ブログ雑記

感じることを、そのままに・・・

乳頭温泉の宿 妙乃湯温泉へ

2007-06-27 15:47:50 | Weblog

遊覧船で田沢湖を一周してバスへ乗った。
乳頭温泉へは40分の行程だった。
冬だと雪に被われてしまっているのだろうけれど初夏の今は木々の色と匂いで包まれて自然の真只中の爽快なドライブだった。
それにしても少し遠慮勝ちな運転のバスで、雪の中を行くように安全第一の構えだった。
せっかちな私は一寸スピードを上げれば、と思ったけれど、恐らくこの道に合った速度だったのだろう。
予告通りの時間で目的地へ着いた。
バス停は宿の前で停留所名も”妙乃湯温泉前”だった。
建物は深山にあるにしてはモダンで店主のコンセプト通りに作られたのだろう。
内装の部材が高級品と云うのではないが洒落ていて、隅々まで手入れが行き届いているのが気持よかった。
働いている女の人は都会のレストランのウエイトレスのように黒いエプロンを腰に巻いてきびきびと小気味よく立ち働いていた。

夕食は大正ロマンを彷佛させる黒を基調にした椅子席の部屋だった。
出される料理は粋な小鉢に季節の地物が綺麗にしつらえられていた。
中でも沢山の茸が入った茸汁は絶品で、茸が奏でる味のハーモニーには驚かされた。
何も特別の工夫を加えていない、お汁なのだが兎に角美味しかった。
猪口っとだけの稲庭うどんもよかった。
鮎の塩焼きも名物のタケノコ焼きも珍しかった。
タケノコは自分でクルクル回しながら焼いてお味噌を付けて食べた。
旅館特製のお味噌が叉美味しくて、家内は無理を云ってわけてもらっていた。
更にキリタンポのお鍋もはじめて食べた。粗つきのお餅ようなだが食べてみてはじめて”ああこいうものだったのか”と納得出来た。
体験はしてみるものだ。

この宿の美味しいものはもう一つ”温泉”だった。
温泉宿だから温泉がよくて当然なのだけれど、今までに体験したことがない温泉だった。
温泉の種類も五つ程あるように聞いたが、私は内湯の”銀の湯”と露天の”金の湯”に入った。
露天風呂は黄色いお湯で全然お湯の中は見えなかった。
恐る恐る足を出しながら進んで、しゃがみ込み、顔をだけ出して前を見上げると、そこは完全に森の只中だった。
生まれたままの姿でじっとしていると茫然自失してしまったように思えた。
和やかな気持になった。

次に内湯に入った。天井も周りも全て木造だった。
ここの湯は少しの濁りもなく澄んでいて、底には那智の小石が敷き詰められていて足の裏を優しく刺激して大いに休まった。
肩までつかって足を伸ばすと向側に届くのかと思うぐらいの湯舟だけれど、溢れんばかりの豊かな湯で、贅沢な気分を満喫した。
窓の横に掛かっていた小板に、”喫茶去”の文字があった。
後で調べてみると、その言葉は禅語で「ようこられた。まあお茶でもどうぞ。」と云うことらしい。
旅の疲れを癒すものには快い言葉に思えた。

いつもの癖でテレビを探したが部屋には”テレビ”がなかった。
今までテレビのない旅館には泊った経験が無かった。
何処にでもあると思っていたから不思議だった。
しかしこれが本当の旅の姿ではないか、と思い直した。

家内と遠いけれど又来てみたいね、といいながらバスに乗り込んだ。

次は平泉だ!