ブログ雑記

感じることを、そのままに・・・

仙台駅の待合室で・・

2007-06-26 16:58:07 | Weblog
一人の浮浪者の若者が待合室のベンチの中央で今にも滑り落ちそうな体勢で足を前に伸ばし、目を閉じてひたすら眠っていた。
服は擦り切れ、シミが全体に付いていた。
お風呂へ入っていないのか顔も手も垢にまみれていた。
席が一杯だったので家内が彼の左隣へ腰をおろしメールをしていた。
斜向いに席をとった私は家内が気になるものだから様子を見ていたが、若者はピクリとも動かない。
眠りほうけている感じだった。(このようなことは云ってはいけないのだろうけれど)よくもまあ座っていられるものだ、と思っていた。すると私の隣の席が空くと間髪を入れず立上がって移動して来た。
座ると直ぐ耳元で小さい声ながら、開口一番「とても臭いの。本当に、若いのにどうしたのでしょう」と囁いた。

空いた席に次はどのような人が座るのだろうか、と興味を持って観察していると和服を着た若い女の人が腰をかけた。
そのアンバランス加減に驚いて、心の中で「えっいいの?」と思わず呟いた。
夏らしい着物を着た涼し気な髪形の楚々とした和風美人だった。
座ると右手で扇子を盛んに動かしていた。
涼をとっていると思ったが自分の香で若者の匂いを打ち消していたのかも知れなかった。
彼女もいたたまれなかったのか少しすると待合室を出て行った。

本当に現在の日本を象徴しているような風景だった。

若者が扇子が運ぶ香に反応するでもなく眠っていた、と思うのは誤りで、実は目を閉じて寝た振りをしているだけで、周りの様子を逐一知っているのかも知れない。

世捨て人になれば、空を舞う鳥のように、心は自由になるのだろうか。