休みになった事で家へ戻って来たレイル・・・綾音を探せば庭だったが子供との時間を楽しむように寝ていた。
子供は少しずつ言葉を覚え始めより楽しくなった・・・目覚めたのか子供が起きた。
綾音へキスを落とし見つめていたが、乗っている事に気付いたのか ゆっくりと下りた事に驚いた。
今度は頭を凭れさせ・・・綾音を見つめ撫でていた・・・気付いた綾音が優しく髪を撫でれば嬉しさに笑う姿があった。
『(笑)と!』
自分に気付いた子の叫びに笑み返した・・・綾音の唇が笑む・・・お帰りと言いたげに手があがった。
子まで同じように手を上げた・・・二人の元へ行き彼女の隣へ寝そべり抱き寄せた。
自分達へ乗り上げようとした子に笑う・・・間へ入りたいのだろうが優しく戻し彼女の背側へ寝かせたのはレイル。
腕枕して綾音を抱き寄せ、反対の手は子の背まで伸ばし抱いていると見せかける。
嬉しそうな笑みに苦笑いだ・・・寝ろと言いたげに彼女の背を撫でる姿は可笑しくて可愛い。
分かるのか自分に笑みながら背にある小さな手を感じているようだった。
見つめれば優しい笑みが近寄り口付けたのは綾音から・・・嬉しくて絡み付く自分がいた。
くしゅん!と子供がした声に二人で飛び起きる・・・慌て苦笑いをしながらも抱き上げ部屋へ戻るのだった。
時間が出来た事で家へ戻ってみれば綾音の姿がなく何処へと探す。
『(笑)お帰りなさいませ』
『レアは?姿が見えないが・・・』
『(笑)工房にいかれましたよ?』
『レアを連れて?(笑)というか』
『(笑)レイル様が探したいのはアヤネ様でしょう?』
違うかと笑うリョウに苦笑いをした。
『(笑)坊っちゃまは、リカ様が一緒に遊んで下さってますから安心されて』
『行ってくる(笑)』
大丈夫だと言いたかったリョウの言葉を最後まで聞かず行ったレイルに笑いながら見送った。
宴にもあった子供用の遊び場は、今は自宅用の庭へ置いてあった・・・そこで遊ぶ我が子に笑む。
綾音は何処だと工房の中へ入った・・・その特殊な作り・・・専用の机で作業中の直己が自分に気付き、綾音は向こうだと指差した。
親子で交互に叩く・・・汗だくの二人にも驚いた・・・炉へ戻し暫くして出せば直ぐに叩いていた。
刀のようだが通常より平たいモノに驚いた・・・均等にしたいのだろう眺めては場所を変えて伸している気がした。
今度は綾音一人で始める・・・自分に気付いた刀堂が笑みを浮かべた。
初めて見た綾音の姿を見惚れるように見ていた・・・暫くして手が空いたのか直己が来て一緒に眺めた。
『(笑)初めて見ますか?』
『アヤネが(笑)してるのは』
『・・・(笑)鍛冶職人になりたかったとか?』
『そうだ(笑)、作り手として生きたかった(笑)・・・
軍に入る前まで(笑)鍛冶屋に通って教えて貰ったりしてたんだ・・・』
『(笑)そこまで似てたんすね』
『・・・ん?』
『(笑)前に、どんな人か聞いた事があって・・・』
『なんて?』
『(笑)目の前の事は手にして試すし、先の事も諦めない人・・・だったかな(笑)』
『・・・』
『(笑)姉さんも試すか考えたら目の前に転がったし(笑)、取りあえず始めてくから・・・』
『受け止める事で・・・』
『(笑)それが辛くても頑張る姉は強いでしょ・・・いつかは(笑)って、先を夢みる楽しさも知ってるから』
『・・・(笑)』
『(笑)姉は一途ですよ?』
『同じだ(笑)』
『待っててくれて、ありがとうございます(笑)レイル兄さん』
『礼をいうのは俺だ・・・(笑)中まで守ってくれたんだから』
『(笑)家族だし』
笑みを浮かべた直己の言葉に照れたレイルだった・・・
今度は何かへ溶かしたモノを流し入れた・・・暫くして取り出したモノが大きな器具で挟まれ押し潰された。
場所を変えながら潰す作業に不思議だと眺めた・・・
暇を持て余しレアと過ごす・・・直己が作り出す品を眺めながら子を遊ばせた。
暫くして身綺麗にしたのか髪を拭きながら戻って来た綾音がレアに笑みキスを落とした・・・
『(笑)頼む』
『・・・(笑)』
不意に目があい呟いてみる・・・微笑んだ綾音を引き寄せれば自分へもキスをした。
『レアちゃん(笑)。二人は仲良しねー』
『んー(笑)ま!』
『『・・・』』
意味は分からないが騒ぐレアを眺めれば・・・唇を突きだし笑みを浮かべていた。
『(笑)キス・・・して?』
それはとレアに言ったリカに、そうかと綾音は笑みチュッとキスをした・・・してくれた嬉しさか 笑い始めたレアの姿を眺める綾音だった。
帰り道でレアを抱いていた綾音の頬に触れた我が子・・・笑みながら両手を引けば彼女にキスをした。
キス魔だったと苦笑いしかない綾音が子へ優しく笑み返した・・・嬉しくて楽しいのかレアのキスは止まらない様子に可笑しくなった。
レイルがレアを抱き上げる・・・高くなった事に驚いたが楽しくなったのか手足をバタつかせ嬉しそうだった。
腕に抱きレイルが歩き始める・・・急かすように隣を歩かせたが不意に抱き寄せられ腰へ腕を回し屋敷へ戻った。
子が眠りにつけば静かになり、ベッドへ入ればレイルが自分を抱き寄せた・・・
『(笑)羨ましかった・・・』
『・・・』
想像もついたが黙って目を閉じれば、笑いながら顎を引かれ何だと見返した。
『(笑)どうどうと出来る子供が羨ましいと思った・・・』
『・・・』
『(笑)そう思った途端に』
『道でしたら』
『な(笑)・・・噂話が始まるって思い直した(笑)事が可笑しくてな・・・』
『あー・・・(笑)気付いて良かった』
『(笑)・・・』
『まだ(笑)将軍だしね』
『そろそろ終わる(笑)』
『(笑)次は何するの?』
『それが・・・』
『(笑)管理とかなら助かる?んー例えば・・・あー何て言う?観察?監視?見回る・・・纏めた職業は』
『・・・オールなら?』
『(笑)職種によって呼び名は変わると思う。職人なら師匠(笑)とか、管理職って言う事もあるし・・・』
『(笑)補佐として残り、軍内は時々でいいから鍛えしあげてくれ・・・あとは東側を管理せよ・・・と言われたんだが・・・』
『(笑)拒否したかったわけだ・・・』
『駄目だった・・・』
『(笑)取りあえず東側の店の管理か・・・マネージャーだね(笑)』
『マ・・・』
『(笑)マネージャー。各店の状態を見回ったり、決まりは守ってるか観察したり(笑)人を守ったり捕まえたり?』
『そうだ・・・』
『(笑)休みは鍛冶屋で働いてみたら?』
『・・・そんな時間は』
『(笑)作るのよ。管理出来そうな人を見つけたら自分の代わりを勤めて貰えるでしょ?』
『そう簡単には』
『ね(笑)。だから気分転換したい時だけ(笑)してみたらって話・・・』
『一緒にしてくれるか?』
『(笑)おっけ』
微笑んだ綾音に口付ける・・・絡ませれば彼女の唇が笑みを浮かべた・・・
グラン周辺や海側の国々が落ち着きだしたが、山々に広がる国はいまだ陣取りしたいのか挑まれ始めた。
グランと手を結べば時に出向き加勢する・・・トールやラデルが加勢する事もある。
グランは他国より寛大で和平案を出して間へ入る・・・荒れた国は深く調べてから叩く。
豊かな国になれば暮らす人達も穏やかになり荒れていた場所も静かになっていった。
ある日・・・
慌て走りながら来たリョウに驚いた・・・大きな荷物を手に息を切らしていて何だと眺めた。
前から作っていたモノの仕上げと工房にいた綾音・・・リョウと、荷を背負ってきたトナの二人だった。
慌てているからか、上手く話せない二人・・・取りあえずと落ち着かせソファーへ座らせた。
それでも、リョウが荷を開く・・・グランの服から装身具まであり驚きながら眺め考えた。
『こっ、これを着て・・・きっ』
『支度を手伝いますから屋敷へ戻って下さいませ・・・』
『・・・急用?絶対?』
『恐らく・・・リョウさんが、もしもと じゅっ準備して来たのです』
そうだと頷くリョウの姿を眺め考える・・・身形を整え屋敷へと言った事で誰かを出迎えるのかと思えた。
『レイル様は留守ですが、戻るまで時間が必要かと・・・』
『屋敷には誰が?』
『ダイル様がレイル様と。屋敷はライル様が・・・ダイル様から聞いたライル様から言われ参ったのです』
『・・・誰かが来るの?』
『恐らく・・・』
『私が必要?』
『なのかも知れません・・・』
『・・・(笑)グランの作法、知らないわよ?』
『それは前にレイル様がオールから来ていると話されたと聞いてます。
今の総統になられた方へですが、取りあえず着替え向かいましょう』
『分かった(笑)。リョウさん着せてくれる?』
『(笑)早くにお教えすれば良かったですかね・・・気にもなりませんでした』
『(笑)準備させてごめんなさい』
『いいんですよ(笑)、そのままのアヤネ様で・・・』
服を手に奥の部屋へ向かい、出向く準備をしていく・・・その間に出迎える時の事や、招いた時の作法等を簡単に話ながら着替えた。
敷地を出てみれば馬に乗って来ていたことに驚いた・・・乗れるかと不安そうな使用人のトナに頷く綾音だった。
朝から呼び出されレイルは総統へ会いに行った・・・笑いながら自分の方へ来いと手招く姿に身構え会釈してから部屋へ入った。
ズラリと並ぶ人達・・・客なのだと笑いながら自分へ紹介していく総統に従い挨拶をした。
変な汗が出てくる・・・ここへ来るまでの庭で寛ぐ人達は多かったが、通り過ぎる間も観察されているような視線は気になっていた。
自分と同じように呼び出されていた者が次々と来る・・・久しぶりだと挨拶もし皆で向かった。
菓子やお茶を出され待つ・・・品定めされているような気までしてくる事に苦笑いだ。
何事だろうと密かに話ながら客だという人達の観察もした。
『(笑)時間を作って貰ったが、すまないな・・・』
『・・・』
『(笑)グランに慶事を持ってきたようでね・・・一つ一つがな(笑)』
『濁さずどうぞ(笑)』
自分と似た歳で政務官になった友人のランカが待ちきれず面倒だと声にした。
その隣に、これまた友人でもあるサイナも頷く・・・後の数人は挨拶程度の付き合いだった。
慶事と聞いて互いに見あう・・・友人が苦笑いをした・・・同じく何かを知ったレイルもいた。
『皆様に申し訳なく(笑)、忙しい身だから同時にと来て頂いたのだよ』
『『『・・・はい』』』
またハッキリ言わない・・・楽し気に、からかう余裕も持つ総統・・・この話し方は昔からで自分達にも面倒な人だった。
それを知る事も自分達は知っていたから、今回もまた楽し気に自分達を見て話していた。
一人が待ちきれず直接話し出した客に総統が静かに笑い始めた。
『・・・(笑)レイル様』
『はい』
『(笑)貴方へ縁談を運んだが、受けて貰えないか?』
『総統から聞いておりませんか?私には』
『会った事はないそうだが(笑)、それは断る口実で』
『(笑)妻はおります』
『断ると・・・』
『(笑)口実と総統へ嘘は申しません』
『ランカ様達の歳なら』
『我等も『妻はおります』』
『・・・』
『国内が落ち着かず悩んでおりましたが、両親を安心させたく妻を迎え今に至ります』
『(笑)同じく。身を安定させたく身内だけで婚礼をあげました・・・
その後は報告より国内の安定にと努めて参りましたので・・・』
『・・・』
『知らせず失礼致しました』
『遅くなりました(笑)』
『(笑)報告はするべきだったろう』
『申し訳ありません(笑)、レイルが秘密にする理由を知り・・・
(笑)自分もまた共に生きる為に必要だと思い・・・娶りました』
『(笑)・・・他の者は?いたか?』
『『・・・』』
押し黙る・・・それは当然だろうとさえ思っている総統の顔に気付いた事で視線も外し黙ったのだと気付いた。
『・・・なぜ秘密に?』
『将軍という立場上、狙われていたからだよ』
『挑まれていたからです。屋敷へまで奇襲をかけられているので』
『・・・なら余計に』
『(笑)レイルのところは強いと聞いてましたな・・・』
そういえばと楽し気に呟く総統だった。
『・・・』
『(笑)使用人さえ守れる腕はあります。外へ出た途端に将軍の妻だと狙われるのは面倒なので・・・黙ったまでです』
友人が擁護してくれる・・・笑みながら聞いた話だと呟く総統には苦笑いしかない。
『私が皆さんの変わりに(笑)確認してきましょうかね・・・
本当に居たなら(笑)顔合わせも必要はないので・・・事実なら、諦めて頂けますかな?』
『『『・・・』』』
それぞれに驚いた顔は連なり後ろで聞いていた客はムッとしているような顔だった。
『トール将軍の妹様に、どうかと聞かれ参ったのですよ?』
『(笑)その将軍は知っているはずですが・・・』
『ラデルのダリ様が事実かは知らないと聞き私は参ったのです・・・』
『・・・(笑)そのダリ様は妻を知っているはずですが・・・』
『はい?』
『(笑)ダリ様を助けたと妻から聞いておりました・・・昔の話ですが(笑)』
終われと願いながら、総統にも悪いとは思ったが話してしまえとレイルは声にした。
次はないと目配せる・・・楽し気に面倒を強いる様子で見返し声にもした。
自分の友人さえ強気で出てくるが多く話さない事には苦笑いだ・・・他の者達も政の繋がりになれば面倒だと呟いてもいた。
『・・・総統・・・』
『(笑)皆様を見送ったら招いてくれ』
『・・・』
『(笑)その生きた妻と会わせなさい』
『屋敷へ?これから ですか?』
『私が知らねば(笑)この先、皆様に説明も出来ないだろう』
『事実と濁しているから安全なのですよ?』
『まだ・・・刺客は来ているのか?』
『今は何処からかは面倒で調べておません・・・討ち捨てるのみ』
『・・・』
『次の者への準備は整い、既にサリ将軍へ任せておりますが、日は浅いので残念ながら知らしめられず今に至ります』
『そうだったか・・・』
『話を割って失礼するが、ここでお会いし確認を』
『こちらも失礼致しますが、お断りします。ここへ参れば余計に妻が知れ渡るでしょう・・・
これから先も狙われながら暮らせと?』
『・・・』
『子から母親を取り上げるのですか?』
『・・・』
ムッとした声音が響くが静かに項垂れたレイルに総統だけが苦笑いをした。
『皆様・・・申し訳ないが妻子がいる事は声にも出さずに頼みます。
漏れたが最後・・・二人で噂を消しに向かうやも知れないのでね(笑)』
不意に総統が話し出す・・・その声は、いつもの楽し気な声音でもなかった。
挑むような・・・捉え方によっては脅されているような雰囲気さえあった気がした。
誰もが黙る・・・宥めるように立った部下へ出ろと促したのは総統だった。
深く溜め息をしたレイルに苦笑いをする友人達・・・
『(笑)いくつだ?』
『一歳を過ぎた(笑)』
『(笑)可愛いよな。家は二歳の女の子だ』
『家は(笑)春に産まれる』
『(笑)おめでとう』
それぞれに呟き、独り身の者は聞き入った・・・
『聞いていいか?』
『ん』
『まだ来てるか?ライル達にも?』
『半分になった』
『(笑)余裕で倒せるのか?』
『本当に強いんだ(笑)、ライルとダイルが時々(笑)習ってる』
『『・・・』』
『あの・・・ダリ・・・ラデルのダリとは友人で(笑)、あの話を聞いた事があって・・・』
『(笑)助けられたと聞いて?』
『恥ずかしそうに(笑)。ま、酔ったから話したんでしょうが・・・』
その話はと呟き思い出す姿に皆で笑うのだった。
屋敷へ着いた・・・が、綾音へ伝える事を忘れていた事にレイルは気付いた・・・呼び出された事でダイルと来ていた。
何故なら呼ばれた理由で次の行動を考え動かしたかったから・・・密かに聞かせダイルを出そうと連れてきたのだ。
この理由を知り戻ってくれた事を願うしかないと思いながら屋敷へ入った。
蹄の音がする・・・これは家へかと思い外へ出てみた・・・その間に自分が帰った事を知ったライルが出てきた。
『(笑)ヤバいよね今回は』
『総統がな・・・会いに来るかもしれない・・・』
『集団見合い(笑)らしいじゃん。総統へ誰も知らせてなかったのか?』
『(笑)俺の真似して黙ってたらしい』
苦笑いしながら呟く兄に笑み返した。
馬の背にいたのは綾音だった・・・その彼女の姿を見惚れるように驚き眺めているレイルに皆で笑う。
下ろせと笑む綾音が両手を伸ばしていた・・・抱き止めたレイルに苦笑いの綾音だった。
中へ早くと兄へ促すが、綾音を抱いたまま見つめていて笑えた・・・二人を押し込む・・・地へ下ろさない様子に呆れてしまった。
下ろせ下ろさないと話し合う二人に使用人達が笑いながら持ち場へ戻っていく。
そこへ・・・護衛を数人だけ連れてきた人が後ろに居た事に綾音が気付いた・・・
『来てたっぽい』
そっと耳打ちした綾音に苦笑いをし小声で謝るレイル・・・そっと地へ下ろし振り向くと出迎え頭をさげた。
綾音もまた視線をさげ会釈する・・・張り付く視線だと地面だけを見つめる綾音だった。
言葉もない・・・ジッと観察するだけだったが、必要以上に門戸を明るくしていなかったからかと見返した。
『信じて頂けましたか?』
『悪かった・・・』
いつにない真剣そうな声音に本当に納得してくれたのだと思えばホッとした。
身形の綺麗さに感心した・・・それでも武術もするからか、普通の雰囲気とは違った。
暗さでハッキリとは見えないが、これは対策の一つなのだろうと思えレイル達を眺めた。
おしとやか・・・にも見えるが、気配を探るような雰囲気があり武術は本当に出来るのだと思えた。
そっと隣へ控えたレイル・・・少し下がり自分に見えない場所まで綾音が身を引いた事に驚いた。
スッと繋いだ手を眺める・・・レイルを助ける者なのだと気付く・・・互いを思う、そう見えた。
これで良かったのだと思えた自分もいた・・・
『(笑)次はないと約束する』
『感謝します』
礼をしたレイル・・・中へと手招き見返せば、控えていた部下の元へ戻っていく姿に驚いた。
その途中で、パスッと地面へ矢が突き刺さった・・・総統を守る者達は素早く囲み門扉の影へ促した。
反対の扉を素早く閉じたのはレイル・・・そこに準備はしていたのだろう剣や弓があった事に驚いた。
特殊な形状の弓・・・それを手にしたのはレイルの妻だった・・・慌てる事なく矢を放つ。
一気にも来ない・・・様子を探りながら眺めていたが、的を絞ったのか続け様に数本もの矢を放った。
捕まえるべく走り出したのはダイル達だった・・・その連携した動きに感心した。
『ライル!』
『裏手だ!』
暗さで分からないが二人の声だけがする・・・その間に綾音は振り返り総統へ呟いた。
『お怪我は?』
『・・・』
『皆さんも?』
『・・・(笑)大丈夫だ』
『警護しますので戻りましょう』
『(笑)次々とは来ないだろ・・・呼び込んだ事は詫びよう・・・』
『・・・』
そう言われ驚いたが、そっと視線を下げた綾音・・・扉の前で気配を探るように佇むレイルの隣へ戻り一緒に眺める。
『・・・数人だろうが、これ』
『半分は素人っぽい・・・最初に逃げた人は刺客じゃないな・・・訓練?』
『試しか?・・・』
『え・・・射っちゃったけど』
『挑んだ向こうが悪い(笑)』
二人が戻って来たが、その後ろを歩いていた数人が手や足を押さえながらきた姿に想像した事は正解だったと口を引いた二人がいた。
『あ・・・解毒・・・』
『『あ!』』
綾音の呟きに驚き唸ったのは後ろにいた人達だった・・・そして二人は気付いた。
『総統・・・悪ふざけ過ぎます・・・弓だから これですみました・・・』
『・・・違ったらどう・・・』
『確実に死んでます』
『・・・その覚悟は持ってきたはずだ、なにせ将軍家に挑んだのだからな(笑)』
『『・・・』』
レイルとライルが驚き眺めていた・・・解毒剤はダイルが渡し飲ませている・・・綾音は呆れ眺めた。
『・・・失礼だとは思いますが、腕が見たいと仰るなら知らせを下されば ココでお待ちします。
総統を守る者が怪我をすれば本当に刺客が来た時に守れなくなるのでは?』
『・・・すまなかった』
『お気をつけて お帰り下さい』
『(笑)大丈夫だ、向こうで待機はしていたのだ・・・』
『無礼しました』
話し出した綾音に驚きレイルが彼女の手に触れ止めようとしたが、その言葉で確かにと思え繋いだ手は外さず黙って見守った。
自分の様子を観察しながら話している気もした・・・夜だけに、この暗さにレイルはホッとし 先に気付けた事に安堵した。
一気に放った事で、ライルとダイルは残る者は居ないか確認する為に向かった・・・生きていれば何処に所属している者かは知れるから。
行けば痛みを堪え仲間同士で支え歩いてくる者を見つけたが・・・近寄れば その姿で味方の兵士達と気付き声も出なかった。
普通なら矢を放った後は、数人なら次々と狙いを定めるように襲ってくる。
なにより一気に攻め込んでくる・・・脅しと見せかけた矢だけで次は無かった。
何より地面へ刺さった事で違和感を持ちながら捕まえに来た・・・滅多に外さない綾音の腕を知る。
違和感を抱いたから動きだけを止める為に放ったのだとダイルと話しながら戻った。
案の定、楽し気に笑う総統の姿が見え声も出なかった・・・綾音の腕を見に来たのだと直ぐに思えた。
兄達のやり取り・・・門前の灯り、何より使用人達は最初から居なかった。
予測した兄達が凄いと眺める二人だった。