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のんびりぽつぽつ

日常のこと、本のこと、大好きなこと・・・
いろいろ、と。
のんびりと。

「ステップファザー・ステップ」

2005年12月21日 22時27分38秒 | ★★宮部みゆき
宮部 みゆき 著 講談社 青い鳥文庫。

はい。「青い鳥文庫」です。宮部さんが児童書に書いてる~~!?と、思いっきりびっくりして即購入。でも、実は以前、講談社文庫にて発表されていた作品でありました。。ああ、勇み足。しかも全編収録ではない模様・・・くすん・・・今度文庫本も探さなくちゃ・・・

と、いうことで、毎度前置き長すぎ~ですね。
これは、副題に ー屋根から落ちてきたお父さんー とあります。サンタさんじゃないですよ。
ある日、東京に通勤するには遠すぎるけれど、辛うじて近郊(??)な新興住宅地で、下調べ万事OKの泥棒をしようとしたプロの泥棒が、天災に見舞われて盗みに入ろうとした家の屋根から隣のうちの庭に転がり落ち、、、そこから始まる物語。
落ちた家が、なんと両親がそれぞれに駆け落ちで家出をし、中学1年生の双子の兄弟が子どもだけで仲良く住んでいた家だったのでした。
そして、この抜け目の無いしっかり者(??)の双子の策略にはまってしまったプロの泥棒さん。いまだ結婚すらしたことがないのに、いきなり「ステップファザー=義理の父親、継父」にならざるを得なくなるのです。(中学生が子どもだけで暮らしていたら、それこそおかしいし、お金もなくなるしイロイロ困るでしょう。そのために臨時のお父さんを捕まえたのです。この双子!)

声を上げて笑い転げる作品です。
特に最後の「ミルキー・ウエイ」
泥棒さんが、抵抗感一杯だったのが、子ども達との関わりの中でいつの間にか双子の父親の気分になっており、そして起こる嘘のような誘拐事件。それを解決するための小道具が・・・
ああ、本物が観てみたいです。画聖さん!(視点がずれてるかしら?)

知らない相手と、だんだんに知り合って身近になって大切になる。
そんなことも教えてくれる作品になっているから、こそ、この『青い鳥文庫』に入ったんでしょうね。

あとがきで、宮部さんが書いています。

「無口でおとなしくて目立たないクラスメイトが、話してみると優しくて面白い子だったりするように、本も、実はとっても好いヤツなんですよ。一度友達になれば、ずっとずっと親しく付き合うことができます」

確かに、少しでも本の楽しさを知るには、この作品はぴったりじゃないかなあ。ほら!そこの読書苦手な小・中学生!!

我が家では、上の子が私よりも先に読み、「すっごくおもしろかったよー!!」と、今「パーフェクトブルー」に手を出しています。
私がケラケラ笑って読んでいた姿を見た下の子も、「ママ、おもしろいの?ふりがなふってある?○○(自分の名前ですねー)にも、読める?」と興味津々。
青い鳥文庫。案外侮れないんです。「児童書」の括りだけではない、こういう大人の楽しめる作品の中からも厳選して収録してくれたら、もっともっと子ども達が読書に親しめそうだな、と思ったりもいたします。

にしても、、
講談社文庫の方を、見つけてこなくちゃなあ~~~

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「火車」

2005年11月21日 21時52分11秒 | ★★宮部みゆき
宮部 みゆき 著 新潮文庫。

微妙にネタバレがあります。ので、以下読む際はお気をつけくださいませ。


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「火車」(かしゃ)・・・ 火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。(本文初めより引用)

そういう、お話。
足を負傷して休職中の刑事が、高飛車な親戚から持ち込まれた「人探し」
それが、ラストは目に見えないところで行おうと意図された「犯罪」を追うことになる。
一人の人物を探すはずが、対象が違う人物であることに気づいた時から、話はどんどん複雑になる。
そして、一人の人の半生を調べることになる刑事。
組み立てられたその人の半生は、果たして合っているのか。そこに隠された真実は果たしてどうなのか。
それをこれから確認するであろうというところで話は終わる。

世の中が便利になっていく影で、零れ落ちていく人々がいる。
見えない「お金」のために、最後は落ちるところまで落ちてしまう人がいる。
それでも「救いの手」が差し伸べられた人はいいのだが、そうでなかった人々は、家族を巻き込んでその転がり落ちるスピードを止めることができなくなる。
今は、あまりこういう「破産」は話題にならないけれど、実態はどうなのだろう。不勉強でその辺りはよくわからないけれど、こんな人生を歩まざるを得ないほどに追い詰められることが、過去は確かにあったのだ。そういう、「ほんものの社会」もこの話は描き出していて、それがとてもリアルだった。推理小説というよりも社会小説だ、という解説者の話に納得できるリアルさ。

刑事が追う人物は、こうせざるを得なかった最初の事情は本人の責任ではないのだ。家のローンの支払いができなくて追い詰められる父親に巻き込まれてしまった家族だから。。たまたま、そこに生まれたがための悲劇。
だが、途中からは。確かに途中からは本人が選び取った道。
人をひとり抹殺し、、いや、それまでの自分をも抹殺して、新しい人生を歩もうとする。そこまで追い詰められた人間というのは、その心の中はどうなっているのだろう。
追っていた刑事と一緒に、「聞きたい」と思った。
ほんとうの、この人の人生を。その気持ちを。心を・・・

一度つかみかけた「幸せ」を手放さざるを得なかった事情。それがあまりにも悲しかった。相手に「浅ましい」と感じさせてしまった言葉。それでもそれが、本心この人のその時の気持ちであったのだ、と想像できてしまったから。

少し前、東野圭吾の「白夜行」とこの「火車」の内容が似ている・・というようなレビューを読んだ。
うーん、、、私の感覚はちょっと違う。
ああ、「白夜行」は男性作家の作品で、「火車」は女性作家の作品だなあ・・・と、感じている。男性の視点と女性の視点。それはきっと、自ずから異なるものだから。
なので、気持ちの面で寄り添いやすかったのは、、やっぱり私は女だから。。こちらの作品。
人の人生を描き出すという点でこの2作品は「似ている」のかな、とも思うけれど、どこか根底が「違う」気もまたするのです。言葉に出来ないけれど、ね。

また2冊。買い足してしまった。「宮部みゆきの本」
さあ、どうしよう。。。ツボにハマッた予感・・・
っと、その前に、梨木さんを読むじゃ~~~
コメント (2)
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「パーフェクト・ブルー」

2005年11月10日 13時43分04秒 | ★★宮部みゆき
宮部 みゆき 著 創元推理文庫。

元警察犬マサが語る物語ってことで、ふっと手に取りました。
帯をみると、宮部さんのデビュー長編なんですね。
やっぱり、注目の人は始めからうまい物語を書くんだなあ・・としみじみ。

お話は、探偵物語。
それを飼われている犬が話すっていうのが、おもしろい。
ついつい、マサが人のような気分で読んで「あれ?」と思ってしまうことも。ワンちゃんの感覚がこんな風にわかったら、楽しいだろうなあ。

さて、中身は。
高校野球のスーパースターを兄に持つ諸岡進也。家を飛び出している彼を連れ戻してほしいと依頼を受けた蓮見探偵事務所の加代子とマサが、進也を諸岡家に連れ戻す途中で遭遇してしまう、進也の兄克彦のガソリンをかけられて焼き殺される姿。
そこから始まり、兄と弟、親と子、高校野球の矛盾と残酷な連帯責任への批判などなどが絡み合い、終盤は大手製薬会社まで絡んで非常に辛い話になる。
それでも、どこか重苦しくならずに読み進められるのは、やはりマサが語ることと、進也がとてもしっかりとした前を向いている少年であったからなのか。

宮部みゆきの作品は、「模倣犯」を薦められて読んだのが最初なのだが、上下組の二冊の、上巻はとても良かったのだが、下巻がちょっと間延びした感じで読み進むのが辛く、それ以降手にしていなかった。でも、やっぱり模倣犯の上巻で感じた「おもしろさ」が、この処女長編には感じられ、またすこし、宮部作品を手にしてみようかな、と思い直している。
コメント (8)
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