とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

雨の日はオペラ ベンヴェヌート・チェッリーニ

2017年08月17日 | 雨の日はオペラ

 私はベルリオーズの音楽が好きだ。中学生の時シャルル・ミュンシュの1962年録音の「幻想交響曲」のLPを親に買ってもらい、以来ミュンシュのベルリオーズを聴き続けてきた。ちなみにミュンシュの幻想交響曲はLP,CD,DVDで13種を所持している。また彼のベルリオーズの演奏は、ほぼ網羅したが、残念ながら、彼はオペラの録音を残さなかった。また私自身、「絵のないオペラはオペラでない」の気持ちから、オペラはLp,CDは所持せずにビデオ、レーザーディスク、DVD時代になってから興味を持ちコレクションが増えた。しかし、「ベンヴェヌート・チェリーニ」は作曲当初から上演困難と言われ、上演はまれであり、私は聴く機会がなかった。

 しかし、2015年5月にアムステルダムのネーデルランドオペラで上演された(下記の内容)オペラを観て、(BDにダビングした)非常に感激し改めてベルリオーズの天才のなせる業と感服した。ただ正直に言えば、まだこの音楽の魅力は100%表現しえていないと思った。演出がカルロス・パドリッサだったらとか、あるいはロベルト・レサージだったら、また音楽が、ジェームズ・レバインなり、フィリップ・ジョルダンだったらと思ったりもした。、

 そんな折に、HMVをNet検索をしていたら、2007年のザルツブルグ音楽祭でウィーン国立歌劇場と、ゲルギエフ指揮での上演が行われ、そのBDが発売されていた。すぐに「購入」をクリックした。2007年8月は、前立腺癌の全摘手術を受け、その後の仕事の空白を埋めるため、退院後は全国を飛び回りザルツブルグ音楽祭のニュースは気が付かなかった。したがってその上演の出来についても、知る由もなく、音楽祭の情報は知らなかった。

 そんなことで、購入したが、まとめ買いの特典を得るため抱き合わせで、先月に購入したものの、2時間45分のオペラを、見る機会ができず、お盆期間の予定が雨でながれ、その日に、改めてネーデルランドオペラの上演と続けて比較してみた。

 結論から言えば、ゲルギエフ+ウィーンフィルのブランドとマーク・エルダー+ロッテルダムフィルの先入観では、ゲルギエフに軍配が上がるのだろうが、序曲が始まるや、演出の差で勝敗が付いた。ネーデルランドオペラが段違いに良い。上演時期に開きがあるが、演出の良し悪しはあまり時代に関係はないだろう。古くてもよいものは良いし、新しいものが良いとは限らない。しかし、2007年のザルツブルグ音楽祭は悪く、2017年のザルツブルグ復活祭のカラヤン演出の復活によるワルキューレも悪かった。こちらは元もとできの悪いのを、カラヤンの名前だけでの復活演出したものだけに良いはずがないが、それにしても、2007年の演出と10年後の2017年の演出が、なぜかバイロイト演出も含め、伝統の陰りというか、時代に対して、切り開く力が失われていくさまを感じた。まだ今年のバイロイト音楽祭は見ていないが(NHKで21日に放映予定)音楽文化の中心が、ドイツ・オーストリアから離れてゆくさまを感じる。ゲルギエフのベンヴヌート・チェリーニは昨今のバイロイトのワグナーも、演出家の悪い冗談が多すぎる。時代の読み替えはそのものに発展はない。そして作者と音楽家がその時代に発信した、普遍的なメッセージまでもを消し去ってしまう演出は作品の改悪でしかないし、作曲者と台本作者のへの冒涜以外の何物でもない。それにしても、この2007年のザルツブルグ音楽祭は伝統の抜け殻で商売したものでバイロイト音楽祭と同列のヨーロッパの絶望を暗示したものだろう。



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