恋問海岸

　この海岸は、恋問海岸コイトイかいがんといいます。
ロマンチックな名前でしょう。その昔、オノコ・メノコが恋を語ったのかな。
土曜の休日に和天別に向う前に寄りました。雪がまだ残っていました。

今日の、お話は、ちょっと現実的でシビアな話かな。 　この海岸には、春になると、浜ボウフウという小さな春の 　草が出てきます。ボウフウは山菜の一種で、毎年4月の 　雪解けと同時にたくさんの人が早々と収穫です。 　お陰で年々姿を捜すのに大変。

そして、この海は、ある人に恵みを運んできます。 　その人は右膝が悪く、犬との二人暮らし。 　毎朝、海岸に出て、海からの恵みを捜します。 　昆布や、浜に上がった貝などを。 　台風や低気圧が近づくと、明日は大漁と笑います。 　　 　海が荒れると、海底から養殖の北寄貝ほっきがいや蟹が上がります。 　それらを愛犬と捜す毎朝の日課。 　昔、使っていた馬の納屋に、たくさんの薪が積んであります。 　全部、愛犬と一緒に海から拾って来た流木を、不自由な足で、 　引っ張って、運んで、乾かして、冬の暖にするのです。 　「こうしないと冬は死ぬからね」と、優しく笑います。 　 　頼れる子供はいません。 　国からの公費で生活をしています。 　月の公費は7万円です。 　それでも、付き合いがあり、その中から冠婚葬祭費を工面。 　海のお母さんの所を訪問するたびに、頭が下がる熊子です。 　海のお母さん、79歳です。愛犬シロはもう13歳です。

そんな、海のお母さんの事を考えながら、恋問館の、愛の鐘を、 　カンコン、キンコンと鳴らしました。 　どうか、お母さんに毎日たくさんの海からの贈り物、宝物を運んで 　くださいと、そう願う熊子でした。 　　 　そうして、レストランむーんらいとで、一人春の海を眺めました。 　奥の厨房では、特製豚丼を焼く音と、匂いが…、、、、。 　色即是空・色即是空、口の中で頭の中で、ずーと唱えて目は海に 　耳や他の全感覚器官は厨房に。 　最後は、やっぱり、煩悩と闘う北の熊の巻きでした。