夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

ダンシング・ネコウ・レコーズ

2014年12月26日 | 音楽




指が長いのは楽器を演奏するに有利だと思う。
ピアノにしてもオクターブが簡単に押さえられたり、スケールの長いウッドベースやエレキベースにしても然り。

とはいえ指だけを長くするわけにはゆかず、ベースマンはストレッチをしたりしてスムーズなフィンガリングができるよう努力する。
指の長い人は羨ましい。

ジョージ・ウィンストンに初めて会ったのは都心のホテルのロビーでのこと。
約束の時間に現れないのでフロントにたずねると「そういうお客さまはいらっしゃいません」と言う。

さて困った、音楽は聴いていたし名前を知ってはいるものの「顔を見たことがない」ことに気がついた。
そうこうしているうちにそれらしき人物が現れたが、今度は英語が通じない。
ではなくてこちらが聞き取れず、話せない。

見るに見かねた通りがかりの女性が通訳を買って出てくれた。
どうやら「(当時六本木にあった)レコード店に行きたいと言っている」と。

六本木「Wave」から出てきた彼がどっさり抱えていたCDは「Okinawan Music」だった。

さてそれから言葉の不自由な日本人と流暢な英語で話すジョージとの珍道中が始まった。

ことの次第はこうだった。

ジョージはハワイのスラックキー・ギタリストの「アッタ・アイザックス」のアルバムを探していてカイムキにあるレコード店に行った。
ところがそこには数枚のアルバムしか置いてなくアッタの全てのレコードを収集したかった彼はお店のアランに問い合わせた。
アランは「日本に詳しい人がいるから彼を訪ねなさい」と答えたらしい。
そこで世界で3本の指に入ると言われるコレクター大家を訪ねたという訳。

珍道中以来、招かれたコンサートを見てピアノの合間に彼がハーモニカを吹くことを知った。
そしてそれはいつしか7弦ギターによるスラックキー・ギターの演奏に変わっていった。

コンサートの後で「ダンシング・ネコウ・レコーズを作るんだ」と言っていた。
それから数年後「Dancing Cats Records」レーベルからハワイのスラックキー・ギタリスト達のアルバムが次々と発表されることになった。

靴を脱いでピアノに向かう彼の指先は恐ろしく長い。
ストライド奏法というのか、ひょいひょいと振り下ろす鍵盤からは瞑想に誘われるような音が無数に空中を漂う。

ピアノに譜面はおいてなく、心の中にあるモチーフが次々と出てくるのだろう。
あたかも宗教音楽に包み込まれているような錯覚に陥りそうになりながら、コンサートは続く。

彼の弾くパッフェルベルのカノンは素晴らしい。

「環境音楽」と言われていた無味無臭の音楽を演奏しているからこそ、土の香りがする「Hawaiian Slack-key Guitar」に関心があるのだろうと当時思った。
しかし今となって彼のピアノもスラックキー・ギターのサウンドも、リラクゼーションを感じるという意味で共通項を持っていることに気づく。

その後ハワイの「Slack-key Guitar Festival」で再会した時、またもや珍道中の延長みたいなことがあった。

長すぎるような指で弾く彼のスラックキー・ギターが懐かしい。






Johann Pachelbel Canon Piano (George Winston)

George Winston--Guitar--Kane's Tune

George Winston from the Lesher Center for the Arts.