少し背が伸びたのか、丈が短くなっていた女の子・・・それでも可愛さは同じだと、久しぶりに また会えた可笑しさに笑み返した。
何だと首を傾げる・・・暫く見返されていたが、何かが通り過ぎたのか視線はそこへ向かった。
変わらない子に笑む・・・ならば一緒に散歩をしようと女の子の後を歩いた・・・
プランターがある場所に暫く立って眺めていたが、不意に腰を降ろし覗き込む・・・隣に誰かは いるのか振り向き眺めてはプランターの中を覗く・・・
また振り向いた時に、女の子の口端が引かれる・・・久しぶりに見た僅かな笑みに自分が微笑む・・・今日は誰と話しているのだろうと想像は膨らんだ。
暫くして走り寄る足音が聞こえて来た・・・その人は女の子を知るのか、慌てるように捕まえ・・・ジッと眺めながら考えているようだった。
子供は驚いた顔で見返したが、大人の方が逆に驚いたのか 少しずつ怯えた目になり慌てるように手を離した。
子は、そっと何処かへ指を差す・・・その先へ視線を向けたまま その人は驚きながら後退りする・・・またグッとそれを指を差す子供の仕草になんだと近寄った。
数多いプランターの中、一番奥にありプランターの横にソレは見え驚いた・・・
気付かれた・・・そんな顔で子供を見ていたが、フッと辺りを眺める・・・近寄っていた自分に気づくと焦り、顔を隠すようにしながら素早く走り去って行った事に驚いた。
心臓が激しく音をたてまくる・・・それでも、この子一人にも出来ない・・・先ずはと女の子の手を繋ぎ電話をした・・・聞かれたままに近くの家屋にある番地に目を止め説明しながら電話を切った。
その音に来たかと耳をすませる・・・偶然にも血がこびりついたナイフを眺めながら面倒な事になったのだと思えば力が抜けそうだった。
駆け付ける人達・・・・その人達に説明しながら子を抱き寄せ、様子を見ていた。
暫くして年配の男が駆け付けてきた・・・その人は女の子を知るのか悲し気な目で視線を合わせ見つめていた。
『知ってる子でしたか?』
『多少(笑)。それは貴女もでしたか?だから散歩に付き合った?』
『 ・・・はい』
この人もまた事情を知るのだと見返した。
『 ・・・刑事には便利で・・・子供には恐怖なのに、この子は気にも止めずに見つけてしまった・・・』
『何処かで事件が?』
『 ・・・でしょうね・・・この少し向こうの裏てのビルで・・・ね・・・
さて・・・どの人に会った?』
写真だろう数枚を子へ見せながら話し出した・・・すると二枚の写真を優しくつつき、しゃがんでいた刑事の隣へ視線を向けた。
『その子が隣に?』
そうだと頷く事に驚いた・・・
『こっちは?ナイフを持った人か?』
違うと首をふる事に、そうかと考え始めた刑事の姿があった。
隣で立ち待っていた刑事を眺める・・・年若い人も刑事なのか携帯を握り締め先輩だろう刑事を見ていたが・・・自分からの視線に気付いたのか苦笑いをした。
『3回目なんですけどね、自分は・・・理解し難くて・・・ですね・・・』
どう言おうか迷いながら呟く・・・同じだと笑み返せば分かったのか声にせずに口を引いた。
『ジン』
『はい・・・』
『そっちの写真を出せ』
『 ・・・』
言われて一瞬・・・驚いた顔をしたが、素早くポケットから新たに数枚の写真を取り出し・・・それも子供へ見せる・・・
暫く写真を見ては誰もいない場所へ視線を向け考える・・・そして写真をまた眺める姿に驚いた。
何処かへ視線を向けたが、子の手は写真へ指先が向く・・・そして指先が写真をつついた。
そうかと頷く刑事は笑み子供の頭を撫でた・・・
『それは犯人?この関係者?そういう事でした?』
その様子を眺めていたが、激しく心臓が飛び跳ねた気がした・・・それでも自分を落ち着かせながら声にした。
『 ・・・』
『そっその方を知るんです・・・』
その人だと小さく指差し呟いた。
『ん?』
驚いた刑事が唸った・・・指先を眺めていたが、新たに出された写真に目が向いた・・・その知る顔に、会った頃の姿を思い出したのだった。
『誰です?どんな』
『どんな繋がりです?』
二人の刑事が驚きながらも自分の様子を伺いながら呟いた。
『3ブロック先のマチルダで今は働いてます・・・』
『 ・・・なら客か』
店を知るのだろう呟く刑事に頷いた。
『情報を貰おう・・・』
『いせさん・・・』
名を呼ばれた刑事はチラリとジンという刑事を見返したが話せと自分へ視線を戻した。
自分の知る事を全て話し、店用の携帯を出して刑事へ見せた。
『登録を?』
電話番号の主の写真・・・それを彼女は見せた。
『私なりの繋がりだけです・・・
今は違うので、その頃の店名で登録し残してあります』
『今の場所には?』
『この方はみえてません・・・』
『(笑)その方法は誰から?』
『 ・・・知るんですね・・・理由』
『むかーしな(笑)。聞いた』
『いせさん?』
『(笑)夜の夢だ・・・』
『はい?』
『 ・・・ ・・・(笑)いつか自分の店を出す時に利用するんだ。店を出したから飲みに来いとな(笑)。その為に残しとくって聞いた事はある』
イセ刑事の呟きに、そうなのかと見返す刑事に苦笑いをした・・・返事をしようとしたが、不意に子供が歩き出す。
『こら(笑)、も少し待て』
笑いながらイセ刑事が引き止める・・・そうなのかと見返したのは自分にだった事に苦笑いだった。
自分からも少し情報を聞き出したいのか繋いだ手ごと引き止める・・・暫く時間は取られるのだと諦め店へ連絡したのだった。
薄汚れた浴衣姿・・・また会ったと様子を見ていた。
あれから色んな話を聞きに店や家にまで来る刑事達がいて面倒だったが、女の子の様子も聞けて不思議とホッとしている自分・・・刑事との会話も我慢できた。
暫く来なかった間に地域を変えた・・・面倒でもある店の雰囲気に やっとなれた頃に出逢った。
やはり縁はあったのだと笑み、その子を眺めた・・・あいも変わらず着ている浴衣・・・新しい柄でもなく、そのまま着ている事に苦笑いだ。
ていよく扱われているのだと思えば妙にムカつき新しいモノを準備してやろうとさえ思えた。
この日は店へ行く小路で出逢った・・・綺麗に洗われてもいない浴衣・・・裾から垂れ下がるものは糸だった・・・ほつれさえ直して貰えていないと分かる。
ふらつく姿に驚いた・・・近寄り視線を合わせれば驚いた顔になったが焦点は合わず気を失うように力が消え倒れた。
仕方ないと店へ連れていく・・・知り合いの医師へ連絡し頼み込んだ。
栄養失調・・・そして脱水症状・・・恐らく・・・そう言った医師、今の時代にかと驚くしかない・・・
『何処で(笑)拾った?』
『この先の自販機の前で』
『浮浪者の子?』
『 ・・・(笑)その点滴だけで大丈夫なんですか?』
細かく聞かれ、それは面倒だと質問でかえしてみれば・・・フッと笑む人は話し出した。
『今はね(笑)。起きたら帰さなきゃね』
『 ・・・どこの子かも知りませんの・・・病院に運んだ方が、この子には安全でしょうか・・・』
『この汚さからなら・・・ネグレクト・・・か・・・・』
子供の様子を見ながら呟く・・・今の場所も知らない・・・どう話そうかと考えている間に子供を抱き上げた人に驚いた。
『取り合えず(笑)病院へ運ぼう。その方が体を綺麗にも出来るし面倒をみてくれるかも』
そう言った人は点滴を自分へ持たせ行こうと促した。
行く間に店長へ連絡をする・・・医師が変わり許可が出た事にホッとした。
一度目覚めたが、泣きそうな顔になった事に驚いた・・・辺りを眺め素早く目をとじ布団へ潜る・・・ふと思い出したと小さな声で謝りながら手を繋いだ。
震える手を繋ぎ、そっと頭を撫でる・・・自分の手を抱き込みベッド端で体をまるめた。
『話す気になった?』
布団が揺れる・・・そっと覗けばギュッと目をとじ拒否していた姿に苦笑いだ・・・
『私を覚えてる?』
繋いだ手を抱き、おそらく反対の手は撫でていた その手の動きが止まる・・・潤んだ目が自分を見つめ静かに頷いた。
『引っ越してったけど・・・施設に?』
小さな頷きは戸惑いもあった気がした・・・
『大丈夫だから寝なさい(笑)ちゃんと居るから』
大丈夫と言った事で慌てるように手を抱く・・・居ると聞きジッと見返した子は、手を抱いたまま眠り始めたのだった。
ベッドの端で眠る子に驚いたが、その近くで凭れ眠っていた彼女にも驚いた。
親子のような、姉妹のような・・・この近さは何だと眺める・・・布団をそっと捲れば手は繋がれ大事と抱いて寝ていた子に視線を向ける。
安心したような子供の顔にホッとした・・・二人の関係が妙に気になり眺めていたが看護師が呼びに来た事で静かに病室から出たのだった。
警察へ問い合わせてみたが、子供の情報は無かったと言った事に驚いた・・・取り合えず入院させ探す範囲を広げた。
繋ぐ手は子供の安心したような顔で不安は多少無くなった気がした・・・それが寂しいとも見えない彼女にも驚いた。
『君の知ってる事は教えて貰えないのか?』
廊下で珈琲を飲み休憩のように座っていた彼女に声をかけた・・・自分の身内のように寄り添っていた事が気になったからだろう雰囲気もあり苦笑いだった。
『ごめんなさい・・・知り合いの刑事さんへ、さっき連絡してみました』
『刑事・・・』
『その方も知ってるので(笑)、お昼頃に来てくれるみたい(笑)』
『 ・・・そうか(笑)、良かった。なら、すまないが仕事に戻るよ(笑)』
そう言った医師へ礼をしたが、医師は素早く戻って行った事に苦笑いだった。
その理由に気づいたが、その辺は仕方ないと諦め珈琲を口にした。
暫く見てくれると言われ着替えをしに一度帰り、子供のもだと買い物を急いですませ病室へ戻った。
病棟の・・・その階の変な静けさに口を引く・・・体を解し散歩のように廊下を歩いていた人達の姿はなく病室の扉さえ閉じていた。
看護師に呼び止められ病室が替わったと聞き驚く・・・奥の方だったが一番手前の部屋に変更されていた。
小さな子供だから・・・そんな理由が加えられる・・・可笑しくて笑みを浮かべたが看護師は すまなそうに病室の番号を言った。
入ってみれば女性の患者の中・・・居づらそうに苦笑いをする二人に笑み返した。
『(笑)ありがとうございました』
『いーや。君が行って直ぐに替わったが(笑)すまなかったな・・・
ここ・・・ハルさんは知ってるのか?』
『多少(笑)』
そうかと笑み、静かに眠っていた子へ視線を戻した。
『ジンさんと(笑)組んでないんですか?』
『(笑)組んでるのはコイツだ・・・俺は引退したんだ』
『そんな歳でした?』
『ま・・・いろいろとな(笑)』
そうかと笑み飲み物を二人へ渡したが、若手の刑事が苦笑いをし端に佇んだ。
『(笑)場所を替えて話しませんか?』
彼女の呟きにホッとする・・・静かな声で残念と囁かれる事に気付いた人が笑いながら頷いた。
『(笑)貴女、レベッカの人よね』
『 ・・・』
不意に隣のベッドから声がし3人は見返す・・・その雰囲気にハルは苦笑いをした。
『知るのよね(笑)』
『そうでしたか(笑)初めまして』
自分をかと軽く笑み返した。
『(笑)客が遊びに行って聞いたの』
『・・・ ・・・(笑)』
『(笑)逆になったわ・・・』
『教えて頂けたら』
『構わないわ(笑)、たまにでも来るから』
『(笑) すみません』
聞きながらも二人が出ようと促す・・・静かに会釈し病室を出た・・・激しいため息をした刑事に苦笑いだった・・・
『いせさん・・・』
笑うなと言いたいが苦笑いしか出ない刑事に彼女も微笑んだ。
『(笑)コウジは若い』
『その視線で楽しんでましたね(笑)』
『 ・・・』
談話室と書かれた部屋に入る・・・互いに笑みながら座るのだった。
『ここは波瀬という敷地だ(笑)。まーそんなに暴れないし大丈夫だろ』
そうかと笑み返した彼女もいた。
『ここは偶然か?』
『いえ・・・知り合いの医師がここで(笑)』
働いているのだと笑みながら言った。
『にしても、多いですよね・・・専属じゃ?』
若い刑事が小さく呟いた。
『外来は一般向けにも見えたぞ?』
『(笑)お二人も・・・その話ではなく(笑)あの子の話をお願いします』
だよなと笑うイセに笑み、声を待った。
暫くすればジンの姿が現れコウジと呼ばれた刑事がホッとした顔になった。
呆れた顔でジンはコウジを見返したが、イセへ会釈しジンが調べてくれたのだろうモノを話していった。
驚いていたのは一番若い刑事だけだった・・・その生い立ち・・・その環境・・・そして今の場所・・・
児童施設ではあるが、単に公的な場所から出された子供だけが引き取られるような場所だった。
確実に身寄りもなく引き取られる場所も無くなった子だけ・・・面倒な子だけが行かされる場所。
認可はされど、その先は裏・・・顔をしかめるイセと彼女だった。
『引き取り』『引き取る方法』
暫く黙っていた彼女とイセが声にした・・・フッと笑うジンがフーと息を吐き話し出した。
『まともな場所へ移したくて(笑)、取り合えずいいかと引き取る手続きはしてきました』
『 ・・・』
『直ぐに出来たのか?』
『なぜか(笑)。刑事でラッキーでした。友達に来てもらって法的にも大丈夫なように(笑)』
『ん?』
『(笑)弁護士の友達は居たんです』
だから大丈夫だったと笑み返したジンに苦笑いをする伊瀬もいた。
前は本当に引き取りたいと言った自分に驚いていたジン、それを思い出しての行動だろうと思えた。
『ハルさんが?イセさんが?』
『君は本当に引き取る?出来るのか?』
『(笑)タウンの一画を予約して・・・入居待ちしてます。そこなら・・・』
『・・・ ・・・そこ』
『高級住宅街じゃ・・・』
『(笑)その奥です。街並みの計画書で気に入って(笑)買ってみました。それでも遥か先の話ですけど(笑)』
『 ・・・すげー』
『(笑)だな』
噂は聞くのだろう刑事達に苦笑いをした・・・
『今は、イセさんの近所へ引っ越すので(笑)居ない間は頼めそうでした?』
『(笑)いいのか?』
『それは私です(笑)。ほとんど世話はしませんし・・・今直ぐには、出来そうにも・・・』
すまなそうな顔は似合わないと背を撫でるイセ・・・自分の事も調べたのだろう刑事達に苦笑いしかなかった。
『若いよな(笑)』
『母親も無理(笑)、手放しも無理・・・でもと悩みながら今日まで来てしまいました・・・
調べて知ってるんですよね?』
『そこでずっとか?』
『一番稼げてるし(笑)、私には合ってますから』
『自分と似てると悩む君が凄い(笑)』
『(笑)・・・・今は、あの子と会話を楽しむ夢を貰えてましたし(笑)』
『ハルさん・・・そういえば、貴方に目が、目を・・・』
『調べていた時に』
ジンの言葉に付け足すようにコウジがすまなそうに呟いた。
『ですね(笑)目は私へ向いている気もしてますし話しも来てます。何度断っても来てるので・・・
でも(笑)これで離して貰えそうですよね』
『ですかね(笑)』
『(笑)愛人にならずにすんだわ。あの子に感謝しなきゃ(笑)』
確かにと笑む伊瀬に皆で子の幸せを祈る刑事達もいた。
退院後は伊瀬刑事が連れていった・・・その間に彼女は店と家を探した・・・直ぐに店を辞めると宣言し替わりの子が来る間は頑張った。
伊瀬は手続きから全てを任され、彼女の替わりに始め小さな子は彼女と同じ名へ変わったのだと何度も依子は教え込んだ。
保護者のような伊瀬と腕もあった弁護士からも助けられていく・・・助ける手は刑事という職業だった事が上手く運べたのだと弁護士が笑った。
なにより日々の生活は主に伊瀬の妻、依子まで助け船を出してくれた事に感謝だった。
決めたら早い彼女の言動・・・経営も上手く出来るのだろうと思え、子供にも安心だとホッとした。
ふらっと出ていく子・・・それは変わらず気にもしない彼女に驚いた・・・それでも色んな方法はと考え、今の居場所は調べられるよう身に着けさせていた。
拒否る子へ、ゆっくりと細かく話し込む・・・その理由・・・自分の居場所はと教え込む・・・
考える時間も長いが、子供なりに納得もし理解もするレア・・・了解と言う頷きはハルにだけ向けていた事に回りの大人が驚いた。
日中の散歩は伊瀬夫婦が犬の散歩と一緒にぶらつく・・・夜は時々でいいと言い切るハルに驚きはしたが、ちゃんと帰ってくるレアに安堵した。
歳から言えば学校へ行けるが、レアの状態で簡単に拒否された事に驚いた・・・
ならば在籍だけさせて貰うと弁護士を連れて出掛けてみれば、すんなり許可はされ笑いながら帰ってきた事に苦笑いをする。
変な噂も流れるが、刑事だった事で止まり 依子まで巻き込まれずにすんだ事はハル的に本当にホッとした。
その日々は自分にも楽しくて幸せな時間になったのだった・・・・