がんに克つ

父のがんを治すためにがんを研究しました。がんは意外と簡単に治ることを知ってもらえたら、亡き父も喜んでくれると思います。

脳腫瘍

2023-08-13 08:53:56 | 健康・病気

今回は、『臨床三十五年 続・漢方百話』(矢数道明:著、医道の日本社:1965年刊)という本から、山豆根(さんずこん=抗がん作用が確認された生薬)による脳腫瘍の治療例をご紹介しましょう。

なお、著者の矢数道明氏は、1905年(明治38年)生まれで、1930年(昭和5年)に東京医学専門学校を卒業後、漢方医・森道伯師について漢方医学を修業し、その復興に尽力したそうです。

この本によると、1964年(昭和39年)4月12日に、9才の女児が両親に伴われて矢数氏のところにやってきたのですが、その顔色は真蒼で、眼球は上方へ吊り上り、半ば意識がないようにガックリとしていたそうです。

両親によると、この児は5才のときに頑固な頭痛を訴え、嘔吐が続いたので、名古屋の大学病院で精密検査をうけたところ、脳腫瘍と診断され、手術をしてもらったそうです。

ところが、昨年11月頃から手が震えるなど様子がおかしくなったので、驚いて再び名古屋の大学病院に連れて行ったところ、脳腫瘍の再発と診断されたのです。

しかし、もう手術は不可能で、コバルト療法をしようというので、4か月間入院してその治療をうけたのですが、手の震えも他の症状もますますひどくなるばかりで、ほかに方法もないからというので3月下旬に退院したそうです。

そして4月初めになると、ひどい頭痛が始まったため、東京の代表的大学病院2か所(T大とK大)で診察してもらったところ、どちらも脳腫瘍にちがいないから、とにかく切開してみるほかはない。治るかどうかはもちろん判らないといわれたそうです。

3年前に手術をして、もうあのような手術はさせたくないというので、両親はすっかり迷ってしまったのですが、知人宅に立ち寄った際に、そこで矢数氏の評判を聞いて、病児を抱いて自動車でかけつけてきたのでした。

矢数氏が患者を診察したところ、身体は年に比して小さく、皮膚は蒼白で、水毒の保持者ともいうべき水ぶくれの状態であり、脈は弾石という怪脈ではないかと思われたそうです。

また、腹証をみると、全体が膨満し、心下部は硬く張っていて、右季肋下部が特に硬く、指先がちょっとふれただけでも顔をしかめて身体を動かすほどひどい胸脇苦満(きょうきょうくまん)だったそうです。

さらに、舌には少し白苔があり、口渇と頻尿があって、尿は20分に1回ぐらい、少量ずつ出るということだったので、小柴胡湯(しょうさいことう)証と五苓湯(ごれいとう)証との合併と判断して、主方を柴苓湯(さいれいとう)とし、山豆根の粉末1グラムを午前午後の2回に分けて兼用させたそうです。

両親の希望で薬は1か月分を処方し、2度目の来院は5月8日でしたが、患者は独りで歩いて診察室に入ってきたものの、まだ顔色は蒼く、足どりもしっかりしない状態でした。しかし、腹証や脈証が別人のように好転していて、眼球も動くようになっていました。

経過を聞くと、薬を服用した最初の2日間はすっかり食欲がなくなり、グッタリしたが、3日目から、急に食欲が出て元気になり始め、頭痛がとれ、上機嫌になり、5月1日から床を離れ、本を読むようになり、尿も2時間に1回ぐらい、夜は1回になったとのことでした。

そして、11月5日に4度目の来院をした際には、すべてが好調で、学校の成績もだいぶよくなり、手の震えも止まったため、ここで治療は終了したようですが、初診より1年2か月後に病状を問い合わせたところ、とても元気に学校へ行っていることが確認できたそうです。

したがって、この症例では、山豆根によって脳腫瘍が完治したと考えられますから、次回は山豆根について詳しくご紹介したいと思います。

最後に、今回登場した柴苓湯は、小柴胡湯と五苓湯との合方で、小柴胡湯については本ブログの「蓄膿症」で解説していますので、よかったら参考にしてください。

また、五苓湯(粉末で用いる場合は五苓散)は、体内の水分を調整する利水剤で、使用目標は、ロ渇がひどく、水をたくさん飲むのに尿の出が少ないという症状だそうですが、頑固な偏頭痛や三叉神経痛にも著効を示す場合があるそうです。

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