とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

日本敗戦 75周年を迎えて (その2)満州を読む

2020年08月22日 | この本は面白い

 先に挙げた「満州国の真実」があまりにも「歴史書」としては、資料の掲載も、作者の主張する事象の具体的なデータの掲載もなく、「講談:満州盛衰記」なら許せるが、表題に着けた「真実」がどこにもない「作者の思い」だけの本にあきれ、書店で数ページ立ち読みしたら購入はしなかったと、Amazonでの購入を悔やんだ。

 そんなことで、ある意味「満州国」の通史をおさらいするつもりで、以前読んだ「<満州>の歴史」を読み直した。やはりこの本は「満州通史」としては新書本1冊にまとめられ、参照した参考文献の一覧もあり、「13年間の国家?」の歴史の意味を読んだ読者が「考えろ」というスタンスで構成された本だった。したがってこの本は作者が丹念に資料をあたりあまり作者の強い歴史観は示めされないものの、読者に参考文献を示し、「読者が自らの歴史感で評価せよ」としたものだが、満州国通史としては読みやすく今回も自分の頭の整理には役立った。

「満州暴走 隠された構造」は、著者はその構造は「大豆・総力戦・立場主義」とする。また大豆を電力に置き換えれば現状の「フクシマ」の姿そのものだと言う。満州暴走は原発暴走そのものと言えると著者は言う。読後私も納得した。フクシマの現状は13年間で決着できるのか?

 米作不適地の満州になぜ日本から大量の農民が満州に渡ったのか疑問点だったが、この本では「大豆」がキーワードとしてマーガリンの発明を機にヨーロッパでの需要増が見込まれ、満州での耕作に大豆が適し採算が得られることから、小作農民の移住が進んだとの指摘は新鮮だった。しかしながら表面的に「五族協和」のスローガンゆえにその大豆適地も限られ、結局は大豆も耕作できぬ奥地に送られた棄民政策に結局は変わってしまった。最終的には、広島・長崎と同等の戦争悲劇としての「棄民政策」が取られ、結局は資産を有する者だけが早々に引き上げ貧乏人ほど命を落とした悲劇の終幕となった。終戦後に満州移民政策を進めた最高責任者ともいえる岸信介は満州を踏み台に、太平洋戦争では政府中枢の官僚として、東条内閣を支え、終戦後戦犯になるも米ソ対立激化に見事な「立場主義」を貫き、生き延び内閣総理大臣として人生を終えたことは、著者の言うところの「立場主義」を生涯貫き通した最高の見本の人生を送ったと言える。

 毎日が「薬漬け」の不健康生活を送るものには、今年の夏が乗り切れるかの不安を抱きながら、鳥撮り散歩も中止しクーラーを利かし、愛猫さくらと戯れる生活を送っている。コロナのために、コンサートも中止が続き、北海道への鳥撮り旅行も中止となり、正直、Netと向き合う時間が長くなった今日この頃です。


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