とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

トム・ロブ・スミスの新作を読む。

2016年08月19日 | この本は面白い

 仕事を辞めると、小説(もっとも推理小説なのだが)を読む機会を失った。通勤がなくなったことと、出張がなくなったことが主たる要因だ。推理小説は半ば強制された時間と空間の中で楽しむのに適したエンターテイメントだと思う。年金生活に入ると有り余る自由時間と経済的な制約を受けるものの空間が広がり、推理小説を読む機会がなくなった。

そんな折に墓参りの帰りに大型書店に立ち寄った際に、トム・ロブ・スミスの新作を目にした。「偽りの楽園」

 これは、まんまと新潮社にやられた。題名と言い、腰巻のキャッチコピーと言い、彼の前作「三部作」を読んだものにはつい手を出したくなる。しかし読み終っての私の感想は「キャッチコピーにだまされた」であり「この本が面白いか?」だった。

 邦題の「偽りの楽園」に騙された。原題は「The Farm」なのだ。読み始めると、主人公はイギリス人の父親とスウェーデン人の母親との一人息子でゲイで同性婚者だ。ここからのスタートで、すぐにキャッチコピーに洗脳され、私の先読み推理は、いわば敵役として登場してくる、スウェーデンの片田舎の大地主のキャラクターが、アフリカ難民の女の子を養女としていることから、スウェーデン社会の常に国際社会に先頭を切る、人権擁護、個人主義生活の自由の確保、性の自由といった未来志向の社会の隠された暗部を描き出すものと勝手に思い込み読み進んだが、私には「こんなのありか?」と思う結末で肩透かしを食った作品だった。

 まんまと新潮社の「宣伝部」のコピーライターに1本取られたホール負けだ。 

 話は違うが、吉田さんの銀メダルを素直に喜べない社会風潮には抵抗を感じた。吉田さんの背中をみて参加した選手がそろって金を獲ったのだから、金にも勝る銀だと思うし、なぜあそこで「銀ですいません」と言わせるせる社会に何か怖いものを感じた。シンゾウ君の目指す国際貢献(=武力解決)の社会が近づいている恐怖を感じた。 



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