売っていいかと相談され構わないと返事をすれば直ぐにマウレアから飛び出したようだった。
その数日後・・・アイリはテレビで見た・・・どこで着るのかと思ってはいたが手から出せば気にする事もない。
だからコナツから売れたと聞いて驚いた・・・本当に自分が仕上げたドレスだったのだと。
アイリは似たドレスだと思っただけだった・・・新たに依頼されたウェディングドレスを考える事に集中した。
会議だと呼び出された日に客からの依頼書を見せられた・・・アイリは会議だけと思った事でクロウとサン、ウィンの3頭を連れてきていた。
庭で遊ぶ事も好きだしクロウ達はアイリの作業場と理解もしている・・・だからアイリから離れ3頭で遊んでいた。
この場は、そういう場所と分かる3頭も楽し気だ・・・ここは普段ない物で遊べ、食べられる特別な場所とも理解してる気がした。
だから嬉しくて3頭だけの時間を満喫するよう遊んでいる気もした・・・そう思ったのはコナツが最初だった。
その事をトウマから聞いて知った・・・様子を見れば確かにと笑うアイリもいた・・・おやつも旨いのだろう催促もする。
不満は狭さくらいだ・・・もって2日と分かる・・・だから3日目でトウマが迎えにくる。
暇ではなく、本来の仕事をさぼる為に・・・それは先に気付いたコナツもいたが、会長の祖父も許可する。
だから誰にも止められず、親兄弟が心配するが従兄弟達や親族からは喜ばれ揉める事も消えるとトウマは知っていた。
敵が減れば喜ぶ・・・足まで引く親族や社員を邪魔をする者は多数いた・・・上司という親から指示される事もある。
その面倒さは分かるトウマの小さな呟きで助かる人は多かった・・・トウマ自身も必要以上の仕事を拒否すれば揉め事はぐんと減った。
激しいタメ息は会長と親族関係はない理事や上役、そして直接の上司だけ・・・この理事達は会長側で親族関係にも靡かない。
仕事も出来る人達でクビにも出来ない・・・どうにか味方につけたい者は多かった。
暫くすれば 味方につける事を諦めた事は会長がホッとした・・・それはトウマとアイリの出来が知れ渡っていたからだ。
仕事の出来る2人・・・何かと社へトウマを戻して欲しいと、アイリを入社させて欲しいと呟くようになり慌てた者は多かったのだ。
少しずつ静かになり黙れば社へ戻す事もなく一斉に押し黙ったようで、これは面白いと会長が呟きだした。
何かと無駄な足も引かなくなり、黙れば静かになった・・・すると、その人たちの声も止まったと肩を撫で下ろす者も多かった。
密かに立て直し社を回す・・・部下を使い、事によってトウマやアイリが手を出した・・・社員へ丸投げしていく2人に呆れる会長もいた。
分野が違い理事や上役達が会長へ声にする・・・アイリの両親の面影を持つ腕が勿体ないと。
それでもアイリの立場も理解し始めれば助っ人と必要な時だけにし今に至った。
その彼女がマウレアに入った事を知り諦めた者は多かった・・・その腕もあったのだと。
それは自分の娘のような思いにもなり会えば懐かしく・・・嬉しくて応援もした。
自分の孫のドレスを頼んだ人もいる・・・知人から聞かれ紹介した者もいた。
久しぶりの会食はアイリの話が出た事で会長も笑みを溢し聞き入った。
2着のドレスをトルソーに着せ見比べているアイリに苦笑いだ・・・出来たなら相談すればいいのに、いつものように考える姿があった。
皆でアイリの作業場へ入り一緒に眺める・・・タイプの違うドレスに新婦の要望は入っていた。
『(笑)アイリは本当に凄い』
『・・・』
『(笑)確かにね・・・新婦様が悩みそうよね』
『だよね・・・(笑)』
『こーきたかって(笑)』
笑いながら呟く皆に苦笑いだ・・・
『これだけ数多くの生地があるとシルエット対決(笑)しないと』
『そこで(笑)決める?』
『試着してからよね・・・』
『・・・ねぇ。これ2番の新婦様に合いそうよね・・・』
『無理じゃない?袖があるもの』
『あー・・・』
『外して使えば?』
『・・・アイリ(笑)、使うなら1番の新婦様には見せられないわよ?』
『『『・・・(笑)確かに』』』
皆の揃った声にアイリがそうかと苦笑いしてドレスを眺めたが・・・近寄り皆へ呟きながら外した。
『(笑)これ、くっついてないのよ?』
薄地だからか、切り替えているドレスだと思い込んで見ていたからかアイリの言葉に驚きながら眺めた。
そっと外していくアイリの手を眺める・・・そういうデザインだと皆は思っていた・・・脱がせば袖がなく驚く顔は増えていった。
『どっちにするか迷って(笑)季節で使えるかなって・・・思ったから』
『あー・・・1番の新婦様の好みが2つになった気がする・・・』
『えー・・・なら駄目じゃない・・・』
『順番待ちだし(笑)』
『(笑)残った方にコレを加える予定はしてたのよ?』
作業台にある箱を皆へ見せるアイリが苦笑いをした・・・それは柔らかな生地で幅のあるモノ。
そして真珠をあしらったモノ・・・真珠で出来た飾りだけのモノ、3タイプの付属品としての飾りが入っていた。
参考にとドレスへ巻き付け自分達へ見せてくれた・・・
『ドレスへ止める?』
『はい(笑)。雰囲気はかわるでしょ?3番の新婦様の好みが入れられそうだし(笑)、使わなければ違うドレスにとは考えてたから』
『・・・おっけ(笑)。まずは準備して見せよう・・・』
『・・・一着ずつにしよ(笑)、悩んだら外した状態で見せる(笑)・・・それを少しずつ・・・』
『ん(笑)。自分だけのドレスって・・・申し訳ないけど(笑)こっちは勿体ないし』
『そうよね(笑)、ウェディングドレスだしね』
『ね(笑)。特別は必要な言葉だし!』
賛成だと笑みを浮かべながら眺める皆に笑みを浮かべたアイリだった。
食事に誘いに来たアサヒ・・・それぞれに繋がりエリン達は店を出て行った・・・コナツの迎えはトウマ・・・楽し気に帰った姿に苦笑いをした。
戸締まりとチェックをしたアイリ・・・その硝子扉の向こうに紙袋を自分へ見せながら笑う誰かに驚いた。
両手に持ち笑みながら近付く人はハルトだった・・・
『(笑)一緒に食べないか?』
『・・・(笑)』
ドアを開けろと促す姿に可笑しくて笑うアイリもいた・・・タッタッタッと微かな足音がする。
誰だと知ったアイリが振り向けば、それはサンのはずと思った・・・思った途端に現れたサン。
自分を確認するように見たが直ぐにハルトを見れば入って来るのを待つ姿に口を引く。
そして爺が言った言葉を思い出しながらハルトを招き入れた。
『(笑)サンは食い意地をはったのか?好物だったのか?』
笑いながら呟きサンの頭を撫でたハルトに驚いた・・・まずはとサン達にとアイリは先に食べさせる事にした。
何を持ってきたのかと驚いたアイリもいた・・・ウィンもきて袋の臭いを嗅ぎ始める。
どこで食べようかと聞かれ、この奥の部屋へ案内した・・・そこはいつも自分が泊まる部屋。
飲食も気兼ねなく出来る・・・端にソファーとテーブルはある事で、そこへと促した。
サン達用に準備を してくれたハルトに礼をする・・・人用だと呟きハルトを見ていた事でサンへ説明しながら出していた姿に笑うアイリもいた。
クロウだけは近寄らない・・・ハルトがクロウにもと促した事で、アイリは袋から出しクロウ専用の場所へ置いた。
ウィンはサンの隣で待っていた事に苦笑いだ・・・どうぞと促されサンが食べていいのかと自分を見た。
よしと声をかければハルトを見やり、頷いた事で口にした事に驚いた・・・ウィンは自分しか見ていなかった。
声をかけウィンも食べ始める・・・クロウに説明し食べていいと言えば、ようやく口にした事に苦笑いをした。
それぞれの様子に驚いた顔のハルトもいた・・・優しく撫でられる事に抵抗もなくなったサンに驚きしかない。
逆に何だと身を固めたウィン・・・大丈夫だと微笑んだアイリを確認しながらもハルトの様子を眺めながらウィンは食べていた。
『な慣れた?だから食べてる?』
静かにサン達を眺めるハルトに頷くアイリもいた・・・そうかと嬉しそうな笑みを浮かべる。
触れた事が嬉しくてアイリへ夜食と蓋を開けていくハルト・・・食べようと促されアイリも一緒に食べるのだった。
ライフでの事を懐かしそうに話すハルトに耳を傾ける・・・星空を見た事も楽し気に話す。
確かにと食べながら会話を楽しめたアイリだった・・・
何かとハルトが会いに来る・・・ライフでまで会う事も最初の驚きや戸惑いは消えた。
自分に合わせてくるハルトに申し訳なくて声にすれば、サン達に合わせるアイリを真似ているのだと笑う。
マウレアへ戻り食事に出る・・・だいたいがエリン達と一緒だからかアサヒが仲間を連れてきた。
話をしながら食べているアイリ・・・今は違和感もなくハルトとアイリの会話に交ざる事も増えた。
色んな話をしながら食べている2人に驚きながら聞き入るエリン達・・・いつかは花の種類はと写真を見せていた。
ジッと眺めては不意にスケッチブックに書き留めるアイリ・・・ハルトは驚きながら眺めているだけ・・・それは皆もだった。
『それ・・・レースに?』
『刺繍じゃない?』
『あー(笑)、飾りにかな・・・』
回りで考えながら話しているがアイリは気にならずスケッチしていて驚いた・・・
『アイリ?その模様はどこに?』
『小さくして・・・縦に入れるか・・・裾に入れるか・・・んー・・・・』
『線?』
『あー・・・・それもいいかも。ライン引いた感じに細く・・・』
想像しながらスケッチブックの端へ簡素に書き留める・・・文字でメモするように。
『この花の・・・・雰囲気・・・これ、ミソノさんの・・・あ(笑)シズカさんの腕が必要に・・・あ』
仕事と集中してしまった自分を思い出し慌てハルトを眺めたアイリだった。
皆が自分の書いたスケッチブックへ目を落としていて驚いた・・・謝ろうと姿勢を戻せば笑いだすハルトもいた。
『すみません・・・』
『(笑)皆も慣れたから気にしないで大丈夫だと思うけど?』
『え・・・』
そうなのかと一人一人見やれば、そうだと笑みながら頷く姿に苦笑いをしたアイリだった。
その作品が新たに出来れば、そういえば・・・そんな誰かの呟きが、色んな場所で始まる事も可笑しくて笑うアイリだった。