tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

my seif -16

2021-11-30 08:35:47 | my self


また、前ほどの表情は消えた事に驚いた・・・レアの表現の不安定さは、普通とは逆に自分が落ち着く事に苦笑いしかない。

それでも会話の中で返事が欲しい時は、前より真剣そうな顔付きで考え自分へ意思表示してくれるレアにホッとした。

犯罪に巻き込まれるから・・・そう何度も教え込む伊瀬の妻、依子・・・ジッと見返し頭を下げて出てくのよと言いながら深い深いため息をする彼女に伊瀬は苦笑いをしながらも謝った。

そして服・・・浴衣を洗っては干しての繰り返しに、一緒に買いに行き家で話し込んだ。

やっと探して見つけた浴衣・・・好みはなかった事にホッとしたが、着やすさはあるのか自分から探し浴衣を着込む。

本格的に寒くなる季節・・・大人3人で悩む日々・・・上着を着せて出掛ける事・・・出るならコレを着るのだと玄関の見える場所へ掛けておく。

見つけたら自分達が着せる・・・一人では着て行かない事に苦笑いだ・・・それでも寒さは心配で、浴衣を厚地へ替え別の浴衣は裏地を着けた。

普通の服も嫌がらないが、自分で着るのは浴衣・・・普通の服を着ていれば浴衣に着替えて行く・・・だからか家の中ではと、イセ夫婦は温かな服を選び妻が楽し気に着せていた。



食事も終わりリビングで寛ぐ・・・果物が乗った大皿から小皿へ2つのせ、テーブルの端に置いたレア・・・

皿をジッと見つめていたが、少しだけ視線があがり微笑んだ事に驚いた・・・見合う二人・・・またスッと見上げ微かに頷くと自分にかフォークで一つさして食べ始めた。


遅いと思ったがハルは伊瀬の家へ足を進めた・・・鍵がかかっていた事でレアは散歩へ行っていないのだと笑った。

預かった鍵・・・迷ったが静かに中へ入れば・・・リビングから漏れた明かりに驚き覗いた。

ソファーで寝ていたのはレア・・・伊瀬夫婦は起きていたが・・・眠る姿をジッと見つめていた。

『(笑)起きてらしたんですね・・・すみません、寝てると思って呼び鈴は鳴らさずに入りました』
『 ・・・ ・・・(笑)お帰り』
『ただいま(笑)帰りました』

自分の姿に 来たのかと苦笑いをした伊瀬・・・隣に座る依子は泣きそうな顔だった事に驚いた。

『・・・ な・・・何かありました?』
いつもの二人と様子が違う事に戸惑い静かにレアの隣へ座りながら伊瀬へ言った。

依子の視線はテーブルで、端に置かれた小皿を眺めていた・・・レアがいる場所でも二人が座っている場所でもない。

誰も居ない場所・・・誰かが来ていたのかと眺めていた。

『レアが・・・置いたんだ(笑)。
自分が食べる前に・・・(笑)ソコへ置いて笑った・・・もしかしてソコに居たのかと嬉しくてな(笑)へんな想像をしてしまったよ・・・』

『 ・・・』
『(笑)ソコが定位置だった・・・・』
泣きそうな顔でもあるが嬉しそうで懐かしそうな気もした伊瀬の姿に、レアがと寝ていた子へ目を向けた。

そうかと笑み思い出した・・・・
ここへ来た頃に聞いた話・・・娘夫婦と孫が事故で逝ったと聞いた・・・ショックで入退院を繰り返す妻が心配だと早期退職していた。

小皿に乗る果物・・・レアが会ったのだと、何より会いに来ていたのかと笑み優しくレアを撫でた。

『クリスマスプレゼント(笑)なんでしょうかね・・・レアが話せるなら・・・色々聞けましたね(笑)きっと』

穏やかな声で話すハルに驚きながらも聞き入り静かに小皿へ目を落とす伊瀬・・・確かにと笑む姿に優しく見守るハルもいた。

潤んだ目で懐かしそうな笑みになった彼女は、レアを見つめ囁くように礼を言った。


ムクッと起きたレアがハルに気づく・・・ジッと見ていたが、視線は静かに後ろへそれていった。

『起きたね(笑) レア、もしかしてソコに居るの?』
ゆっくりと静かにレアへ聞いてみる・・・視線は外さずに頷いた・・・

『それは写真で見た3人で(笑)、笑ってるのかな・・・』
3人でと言った時に自分を見つめたレア、だから聞いてみた・・・暫く考えてから頷き視線は流れていった・・・

低い位置へ視線は流れ 伊瀬夫婦の場所で止まり、何かを静かに見ていたが優しい笑みがレアから溢れた事に驚いた。

初めて見るのだろうレアの姿・・・伊瀬へ視線を向ければ驚いた顔でレアを見つめ、今度はレアが向けていた視線の先へと交互に眺めていた。

依子が涙を溢す・・・不意に振り向くレアがハルの頬へ手を当て、今度は伊瀬夫婦の方へ視線を戻した。

『(笑)依子さんに?二人に?』
二人と言ったハルに頷くレア・・・伊瀬夫婦は驚きながらも、涙を払うことなく微笑んだ。

視線が上がる・・・
『(笑)帰ってくのね・・・』

そうだと頷きながら天井へ向けていく・・・慌てるように一緒に眺める二人もいた。

ありがとう・・・
二人から溢れた声音の優しさにハルは静かにレアを抱き締めたのだった。


『皆を優しく見守れるなら(笑)、その笑顔で私達に声をくれない?』
『 ・・・ ・・・』
『レア(笑)、いつかでいいわ・・・』

だから声をと笑み見つめたハル・・・抱かれたままにジッと見つめるレアだった・・・いつもより長い時間で考える姿に口を引く。

いままでにない笑みが目の前に現れた事に嬉しくてレアを見つめるハルだった。

それ以来なくなった笑み・・・気にもしないハルに笑う伊瀬夫婦もいた。




ふと思い出した出来事・・・伊瀬夫婦は今も元気に暮らしているのかと・・・妙に懐かしくなったハルがいた。


二人と別れて日は流れていた・・・自分の場所から巻き込んで危険にも出来ない。

そんな場所に自分は居るのだと妙に気になる事に苦笑いしかない・・・それでも少しずつ現実へ迎える自分は出来ていた気もする。

学びは遥かに多い・・・望む先に出来ない可能性もある・・・出来ないままに始める自分もいそうで・・・それは長く続いていくのだと覚悟した。


少しずつ具体化していこうと・・・それは今いる場所とは違うが・・・その場を乱さず、巻き込まずに始めようと思えば・・・そんな自分が出来ていた事に可笑しくなった。

それでも始める自分がいる・・・ならば頑張ろうと誓いを新たにした陽乃だった。









my seif -15

2021-11-29 09:11:38 | my self


少し背が伸びたのか、丈が短くなっていた女の子・・・それでも可愛さは同じだと、久しぶりに また会えた可笑しさに笑み返した。

何だと首を傾げる・・・暫く見返されていたが、何かが通り過ぎたのか視線はそこへ向かった。

変わらない子に笑む・・・ならば一緒に散歩をしようと女の子の後を歩いた・・・


プランターがある場所に暫く立って眺めていたが、不意に腰を降ろし覗き込む・・・隣に誰かは いるのか振り向き眺めてはプランターの中を覗く・・・

また振り向いた時に、女の子の口端が引かれる・・・久しぶりに見た僅かな笑みに自分が微笑む・・・今日は誰と話しているのだろうと想像は膨らんだ。


暫くして走り寄る足音が聞こえて来た・・・その人は女の子を知るのか、慌てるように捕まえ・・・ジッと眺めながら考えているようだった。

子供は驚いた顔で見返したが、大人の方が逆に驚いたのか 少しずつ怯えた目になり慌てるように手を離した。

子は、そっと何処かへ指を差す・・・その先へ視線を向けたまま その人は驚きながら後退りする・・・またグッとそれを指を差す子供の仕草になんだと近寄った。

数多いプランターの中、一番奥にありプランターの横にソレは見え驚いた・・・

気付かれた・・・そんな顔で子供を見ていたが、フッと辺りを眺める・・・近寄っていた自分に気づくと焦り、顔を隠すようにしながら素早く走り去って行った事に驚いた。

心臓が激しく音をたてまくる・・・それでも、この子一人にも出来ない・・・先ずはと女の子の手を繋ぎ電話をした・・・聞かれたままに近くの家屋にある番地に目を止め説明しながら電話を切った。


その音に来たかと耳をすませる・・・偶然にも血がこびりついたナイフを眺めながら面倒な事になったのだと思えば力が抜けそうだった。

駆け付ける人達・・・・その人達に説明しながら子を抱き寄せ、様子を見ていた。

暫くして年配の男が駆け付けてきた・・・その人は女の子を知るのか悲し気な目で視線を合わせ見つめていた。

『知ってる子でしたか?』
『多少(笑)。それは貴女もでしたか?だから散歩に付き合った?』
『 ・・・はい』
この人もまた事情を知るのだと見返した。

『 ・・・刑事には便利で・・・子供には恐怖なのに、この子は気にも止めずに見つけてしまった・・・』
『何処かで事件が?』

『 ・・・でしょうね・・・この少し向こうの裏てのビルで・・・ね・・・
さて・・・どの人に会った?』

写真だろう数枚を子へ見せながら話し出した・・・すると二枚の写真を優しくつつき、しゃがんでいた刑事の隣へ視線を向けた。

『その子が隣に?』
そうだと頷く事に驚いた・・・
『こっちは?ナイフを持った人か?』
違うと首をふる事に、そうかと考え始めた刑事の姿があった。

隣で立ち待っていた刑事を眺める・・・年若い人も刑事なのか携帯を握り締め先輩だろう刑事を見ていたが・・・自分からの視線に気付いたのか苦笑いをした。

『3回目なんですけどね、自分は・・・理解し難くて・・・ですね・・・』
どう言おうか迷いながら呟く・・・同じだと笑み返せば分かったのか声にせずに口を引いた。


『ジン』
『はい・・・』
『そっちの写真を出せ』
『 ・・・』
言われて一瞬・・・驚いた顔をしたが、素早くポケットから新たに数枚の写真を取り出し・・・それも子供へ見せる・・・

暫く写真を見ては誰もいない場所へ視線を向け考える・・・そして写真をまた眺める姿に驚いた。

何処かへ視線を向けたが、子の手は写真へ指先が向く・・・そして指先が写真をつついた。
そうかと頷く刑事は笑み子供の頭を撫でた・・・

『それは犯人?この関係者?そういう事でした?』
その様子を眺めていたが、激しく心臓が飛び跳ねた気がした・・・それでも自分を落ち着かせながら声にした。

『 ・・・』
『そっその方を知るんです・・・』
その人だと小さく指差し呟いた。

『ん?』
驚いた刑事が唸った・・・指先を眺めていたが、新たに出された写真に目が向いた・・・その知る顔に、会った頃の姿を思い出したのだった。

『誰です?どんな』
『どんな繋がりです?』
二人の刑事が驚きながらも自分の様子を伺いながら呟いた。

『3ブロック先のマチルダで今は働いてます・・・』
『 ・・・なら客か』
店を知るのだろう呟く刑事に頷いた。

『情報を貰おう・・・』
『いせさん・・・』
名を呼ばれた刑事はチラリとジンという刑事を見返したが話せと自分へ視線を戻した。

自分の知る事を全て話し、店用の携帯を出して刑事へ見せた。

『登録を?』
電話番号の主の写真・・・それを彼女は見せた。
『私なりの繋がりだけです・・・
今は違うので、その頃の店名で登録し残してあります』

『今の場所には?』
『この方はみえてません・・・』
『(笑)その方法は誰から?』
『 ・・・知るんですね・・・理由』
『むかーしな(笑)。聞いた』

『いせさん?』
『(笑)夜の夢だ・・・』
『はい?』
『 ・・・ ・・・(笑)いつか自分の店を出す時に利用するんだ。店を出したから飲みに来いとな(笑)。その為に残しとくって聞いた事はある』

イセ刑事の呟きに、そうなのかと見返す刑事に苦笑いをした・・・返事をしようとしたが、不意に子供が歩き出す。

『こら(笑)、も少し待て』
笑いながらイセ刑事が引き止める・・・そうなのかと見返したのは自分にだった事に苦笑いだった。

自分からも少し情報を聞き出したいのか繋いだ手ごと引き止める・・・暫く時間は取られるのだと諦め店へ連絡したのだった。



薄汚れた浴衣姿・・・また会ったと様子を見ていた。

あれから色んな話を聞きに店や家にまで来る刑事達がいて面倒だったが、女の子の様子も聞けて不思議とホッとしている自分・・・刑事との会話も我慢できた。

暫く来なかった間に地域を変えた・・・面倒でもある店の雰囲気に やっとなれた頃に出逢った。

やはり縁はあったのだと笑み、その子を眺めた・・・あいも変わらず着ている浴衣・・・新しい柄でもなく、そのまま着ている事に苦笑いだ。

ていよく扱われているのだと思えば妙にムカつき新しいモノを準備してやろうとさえ思えた。


この日は店へ行く小路で出逢った・・・綺麗に洗われてもいない浴衣・・・裾から垂れ下がるものは糸だった・・・ほつれさえ直して貰えていないと分かる。

ふらつく姿に驚いた・・・近寄り視線を合わせれば驚いた顔になったが焦点は合わず気を失うように力が消え倒れた。

仕方ないと店へ連れていく・・・知り合いの医師へ連絡し頼み込んだ。
栄養失調・・・そして脱水症状・・・恐らく・・・そう言った医師、今の時代にかと驚くしかない・・・

『何処で(笑)拾った?』
『この先の自販機の前で』
『浮浪者の子?』
『 ・・・(笑)その点滴だけで大丈夫なんですか?』

細かく聞かれ、それは面倒だと質問でかえしてみれば・・・フッと笑む人は話し出した。

『今はね(笑)。起きたら帰さなきゃね』
『 ・・・どこの子かも知りませんの・・・病院に運んだ方が、この子には安全でしょうか・・・』
『この汚さからなら・・・ネグレクト・・・か・・・・』

子供の様子を見ながら呟く・・・今の場所も知らない・・・どう話そうかと考えている間に子供を抱き上げた人に驚いた。

『取り合えず(笑)病院へ運ぼう。その方が体を綺麗にも出来るし面倒をみてくれるかも』
そう言った人は点滴を自分へ持たせ行こうと促した。

行く間に店長へ連絡をする・・・医師が変わり許可が出た事にホッとした。


一度目覚めたが、泣きそうな顔になった事に驚いた・・・辺りを眺め素早く目をとじ布団へ潜る・・・ふと思い出したと小さな声で謝りながら手を繋いだ。

震える手を繋ぎ、そっと頭を撫でる・・・自分の手を抱き込みベッド端で体をまるめた。

『話す気になった?』
布団が揺れる・・・そっと覗けばギュッと目をとじ拒否していた姿に苦笑いだ・・・

『私を覚えてる?』
繋いだ手を抱き、おそらく反対の手は撫でていた その手の動きが止まる・・・潤んだ目が自分を見つめ静かに頷いた。

『引っ越してったけど・・・施設に?』
小さな頷きは戸惑いもあった気がした・・・
『大丈夫だから寝なさい(笑)ちゃんと居るから』

大丈夫と言った事で慌てるように手を抱く・・・居ると聞きジッと見返した子は、手を抱いたまま眠り始めたのだった。


ベッドの端で眠る子に驚いたが、その近くで凭れ眠っていた彼女にも驚いた。

親子のような、姉妹のような・・・この近さは何だと眺める・・・布団をそっと捲れば手は繋がれ大事と抱いて寝ていた子に視線を向ける。

安心したような子供の顔にホッとした・・・二人の関係が妙に気になり眺めていたが看護師が呼びに来た事で静かに病室から出たのだった。


警察へ問い合わせてみたが、子供の情報は無かったと言った事に驚いた・・・取り合えず入院させ探す範囲を広げた。

繋ぐ手は子供の安心したような顔で不安は多少無くなった気がした・・・それが寂しいとも見えない彼女にも驚いた。

『君の知ってる事は教えて貰えないのか?』
廊下で珈琲を飲み休憩のように座っていた彼女に声をかけた・・・自分の身内のように寄り添っていた事が気になったからだろう雰囲気もあり苦笑いだった。

『ごめんなさい・・・知り合いの刑事さんへ、さっき連絡してみました』
『刑事・・・』
『その方も知ってるので(笑)、お昼頃に来てくれるみたい(笑)』
『 ・・・そうか(笑)、良かった。なら、すまないが仕事に戻るよ(笑)』

そう言った医師へ礼をしたが、医師は素早く戻って行った事に苦笑いだった。

その理由に気づいたが、その辺は仕方ないと諦め珈琲を口にした。


暫く見てくれると言われ着替えをしに一度帰り、子供のもだと買い物を急いですませ病室へ戻った。

病棟の・・・その階の変な静けさに口を引く・・・体を解し散歩のように廊下を歩いていた人達の姿はなく病室の扉さえ閉じていた。

看護師に呼び止められ病室が替わったと聞き驚く・・・奥の方だったが一番手前の部屋に変更されていた。

小さな子供だから・・・そんな理由が加えられる・・・可笑しくて笑みを浮かべたが看護師は すまなそうに病室の番号を言った。

入ってみれば女性の患者の中・・・居づらそうに苦笑いをする二人に笑み返した。

『(笑)ありがとうございました』
『いーや。君が行って直ぐに替わったが(笑)すまなかったな・・・
ここ・・・ハルさんは知ってるのか?』
『多少(笑)』
そうかと笑み、静かに眠っていた子へ視線を戻した。

『ジンさんと(笑)組んでないんですか?』
『(笑)組んでるのはコイツだ・・・俺は引退したんだ』
『そんな歳でした?』

『ま・・・いろいろとな(笑)』
そうかと笑み飲み物を二人へ渡したが、若手の刑事が苦笑いをし端に佇んだ。

『(笑)場所を替えて話しませんか?』
彼女の呟きにホッとする・・・静かな声で残念と囁かれる事に気付いた人が笑いながら頷いた。

『(笑)貴女、レベッカの人よね』
『 ・・・』
不意に隣のベッドから声がし3人は見返す・・・その雰囲気にハルは苦笑いをした。

『知るのよね(笑)』
『そうでしたか(笑)初めまして』
自分をかと軽く笑み返した。
『(笑)客が遊びに行って聞いたの』
『・・・ ・・・(笑)』
『(笑)逆になったわ・・・』

『教えて頂けたら』
『構わないわ(笑)、たまにでも来るから』
『(笑) すみません』
聞きながらも二人が出ようと促す・・・静かに会釈し病室を出た・・・激しいため息をした刑事に苦笑いだった・・・

『いせさん・・・』
笑うなと言いたいが苦笑いしか出ない刑事に彼女も微笑んだ。

『(笑)コウジは若い』
『その視線で楽しんでましたね(笑)』
『 ・・・』
談話室と書かれた部屋に入る・・・互いに笑みながら座るのだった。


『ここは波瀬という敷地だ(笑)。まーそんなに暴れないし大丈夫だろ』
そうかと笑み返した彼女もいた。

『ここは偶然か?』
『いえ・・・知り合いの医師がここで(笑)』
働いているのだと笑みながら言った。

『にしても、多いですよね・・・専属じゃ?』
若い刑事が小さく呟いた。

『外来は一般向けにも見えたぞ?』
『(笑)お二人も・・・その話ではなく(笑)あの子の話をお願いします』

だよなと笑うイセに笑み、声を待った。
暫くすればジンの姿が現れコウジと呼ばれた刑事がホッとした顔になった。

呆れた顔でジンはコウジを見返したが、イセへ会釈しジンが調べてくれたのだろうモノを話していった。

驚いていたのは一番若い刑事だけだった・・・その生い立ち・・・その環境・・・そして今の場所・・・

児童施設ではあるが、単に公的な場所から出された子供だけが引き取られるような場所だった。

確実に身寄りもなく引き取られる場所も無くなった子だけ・・・面倒な子だけが行かされる場所。

認可はされど、その先は裏・・・顔をしかめるイセと彼女だった。

『引き取り』『引き取る方法』
暫く黙っていた彼女とイセが声にした・・・フッと笑うジンがフーと息を吐き話し出した。

『まともな場所へ移したくて(笑)、取り合えずいいかと引き取る手続きはしてきました』
『 ・・・』
『直ぐに出来たのか?』

『なぜか(笑)。刑事でラッキーでした。友達に来てもらって法的にも大丈夫なように(笑)』
『ん?』

『(笑)弁護士の友達は居たんです』
だから大丈夫だったと笑み返したジンに苦笑いをする伊瀬もいた。

前は本当に引き取りたいと言った自分に驚いていたジン、それを思い出しての行動だろうと思えた。

『ハルさんが?イセさんが?』
『君は本当に引き取る?出来るのか?』
『(笑)タウンの一画を予約して・・・入居待ちしてます。そこなら・・・』

『・・・ ・・・そこ』
『高級住宅街じゃ・・・』
『(笑)その奥です。街並みの計画書で気に入って(笑)買ってみました。それでも遥か先の話ですけど(笑)』

『 ・・・すげー』
『(笑)だな』
噂は聞くのだろう刑事達に苦笑いをした・・・


『今は、イセさんの近所へ引っ越すので(笑)居ない間は頼めそうでした?』
『(笑)いいのか?』
『それは私です(笑)。ほとんど世話はしませんし・・・今直ぐには、出来そうにも・・・』

すまなそうな顔は似合わないと背を撫でるイセ・・・自分の事も調べたのだろう刑事達に苦笑いしかなかった。

『若いよな(笑)』
『母親も無理(笑)、手放しも無理・・・でもと悩みながら今日まで来てしまいました・・・
調べて知ってるんですよね?』

『そこでずっとか?』
『一番稼げてるし(笑)、私には合ってますから』
『自分と似てると悩む君が凄い(笑)』

『(笑)・・・・今は、あの子と会話を楽しむ夢を貰えてましたし(笑)』
『ハルさん・・・そういえば、貴方に目が、目を・・・』
『調べていた時に』
ジンの言葉に付け足すようにコウジがすまなそうに呟いた。

『ですね(笑)目は私へ向いている気もしてますし話しも来てます。何度断っても来てるので・・・
でも(笑)これで離して貰えそうですよね』

『ですかね(笑)』
『(笑)愛人にならずにすんだわ。あの子に感謝しなきゃ(笑)』
確かにと笑む伊瀬に皆で子の幸せを祈る刑事達もいた。



退院後は伊瀬刑事が連れていった・・・その間に彼女は店と家を探した・・・直ぐに店を辞めると宣言し替わりの子が来る間は頑張った。

伊瀬は手続きから全てを任され、彼女の替わりに始め小さな子は彼女と同じ名へ変わったのだと何度も依子は教え込んだ。

保護者のような伊瀬と腕もあった弁護士からも助けられていく・・・助ける手は刑事という職業だった事が上手く運べたのだと弁護士が笑った。

なにより日々の生活は主に伊瀬の妻、依子まで助け船を出してくれた事に感謝だった。

決めたら早い彼女の言動・・・経営も上手く出来るのだろうと思え、子供にも安心だとホッとした。

ふらっと出ていく子・・・それは変わらず気にもしない彼女に驚いた・・・それでも色んな方法はと考え、今の居場所は調べられるよう身に着けさせていた。

拒否る子へ、ゆっくりと細かく話し込む・・・その理由・・・自分の居場所はと教え込む・・・

考える時間も長いが、子供なりに納得もし理解もするレア・・・了解と言う頷きはハルにだけ向けていた事に回りの大人が驚いた。


日中の散歩は伊瀬夫婦が犬の散歩と一緒にぶらつく・・・夜は時々でいいと言い切るハルに驚きはしたが、ちゃんと帰ってくるレアに安堵した。

歳から言えば学校へ行けるが、レアの状態で簡単に拒否された事に驚いた・・・

ならば在籍だけさせて貰うと弁護士を連れて出掛けてみれば、すんなり許可はされ笑いながら帰ってきた事に苦笑いをする。

変な噂も流れるが、刑事だった事で止まり 依子まで巻き込まれずにすんだ事はハル的に本当にホッとした。

その日々は自分にも楽しくて幸せな時間になったのだった・・・・






my seif -14

2021-11-28 16:46:53 | my self


季節外れの街中で、浴衣を着た女の子が何処かを見つめていた・・・様子を伺うような視線・・・何かを知りたくて眺めているようにも見えた。

なのに、その先には何もない・・・人が行き交うだけ・・・酔った誰かを支え帰っていく人・・・どの店へ入ろうと笑み楽し気に歩く人・・・

行き交う人達は浴衣を着た子へ一瞬は視線を飛ばすが気にも止めずに通り過ぎていく。

途中・・・ジッと目を凝らし眺める・・・何処かへ視線を運ぶ事もなく前だけを眺めていた。

自分へ視線もない・・・辺りを眺めてみたが何もない・・・あるのは自販機の明かりだけ・・・自分が来た道を眺めるが誰も居なかった。

なのに視線は自分が来ていた道にある・・・フッと身を傾けた・・・それは自分の後ろの方へ視線を運ぶ姿・・・覗き込む・・・何かが見えなくて覗くような感じだった。

フッと子が笑う・・・一瞬・・・驚いた顔になるが、また笑い出した笑みが可愛かった。

視線は自分の足元あたり・・・子は笑みながら少しだけ移動していく・・・すると今度は反対側に顔を傾け覗くように見つめた。

溢れる笑み・・・浴衣姿にビーチサンダルを履く・・・秋の終わりも近いのに寒さは関係ないと笑っていた。

視線がずれていく・・・
おそらくの想像・・・何かが自分の足元で女の子を覗く・・・自分へ隠れるように・・・時々身を隠しては現れ笑わせている・・・そんな気がした。

そして今は、離れたのだろう・・・何だと不思議そうな顔をしながら歩いてくる・・・

『家に帰る時間よ(笑)』
『・・・ ・・・ ・・・・(笑)』
声をかけてみれば一瞬だけ向けた視線・・・思い出したように元へ視線を戻す。

『(笑)帰ったんじゃない? 迷子になるから貴女も帰りなさいね』
聞き入るように視線は外さずにいた子・・・そうかと歩みは止まった。

ジッと見つめていたが、振り向いたのか・・・笑わせたのか笑みが戻り眺めていた。

薄地のマフラーを子のクビへ巻いてやる。

『それ一枚は寒いから(笑)あげるから巻いて帰りなさいね』
自分へ見上げ聞いていた子・・・そうかと頷く姿から笑みは消えていった。

『家は遠いの?』
『 ・・・』
暫く考えているような仕草に口を引く・・・

『お家の人に叱られないように一緒に行くから連れてきな(笑)』
話ながら彼女は女の子と手を繋ぐ・・・また考えながらも嫌がらず繋いだ手を眺めていた。

遅い理解に可笑しくて 笑み返す彼女もいた・・・暫くすれば分かったのか、了解と言いたげに小さく頷き自分を案内するように歩き出したのだった。


10分くらい歩いたか・・・街が途切れる場所へ向かっていく・・・
緑が多く人の出入りもまだらな場所・・・そこは教会だった・・・木々は多く柵で囲まれていた。

その門は閉まる事もなく招き入れている・・・ライトで照らされた教会のようで・・・敷地へ入り 端に伸びていく小道のような場所を奥へと歩いていく。

教会の横を通り過ぎ・・・その間の緑豊かな木々にもライトで照らされていた。

低めの外灯・・・そんなに明るくもない明かりは小道だけを明るくしているようだった。

区切りのように垣根があり木製の小さな門を静かに開ける・・・入れば繋いでいた手が外れ振り向いた子が、礼だろう頭をちょこんと下げた。

それが可愛くて笑み返す・・・
『(笑)貴女の家?』
聞いてみれば、そうだと頷く・・・行きなと背を優しく押してやる・・・見返していた子はまた頭を下げて戻っていった。

大きめな扉が開く・・・心配したような顔のシスターが出てきた・・・親かと思っていたのに出てきた人はシスターだった。

数人の子供たちがシスターの背へ隠れながら覗いていた・・・女の子だったと分かると走り戻っていく。

『レアさん。出るなら許しを貰わねば駄目です。本当に出されますよ?』
シスターが中へ連れていく事なく玄関先で注意する・・・

『そのマフラーはどうしたんです?拾ったんですか?』
暫くして違うと首をふる・・・聞き出すしつこさに苦笑いをし彼女は戻った。

『だ、誰です?』
『(笑)初めまして。迷子になりそうだったので連れてきた者です』
『 ・・・』
『(笑)それは、その子へあげました。浴衣は寒そうだったので。外へ出すなら上着があればいいですね(笑)』

そっと言ってみたが苦笑いをし、子供を中へ入らせて扉を閉めた事に驚いた。

迷うような顔・・・その違和感に何だと身構えた。
『何かを追って歩いてましたか?』
『あの子・・・』

『誰にも見えない何かを追い掛けていくように一人静かに出ていくので・・・』
『聞いてみれば・・・』

『言葉はなく・・・話せるのか出来ないのか誰も知りません・・・
私自身・・・声にしている姿を見た事もなくて・・・』
『あの・・・・ここは』
何だと聞いてみた。

『(笑)児童養護施設でもあります・・・先週から、あの子が来ましたが・・・』
『 ・・・』
『見た目も可愛いのに、直ぐに戻されて・・・ここへ回されて来ました』

-回されてって・・・-
その言い方に驚きシスターを眺めた。

『気味が悪いと戻されるんです。知れず夜中でも平気で外へ出ていきます・・・日中でも・・・
ボーっと眺めている内に、あの子は何かを知りたくてか・・・フラッと』
出ていくのだと呟きながら扉の方を眺めた。

『前回は養子と連れていった方が、引っ越しされ・・・あの子が一人置いてきぼりでした・・・可哀想な子なんです』

『・・・』
『あら、ベラベラと(笑)失礼しました』
『いえ』

シスターの声に驚くしかない・・・子供に起きた事も驚いたが、その話し方に・・・その詳細まで簡単に話し出すシスターに驚き声も出なかった。

『さ・・・お帰りください(笑)。送って頂き感謝いたします・・・
次に・・・もしも見かけたなら(笑)あの子は大丈夫なので放って下さい』
『 ・・・ ・・・・はい?』
放ると言うシスターに戸惑った。

『(笑)あの子は一人で帰って来れますから・・・』
『あの幼さで・・・』
『(笑)ですね・・・でも何かに案内されるように戻って・・・帰って来るので(笑)大丈夫ですよ』
『 ・・・』

言い返せなかった・・・ほんの数年・・・その小さな子の心配はしないのかと驚きすぎた。

家の中へ入って帰ってしまったシスター・・・変な違和感は激しく残ったが、考える事もやめ 帰る事にしたのだった。



思い出したように教会の敷地へ足を踏み入れた・・・クリスマスだと街中も浮かれ笑みは多いこの日・・・同じ店で働く子と用事を頼まれ外へ出ていた。

帰り道・・・その教会が見え女の子を思い出した。
疲れたと連呼していた同僚のカナ・・・聞くのも煩くて休憩しようか迷っていれば目の前の敷地に目が止まった。

あの子は元気かと眺めていれば・・・中では寒いのに元気に足り回る子供たちもいた。

『(笑)中で休みませんか?クリスマスだし、開放してるみたいだし』
そう言いながら歩くカナに苦笑いだ・・・それでも思い出したからか、会えたら・・・そんな思いで歩いた。

楽し気な声音が出迎える・・・自分と話したシスターの姿に笑み返すが、覚えていないのだろう案内し説明する姿に口を引いた。


椅子に座りその場の雰囲気に浸る・・・直ぐに出れるよう一番後ろの椅子へ二人で座った。

信者なのか牧師が誰かと会話を楽しんでいた・・・近場ではシスター達が混ざったのだろう会話・・・聞く気もないが比較的に大きめだからか、自分達にまで聞こえてしまう事に苦笑いをした。

『優しい家族なら有り難い・・・』
『また・・・』
『引き取り先があるのに、なぜ戻されるのか・・・』
『 ・・・特別な目を持つからでしょう・・・可哀想に・・・』

特別なと言ったくせに可哀想と呟くシスターの声に何なんだと違和感を持った。

『ハロウィンのイベントだけでしたね・・・』
『皆がみんな、怖さを強調するので(笑)気にもせずにいれますから』

『にしても縁組みの手続き中でしたよ?』
『最初に言えば、縁組みは消されてしまうようだから仕方ない・・・』
『ですね・・・』

『霊を見るんでしょうかね・・・』
『彷徨う霊の不思議さの理由を確認しているやもしれませんね』

『怖くて一緒にいれないと言うのは、それが理由で・・・』
『でしょうね・・・』
『にしても浴衣を着たままとは・・・』

『洗う時だけ脱いでくれます・・・(笑)我慢した顔で待ってますから・・・』
『(笑)急いでアイロンで乾かしてますよ・・・』
変な子・・・その物言い・・・あの子に向けた言葉に違和感をもった。

『今日は・・・』
『(笑)珍しく、あの場で眺めてますね・・・』
いるのかと牧師の言葉で気づき辺りを眺めれば、一番前の席で見上げている姿があった。

微動だにせずに、ジッと耳をすませ眺めているような姿があった。
『始まった・・・』
その言い方にムカついたが、女の子を眺めれば・・・何かの後を追うような視線・・・スッと立ち上がり歩き出した。

『何を見てるんでしょうね・・・
ほんとに浴衣一枚って・・・』
『寒くないんでしょうか』
有り得ないと驚いた顔で呟き、子供へ視線を向けたままに呟いていた。

見た目も寒そうで・・・身は小さくしながらも視線は何かから外さずにいる・・・その目は悲し気でもあり辛くなった。

『一人・・・』
思わず呟く・・・自分には両親も祖父母もいたが、自分の隣に居てくれる家族はいなかった・・・

本当に時々だが、小さな頃は祖母が声をかけてくれていた・・・祖母以外は透明人間のように視線もない。

世話をしてくれる人は二人だったが用がなければ自分の隣にはいなかったが会話は楽しめた。

それ以外の人達とすれ違えば、背から向けた視線は突き刺さった・・・そこで初めて自分は許されない存在だったと気付いた。

その理由を聞いた事もない・・・誰も話してもくれなかったから・・・祖母さえ理由は言わなかった・・・それも初めの頃だけ。

学校の事を少し・・・その日の食事の事を少し・・・殆んどはメイドと会話をしていたが、その会話も似たような感じだった事を思い出した。

それでも大学までは行けた・・・大学も行けとも言わず行くと言えば、分かったと父親ではなく秘書が答えた・・・その手続きは教えてくれたが自分で頑張った。

仲間外れ・・・それは自分にも気にもならなかった・・・会話を楽しみたいなら学校へ行けば出来たから。

バイトもしてみれば、より楽しくなった・・・ならばと自分で生きれる先を考えてきた。

先ずは貯金と貯めて行った・・・学校以外の空いた時間は全てバイトで潰し稼いだ。

スカウトされ自分には以外とあうのだと気づけば、いつかの先と足を踏み入れたのが今の場所だ。

稼いだ全てを貯める・・・学びも惜しまず我を出さずに徹底してみれば足を引かれる事なく日々を過ごせた。


自分が来た道を思い出してみれば、あの子と変にダブル事に気づく・・・不気味さ・・・それもなく妙に気になり始めた自分もいた。

一人で生きているのだと、この子の姿を見て思えば苦笑いしかない。

いつからか視線に入る子・・・それはイベントがある日が多かった・・・それに気付いてからは何故か違う日にも出会う確率は増え笑えた。

いつかは自分の戸籍を弄った・・・一人暮らしを始めた頃にだが、それは驚かれたのか弁護士を連れて秘書が会いに来た事に驚いた。

ならばと自分が頼んだ弁護士に連絡をしてみれば、弁護士同士の話し合いは続いた。

その間に父親が声にする事もない・・・黙って外を眺め珈琲を飲んでいただけ・・・車で待っていただけ・・・

育てて来てくれた事は感謝すると声にし席を立った・・・慌てるように追いかけて来たのは父親でもなく秘書の方・・・その理由に口を引いた。

『教えてくれて、ありがとうございました・・・
大丈夫です・・・これからも一人で生きて行けますから・・・』

押し黙る・・・礼をし見返したが父親の視線は自分になかった事に可笑しくなった。
ほんの少し、期待した自分がいたのだと思えたから。

ならば帰ると取り合えず言い、その場は弁護士へ任せ自分は帰ってきた。

本当に一人になれたが、悲しさはなく一人だが頑張って生きる自分を誉めた。

直ぐにあの子を思い出せば苦笑いだ・・・二人なら楽しいのかと考え始める自分に笑った。








my seif -13

2021-11-27 10:02:18 | my self


店の子の話に驚いたトウコママ・・・そっとハルを呼び話を始めた。

『事実なの?』
『すみません(笑)。どうしても頭から離れなくて・・・』

同じ店を数ヵ月ずつ回るハル・・・それが楽しいのだと呟き、ならばしてみろとママが言った。

今はトウコの店・・・そこで仲良くなった子とプライベートでも遊びに出ていた事は知っていた。

思わず呟いた一言が、大きく膨らんでいた・・・諦める・・・その言葉が自分の中で止まり日々、考えるようになっていた。

何気ない日常の中で・・・
給料が入った時・・・その月の生活費・・・その月の支出・・・服を買った時・・・本当に色んな場面で二人分ならと考えた。

その先の夢・・・纏まった金額になれば、借りていたモノを一気に返済した・・・

この一ヶ月の間は、仕事終わりで・・・その休みに・・・体は休ませ頭だけを働かせた。

知らない場所は勉強だと図書館へ出向く・・・法律へ関係しそうな事は相談と、聞いてくれそうな事務所を探し出向いた。

友達が呟く・・・そうかと教育の部分で調べてみる・・・

-だけどね、働いてる間は誰が見てる?一人で留守番は大丈夫なの?-

聞かれて答えられなかった・・・一般的に、その歳なら夕飯を食べお風呂に入り眠る・・・その部分は自分が居ない事に気づく。

そんな時間に誰を雇うのかと・・・ひたすら考える変な楽しみになっていた自分に笑えた。

普通なら諦める・・・ママからすれば遥かに自分は子供だ・・・人を育てるという事は、自分が出来るのか不安にもなる。

無意識にも先の事のように考えている自分がいる・・・自分の・・・夢の道の隣に・・・共に生きるという事を置いていた。

『母親になりたかったの?』
『違います』
『どうして?子供でしょ?赤ちゃんでもないそうじゃない・・・』
『はい・・・』

聞かれた事は話せるが・・・どうにも切り離せない自分は先へ共にする理由が必要になった。

それでもと答えれば、今は仕事だと促され・・・話は止まった事にハルはホッとしたのだった。


暫くしてママから呼ばれ店へ向かった時に話をした・・・トウコママが気になり相談しに来たのだと。
何度も謝り自分はと声にした。

『顔見知りって(笑)そんな関係じゃだめなの?』
『共に生きたいと思っています』
『(笑)男だったなら頑張れと言えるんだけどね・・・』

『(笑)すみません、ちっちゃくて』
『また囲われそうになったと聞いた(笑)だからかい?』
苦笑いをしながらもママからの声に考え、自分の気持ちも言ってしまおうと声にした。

『いいえ(笑)違います。それはそれ、(笑)これはこれ・・・でした。

お金がかかると聞いたら(笑)二人なら、どの位いるのかとか・・・不意に考えた自分がいました。

この前は、私の仕事中は誰がみてるのかと聞かれて・・・確かにと思った途端に誰かを雇う・・・とか色んな考えをしてる自分がいる事に驚きました』

『 ・・・(笑)楽しそうだね、ハルの顔が』
『はい(笑)物凄く・・・』
『いつかの夢(笑)あったろ』

『そうなんです(笑)。その隣に自分でレールをしいて考えてました・・・
その子の母親になりたいとも思えません・・・何故か分かりませんけど、共に生きる先を考えてるんです』

『だから引き取る?』
『直ぐには無理でした・・・その時の為に調べあげて・・・出来たら具体化出来るようにしていこうかと』

思っていると声にするハル・・・既に自分の中へ落としていたように見えた。

ペットでもなく人だ・・・一人で生き抜く事も難しい場所にいるハル・・・なのに自分以外の人をおいた。

そしてそれは小さな子供・・・育てなければならない・・・親の代わり・・・そこまで思ってもいないハルだが、自分が先へ生きる為に必要な子供なのだと訴えている気もした。

自分を知る・・・ならば見守ろうとハルを帰し、カヨママはトウコと話をするのだった。




色んなタイミングで、その子と出逢う・・・
-(笑)また散歩してる-

直ぐに気付く自分・・・寂しそうでもない顔・・・前より表情は少ない気もしたが、今は気にならなくなった。

不思議と楽しそうな場面もあったから・・・声をかければ待つ・・・聞いてみれば暫く考え自分で返事をしてくれる。

相変わらず声はないのに不思議と分かる自分も笑えた・・・手を繋ぐと一緒にと言いたげに離さずに自分を連れていく。

それが、子が行きたい先へでも楽しかった・・・何処へと眺める・・・一人でもない空気は分かる・・・自分が見えないだけ・・・それだけだと思える。

怯える・・・怖いと震える・・・その時々で第三者から囁かれるが、無表情だから・・・声がないから・・・そんな言葉が心で呟くだけだった。

会えば、また会えたという笑みが自分に深く浮かぶ・・・だから帰るときに、いつかと・・・誓うように笑み子を見つめる。

了解という笑み・・・そんな目が自分へ向けられる気もして、それまで頑張れと見送る。

じゃーねと手をふるが、子はジッと見返す・・・またねと言っている気もした。

口端が少しだけ引かれた気がした・・・だから次からは先の夢を話そうと誓った。

現実になるように話しを言おうと・・・理解は難しくても楽しいと話したら分かるかと考えていく。

店は辞めさせられるまで、申し訳ないがと居座る強さを鍛えようと誓った・・・まだまだ学べる事は多いから。

不思議と声にもしてくれるママ・・・それはトウコママ達までが声をくれる。

嬉しくて・・・有り難くて・・・何より楽しくなったハルだった。


年若いハルの強さは誰よりも秀でていた・・・教えれば理解し自分がしやすい方法で手にし言動に出た。

こんな場所に自分から浸り、荒れる波さえ利用して上手く泳ぐハルに呆れる事もあった。


久しぶりにサキコと会えば、ハルの今を話してみる・・・ウチに居た頃はとサキコが声にする。

なら次は、こうしようと考えハルに会った時に言ってみる・・・それは日が過ぎる間に自分へ染み込ませていた。

試しと一ヶ月という期間でヘルプで出してみた・・・その店のママは自分から囲われた。

そんな場所での体験と行かせたのだ・・・多少の危険はある・・・それは不安でもあり、その組織の場にいる人へ連絡をした。

様子見で出向いてくれた事に感謝した・・・その男が指名し他から一線を引いた事で無理強いはなくなった。

それでもハルから少しずつ回ると聞き苦笑いだが、スッと離れる上手さで交わしていた事も聞き笑えた。

戻したハルの顔つきは、楽しかったのだと思え先の夢は実現しそうだと思えた自分に笑えた。

貯めたモノで少しずつ準備をしていたハル・・・そうかと聞き凄いと誉めた。

その場でいいのかと聞けば、確実ではないと言ったハルに呆れ眺めた。

『お金が回る場所だけに(笑)完全に離れる事も出来ない事は知りました・・・ならば自分はと(笑)ソコで生きる為に考えていこうと自分に誓いました』

だから頑張れると笑うハル・・・サキコに似た言動に可笑しくなった・・・その上手さを手本に自分へ繋げると。

ならば、ソコへ戻れと言ってみた・・・
『 ・・・』
『(笑)どうした』
『あの・・・私は不要になりましたか?』
ハルの戸惑いに苦笑いしかない。

『ここでの学びは修了したと思ったのさ(笑)。その、サキコの腕を自分の中で完全に染み込ませてから始めてみなさい(笑)』

『 ・・・』
『(笑)なんだい』
『 ・・・放り出される気分に・・・』
急に不安げな顔になったハルを初めて見た気がしたが、それが可愛くて苦笑いだった。

『独り立ち(笑)、いつか先と思い込んでるだろ・・・そういうのはタイミングが合えば自分で気付く。

ここでは終わりだ(笑)店を変えて自分へお復習してから足りない自分は何かを考えなさい(笑)
今までも自分で考えてきたろ(笑)ハルなら出来るさ』

『 ・・・』
『ハル(笑)』
『はい』
『(笑)早々に現実に向かわないと、ハルの店に遊びに行く事も叶わなくなるだろ(笑)』

『 ・・・どこか』
『違う(笑)。私も歳だ・・・(笑)自分で着飾って歩いて行きたいからさ(笑)。ハルと生きる子にも会いたいしな(笑)頑張れると知ってるから言ったんだ』

優しい笑みはハルの不安も消していく・・・出来るから言った・・・そう思う事にして、自分の不安は押し込め頷いた。


それからの日々、次々と店を回り挨拶と仕事に励んだ。

別れの日・・・驚いた事に皆が見送りに来てくれた・・・挨拶とママの店の中で笑っている人達へ深く頭を下げたハルだった。

迎えに来たのは高浪だった事に驚いた・・・
『サキコママの指示だった(笑)、ハルを派遣させる事は出来ないから心配するな。
で(笑)早々に伝えとく』

『 ・・・』
『2つが(笑)揉めてるが店には遊びに来てる・・・上手く泳げとさ』
『 ・・・』
驚いたハルに笑う人達は高浪の車へ押し込めた・・・

『泣かない(笑)』
『(笑)頑張れるわ』
『探して集めときな(笑)』
皆の声に感謝するハルだった。




取りあえずのマンション・・・引っ越しの荷物の山に高浪が笑う。
挨拶とサキコママの店へ行けば、場所が違うと案内され驚いた・・・高級といえるクラブだったから。

こういう店もあったのかと驚いたハルだが、促され・・・その店内に苦笑いだった。

繋がりは濃いのだ・・・似た雰囲気の調度品・・・その雰囲気までが同じ気もして嬉しくなった。

どんな客かと聞き入れば、それは企業名で驚き・・・たまにはと聞けば聞いた事はある組織名にまた驚いた。

交じらない凄さ・・・なら自分はと聞きながら考え始めたハルにスタッフが驚いたのだった。

働き初めて直ぐにハルの位置が変化した・・・指名されど元の彼女も一緒に出向く。

客へ遠巻きに言っている気もして、女たちも気にもしなくなった・・・必要以上に声にもしない。

話の幅も広く声にすれば楽し気に呟くハルに驚く客も多かった・・・楽しませる・・・その客の空気は誰より早く気付く。

だからか席を出るタイミングは良く指名は増えていた事に、ママが女たちへも指示していた。

代わらず手があけばピアノに触れ優しく店内を響かせる・・・リクエストも余裕でこなせるハルになったとママが微笑んだ。

稼ぐ女へ・・・稼がせてくれる女へ変身していた彼女に優しく笑み返すサキコだった。









my seif -12

2021-11-26 09:35:57 | my self


話がすみ、深く礼をしたハル・・・
『すみませんご迷惑をおかけして・・・これ以上は私が申し訳ないので残念ですが辞めさせて頂きます』

『(笑)大丈夫になりそうよ?』
『ほんとですか?』
大丈夫と言った声に、本当に残れるのだと嬉しそうに聞くハルに苦笑いをした。



少し前に、ママから連絡が来てハルを連れて来いと言われた。
何とかなるのだとホッとしたトウコは話終えるハルを待った。

納得していない顔・・・それでも何処かと連絡を取りながら店から出た男は足早に帰って行った事にホッとした。

力なくソファーに凭れ半分は諦めたような顔のハル・・・それでも言い切ったのだろう僅かな戸惑いがみえた。

半端ない度胸はあったのだと、組織に属した男へ声にしたハルも凄いと誉めたくなった。

自分を持つ事は出来るが、何処かで諦めなければ住めない場所だ・・・大事な何かは簡単に潰されていく事も知るだけに 貫くハルを眺めるトウコもいた。



『ここ・・・』
前に連れて来てくれた特別な店だった事に驚いた・・・トウコママに迷惑をかけたのだと思え申し訳なくなった。

大丈夫になりそうと聞いた時に気付けば良かったと悔しくなった・・・何より端へ停められている車の数でトウコママだけでなく、ここのカヨママにも迷惑をかけてしまっている事に気付いた。

どうにもならない・・・自分では不可能という域に来てしまったのだと思えば悔しさも辛さも どうでも良くなってしまった。

それでも謝らなければと意を結して後に続き店内へ入るハルだった。


店内は・・・席が見えないほどに通路の両端で列をなす人達の数に驚いた・・・奥の席で待っているのだろう姿はまだ見えなかったから。

厳つい男たち・・・数多い中を項垂れながら歩いてくる子に口を引く・・・緊張した顔にみえるが、間を通り抜け歩く姿は怯えもない気がした。

それにも気づいたのだろう男・・・その微かな笑みは溢れ見惚れるように眺めていた。

『(笑)どっちだ?』
『(笑)後ですよ』
決まっているだろうと笑みを浮かべて呟くカヨママもいた・・・トウコがハルを促す・・・席へ座る二人へ会釈したハルが見返した。

『申し訳ありません・・・カヨママにもご迷惑をおかけしてしまいました・・・』
『なぜ(笑)そう思う?』

『この状態を見たからです』
『へぇ(笑)』
『力足りず・・・』
項垂れ・・・今度は本当に諦めたかのように呟いたハルだった。

『俺が言っても無理なのか?』
『申し訳ありません』
『ハル(笑)お前を知るな・・・』
別の場所にいた男が声にする・・・見知る人との繋がりはあったのだと思えば余計に力が抜けそうだった。

『はい・・・足を運ばせてしまい申し訳ありません』
『さっきの答えは?』
『申し訳ありません』
『はっきり言え』
『はい。お断りします』

『無理やりでも捕まるぞ?』
『そんな時は・・・どーしたら拒否できますか?』
『 ・・・』

『囲われるつもりは一切・・・それは拒否させて頂きます。夜へ入る時に決めたので、それを代えるつもりもありません』

『(笑)好きな男だったら?組織という場所の人・・・』
今度はトウコママに聞かれた・・・
『 ・・・』
『(笑)諦めるしかないわね』
トウコの声にハルが考える・・・

『 ・・・いつかの・・・夢の場所が、その近場になるだけでしょうが・・・その場所まで囲われるなら・・・諦めます』
『できるの?』

『その日までの自分が消えますから・・・無駄な勉強になったと・・・終わらせるしかありません・・・』
『 ・・・』
『嫌なのね(笑)そんな場所・・・』

『嫌なら足も入れません。
私自身で選んだ道なので・・・その自分を鍛えて生きてるだけです・・・壊されず自分ごと鍛える・・・そうすれば自分が生きていけて、助けて貰えた恩は返せます』

『誰かに生かして貰えたから?』
『今はカヨママだけではなく、トウコママにも・・・今まで居た場所で出逢った方達にも・・・

・・・ ・・・働けば自分が生きれます・・・貰えたモノで衣食住・・・全てが賄えますから』

『高浪の場所だったろう・・・』
『より近くなり始めたので、手放して貰いました』
『お前だけだそうだ(笑)拒否したのは』
『申し訳なく思います』

『(笑)その人にも迷惑をかけたって事よね・・・』
『はい。無理難題で苦しむ姿は見たくないので願い出ました』
言い切るハルに苦笑いだ・・・

『止まるつもりは?』
『ありません。今回はカヨママへまでご迷惑をおかけしました。
なので・・・残念なんですが・・・トウコママ・・・』

『(笑)恩は返してかないのか?』
『今の私では無理です・・・勝手しますが、いつか必ずさせて頂きます』
『 ・・・(笑)』

『分かった。ウチは(笑)次はないと思え』
『手放して頂きありがとうございます』
『恩は?』

『どうすれば』
『貸し切りで飲ませろ』
『承りました。忘れずにお待ち下さい・・・』

『ハル(笑)』
『はい。ママにも・・・同じで構いませんか?』
『生きてる間によ?』
『(笑)頑張ります』

『ねぇ(笑)私も?』
『はい(笑)、揃えますから』
『(笑)どんな意味よ』
可笑しくて笑むトウコが呟く。

『場を和ませるイケメンで許して頂けますか?』
『おっけ(笑)』
『(笑)頑張ります』
そうしてと笑むトウコに笑うカヨママもいたのだった。

目の前の人は別の場所を眺めていた・・・それが誰かは知れる・・・場の話で、それは誰かと気付かせる事は駄目だと振り向くのも止めたハルだった。

『連絡は自分からしとけ』
『必ず』
それ以上は声を止め、静かにうつ向いていたハルだった。

自分の為とはいえ貫く姿勢は凄いと眺める・・・自分の下が惚れ抜き手にしたい衝動も分かる気がした。

他の仲間からも観察はされていた子・・・場を和ませる女でもあり、荒れる前に止め 場を静める姿も勇ましかったと記憶していた事を思い出した。

店を変えていく女・・・高浪の感も鋭く声が始まる前に女を守るべく声にしていく。

運んでくる女の出来は、何処よりも高い・・・場所に女のレベルを合わせてくる。

飛び抜けていたのがハルだったのだと今更だが気づけば苦笑いだ・・・部下を楽しませる姿も思い出せば笑みが自分に溢れママに見られた事で笑い・・・誤魔化すしかなかった。


翌日・・・外と直接 会って話をしたかったが、電話でいいと言われ男へ何度も謝罪という言葉を重ねていった・・・・自分はと先の夢も声にして・・・
最後だと男の言葉が積み重なる・・・

『 ・・・私よりも素敵な方が寄り添っているよう祈ります・・・
ずっと・・・贔屓にして下さり感謝します・・・ありがとうございました』

『 ・・・ ・・・事を大きくして悪かった』
『言葉が足りず・・・ご迷惑をおかけしました・・・申し訳ありません』
『(笑)そこまで言うな』
『体を大事に・・・』
『 ・・・』
暫く無言で聞いていたが、そっと電話が切れた・・・

今の自分では無理に通す事は不可能だったのだと、誰かへ迷惑をかけていく事なのだと思えば 全ての言動には細心の心がけは必要なのだと思えた。

ならばと次へ自分を押す為に頑張ろうと誓うように身へ染み込ませた。


気分も替えようとトウコママに連れ出された先・・・新たな店だと後へ続き店内へ入った。

待ち構えたようにズラリと席へ座る女たちの視線は自分に張り付き出した。

それでも昔、自分へ突き刺さった視線のようでもない事は気づく・・・

『(笑)ここはね、接待で使われる事が多いの』
『難しい場所でもありますね・・・』
『そんな場所で働いた事は?』
『オーロラという・・・』

『そこにも居たの?』
『知り合いでしたか?』
『(笑)私と昔ね』
楽しそうに笑むトウコを眺め、待っていたと微笑んでいた人に気づき会釈した。

『ハルと申します・・・』
『(笑)ヤヨイよ。着物は持ってたかしら』
『数枚なら・・・』

『ハルは、お下がりも着れる?』
『(笑)頂ける・・・あ・・・買います・・・か?』
『『(笑)あげるわよ!』』

席の方から声がして、誰かと見返したハル・・・彼女達が譲ってくれるのだと思え礼を言った。

『(笑)普通は拒否するものよ?』
『習うのにですか?』
『 ・・・』『そー・・・よね・・・』
3人の子達の声に、フッと笑うヤヨイママもいた。

『トウコの店より遥かに使う言語は多いわ。お客様の声は止めず間へ挟まらない事(笑)、出来るわね』
『頑張ります。些細な事でも教えて頂けますよね・・・』

『 ・・・』『ん?』
『伏線をはられた会話に気付かず・・・もしも・・・』
『なるほど(笑)。確かに交ざるわね・・・迷ったなら声にしなきゃいいだけよ。
声にしてしまったなら、濁し場を切り替えてく(笑)気づかれないようにね』

『がっ頑張ります・・・』
緊張した顔に微笑んで眺める人達・・・フーと息を吐くハルに優しい眼差しは増えていった事に ヤヨイとトウコがホッとしたのだった。


慣れが早く助かったと、自分へ呟いたのは店のトップにいたコナツだった。

ハルの覚えは早く、呼べばどんな席にも遠慮なく入る事に最初は驚いたが素早く抜けても行く上手さは店の子達が苦笑いをしていた。

人払いのように女たちを出した席があった・・・ならばとヤヨイはハルを呼ぶ。

『はい』
『(笑)それほど大きな音はさせず、ゆっくりした曲でピアノを弾いててくれる?』
『はい(笑) あ、どんな曲でも構いませんか?』

『ジャンルは(笑)問わなかったわね』
『はい・・・選曲に迷います・・・』
『マネージャーに数曲(笑)選んで貰って』
分かったとハルはマネージャーを探しに向かった。

楽譜があったとホッとはしたが、緊張もする・・・知らない曲だったらと思えたからだ。

それは知るのか、知るかと先に聞かれた事に驚いた・・・眺めてみれば知る曲が多かった。

知らなかった曲・・・記憶が不安な曲 全てをマネージャーに声にした。
取り合えずと選んだ曲を眺めピアノがある場所へ向かった。

マネージャーが準備をしてくれる間に深呼吸だと静かにハルは身を落ち着かせた。

柔らかな曲は優しい響きで店内へ流れる・・・それぞれの席の確認と店内を歩くヤヨイが微笑んだ。

一番近い場所・・・ソコへ視線を向ければ客が振り向き眺めていた。

『(笑)お話の邪魔になっていましたか?』
『いや(笑)大丈夫だ』
『(笑)止めていたなら謝ります』
『構わない(笑)、明るめの曲なら歓迎だ』

『(笑)リクエストあるならどーぞ。プロではないので(笑)あの子が弾けるならですが』
『 ・・・』
『(笑)ごゆるりと』
そっと声をかけたヤヨイは席から離れたのだった。


不意に一人の客がハルのもとへ向かう・・・マネージャーが対応したが外国人なだけに苦笑いをし、ハルに声をかけた。

弾きながらも笑み返し会話をしていた姿にヤヨイが微笑んだ。

題名は知らないのだろう、身ぶり手振りで耳元へ声にする姿になり様子を見ていたが・・・曲は終わり次へ変えた・・・客が聴きたい曲だったのか笑みを浮かべた。

そこから離れず聞き入る・・・微かにアップと聞こえれば、早さが変わり・・・より楽し気な客にスタッフまで笑みは溢れた。

同じ曲なのに曲調は変化していく・・・客がリクエストしたのだろう、これだと頷く。

その席へ視線を向ければ、話を始めた事にホッとしたヤヨイ・・・別の場所で明るく気を引き寄せていく子に笑みながら眺めるのだった。


携帯を触り客と話をしていたハルを見たヤヨイ・・・その理由が知りたくて席へ向かう。
ボーイが気づきヤヨイへ声にした。

『観光する場所を探してます。ハルさんは知らなかったみたいで・・・』
『行き方とか?』
『はい(笑)、言いながらメモをしてるようです』

そうかと、ならば任せようと離れたが・・・ハルに呼ばれたボーイは暫くして自分の元へと来た。

『何があった?』
『一緒に行って通訳してくれと(笑)。断っても譲らなくて(笑)、いい方法はないか聞かれたんですが・・・』

それは知らなかったと自分へ聞きに来たのだと笑み返したヤヨイは、静かにハルの席へ向かった。

あの手この手はコレかと笑うヤヨイ・・・それでも後に仕事はあると丁寧に断る。

諦めずハルを眺めれば、発見と声にして携帯サイトを出した。

「通訳付きのガイドが来てくれます(笑)、申し込みましょうか?費用も・・・あ(笑)安そうです」
「 ・・・ ・・・」
「(笑)いいですか?」
「おーけー(笑)頼む」

了解とホッとしたハルは直ぐに連絡をした・・・ちょうど居たと話して貰う・・・客の番号を聞き向こうへ伝えれば、直ぐに折り返された事に笑み返した。

「(笑)ハルと行きたかった」
「お誘い(笑)ありがとうございます。私はここで(笑)お待ちしますね」

素早く切り返したハルに苦笑いをした客は、ヤヨイママに礼をし帰って行った。

ホッとしたハルに笑みながらヤヨイは頑張ったと眺めれば、確認のように断り方や話し方は合ったのかと聞き返され呆れた。

『(笑)キャリア向けね、ハルは』
『 ・・・すみません(笑)』
理解もしたハルに笑み次だと促したヤヨイだった。

ここでの楽しい時間が終わる・・・楽しく学べたと礼をするハルに皆が呆れる・・・より楽しむ子は想像以上だったと・・・


不思議と曜日で代わる人達・・・新たな店がそうだった・・・サキコママを思い出す・・・客は客と対応するハルもいた。

その関係性はマネージャーが知る・・・そうかと手が空いた時は観察するハルだった。

『(笑)お前は一線を引きすぎだろう・・・』
不意に声をかけた人へ振り向く・・・会った記憶を思い出し丁寧に会釈し見返した。

『(笑)話は聞いたが』
『失礼致しました(笑)、加減が下手のようで・・・勉強中でした(笑)』

だよなと笑う客が肩を組む・・・その腕をつつかれ笑う客が振り向けば、ママのナツキが微笑んでいた。

『ナツキママ(笑)失礼しました』
『 ・・・(笑)』
『ナツキはあっち(笑)』

男が違うと笑み肩にあった手の先が示した・・・笑い会話を楽しんでいた男が気付き笑み返す。

そうかと眺めナツキへ視線を向ければ、穏やかな笑みだったとハルも笑みを浮かべた。

『(笑)嬉しいか』
『はい(笑)ママの笑みが素敵でしたから嬉しくてつい』
笑ったのだと答えれば、驚いた顔になった・・・呆れたナツキはハルから離し男を促した。

ここでは席へつかずアシストだけにと言われていたハル・・・次々と間を抜けていく上手さで仕事をしていたのだ。

リクエストも多くピアノの前が指定席のようになる・・・挑む客がリクエストする・・・ならばとアレンジし弾くハルもいた。

悲しい曲は楽し気になり、明るい曲は穏やかに・・・懐かしい曲は激しい曲にまで変化していく。
その可笑しさは客も楽しんだ・・・

珍しくクラシックの曲名が出され弾いた・・・隣に居座る男が○○風にと呟き・・・曲調を変えていく・・・暫くすればまた声がする。

可笑しくて笑むハルだったが、言われたままに曲は残して弾いていった。

偉いと抱き付く男に皆が笑う・・・礼をしたハルは丁寧に離れ近寄るなと笑う・・・そんなやり取りまで笑われるが楽しいならと気にせずにいた。


抱き付かれる寸前で止められるようになれば、不意に抱き付かれる事も少なくなった。

酔った客が不意に現れ鍵盤を叩いた・・・視線は集まる・・・その音に続けと激しく音を出し曲へ繋げたハルもいた。

笑う間にボーイが来て離される・・・すると優しく戻していく音にナツキはホッとしたのだった。