ソラとウミは、人々から距離をとり、固唾を飲みながら、後ろの壁際に立って様子をうかがっていた。
ドドーン――……。
足下の地面がわずかに揺れ、廃墟の壁が軋んで、パラパラとコンクリートの粉をこぼした。
「お兄ちゃん……」と、ウミがあわてて壁から離れ、頭の上に落ちてきた埃を払い落としながら、声を震わせた。
「なんだろう、なにか聞こえない?」ソラが、聞き耳を立てるように廃墟の中を見回した。
鬨の声を上げていた何人かが異常に気がつき、どうしたんだ、と身構えながら、辺りに首をめぐらせた。
ドドーン――……。
再び地響きが轟くのと、窓枠だけが残った石積みの壁が崩れるのとは、ほとんど同時だった。
ばらばらと崩れ落ちるコンクリート片と、舞い上がる灰色の埃を越えて姿を現したのは、戦車だった。
気勢をそがれた人々は口々に悲鳴を上げながら、クモの子を散らすように逃げまどった。大人達も、子供達も区別がなかった。戦車の後ろから、兵士達が続いて廃墟の中になだれこみ、銃声が、止むことなく鳴り続けた。
「マット、どこに行ってたの? ぼく達も一緒に戦うよ」と、瓦礫の山の陰に隠れ、古びた銃を構えているマットに、ソラが言った。
「いいんだ。きみ達はみんなと一緒に逃げろ」マットは、廃墟の隅を指さした。子供なら這い進むことのできる隙間が、口を開けていた。
「でも、君は――」
「ぼくが一緒だ」と、銃を手にしたフェレクが、背をかがめて滑りこんできた。
「大丈夫。きみ達が逃げる時間ぐらい、二人なら稼いでいられるさ」と、マットがわずかに笑みを浮かべて言った。
ソラは、マットとフェレクを交互に見ると、唇を真一文字に結んで、あきらめたようにうなずき、ウミの手を取って走り出した。
狭い隙間を這い進み、廃墟の外に出たウミとソラだったが、恐ろしくて、立ち上がることなどできない激しい撃ち合いが、繰り広げられていた。
「ウミ、こっちだ!」と、ソラは頭を抱えながら、決して安全とは言えない瓦礫の陰に身を隠した。
ドドーン――……。
足下の地面がわずかに揺れ、廃墟の壁が軋んで、パラパラとコンクリートの粉をこぼした。
「お兄ちゃん……」と、ウミがあわてて壁から離れ、頭の上に落ちてきた埃を払い落としながら、声を震わせた。
「なんだろう、なにか聞こえない?」ソラが、聞き耳を立てるように廃墟の中を見回した。
鬨の声を上げていた何人かが異常に気がつき、どうしたんだ、と身構えながら、辺りに首をめぐらせた。
ドドーン――……。
再び地響きが轟くのと、窓枠だけが残った石積みの壁が崩れるのとは、ほとんど同時だった。
ばらばらと崩れ落ちるコンクリート片と、舞い上がる灰色の埃を越えて姿を現したのは、戦車だった。
気勢をそがれた人々は口々に悲鳴を上げながら、クモの子を散らすように逃げまどった。大人達も、子供達も区別がなかった。戦車の後ろから、兵士達が続いて廃墟の中になだれこみ、銃声が、止むことなく鳴り続けた。
「マット、どこに行ってたの? ぼく達も一緒に戦うよ」と、瓦礫の山の陰に隠れ、古びた銃を構えているマットに、ソラが言った。
「いいんだ。きみ達はみんなと一緒に逃げろ」マットは、廃墟の隅を指さした。子供なら這い進むことのできる隙間が、口を開けていた。
「でも、君は――」
「ぼくが一緒だ」と、銃を手にしたフェレクが、背をかがめて滑りこんできた。
「大丈夫。きみ達が逃げる時間ぐらい、二人なら稼いでいられるさ」と、マットがわずかに笑みを浮かべて言った。
ソラは、マットとフェレクを交互に見ると、唇を真一文字に結んで、あきらめたようにうなずき、ウミの手を取って走り出した。
狭い隙間を這い進み、廃墟の外に出たウミとソラだったが、恐ろしくて、立ち上がることなどできない激しい撃ち合いが、繰り広げられていた。
「ウミ、こっちだ!」と、ソラは頭を抱えながら、決して安全とは言えない瓦礫の陰に身を隠した。