構わず部屋へと戻る・・・リョウが、レアは部屋で寝ていると知らせてくれた。

この屋敷にもレア専用の部屋は造られている・・・そして自分達が留守の場合はリョウが寝泊まりしてくれていた。

今日はこっちと来たが居なかった事でリョウと寝ると部屋へと戻っていく・・・明日は絶対に父と遊ぶから待ってて欲しいという伝言に苦笑いだ。


久しぶりに抱く手が執拗に触れ離さない・・・喜んでいると丁寧に呟き、笑みながら撫でる手に笑う。

身が恋しくて巡らせる・・・熱く広がり昂らせた互いに笑み口付けた。

吐き出された熱い吐息が自分を撫でれば昂る身が余計に恋しいのだと重ねた唇が笑みを浮かべた。

忍ばせた熱さに震え弾く互いの中で駆け巡る・・・腰を抱き深く沈めば熱さに酔いしれ味わった。

自分へ回された手に笑む・・・緩やかな波に委ね始め奥底で浸っていた互いは絡み付いた。

笑みを浮かべた彼女に見惚れれば昂りは激しく自分を運ぶ・・・より深く求めれば自分ごと引き摺り落ちていった。

息の荒さに構わず口付ける・・・より抱き込めば自分を撫でていく吐息に笑み見つめた。

潤んだ目が優しい笑みだと彼女を見つめれば照れながら自分へキスをした・・・


バイクという乗り物・・・初めて乗ったが面白かった・・・拓けた場所で乗り方を教えて貰い少しだけ運転した。

その緊張・・・ドキドキと自分の中は弾んでいたが、彼女に触れた鼓動の方が激しかった。

これと比べた自分に笑う・・・自分へ手を回し眠り始めた彼女にキスをした。

微笑んだ彼女の唇が笑む・・・
『(笑)寝ろと言ってない』
『・・・(笑)』
『話は明日にするが(笑)』

『(笑)助かる』
『・・・(笑)寝るな』
『(笑)・・・』
『同じように(笑)待ってたんだ』

話ながらも触れ撫でていたレイルに苦笑いだ・・・止めない手に笑み、彼へ触れ巡らせれば照れながら呟いた。

焦らしながら押し込める・・・身が弾き自分の中で何かが熱く駆け巡っていくようだった。

怠くて動けず されるがままにレイルを見つめた・・・照れた笑みが溢れる。

耐えた笑みが溢れる・・・蠢く何かが新たに暴れだし全身へ駆け巡る・・・震えながらも自分を見下ろす彼女を見つめた。

彼女の笑みが可愛い・・・項へ回した手を引き寄せれば僅かにビクついた綾音に口を引いた。

口付ける・・・絡めた唇が離れずに貪る・・・深みへ沈め互いに浸れば絡み付く・・・引き摺る身は落ちていったのだった。

繋いでいた手・・・力尽きた彼女に苦笑いだ・・・そっと抱き止めたが離せず抱いたまま身を休ませた。


笑みを浮かべた彼女の手が頬に触れた・・・この温かさも心地好く自分へより押し込めた。

寝ろと額へキスをすれば彼女は睡魔に勝てず眠りへ落ちていく間に自分へ腕を回した。

ようやく自分にもきた睡魔に笑みレイルもまた眠りへ誘われたのだった。


目覚めれば自分に羽織らされた服に笑む・・・寝ている間に着せられた自分は気付かなかった事に苦笑いをする。

静かにペンを持ち自分の机で何かを書いていたレア・・・それを覗き微笑んでいる綾音がいた。

おやつだろう菓子を手にした子は綾音の口へ運び自分もまた食べては母親の綾音と笑みを浮かべていた。

微かに聞こえる笑い声・・・その楽しげな会話を久しぶりに聞いた事で噛み締めるように幸せに浸るレイルだった。

『ねぇ(笑)』
『ん?』
『(笑)遊びたいから、行っていいかな』
『・・・(笑)』

『(笑)約束しちゃったけど・・・本当は駄目だけどさ・・・父様、寝てるし・・・あのね・・・ちゃんとリョウさんに連れてって貰うから・・・駄目?』

『(笑)遊べなくていいの?』
『お仕事大変だったから疲れて起きれないんでしょ?』
『・・・(笑)確かに』

『あ(笑)、母様のバイクで・・・あれは危険なの?』
『(笑)子供にはね』
『そっか・・・』

『(笑)乗ってみたいわけだ』
『ん・・・だけど、もう無いもんね・・・リルちゃん乗ってっちゃったし』

『(笑)残念だったね』
『ね・・・試し乗り(笑)したかったかも』
『・・・』

『ライルおじ様達だけって何で?』
『(笑)レアは子供だから』
『後ろに乗れるよ?きっと(笑)』
『いつかね(笑)』

『(笑)はい。あのね・・・』
『了解(笑)、伝えとくから自分でお願いして、行っておいで』
『ありがと(笑)。会ったら自分で(笑)ちゃーんと謝るよ』

『了解(笑)』
『ちゃんと伝えてよ?』
『(笑)ん』
『・・・』

『ん?』
『母様が暇になるね・・・』
『(笑)大丈夫よ。仕事の話も多いから』

『そっか(笑)。じゃ行って参ります』
『(笑)気をつけて』
『了解(笑)』

スタッと椅子から降りたレアは綾音に呟き走って行ったのだった。


『(笑)悪かった』
『疲れは取れた?(笑)』
『(笑)サンキュ』

そっと声をかけた彼に笑みレイルがいたベッドの端へ座り直し見返す綾音がいた。

身を起こしたレイルは背凭れへ身を預け綾音を見つめた・・・服をつまみ着せてくれた礼をする。

自分が着ている服と似たような姿は自分でも照れるが、妙に心地よく楽に着ていられた。


レアとの会話から綾音は昨日までの事を話始めた・・・

『あーだから会ったのか・・・(笑)』
『呼ばれてないわよね?』
『大丈夫だった(笑)』

グランへ会談の申し入れは突然だったが緊急でもあり巻き込まれないようにとの事で代表で来たのだと知った。

その人はオール国の皇族の一人でありユリの夫でもある・・・国連の代表と聞きトールの件だと気付く。

自分が知った事を話せばレイルが聞いたと声にした・・・

『これは、手は出さず(笑)任せるに限るね・・・』
『本当にそれでいいのか?』
『(笑)グランは無関係だもの』

『なら俺はラデル・・・は、駄目か・・・いつ来れそうかは』
『(笑)聞いてないけど・・・弟が指示した部下がいたなら・・・』

『そろそろか(笑)。しかし・・・』
『ね(笑)』
『ま(笑)、偶然にも捕縛してたし我慢して貰おう』
『そこは諦めないとね(笑)ラデルは』

話しているタイミングを図ったように走り込んでくる足音に笑う二人がいた。



呼びにきたダイルと共に向かう・・・一番手前にある家屋へ入れば、床に座らされ捕縛されていた者達はうつ向いていた。

暫くして、すまなそうに入ってきた人達に二人は苦笑いだ・・・ライルに案内されダリとドリー達がやって来たのだ。

その後ろから項垂れた様子で来たのはダリの弟デリーだった。

入れば見知る顔で・・・力が抜けそうだった・・・捕まった者の半分は前にデリーの部隊から外した者達だった。

まずはとライルへ謝り、許しを貰ったダリはデリーの部下を眺め話を聞き始めた。

何度も謝り項垂れる・・・聞いた話はバーン大将軍が予想した事と重なった。

デン将軍がトールへ落ちていた事で目の前の部下3人が動かされ残る仲間は探りと報告もせず交ざっていた。

ここへ来る前に、この部下の上にいた者達を捕まえてきた・・・待機していた者達は敷地へ入るに入れず様子を伺っていただけだった。

だがラデルやトールへ報告も出来ず仕掛けるか迷っている最中でもあった事はホッとした。

その計画も問いただす・・・何度も聞けばトールから逃げてきた兵士もいて驚いたがラデルへ帰属もしていて声もでなかった。

調べ尽くす・・・名が出た者達の名簿を作ったが予備の名簿はレイルへ手渡した・・・驚きはデリー達だけ。

その様子に苦笑いのドリー達だが直ぐに謝らせ 丁寧に頭まで下げて詫びる姿に慌て彼らも頭を地面へつけ許しをこうた。

『連れて行くのだろ(笑)』
『この名簿でウチは終わりだ(笑)。この者達はラデルに引き渡す』

『申し訳ありません。ライルも・・・すまなかった・・・』
『(笑)無事だったし。それより大将軍が大変だな・・・・』

『トールと交え終わらせると決めたようだ・・・』
『(笑)アヤネの予想が的中か・・・』
『はい?』『ん?』『的中?』

『・・・(笑)リルが調べていたが、ユリ隊長の言葉とアヤネが聞いた話でな・・・確か・・・エン将軍と』
『しっ知ってましたか?』

『密かに接触してたのに・・・』
『そうだ・・・噂も出ないよう注意してたし、辞めた兵士達もエン将軍に集めて貰ってたのに』

『(笑)アヤネとリルがトールで会ったそうだぞ?
『誰・・・と?』

『(笑)エン将軍とサン将軍。仲良く散歩してたけど?』
『ん?ラージ国も探りに?』
『『(笑)あー・・・』』

それは本当かと唸ったダリ達に口を引き見返す綾音だった。

『前の・・・訓練での帰り道で怪我した兵士を心配してた将軍はエン将軍だけだった。物凄く残念そうに同僚っぽい人達を眺めてたわ・・・』

『それで何故』
『ラージのサン将軍とは親友って話はリルが調べて来てたし、エン将軍には接触してたから・・・別で私も会ったけど』

『リル?』
驚き唸ったダイルに笑みながら頷く綾音だった。

『(笑)最初はラージへ引き抜かれましたが、バーン大将軍がドリー達へ指示し(笑)確認できたなら話せと』

『バーン大将軍が凄い(笑)』
『ですね・・・ですが今は』
『ね・・・』

『理由・・・知りますか?』
『それより、トールとの間にあったモノは何かアヤは知るか?』

『そうだった・・・我らにも知らないモノだけに、ついでも聞こうと思ってたんだ・・・』

『要塞のような気もしたが』
『(笑)重金属・・・鉄・・・
固い金属系のモノ・・・資材の元を作り出す場所・・・それは領地が荒れ人も危害するほどに不味い場所』

『危害・・・』
『あれから出る全ては、人にも自然にも害するモノが出てくる場所でもあるの』
『『・・・』』

『(笑)あの空気を吸い続けたら、早くても数年で人の体は壊れる・・・空へ舞い上がったモノは雨とともに地上へ・・・毒入りの食物が出来上がる・・・物凄く悪くいえば(笑)』
『・・・』

『(笑)それを止める為に手が入るから、そこは介入しなくても大丈夫なはず(笑)』

オールで知った事を言ってみれば驚きは激しく声も出なかった・・・想像だがユリ夫婦が来てる事で大丈夫と言えばホッとする顔になった。

『それは昔・・・オールも?』
『たぶん(笑)・・・遥か昔の話で習った記憶はある・・・それは駄目だと介入する組織が見張ってるし、その組織の代表で来てると知ったから言ってみた(笑)』

『『良かった・・・』』
『それより・・・この隙に争わずに軍ごとトールを壊せそうな気がするんだけど・・・』

『バーン大将軍が(笑)脅してる・・・合同訓練の時の話で証拠と介入した者は捕まえて隠してる・・・』

『最初に見た時より中から煙は出てなかった・・・もしかしたら材料が切れたからかも・・・』

『俺が見た時は白い煙は上がってた・・・』
『臭いは?』
『・・・なかった・・・気がするだけなんだが・・・』

『気にはならなかった・・・』
『トールの海側は行ってみた?』
『行った事はない・・・』
『そこにバイクっていう乗り物をレンタル』

『そのレン・・・』
『あー・・・お金を払って借りる事をいうんだけど、そこの店主も借りた客も黒煙と臭う話はしてた。
調達されたら本格的に始めて一気に造ったら終わりって・・・』

『・・・』
『使い捨て・・・終われば、そのまま捨ておくって話だった』
『・・・それは危険か?』

『んー鍛冶屋の炉・・・あれの何十倍もの大きさで・・・私が持つ剣も簡単に溶かせるはず・・・
でも火が入ってなければ(笑)ただの固まりだから・・・』

『壊せるか?』
『造りにもよるかな・・・出来てもリサイクル・・・次の物が作れる材料かは分からないから・・・』

『オールなら?』
『(笑)最初から出来るモノしか使ってない。剣は作り直せるし日用品にも変えられる(笑)、服も紙も・・・全てに作り替えられる。

人へ危害を加えないモノから作って始めるから人も自然も壊してない』

『便利だな・・・』
『(笑)そうね・・・変化しないのは人だけかも』
『『・・・』』
『(笑)悪いヤツは何処にでも存在するから・・・それを止める人も(笑)』

確かにと思えたのだろう皆の笑みを見返す綾音だった。




いつからかレイルが鍛冶工房で過ごしていて驚いた・・・仕事と出ていく姿が変わっていたから知った。

それでも時々で、軍の方で仕事をしていると思っていた・・・工房の奥へ入れば、つなぎ姿で頭にはタオルが巻かれ腕を振るっていた。

いまではグランでの姿ではないレイルを眺める・・・彼へ教えていた父の姿もあり苦笑いだ。

隣の工房にはダイルが直己と協力しながら作っているようで楽し気だった・・・ならライルはと探せど姿はなかった事に驚いた。


『姉さん?』
『(笑)もしかして見惚れてました?』

ダイルの呟きに苦笑いだ・・・それはレイルがいる方を指差して話したから。

『・・・(笑)ライルがいない』
『あー(笑)、ライルならホテルに』
『ん?』

『体験と(笑)前は調理に手を出して・・・今は管理する方を(笑)』
『・・・真面目な話なの?』

『(笑)面白そうだと・・・また来るって(笑)そう言われる楽しさがあるらしいです・・・』
『(笑)ダイルは?楽しめてる?』

『もちろん(笑)。ナオの教え方が上手いから(笑)余計に嬉しくて、造れる楽しさは半端ない』

『腕はいいよ、俺より(笑)細かい』
『(笑)楽しめて何よりだわ』

はいと頷くダイルに笑み返す・・・直ぐに二人は作業に戻る姿を眺めた綾音だった・・・

ふとグッと身を引かれた事に苦笑いをした・・・自分を抱くレイルの腕は熱く驚いた。

『(笑)レアはリオと一緒に勉強してるぞ・・・』
『あー・・・(笑)リカは先生だった』
『(笑)楽しいとさ』

『・・・(笑)凄いね』
『(笑)な・・・』
『貴方は?(笑)楽しめてるの?』
『ん(笑)・・・』

『良かった(笑)、それより3人の居場所に驚いたわ』
『(笑)ライルが凄い』

『・・・好奇心が(笑)もともと旺盛だものね・・・次は何やら(笑)』
『経営(笑)・・・それが自分でも面白いとか・・・』

『・・・(笑)』
『(笑)ホテルを動かしたいのかもな』
『凄い(笑)・・・』
『(笑)俺の次は木材にする』

『・・・何を作りたいの?』
『(笑)家具・・・自分で使う物を形に(笑)』
『頑張れ(笑)』

『(笑)了解・・・汗を流してくるから待ってろ』
『・・・』

笑みながら呟き直ぐにシャワールームへ入って行ったレイルに笑いながら綾音は直己達の工房へ戻ったのだった。







or −26

2023-06-24 00:55:13 |  or


待っている間に里瑠は暇だと、ドローンを使って飛ばしてみた。

グンと勢い良く空へ放つ・・・モニターを眺めれば綾音もまた気になったのか一緒に眺めた。

レーンを辿る・・・
『(笑)多少の荒れはあるんだろうけど・・・見た目は平気そうだよ?』

『乗り回してた人達に巻き込まれそうな気がして、そっちが面倒』

『あー(笑)、一緒に遊ぼ?・・・ならレースして楽しむ?』
『探りに来てるのに面倒な時間は必要なの?』

『・・・(笑)目的が面倒になったかも!思い出したら(笑)遊びたくなっちゃった!』
『・・・』

遊びに来た里瑠・・・確かにグランへ巻き込んでいる自分だったと思い出した綾音だった。

『だった・・・ごめん・・・』
『・・・それ何?なんで謝った?』

『リルを巻き込んでた事に今頃、気付いた・・・』
『・・・ん?』

『観光に来てた事、マジで忘れてた・・・ごめん。仕事のように付き合わせちゃった・・・』
『・・・』

『大丈夫(笑)ここからはリルの好きな事をして。私は』
『なんで?』

『・・・遊びに来てたのに(笑)リルに手伝えって、これ以上は言えない・・・今まで振り回してきてたね・・・』
『・・・』

『まずはトールにバイクで行く。あの場所は本当にトールだけか調べてから、ラデルかグランに行く事に』

『私は?』
『・・・』
『あ、待って・・・』

モニターに写るモノを眺める里瑠だった・・・そのレーンを使って行き来していた様子が見えた。

時に激しくターンさせる・・・タイヤが擦れ煙をたてる・・・それを眺める人達までがいた。

『『あー』』
面倒な事にもなりそうで、そこを通れば容易く想像も出来た・・・だから余計に二人で唸ってしまった。

店のスタッフの一人が地図を片手に出てきたが、自分達の様子に気付き静かに来て一緒に眺めた。

『あー、この人達です・・・このバイク・・・勝手に使うんで証拠を集めて、先月に居場所を探して訴えたんです・・・』
『これ・・・』

『でしたね・・・トールに仕事に来てるらしく、そこで暮らしてるみたいです。休みの度に乗り回してると聞いてました』

『どこに伝えたの?』
『貿易センターの隣にあるコミュニティセンターに・・・
トール国民以外の・・・外国人専用カウンターがあって・・・そこで登録したり・・・』

『多国籍用の役所みたいな?』
『(笑)そうですそうです・・・私達も仕事の為に移り住んでるので、近辺の住民登録はしてありますから』

『あの乗り回してた人達も?』
『そうです(笑)。顔写真付きのカードを持たされるので(笑)・・・そこで解決して貰います』

『あの人達の仕事は知ってる?』
『あのヘンテコな(笑)建物を作りにらしいです・・・』
『残り数ヶ月だとか・・・』

聞いたのだと苦笑いをした別のスタッフの呟きに里瑠は綾音を眺めた。

『あれ・・・有害性はないんですかね・・・近付くな、だけ連絡はありましたけど』

『環境にも問題なく進めるとか聞きましたけど、トール内に近くなると空気がね・・・あ、マスクあるなら付けた方が(笑)呼吸は楽ですよ』

『そんなに?』
『はい酷い時は(笑)、先週行ったので・・・風の向きでも違いますが、どれだけの事をしてるのか考えちゃいましたよ・・・少し臭うだけの日もあるらしいですが・・・』

『反対もされてましたけど・・・試運転は開始してるんですよね、なんでか・・・』
『トール市内で知った?』

『はい(笑)横断幕っていうんでしたっけ?・・・大きく自然を壊すなって言葉を、赤で書いてありましたよ』
『アヤ・・・誰に会お・・・』

『二人しか知らない・・・』
『(笑)なら』
『残念だけど一人は(笑)引退してるかも』

『えー・・・なら、こっそり壊す?』
『『えっ!・・・』』
『・・・』

迷わず呟いた里瑠の言葉に驚いた二人が唸る・・・声にも出して欲しくなかった綾音は黙って見返した。

気付いたのだろう里瑠が苦笑いし視線を外した・・・旋回していたが戻るような映が見え口を引いた。

視線は自分へ流れる・・・見返せば驚いた顔は直らず口を指で抑え黙れと口端を引く。

頷く人達に笑み里瑠を眺めた。
『戻したら充電して(笑)』
『時間かかるよ?』
『ん・・・
あの・・・バイクの件ですが』

『どのタイプも貸し出せます(笑)、それが特殊オイルを使える条件にと上司から言われたので・・・(笑)すみません』

『了解(笑)。なら充電型じゃなく』
『(笑)馬力がある方で!』

『(笑)分かりました。補充はレーンの近場に、そしてトール側の端まであるレーンの近場が最後です。

レーンは市街地に伸び、そこを通り過ぎて郊外ギリギリの隣国付近まで繋がりトールという看板と補充のスタンドを置いてます(笑)・・・』

『そこで本当に最後の補充・・・』
『はい(笑)最後の給油です、他国へ走らせるのは出来ますが補充しに戻らないと・・・』

出来ないのだと苦笑いをした人に笑み返し頷いた。

『料金一覧は?』
『これです(笑)、そして補充した時に支払います。通貨は近隣国のでも可能ですが・・・』

『それぞれに違うから(笑)そこは大丈夫よ』
『(笑)トールとラデルとグランもだね・・・らっき(笑)』

料金表を眺めながら呟いた里瑠に笑み自分へも渡された料金表をチェックしてから地図を受け取った。

元いた国を聞けば自分達も知る国だった事に苦笑いをした・・・

『(笑)本音はラデルからグランへまで通したかったんですよね・・・』
『契約まで持ち越せずです・・・』

『しん』
『(笑)はい、慎重すぎて・・・』
『(笑)確かに』
重なる言葉は一緒だったと笑いながら呟いた人に笑み返した・・・

『ですよね・・・180度代わったら国内は不安定になるだろうし、対応を間違うと自分達まで焦るし』

『お二人は何処で生活を?』
『今はグランに(笑)』
『(笑)あぁ・・・羨ましい』

『町並みが暮らしやすそうですよね・・・ショップも豊富で・・・(笑)不思議と都会のようで違ってて(笑)観光地のようでもなくて』

『『・・・』』
『(笑)避暑地みたいで・・・』
『な・・・(笑)レトロっぽくて俺は好きだな・・・荒れてないし(笑)』

『物々しさはないよな(笑)・・・ちゃんとルールを徹底している気もしてたし』

確かにと頷く人達に笑み里瑠は綾音と微笑んだ。


レンタル代を払うと燃料費を払ってから出発できる・・・返却時、どれだけ燃料が残っていても返金もない。

便利だと笑う里瑠・・・充電し終えるまで、充電型のバイクを借りて慣らしの練習だと乗り始めた。

今の事が終わるまでと言い切った里瑠に感謝する・・・一人より二人が慣れた自分だった事でホッとしたのだと苦笑いをした。


勢い良く走り込んでくる音に溜め息をしたのは綾音だった・・・まだ楽し気に乗り回す里瑠もいた。

慌て自分へ知らせるような目・・・苦笑いをした綾音に口を引くと、新たにバイクで来た人達を出迎えた。

数台で乗り込んできたが以外と静かで苦笑いだ・・・この自分達の容姿に戸惑ったような気がした。

『これ(笑)以外と走るね・・・』
笑みながら戻って来た里瑠がスタッフへ呟く・・・

『そこが売りなんで(笑)。次は、これを乗ってみて下さいよ』
『(笑)了解』

『君は何処まで乗る?』
『・・・』
不意に声をかけてきた人へ振り向き里瑠が見返した・・・

『トール?』
取りあえずと呟き綾音が休んでいた場所へ向かう。

『ひと・・・二人なんだ(笑)、なら一緒に行かないか?』
『(笑)つまらないだろ二人じゃ』
『・・・(笑)二人で十分』

『『・・・』』
『(笑)それ、レンタル?』
『そんなの乗らないさ(笑)』

『(笑)専用レーン使ってるからレンタルかと思ったわ』
『『・・・』』
『(笑)許可は貰ったぞ?』

『ん?そんなのあったの?』
『ないですよ!』
『いいって聞いたけど?』
『(笑)確認してみたら?』
『そーします(笑)』

綾音の呟きに素早く答えたスタッフは急いで店内へ戻って行った・・・すまなそうな顔は仲間だろう人達へ目配せる。

『・・・報告されたら』
『(笑)そこは知らないわ。ルールを破って楽しんでる事を自覚してるなら諦めた方がいいわ』

『・・・』
『そんな!』
『(笑)謝ってレンタル代を払って乗ればいいだけだよ』

『それじゃ持ってきた・・・意味・・・が・・・』
『ここには観光で?』
『働いてるさ!』
『どこで?』

『『『・・・』』』
『(笑)トールの要塞?』
『悪いか!』
『おい!』
『・・・』

慌てるような声音は少しずつ静かになった。

『あれ・・・違法らしいの知ってた?』
『君たちも知ってたのか・・・』
『・・・今時ないよな・・・』

『作る方はヤバいのに雇う方が威張っててさ・・・』
『あー(笑)ムカついて乗り回してたのか・・・』

『・・・さっき走らせたヤツの親がな・・・』
『貴方達は?』
『『バイト・・・』』

『(笑)出稼ぎっていう?』
『まーな・・・短期だから大丈夫って聞いてた。
始めたら接ぎ込むだけで・・・』

『直ぐに取り壊すって事?あれだけ大きくしたのに?』

『(笑)必要な分だけ投資して丸投げしてくとか聞いてたし・・・
でも もとの資材が手に入らなくて今は、ある分だけで運行してる』

『・・・試運転って』
『(笑)トールの役所が騙されてるらしい・・・』
『それで(笑)いいんだ』

『・・・(笑)人ん家だしって聞いたかな・・・あ・・・』
『・・・』
『なに・・・』
『(笑)ヤバいね』

それぞれに話し出す人達に笑えたが身内という近さの人達でもあり内情も知っていた事に笑み見返した。

つかさず声にした里瑠へ驚いた顔で眺め考える人達だった・・・

『・・・ラ・・・ラデルから貰える物資が流通されなくなったとか聞いたんだ・・・』
『俺らは雇われて来ただけで』

『環境組織に・・・』
『頼む!聞いてなかった事に』
『『あー・・・』』
仲間の呟き・・・何かに気づいた人の唸り・・・

『すっ・・・直ぐに取り壊すって言って始めたから・・・』
『・・・設備投資が低くて中は ちゃんと作れなかったとか聞いたんだ』

『・・・知ってた?』
『なっ何を・・・』
『トール軍って、行動に移すの早いのよ?悪さはとくに(笑)』
『あ?・・・』

『(笑)資材を奪う為にラデルの軍を荒らして、ラデル兵を減らしてから戦争する気だったらしいよ?』
『・・・』

『ラデル国・・・と?』
『そ・・・ラデル国を奪いたくて』
『・・・あれは他へ持ってく為の工場にするとか聞いてたけど・・・』

『工場?』
『資源が豊富だったとか・・・でも早々にトール内で取り出せなかったとか聞いたが・・・』

『あー・・・ラデルから』
『こっちは自然を残す決まりはあったとか聞いたぞ?』
『『そーなのか!』』

『アイツがそう聞いてきたとか言ってたから・・・』
『信じてるんだ・・・』

『オール側の周辺国と友好国・・・その国際機関内でのルールだったらしくて破壊行為は勝手に出来ないようだ』

『あーだから欲しい分だけ・・‐』
だから短期だったのだと呟く人に驚いた・・・

『あの中はオート?』
『(笑)そこは本当にオートだ。だから俺らは出れてるし』
『(笑)煙、スゴいらしいじゃん』

『気をつけないとヤバいぞ!』
『吸うなよ・・・』
『・・・』
『今は大丈夫なはずだぞ?』

『そうだっけ?』
『確かに、材料が半分きったし予定より短期間だと思うが・・・』

里瑠の呟きに直ぐに声にした人達に口を引き見返した綾音・・・明らかに使い捨てなのだと言い切った。

それは詐欺に近い行為・・・どんな利点で許可をしたのだろうと考えながら見返した。

早々に壊す事も出来ない規模・・・だから余計に考えてしまう。

『あ、言っとくけど・・・器は大きいが試運転と機関には言って、作る為の炉は小さい方だからな!』

『・・・規模だけの問題じゃないはずだけど?』
『『『・・・』』』

確かにそう思っているのだろう押し黙る人達だった。

これは終われると思えた綾音・・・どこの機関へ伝えるべきかと考え始めた。

『告発するのか?』
『(笑)トールは消えるわね・・・』
『『・・・』』

『ラデルを狙った事で(笑)回りへ知られたろうから・・・』
『君たちは隊員か?』
『『・・・』』

『人の国も環境も壊しに来てるのに大丈夫なの?』
『なんでだ?』

『(笑)サーバルとステイが乗り出したら? ましてオールとシーランも黙ってないはず』
『・・・ここまでは』

『(笑)国際機関のルールが発生してるのに?』
『・・・』
『ま(笑)、その前に消されるんじゃない?』

驚きながら考え始めた人達に笑み里瑠が呟いた・・・その言葉で思い出したのだろう互いに見あい始めた。

給油した彼らは押し黙ったまま、元来た道を戻って行った。

まずはと直己へ連絡しトールへ向かうべく準備をしたのだった。



初めは狭かった専用道路は少しずつ広がり2台並んで走っても余裕の広さに驚いた。

海風は心地好く身を撫でていく・・・所々に、ここで休憩してくれと言いたげの店があった。

自転車まで見れた・・・さすがに車まではなく不思議と、無くて良かった気もすれば里瑠も同じように感じ呟いた。

楽しいのだろう里瑠が静かに歌い始める・・・イヤホンから聞こえる里瑠の歌声を聴きながら綾音は走らせた。

休憩とバイクを停め景色を楽しむ二人・・・微かに見えた炉の大きさに苦笑いしたが、他の大きな建物はない・・・だから気付けたのだと思えた。

少し前・・・僅かに見えた黒煙は、今はなく停止しているような気がした・・・時おり漂ってきた煙の臭いに口を引く。

暫く走れば街並みが現れた・・・至る所の変化は激しかったが、時代の流れを見ているような気もし苦笑いをした。

真ん中から少しずつ探る二人・・・情報を集め考えては場所を広げた・・・

ふと・・・何処かで見た人だと思え観察してしまった・・・目があった気はしたが、相手は笑みを浮かべているが視線は隣の人で声をかけては話しながら戻っていった。

どうしたと里瑠が自分と同じ所へ視線を向ける・・・

『あ、どっかの軍で会・・・誰だったかな・・・似てるねぇ』
『・・・あ』
『ん?思い出した?』
『トールのエン将軍』

『(笑)あー確かに』
似てると呟いた里瑠・・・

『ま、(笑)今は こっちも誰か分からないでしょ・・・』
『この格好だしね(笑)』
『(笑)ね』

彼女達の容姿はトールへ入ってから直ぐに服を替えていた・・・専用道路の近場はオールで見かける店に近く食品も衣類も揃っていた。

里瑠の呟きで久しぶりだと買い求め着替えたのだ・・・武器は全て背負えるケースへ積めた。

この地域は異国のようで色んな国の人達の容姿で面白かった・・・バイクは次に使えるようショップへ置かせて貰っていた。

クリップで髪を留め直す・・・最新のモノでもないが二人で色を替えて使う事にもした。

だから余計に自分達に気付く事はないのだと思い出し辺りを眺める二人だった。

『あー・・・携帯あったら連絡とれるのにな・・・』

里瑠の呟きは既に懐かしそうで苦笑いだ・・・確かにと思えば二人の姿を思い出した。

子供に対し母親という自覚の足りなさに諦めた・・・探りで来ていたが次々と増えていく事の大きさに戸惑いは消えなかった。


少し前に弟へ連絡した・・.・だからラデルの件は伝えて貰える・・・次はとトールへ来てみたが自分達では解決も難しそうで悩んだ。

『(笑)ほんとに居たわね・・・』
『え・・・』
『あ・・・』

近い場所から聞こえる声に自分達へかと振り向けば・・・見知る人が居て驚いた。

『(笑)来ちゃった』
『・・・観光で?』
驚きながらも理由は何だとユリへ呟く・・・ユリの容姿が違う事で綾音は何と言おうかと戸惑い眺めた。

『ユリ隊長(笑)一人でした?』
『(笑)違う。今回は連れて来られててね・・・今は暇潰しついでに探しに来てたんだよね・・・』

『あー・・・(笑)なら探しに出てくださいよ』
『(笑)見つかったし』
『・・・』『ん?』

『(笑)グイム社から報告を受けたらしくてね。なーんの準備も出来ずに連れられて(笑)ここよ』
『『へぇ・・・』』

『理由も少し前に聞いたばっかり(笑)彼が報告したら代表でって、緊急だって(笑)確認しに来てるわ』
『何を?』
『(笑)環境破壊ってやつよ』

『はやっ!』
『・・・』
『ねぇ(笑)アヤが弟君と話してたのって』

『それそれ(笑)』
『マジで?』
『(笑)ついでの報告に悩んだナオキ君がグイムさんへ連絡したらしいの』
『『・・・』』

『(笑)グイムさんと会う約束をしてた彼が聞いたらサーバルから連絡がきてね(笑)』
『ごっ・・・ご苦労様です(笑)』

里瑠の呟きに笑うユリ・・・
『(笑)アヤの悩みは一つ、解決したんじゃない?』
『・・・はい』

苦笑いしかない・・・自分でも悩み思わず弟へ声にしてしまった・・・その聞いた弟を悩ませたようだと知った。

が、弟に相談出来る人がいて良かったとホッとした綾音だった。

急に笑っていたユリが自分達へ肩を組む・・・笑みを浮かべた里瑠に笑み返した。

自分達に笑み里瑠と交互に見返す事で何だと身構えた綾音がいた・・・何の呟きだと。

『・・・恐らくの想像よ』
『『・・・』』
『カフェでね、内緒話してる二人組がいたのよ・・・(笑)』

『(笑)スパイしてたんですか?』
『ね(笑)・・・どうどうと聞けてラッキ』
『・・・どんな話を?』

『トール内だからテロっていうかもね(笑)この話は』
『たたく・・・』
『トールを?』

『(笑)正解』
『さっき、トールとラージの二人組がいて・・・』

『(笑)辞めたらしいわよ?で、紹介された先がラデルみたいなの・・・なんでだと思う?』

『バーン大将軍を尊敬してたからじゃ・・・』
『あー・・・どうせならってやつ?』

囁くほどの声音で頭を寄せあい話してた3人・・・回りの視線も集まり人の目はない場所へ移動する事にした。

ようやく声を普通に出せると綾音が呟いたが、それもまた小声にし辺りを探りながらユリへ言った。

『そーなんだ・・・だけど、争わなくても消える可能性もあるのよ?』

『どっちも軍を確実に消したいのかも・・・偵察に来てる可能性もあるし』

『あー(笑)さっきの人が彼かも』
『ん?』
『見た事ある人だなーって(笑)、でも一人だけだったし・・・アヤは?話した事はあった?』

『ある・・・こっちは目だけ(笑)』
『確かにね(笑)、顔出しはグランとラデルだけだったね(笑)・・・』

そういえばという里瑠の呟きに笑み返すユリと綾音だった。

『一度さ(笑)グランに戻らない?』
『帰る?・・・』

里瑠の呟きに確かにと思えた綾音へ残念そうに聞いたユリ・・・確かになと思い始めれば暇になると笑い始めた。

スッと手を出したユリに、里瑠が使っていたモノを手渡した

『どーしてよ・・・』
『(笑)私とアヤで連絡を取り合いたいからよ・・・使えるんでしょ?こことグランでなら』

『(笑)アヤは抜かりないし』
『そーよね。(笑)オールのやつ、グイム社のらしいじゃない・・・そっちに変えれば?』

『あれは弟用ですから(笑)』
『(笑)特別許可なの?』
『たぶん(笑)』
『(笑)そっか』
『・・・』

『(笑)計画したら確実に確認してから動きなさいよ?巻き込まれないように出来るわよね?』
『・・・』『頑張ります』

先を読んだのだろうユリの言葉に頷く綾音・・・意味は分からないがユリの言葉だと呟いた里瑠。

『把握してから確実に』
『そういう事(笑)。でも(笑)必要はないかもしれないわ』
『・・・』

了解と笑み返す綾音に頷く・・・里瑠はと眺めれば何の事だと自分を見つめた姿に口を引いた。

『リル(笑)』
『はい?』
『(笑)アヤに混ざるなら余計に口は閉じないと不味くなる・・・ヤバそうなら、ここで(笑)私と遊ばない?』

『・・・レンジン様は?一緒に』
『あっちは(笑)お仕事で来てたわ』
『へぇ・・・』
『(笑)貴女のリュック・・・重そうよ?』

『そーですけど、余計に目立ってたから・・・』
これにしたのだと愚痴る里瑠に口を引き笑む綾音もいた・・・

『(笑)遊んだら?私なら大丈夫よ』
『んー・・・なら(笑)荷物置きに戻ろかな』

『あ(笑)、なら時間あるし、戻りは私が運転するわ・・・リル(笑)』
『(笑)ツーリングだ』

正解と笑うユリに笑み早く行こうと立ち上がった里瑠だった。






or −25

2023-06-20 12:31:38 |  or


ダリへ言付けた綾音と里瑠・・・次はトール軍だと密かに後を追った・・・怪我をしている兵士達の扱いも酷く驚いた。

ラデルを出てトールへ入った途端に様子が変わった・・・急かしていた者は突然、休憩だと河辺で休ませ始めた。

下の者達の戸惑いは多かったが諦めたように黙り怪我人の世話をする者達は焦りを隠しながら頑張れと励ましていた。

隊長だろう一人が謝りながらも上官へ声にする・・・先に行きたくて、早く医者に見せたくて頼んでいた。

仲間が痛みで朦朧とし始めたからだが慌てる自分達に ラデルの兵士が自分の将軍に頼み準備してくれたモノは荷馬車だった。

荷台には布団まで敷かれてあり静かに怪我をしていた仲間達を乗せてくれた。

だから戻れるのだが揺れるたびに痛みは走る・・・何も敷かれていない荷馬車に乗せてきた者は激しく唸っていた。

その行動に驚いた者は多かった・・・ラデル兵に感謝し仲間を励まし戻っていた。

この扱いの違いは何だと・・・自分達の大隊長達を眺め比べた事には苦笑いしかない。

今も、のんびり水を飲み岩へ座り身を休ませていた・・・自分の部下が怪我をして苦しんでいるのにだ。

ここは領地の真ん中・・・ここから戻る土地柄は道も荒くなり一番苦労する。

誰もが一度は休む・・・が、今は緊急事態でもあり気持ちが焦る・・・なのに今の部隊を纏めている将軍が動かず声一つない。

別の隊長は部下から守られた事は知っているが感謝はなく、励ます事もなかった。

一人の隊長が頭を下げる・・・その部下達までが許しをこう・・・自分達もだと走り後ろへ控え訴えた。

激しく怒り声を荒げる・・・補充すればいいだけだと叫んだ将軍の声に驚いた。

それでも怪我をして苦しむ部下を早くトールへ戻したいのだと、謝りながらも頼み込んだ隊長の姿に恐る恐るという動きで集まりだした。


先に戻ると言ったのは、もう一人の将軍だった・・・その将軍に言われ指示を出す。

ホッとした顔は静かに増える・・・丁寧に頭を下げたが直ぐに戻る準備を始めた。

ムッとしながらも戻る準備をさせた人へ何度も礼をした者・・・先に行けとエン将軍が叫んだ事で、新たに一斉に頭を下げ、素早く数台の荷馬車を動かした。

宥める者も多く集まった兵士達の後ろをトールの中心部へと向かう・・・今は遥か先へのびる草原の中を慎重に走らせる隊長達だった。


苦しむ兵士をよそに休憩を取るトール軍に驚いた・・・

『(笑)似たようなもんだけど、何処でもいるんだね』
『ね』
『にしても罰はないのかな』

『・・・ん?』
『代表で訓練に来てる人達の半分以上が怪我をしたんだよ?(笑)突然』

『あんなだから中途半端にトールは伸びたんでしょ(笑)、不出来な軍だったし。あの人は別っぽいけど』

『だからラデルの方に手を貸してたの?前の時もトールの軍じゃなく、役人と交渉してたし』

『ラデルの臨機応変に助かったから考えただけ・・・たまたま軍側じゃなく、ラデルの大将軍がトールの役人と知り合いだったから頼んだだけだし』

『あー・・・だから余計に、スムーズに事が運べたんだ・・・』
『そういう事。話も(笑)上手かったから助かったし、殆んど出ずにすんだんだよね』

『へぇ・・・あ、やっと動いた』
『行こう』
『(笑)おっけ』
さっきよりも遠目にした二人は後を追うのだった。



中央へ入れば多国籍の人達は多く、それぞれの衣服で着飾っていて驚きしかない。

軍施設へ入った事を確認した二人は港へ向かう・・・多種の店は数多く前に見た場所より遥かに広くなっていた。

貿易関係は港に近い場所に施設を作ったと聞いていたが、出入りは他国の人達が多く驚いた。

ふと・・・思い出したように里瑠が呟いた。

『国境の真ん中にって話、覚えてた?なかったよね・・・高い塀』
『あー・・・』
『ラデルとの国境じゃないのかな。ま、山は多くて見えなかっただけかも』

それはと考える里瑠・・・確かにと綾音は その方角を眺めた。

『・・・行く?』
『近場か・・・場所が』
『分からないよね・・・』

歩きながら考える二人・・・いつの間にか灯台がある岩場まで来ていて笑ってしまった。

近場には専用路のような道路があった事には驚いた・・・これは何処へ延びているのだと考えながら歩いた。


穏やかな波を太陽の光りが照らし眩しくて・・・久しぶりに見た海を静かに眺めるのだった。

「(笑)貴女がたは、この国の方達でしたか?言葉は分かりますか?」

不意に背から声をかけられた事で二人は振り向き見返した・・・
『・・・すみません。ゆっくり』

言語が違う事に驚いた里瑠が苦笑いしながら女性に返事をした。
「・・・(笑)」

互いに知らないのだと口を引く綾音は視線を戻す・・・里瑠は知らないがと声にすると、女性もまた笑いながらも自分の国だろう言葉で話しかけていた。

恐らくの想像で返事を返す里瑠の声を聞いていた・・・

『あーぁ(笑)名前はニコルって言うんだ・・・可愛い名前だね(笑)、私はねリルって言うの』

身振り手振りで会話を続ける里瑠だった・・・

『ん?(笑)この子? この子はねアヤって言うの』
「(笑)ア・・・リル、アヤ・・・」
『そーでーす(笑)』

指さし名を呟いた女性に笑み返す里瑠は楽し気だった・・・
「この国は住みやすいですか?」

『・・・ごめんね、分からないんだよね(笑)・・・どーしよ。何か聞かれてる気はするけど・・・』

「・・・言葉が・・・」
『・・・どーしよ』

互いの困った顔に苦笑いまで二人でする・・・迷うように自分を見返した里瑠に苦笑いだ。

『さっきの(笑)貿易センターに連れてったら?』
『そっか(笑)その手があったね』

行くぞと自分の手を掴む里瑠は女性へ笑み返し行こうと促した・・・戸惑いは顔にあるがセンターがある方を指さし見返した。

何となく気付いたのか会釈した女性もまた歩きだしたのだった。

サービスカウンターのような場所はあった事で女性の代わりに説明し戻ってきた里瑠だった。


取りあえず国境がある方角を目指す事にし、トール内を観察しながら歩く二人・・・途中で水と食べ物を調達した。

『ねぇ・・・この辺って草原じゃなかったっけ?』
『(笑)だったね・・・凄い変化しててヤバい(笑)』

暫く歩けば直ぐに景色が代わり苦笑いだ・・・これから変化すると言いたげの状態は可笑しかった。

『この短い期間で・・・これだけ』
『ね・・・(笑)やっぱり・・・随分と・・・』
『変わり過ぎ・・・』

変わっていた事に驚き辺りを眺める里瑠だった・・・


『アヤはさ・・・』
『・・・なに』
『・・・オールにいた店は他国からも来てたんじゃなかった?』

『・・・(笑)そうだけど、どした?』
『何で教えてあげなかったの?知ってたでしょ、さっきの話・・・言語だよ、なーんか(笑)ちょっとね』

『時間を割かれる事はしたくなかっただけよ。知らないふり(笑)サンキュ』

『(笑)いいけど・・・なんて言ってたの?』
『この国は住みやすいかって』

『(笑)あー・・・移住するって事だったら、確かに時間が取られそうだったね(笑)』

へぇと頷く里瑠だったが特に気にもならなかったのか辺りを眺め塀を探していくのだった。



本当に高い何かがあった事に驚いた里瑠が眺める・・・近くなれば尚更だ、それでもオールのような聳えるという高さでもない。

この辺が国境付近なのか、本当に国をまたいで出来ているのかも分からなかった。

『あれ、何だろう・・・』
『・・・』
『煙ない?あそこ・・・多少の警備はあるね・・・』

『この臭さは何でかな・・・何を作るんだろ・・・この大きさなら周辺までヤバいよね』
『・・・炉?』

工業施設のような広さ・・・それでも丸い塔はあり・・・何だと考えながら眺めた。

『飛ばして見てみる?』
『この距離、いける?』
『ん・・・充電したら』
『本当に持って来てた?その鞄に入ってる?』

『ん・・・小型なら持ち運び出来るし(笑)便利だと思った・・・だけど組み立てなきゃなんだよね』

苦笑いしながら辺りを眺める里瑠・・・木々が多い場所があり綾音へ目配せた。

身を隠したくて行こうと二人は少し向こうに見える森へと向かうと辺りを確認しては選ぶように場所を決めた。

どこで組み立てるかと探しながらも大きな施設がある場所を眺め飛ばすのに最適な場所はと考えた。

その間にパネルを出した綾音・・・自分のも頼むと目配せ出して組み立てて貰った。


どこからかエンジン音がし始め、驚いた里瑠は身を隠す・・・今ならと作り始めていたが、素早く かき集めてしまった。

綾音はと探せば、大木に飛び上がり何かを探っていたが・・・自分へ視線が来た事で登るのかと驚いた。

遥か上からロープで繋いだ綾音は、勢い良く飛んだ・・・なんだと眺めていれば螺旋のように太い幹や枝を避けながら大木を回る。

何かが巻き付き 動きが止まったかと思えば、それを掴みながら今度は登る様子に驚いた。

良くみれば螺旋階段のように枝が突き刺さっていた事に気付く・・・その場所を足がかりにし、より上へと登る里瑠だった。

切れ味がいい綾音の剣・・・こんな使い方も出来るのかと可笑しくて、綾音が作った場所を眺めていた。

『見てないで作ってよ』
『これは細いから簡単に切れたの?』
『・・・』

『隠れ家みたいで(笑)楽しくなるねっ』
落ちないように・・・見えないように細工までしてある事に笑いながら眺めていた里瑠・・・その呟きに口を引いた綾音だった。

『そのロープって伸びるんだね(笑)楽しそう』
『(笑)滅多に出しません』

『分かってるけど(笑)。それより、この音はバイク?車かな・・・』

『持ち込んだのかも・・・っていうか、そういうのを作る為の工場って事もありえる』

『あー車・・・とか(笑)確かに。進化の始まりだろうけど・・・あ(笑)ヤバい、パネル忘れてた・・・』

『少し上に出して貯めてる(笑)』
『(笑)ありがと』
幹から辺りへ伸びている枝は数多く、この太さならと下にいた里瑠に落ちないよう切りまくった。

取りあえず落ち着けるよう削ったり枝を突き刺し平らにした・・・その上に乗り眺める。

確認してから残る枝を切り素早く突き刺し捻った・・・その穴へ新たに枝を突き刺し押し込む・・・

焦りながら片付け始めた里瑠に登ってこいと目配せてみた・・・笑いながら上がってくる・・・大事にしまってから登る里瑠を眺める綾音もいた。

少し向こうの広い場所で数台で走り回る音がする・・・近場まで来ないが、平地を走り飛ばしていたのはバイクだった。

形は昔のタイプと似ていたが、この地だからかと眺める・・・マウンテンバイクだったかと、その名前を思い出していた。

『あれ・・・何で動かしてるかな』
不思議そうに眺めていた里瑠に早く作れと促せば手を動かし始めた。

陽が真上になり陽射しが強くなったが遥か先や上に伸びた枝先に繁った葉は多く自分達がいる場所は多少だが暑さは防げていて助かった。

それでも暑い・・・綾音はマントを羽織り身を休めた・・・
『あの声・・・止められないかな』
『・・・』

返事がないと綾音を眺めれば、眠っていた姿に苦笑いだ・・・何が楽しいのか狂ったような叫びはあり、エンジンの音が煩いからか話し声は大きくなっていた。

近場の下を通り抜ける・・・次のバイクは反転し直ぐに戻って行く・・・強弱した音は綾音の眠りを止めたようだ。

深く溜め息をした綾音に口を引いた里瑠だった・・・暫くの時間を使い組み立てる。

出来れば試運転だと嵌め込み、使っていたパネルはしまった・・・綾音が充電していたのはイヤホン、それは自分のもだったと感謝した。

プロペラが回る・・・羽音はするが音は小さい事で里瑠を見返せば褒めろと言わんばかりの満面な笑みに苦笑いだ。

ナイスと指を立てれば胸を張る里瑠に頷く・・・水平に飛んだドローンは自分達から離れると素早く空へと舞い上がった。

モニターを二人で眺める・・・飛行速度も良くスムーズに目的の場所へ飛んでいく。
見下ろす・・・

『・・・動かしてる?』
『ヤバい・・・』
『地が荒れるよね・・・』
『どう説明しよ・・・』

『・・・何かで見た溶鉱炉より小さいけど・・・採掘してる・・・場所』
『そっから探す?』

『・・・もしかしてラデルじゃない?使えそうなの・・・多かったじゃん確か・・・』

『・・・あー、トールが目を向けた理由か・・・』
『トールに山は少ないもんね』

森はあるが近くを流れる川の上流はラデルだった・・・トールの中を通り海へ辿り着く。

この場所は恐らくラデルに近く、トールが取れるほどはないのかも知れないと思えた。

それまでは密かに作っているのだと思えた・・・姿を見せれば反撃されるかと囲ったのかもしれないと綾音は眺めた。

『リル・・・』
『ん?』
『川に向かう方角を写して』
『ん・・・』

分かったとドローンを移動させていく・・・カメラを調整した映を眺める二人。

暫くして限界だと里瑠はドローンを戻す・・・
『(笑)あ・・・』
『あーぁ(笑)』

高めに飛ばしていたが見上げられていた様子が写り二人で唸る・・・取りあえずと離れた場所へ飛ばし遠回りしてから手元へ戻した。

素早く解体していく里瑠に可笑しくて笑えば苦笑いをしながらも袋へしまいこみ鞄へ戻すのだった。

楽し気な声は既にない・・・静かになったが暫くしてエンジンの音が森の中を響かせた。

川の方へ飛ばした事は正解だったと笑う里瑠・・・それはバイクに乗った人達が向かったからだ。

離れていく音に互いに見合い笑うのだった。


川縁を歩く・・・良くみれば河川工事をしていて驚いた・・・本流から引いたのだと気付く。

『これ・・・何の為?』
『ラデルから来てるじゃない』

『・・・船で海外あたりに運ぶ?そういうこと?だよね・・・道路ないし小型の輸送船とかあったし』

『恐らく・・・コンテナあったし』
考えながらも穏やかに流れている様を綾音は眺めながら呟いた・・・

『始まったら流す?』
『ちゃんと考えての場所なら荒れる可能性は高いかも』

『進化の代償は、どんな時でも同じかもしれないね・・・』
『残念だけどね・・・』

『鉄・・・だけじゃないよね、何を作るんだろ』
『大型じゃないしね・・・』

『ま、環境で先は知れてるから無理はしないと思うけど・・・』
『ラデルに戻って相談してから詳しく調べる?』

『・・・まずはトールの真ん中を見てから考える・・・探れなかったしね』
『確かに・・・』

そうかと里瑠は綾音を眺め、そっと辺りを確認してから地面へ下りたのだった。



取りあえずと、行った事のない方角へ向かう事にした・・・その中間で馬を借りて走らせる。

里瑠は馬のレンタルだと楽し気で笑えた・・・遠回りに海沿いから入る事にし少し戻って探りながら・・・

新たな町並みは進化の途中だと言いたげな状態で驚いたが、変えようと立ち止まれば戻す事になり苦笑いしかない。

この先からは歩けと言われ彼女が呆れ店主を睨む・・・勝手に離せば戻る事も知り、新たな溜め息までする彼女と吐き出した。

ついでと見学のように歩く・・・今と昔と建物の造りは はっきりしている・・・

それは気になるが、そこで暮らしているのだろう人達の衣服は様々だった。

進化の波は来ているが全てに落ち着いていない状態・・・その建物や店の状態で人もまた様々だった。

驚いた事に乗り物をレンタルする店があり暫く眺めた・・・滅多に借りていく人もいないのだろう店員は暇そうにスタッフ達と寛いでいた。

目が合い・・・もしかしてと思ったのだろう満面の笑みで自分達の方へ駆け出してきた事に里瑠が笑い始めた。

『もしかして(笑)観光でいらしてます?』
『(笑)でもないか、その服装なら』
『・・・(笑)』

『ここ・・・』
『(笑)戻さなくても大丈夫なシステムですから疲れず遠出も楽しめて便利ですよ?』

『・・・へぇ』
『(笑)どちらまで?』
『『(笑)トール』』

『時間はかかりますが(笑)行けますよ?(笑)当店なら・・・充電型でして各地に店があるので乗り換えながらですがトールまで行けます(笑)』

『凄いね(笑)』
『ありがとうございます(笑)、もちろん地図もあるし店へ誘導するので安心です・・・バイク・・・自転車にしますか?』

『道・・・』
『(笑)バイクもオーケーです、安全に走れるように専用レーンを造りました・・・
あ、道から少しだけ離れた場所に店はあるんですけどね・・・でも大丈夫です(笑)見えるほどの距離なので』

だから安心しとけと説明しながら笑む人に二人で苦笑いをした・・・詳しく聞きながら店内へ入る。

『・・・』
『2人乗りしてこ。何かと便利かもしれないし・・・どう?』

悩む自分に気付いたのか里瑠が呟く姿に苦笑いをした・・・確かにそれで考えていたから。

確かに2台でも行ける・・・が、何かが起きた場合、逃げながら追っ手は倒せるとも思えたから。

互いに見返す・・・
『あれなら余裕じゃん?アヤは出来そ?』
『一通り・・・(笑)後ろに乗った人がって事にする?』

分かったと笑みながら頷く里瑠に店員は驚いたようだった・・・

『2人乗りは経験してますか?本当に大丈夫でしたか?』
『たぶん(笑)』
綾音の変わりに里瑠が呟く。

『全部・・・舗装されてます?』
『すみません(笑)。確認は月一なんです』
『前回は?』

『・・・そろそろ』
『『・・・』』
『本当に、たまーに・・・不要に乗り回す人達に乗り込まれ荒らされます。今はトール側から専用道路を新たに造ってまして・・・』

『別の場所に?』
『(笑)真上に・・・作業中の区域は離してレーンは分かるよう繋げてますし』

『計画されたモノから相談し了承されて始めましたから(笑)』
『(笑)景色も抜群です』
『・・・その荒らしてる人達ってトールとラデルの間の』

『そうです、そうです・・・近くに森があって・・・何かの建物を繋ぐ道路を使って遊んでるらしくて・・・
あの・・・巻き込まれないよう気を付けて下されば・・・』

『・・・』
『女性二人でも危険かもしれませんが・・・』
『その人達って、トール側の人達でしたか?』

『らしいです。なんでもトップに近い人達の親族もいるんだとか』
『・・・』

他のスタッフが交ざり話を聞き入る綾音だった・・・考える・・・里瑠は情報をくれと声にした。
暫くして綾音が呟く。

『モトクロとかで』
『乗れますか?』
『(笑)あります!』

聞けば驚いた二人が声にする・・・マジかと里瑠までが驚き綾音が苦笑いをした。

『(笑)挑まれたら逃げる・・・だけど見たのは普通のバイクじゃなかったじゃん・・・』

『ん、平らな場所だけでもなかったしね・・・(笑)砂漠も走れるようなのが丈夫?平らな道もガタつく道も大丈夫なバイクってあった?』

『『・・・あります』』
『『(笑)あるんだ』』
『・・・当店のオリジナルが、あるんですけど貸し出しは』

『(笑)してないんだ。買える?』
『・・・』
『買ったら(笑)充電もさせて貰える?オイルは・・・ないでしょ?』

『・・・あるんですけど』
『(笑)あるんだ』
『・・・』
『燃料費高いわよね(笑)特殊だし』

『持ってくるので(笑)』
『経費も混ぜないと(笑)仕方ないけどね・・・改良出来そ?』
『・・・・』『(笑)分かんない』

里瑠の呟きに店員は驚き笑うのは綾音だった。

『今は、これしかありません・・・本当に乗れます?大型ですが大丈夫ですか?』
『全部(笑)平気』

『充電型は、危険走行を防ぐ為に造られていて・・・あ(笑)理由、知ってました?』

『(笑)オールは知ってますか?』
『・・・』
『(笑)オール製じゃないのは気付いたわ』

『え!・・・充電型って全部一緒じゃないの?』
『違います』『(笑)違う』
『・・・へぇ』

『(笑)ならリルが乗れるのに』
『・・・馬力あるのにして行こう(笑)頑張ってみる』
『(笑)一人一台』

『えっ・・・』
『・・・(笑)銃があって脅されたら?』
『確かに』『はぁ?』
『じゅっ・・・』

スタッフ達はそれぞれに唸り自分達を見返し驚いていた事で容易く想像していたモノは正解だと知った。

『『あー・・・面倒だ』』
思わずだろう重なる二人の言葉に余計に驚き声も出なかった。
『ですよね・・・』

『・・・(笑)こっちで見ない乗り物が増えて、レンタルまで(笑)。まして無法のように乗り回す人達がいた事で想像(笑)できます』

『・・・暫くハザードは点滅さえしなかったのに・・・観光地と客も他国から来て潤ってた頃が懐かしくなりますよ・・・ほんの最近の事なのに・・・』

残念そうな声で呟く人を眺め里瑠は綾音を見返した。

『・・・でも、予算があって専用道路の工事をしてるんですよね?』
『そうです・・・周辺もですが、観光地にすると決まっているので』

『最新のより抑えたバイクにもしてありますから』
『競われても困るのはウチなんで』

『進化していく事に不満はないけど不思議と今の状態を継続してくれたら上手く行きそうだが・・・』

辺りを眺めながら呟く人達に苦笑いだ・・・本音を客へ声にする事に笑う里瑠だった。

『(笑)リル・・・笑ってる場合じゃない(笑)リルが運転出来ないなら置いて』
『嫌だ(笑)』
『だけどスピードが違うから』

『頑張るけど』
『・・・(笑)確実に舗装している場所って事なら悩まず選べたけど』
『(笑)悩んで貰えますか?安全が一番ですし』

借りて欲しい人達・・・店内へ戻り調べると書類等を探しだした・・・二人は行く準備と装具をチェックするのだった。





or −24

2023-06-18 00:38:44 |  or


そっと陣営に戻る・・・それを確認しながら辺りを探る事にした・・・見回りは通常の半分の人数にし、それを数日ほど続けた。


少ない人数での警備・・・代わりに篝火を増やすと聞いていた・・・いつもなら暗い場所は燃える炎で照らされていた。

一緒に見回る・・・陣営の入り口から、篝火で囲まれた様を見るのは初めてだと呟きながら回る警備兵に口を引く。

『訓練だから出来る・・・これが本番なら半分以下にしなきゃ狙われる』
『なら・・・』

『夜間の陣営内で狙われた事は?』
『始めた頃に一度・・・あとは山間部や谷間です』
『最近は?』

『やはり山間部の奥で。ですが山賊だと思っておりました・・・』
『・・・』
『すみません、物凄く恥ずかしく・・・ですが貴女が知る必要はないかと』

『ある。本当に山賊か、味方に化けた敵か調べる事になるから。
それから・・・見回り中は私語厳禁だ、少しの物音も聞き分けなければ不味い』

『侵入した者の見分けですよね』
『そうだ』

呟きながら背から出した武器は見た事もない作りの弓のようで驚いた・・・自分達が知る弓でもない、その形に気付く。

弓はあるが、これは もっと小さい・・・袋から素早く取り出し何処かへ狙いを定め・・・ビュッと暗闇へ飛び出した。

何度も自分達にも分からない場所へ飛ばしていく・・・暫く歩けばまた飛ばす・・・その笑みに驚いた。

『気にせず回って(笑)』
『辺りに?』
『いましたか?』
『偵察だが判別は出来てない』

『なら・・・』
『近いのに(笑)、味方が陣営じゃない場所に潜むって・・・有り得ない(笑)』
『・・・』

驚いたが、何かへ当たった音はしていた・・・木でもない音もあった、自分達が足を引くと指示された事を思い出し歩く事にした。


翌日・・・
時間が過ぎていく・・・篝火まで消えていく事に気づいた兵士もいたが出るなと静かにさせる隊長もいた。

『(笑)聞こえるか?』
『はい・・・』
『どこかの偵察部隊が来てる、火は全て消えるけど出ないよう頼むね』

『・・・大丈夫か?』
『ん?ドリー?』
『(笑)そうだ。久しぶりだ』
『声もなく(笑)姿も見せずで』
『(笑)了解』

『誰と話してる?』
『ドリー(笑)』
『奥の篝火の時間(笑)ミスった?』
『そう?でもダリが潜んで』

『居るだろうけど出さないし戦力外だけど?』
『・・・なら奥から弓で退けてよ』

『ドリー、焦げ茶の鎧は何処?』
『・・・ウチだ』
『謝っとく』
『それ・・・』

『奥に数個の盾がある』
『肩の部分に白で目印はしたが本当に誰かが居るのか?』

『居る。他もあるから防御はしとけって言われてるよね?』
『立ててはある・・・』
『矢を使うみたい・・・だ』
シュッと音がし地面へ刺さったようだった・・・

『探りか・・・』
『じきに暗くなる・・・音で探って中で互いを守って』
『了解』

返事をしている間に静かになったが部下の息遣いで気づいた・・・煽られた恐怖・・・試しの時間の気までしたのだった。


その日・・・
夜間訓練をすると散らばる前に説明された・・・今回も参加しないはずのグランの部隊が2、トールの部隊は5・・・そして自分達ラデルの5部隊が集まった。

山頂にある旗は3つ・・・それを手に戻って来る・・・そこへ行く間に数ヶ所のチェックポイントはあり早もの勝ちのポイント箇所もあった。

賊の場合は倒せる・・・終われば目印を残し先へ進む事になっていた。

部隊が出会えば武器なしで戦い、兵士5名を先に倒した方に得点は入る・・・そこで決着はつくが勝った方が先に動ける。

説明が終われば部隊ごとに順番を決め目的地へ向かう・・・地図にある大まかなチェック場所、それだけを頼りに部隊は向かうのだった。

ラデルの部隊は出発し一つ目のチェックポイントへ向かう事なく道から外れ陣営へ戻る事になっていた。

彼女達が言っていた目印をつけたが本当に大丈夫なのかと戸惑う者は多かった。

戻る途中で考えた・・・今日は来ないはずのグランが来たが誰一人、知る者は居なかった。

トールは数部隊は陣営に残り参加しなかった事は気になった・・・

最初の頃・・・数人だけ自分が知る者はいた・・・何よりラデルを知るグラン兵が隊長を勤める事になったと聞いていた。

その日からは誰一人見ない・・・時々、グランの部隊が参加していたが見知る者は居なかった・・・聞けば別件で交代したのだと聞き信じてしまった。

いつからかグラン部隊が自分達の部隊へ狙いを定めるよう武器も置かずに狙ってきた事に驚いた。

別の日は隙間を狙うように山間部で山賊まで待ち構えていた・・・グランだけではないトール軍まで交ざっていた。

油断した自分達・・・武器を置かない事に後から気付き出遅れた。

だが偶然にもダリの部隊が来て難を逃れたが、既に相手は撤収しグランの部隊もいたのに信じなかった。

時に山賊が軍の部隊と装って現れる事もあり全てに確認してから対峙する事にしていた。

おかしいと探るがデン将軍は別の部隊へ回し訓練に集中しろと指示されたダリだった。

上二人が狙われ大将軍が指揮を執るが、ここまで訓練だけに気をはれと促される違和感は増えていった。

ダリの代わりとドリーが抜擢され動かされる・・・ダリならしない事までだが黙って指示された事だけをしていた。

今は守れとドリーへ指示したと言ったダリに任せ自分達は部下を鍛える事にしていた。

不意に現れたダリだったが、彼女達が現れた事で何かにラデルが巻き込まれたのだと気付いた。

腕が良く自分達より遥かに強い武器を持つ・・・身へ突き刺さるはずの矢が弾かれ驚いた事を思い出す。

激しく痛むようだが笑って相手へかえす・・・重い鎧は可哀想だと自分達へ他の将軍には内緒だと鎧を準備してくれた。

半分もない重さだが刺さる事もなく身を守る・・・動きも軽く驚いた日を思い出した。

新しく鍛冶屋が出来たと出向いて見れば、アヤの父親だった事には驚いた・・・ダリから聞いたが丁寧に挨拶をしてくれた。

その出来と強度に驚いた・・・自分専用と試しは多く、出来上がったモノを手にすれば直ぐに馴染み使いやすくなった。

遥か上にある技術力・・・軍の鍛冶職人が多く驚いたが教えをこう姿もあり驚きは止まらなかった。


ダリから里瑠達と顔見知りになったが最初は訝しげ戸惑いも多かった・・・腕の良さで驚き人の良さで友人にもなった。

滅多に話さない綾音の代わりに数多くを話し続ける里瑠・・・自分を持つ二人が味方という友人になれた。

前より細かく話してくれる二人、巻き込まれた事で来たのだと思えば変にホッとしてしまう。

部下を鍛える時間は伸びるが良い経験にはなる・・・怪我をしないですむ事は彼女達に感謝だ。


暫くして警備の二人が静かに入ってきて驚いた。

『警備隊二名・・・指示され入りました』
すまなそうに、それでも静かに身を潜め入ってきた二人を囲う・・・

『ここで待機しろと言われ』
『残りは?』
『ドリー隊長、すみません』

『いいから残りの警備兵は?』
『数人ずつ指示され入ったかと』
『この暗さで良く見えず・・・』

『前のテントは入り口の火で見えますが、ここから奥は真っ暗です。でも二人は見えるから歩けと』

『背中を掴まれ案内されました』
『背中?』
『はい。服を』
『敵は見えたか?』

『裏の木々の間から矢を放ってますが見えていません。
あの・・・石で応戦してましたが』

『(笑)パチンコとか言うらしい』
『・・・へぇ』
『型を広げれば弓になり矢を放てる』

『そっと矢を放ってました。見回りの時は石で・・・』
『矢は?』
『静かでした・・・それでも石を飛ばせば唸り声もあり』

『あれは威嚇してましたか?』
『(笑)脅しだな・・・』
『ここは大丈夫でしょうか・・・』

『盾だけが頼りだな・・・人数の把握をしたいが、出来ないから姿を見せてこないんだ』
『『『あぁ・・・』』』

そうかと静かに唸る部下に口を引いたドリーだった。

ふいに彼女達の話し声が始まる事で皆で聞き耳を立てた。

『もう面倒だしさ』
『それは後が面倒』
『なら知らないふり』
『それは朝に面倒』

『なら山間で』
『(笑)面倒だしさ?』
『ん・・・(笑)あれトールでしょ』
『恐らく。知ってた人が居たとか?』

『いた(笑)見つけた』
『山間の岩場に誘導出来そう?』
『え・・・人手が(笑)』
『鞭のしっぽで走れば音は響くと思うけど?』

『それ、そっと抜けて山の中で騒げ?』
『(笑)楽しんでよ』
『いいけどさ』
『『(笑)いいんだ』』

『ドリー・・・(笑)不思議、ここから声は必ず聞こえるのよね』
『他のテント内の兵士が偉いだけよ』

『『あー・・・』』
『どーなってる?』
『2部隊が待機してて時々(笑)兵士が居るか確認してる。四隅の火だけ灯したから』

『(笑)これから本番だから。それと』
『聞いてる(笑)ダリが合図したら1隊だけ戻った事になるとか』

『そ(笑)、さっき出して隠したから』
『・・・山、本当に行くのか?』
『迷ってる』
『トール軍?本当にトールだったか?』

『目印なかったし』
『ラデル兵の中の服が違ったから迷わず1部隊消してみた』
『・・・!』

『偶然かは知らないけど中の服は揃えたの?』
『ダリが運ばせ着させられた』

『(笑)襟元が見えて、違ったから遠慮なく・・・おっと』
パスッ!
『どした?』

『確認(笑)。頭いいのが居たかも』
『『んー?』ん?』
『目も良いみたいね。テント内へ放ってない(笑)、居なかったら見つかった時にヤバいし』

『・・・』
『(笑)今回の矢はトール軍で使う矢だった。集められなかったのかもね』
『(笑)毎回変えてる。訓練用の種類は多くしてあるんだ』

『羽の所だよね?』
『(笑)そうだ。どの部隊か分かるように矢を作ってる段階で仕上げて貰えてるようだ』

『(笑)なるほど・・・ん?だからアヤは弓矢を使う回数、少なくしてた?』
『え・・・今、気づいたの?』

『・・・ごめん』
『いいけど・・・単に勿体無いだけだし』
『放った矢を使われても嫌だもんね』

『(笑)木と腕だけだし』
『腕なら取られたじゃん』
『(笑)返してくれたし』
『さっきの?』

『(笑)残りは折ったか取れずだったんじゃない?こっちは殆んど石で返してたから』
『木、倒した』

『(笑)こっちに倒れたら?』
『ヤバいね(笑)』
『私達が駒になる可能性もあるけど?』

『それは面倒だね(笑)・・・あ、移動してる?』
『早く行け(笑)』
『分かった(笑)分かった・・・』

『増えて困るのリルだった(笑)』
『倒していいんだよね?』
『発見されたらね』
『が・・・頑張る』

『鞭だけに』
『アヤは?』
『2つ潰す』
『・・・ここの?』

『家に来たヤツの部隊』
『・・・トールだったの?』
『みたい』
『それ、どいつよ』

『リルは会ってない』
『・・・』
『行け!』
走り出した音は直ぐに消え・・・静かになったが・・・

『アヤ・・・いたか?』
『ん・・・様子見してる』
『・・・まだ、狙われてるか?』

『ん・・・半分以下にはなったけどね』
『どー返してる?』

『どーにも(笑)。今は屋敷内なら全部、偵察は二人残してて逃がすけど捕まりそうな時に服毒する。残り一人は捕まると思った瞬間』

『毒を飲んで死ぬ?』
『ん・・・数回に一回は見逃して探ってたけど減らずよ・・・
あ、1部隊残した・・・か、違うな5~6人ほど待機してる。後を追うから(笑)芝居を楽しんで』

『(笑)頼んだ』
『りょーかい(笑)』
行ったのだろう静かになった様子に口を引いた・・・


『頑張れ。確かに狙われてる可能性もあるが、自分を恐怖で煽るな(笑)協力してくれる強い兵士がいたろ』
『・・・はい』

『(笑)そうなれるように俺はお前らを鍛えてる。腕のいいラデル兵になれると思ってる(笑)だから自分を信じて頑張れ』

『『『はい・・・』』』
静かな静かな声音で返事を返す部下だった・・・



あちこちで松明の明かりが走りだし木々や緑の中を照らしては消えていくようだった。

何処だと探す声音・・・あっちだ こっちだと叫ぶ声も響いた・・・月夜は大木の根元へ届いてもいない。

目的地へも向かっていない者達の様子に苦笑いをした・・・里瑠の動きには 笑った。

知れず足へ絡ませ地面へ倒す・・・不意に引き摺り部隊に恐怖を与えていた・・・見えない何かと戦う怖さを植え付けていた。

丁寧にチェックポイントを通過していた彼女・・・そのポイントの旗はあれど誰も待機していない。

次だと行ってみても同じように無人だった・・・ラデル側で待機している者も居なかった。

面倒だったが、辺りを探りラデル兵は居ないかと確認しながら次へ向かう事にした。

頂上まで行ったが最初から最終目的地でもなかったのか旗さえ無く静かな場所だっただけ。

頂上付近でさえ人影も松明の灯りさえない・・・頂上へ向かう部隊はないと言いたげな状態だった。

ポイントの見張りさえ出さなかったラデル軍に感心し辺りの気配を探りながら眺めた。

少し向こうの急斜面・・・その遥か下に慌てているような揺らいだ灯りが見えた・・・走り込む・・・背から剣を抜き勢い良く振り斬った。

ゆっくりと傾き隣の木へ触れては枝を折っていく・・・葉が擦れ枝は折れ木は割けていった。

激しい音が山間の地を駆け抜けていく・・・ドシン!と響くと地面へ倒れた木は転がり山肌を滑り出したのだった。

地鳴りのように夜の山々を響かせてくる音に気付き里瑠は辺りを観察しながら走り抜けた。

岩が剥き出しの斜面は多く、上の方から転がってきた木は地を削り岩で枝を落としては飛び跳ね落ちていった。

逃げ惑う声は数多く、これは綾音の仕業かと見上げる・・・少し時間を置いた次の木までが踊るように転がってくる。

上には誰も居ないのだろう余裕で転がす綾音に可笑しくなった・・・途中、脱ぎ捨てただろう草木で隠されたモノに目を止めた。

石畳のような小石で敷き詰められた場所との境・・・低木の影にソレはあり里瑠は楽し気に少し拓けた場所へ移動すべく持ち出した。

火事にならないような地面を探した・・・そこへ放り投げオイルをまいて火を放つ・・・それから里瑠は身を消した・・・


何処からともなく響かせる・・・僅かに風に乗り聞こえてくる音は増える・・・互いに見合う部下達を落ち着かせた。

暫くして数多くの足音がし出した事で始まったのだと思えば部下達はホッとしたのか地面へ腰をおろした。

疲れたと通り過ぎる・・・居ないはずの将軍のテント前で整列をし挨拶をする。

いつも通りに・・・早く戻ったのは怪我人が出たのだという理由で謝る手筈だった。

休めと言う声は低く響く・・・テントへ戻るのだろう足音は近くなった。

灯りが通常通りに灯され始め、テントの入り口が開かれていく・・・灯れば出ていいのだと声をかけられていた。

武器を片す者・・・指示され誰かへ伝えにいく者・・・疲れたと休む準備を始める者それぞれだった。

食事の準備だと叫ばれる、それぞれに配置された場所へ当番は自分だったと走り出した。

その兵士は、もともと その当番の者達でテントから出て来たように見せていた。

予定より早めに戻ったのだと叫ぶ隊長の声が陣営に響く・・・真っ暗な場所は少しずつ篝火に火が戻された。

辺りへ目配せるなと言い聞かせ部下達を促す・・・安心したように動けない者は落ち着くまで自由にさせた。

苦笑いのダリ・・・ドリーへ確認させながらテント前でチェックしていくよう覗いては次だと歩き始めた。

部下達を自由にさせる・・・その間にダリは仲間とドリーがいたテントへ入った。

『(笑)助かったな・・・』
『トール軍だった・・・』
『な・・・大将軍が残念がってたよ』

『・・・テントは離れてたのに、どーやって知った?』
『(笑)アヤが持ってきた機械から二人だけだったが、話し声が聞こえてた』

『機械?』
『受信機とかいう小さなモノだ。行く前は(笑)アヤ達の声もお前の声もしっかり聞こえてたぞ(笑)』

『・・・(笑)ヤバい』
『大丈夫だ(笑)、山へアヤが入る時に説明していってくれた』
『どーなった?』

『(笑)トールの部隊を追い込んで怪我人を出させたようだが・・・』
『上手く行ったのか?』
『(笑)大木を転がしてた』
『・・・』

『(笑)リルが追い込みながら松明を奪って、それでも纏めて追い込んで(笑)アヤが次々と・・・』
『(笑)伐りまくったわけだ・・・』

『顔見知りは?』
『そこは大将軍へ謝ってたが・・・本当に討てたかは分からない』
『(笑)討たずに潰れたわ』

『『・・・』』
『(笑)助かった』
『転がす前から、偵察隊は戻ってきたから面倒だった』

『それは私が驚いたんだからね』
『大丈夫だったじゃん』
『纏めて追い込んでたのに後ろに現れるって・・・』

『(笑)トール兵のふりして振り回してたじゃん』
『だから追い越してったし(笑)』
『無事で良かった(笑)』

『ね(笑)、急にバキッ(笑)って連発してくから逃げて眺めてたよ。
あ、そうそうトール兵の鎧とか軍服?鎧っていう?それ見つけたから燃やしてきた(笑)』

『『『・・・』』』
『あのね、人様のを着て暴れるってないでしょ?訓練とかいっといてさぁ・・・』
『数多く?』

『あったあった(笑)。ついでにいうとオイル持ってきたから(笑)使っちゃった!』
『『・・・』』
『何に使うつもりだった?』

『こんな時・・・
ほらラデル兵がトールに情報持ってく話を聞いてたから、その理由はって考えてた・・・。

顔が知られてない場合、どーやって近付く?って思ったから・・・なら変装かな?(笑)って』

『だから(笑)燃やそって?』
『そ(笑)次の手間を増やしてみた。時間も必要だろうしね(笑)』
『トールを探ろうと思う』
『ダリが?』

『休んでる場合じゃないし』
『まーな』
『治してから・・・』

確かにと呟いたが反対した声は弟のデリーだった・・・だから驚き見返したが、そういえばと思い出し彼女達を探した。

テント端にあるベッド・・・そこで二人は眠っていた・・・自分達以上にデリーが驚いていた姿に二人で苦笑いをした。



昼前からトールの陣営が騒がしくなりバーン大将軍とガル将軍、そしてダリが向かった。

医者が足りないと言われたが、数人しか居ないラデル軍の軍医を必要以上に使われても困ると悩む大将軍。

トールの部隊長の一人が将軍に願い出て次々と部下へ指示を出し怪我人はトールへ運べと叫んでいた。

聞けば大木が崖上から転がって来たのだと聞き大将軍は驚きながら声にしていた。

『山間の奥は尚更、数多くの山賊が増えていた、これは対策に纏めていたモノを使われたようだな・・・ダリ』
『はい』

『後で確認し対策の練り直しをしなさい』
『はい』
『こういう場合もあると、それぞれに伝えよ』

『了解、数ヶ所にも罠をしかけ覚えさせます』
『それがいい・・・』

『・・・申し訳ないが、訓練は終了させて頂いても?』
『構わない』
『そちらも医者は増やした方が宜しいぞ?』

『(笑)そうしましょう・・・腕利きの軍医は必要ですから』
『撤収する事にした』
『(笑)勉強になりました』
『・・・こちらもです』

『そうだ(笑)、谷間辺りで賊に出会しましたかね・・・ならば気を付けてお戻り下さい。
麓に見張りを立て、これから見送』

『見送りは結構・・・腕を磨き切磋琢磨いたしましょう』

言葉を切り、静かに話す人へ丁寧に会釈する・・・暫くしてトール軍がラデルから出て行ったのだった。



撤収する事を伝え準備をさせたダリは報告だと大将軍の元へ走る・・・

『大将軍・・・』
『山間は確認したのか?』
『しました。岩場の斜面側で起こったようです』

『・・・(笑)切れ味は健在か』
『そのようです。訓練に使えそうでした・・・』
『ん?邪魔な』

『はい。倒せず残してあった大木が全て・・・
これは適当にではなく選んだのでしょうか・・・』

『・・・(笑)知るわけなかろ。それより』
『・・・トールを探ると・・・挨拶は次の機会にと謝っておりました』

『・・・(笑)・・・時間が出来たら向こうの』
『はい。私が出向いてもいいですか?』

『(笑)頼む。事が大きくならず助かったが・・・捕えた者達は本当に我が軍の者だったか確認させて貰え』
『もし・・・』

『・・・手紙を託す』
『了解』
『(笑)将軍にならんか?』

『・・・すみません。補佐が自分には合っているので・・・止めて頂けると・・・』
『(笑)本音は』

『(笑)部隊長に戻して頂けたら』
『・・・』
『そこが一番の場所ではあります。なにより軍師がいれば(笑)兵が生きれますから』

『・・・分かった(笑)考えよう』
『(笑)感謝します』
『・・・(笑)戻さんよ』

『・・・』
『皆を鍛え仕上げなさい』
『・・・』

いまだ驚いた顔で見返すダリの姿にバーン大将軍とガル将軍が苦笑いをしたのだった。