北欧デンマークおばさんの独りごちブロ

「住み慣れた地域で最期まで」をテーマにデンマーク高齢者福祉を研究し、世界のこと・日本のことを独りごちっています。

シンプル&すっきりな点字ブロック

2009-01-18 | デンマーク建築・まち
さて、この点字ブロック。
コペンハーゲンの横断歩道前の様子です。

地下鉄の階段の「テボ」と同様に、
以上に主張することなく、まち環境に溶け込んでいます。
同時に、非常にシンプルです。
しかも、視覚障害者にとっては非常にわかりやすいのです。

「わかりやすく視覚に訴えるものでないと、
 (とくに弱視の方に)役立たないのでは?」と
思われるかもしれませんが、
行政と研究者が、実際に視覚障害をもった方に
実験してもらって、こうしたコントラストでも
十分であることを、確認しました。

実際に、
視覚障害をもった方は、杖でブロックを確認したり、
足裏で感じて確認されるわけなので、
「視覚障害者にとってわかりやすいとは何か?」
を、実際に視覚障害者にテストしてもらうのが一番、
というわけです。

その結果、
「ライン」の表示は、1本か2本くらいのほうが、
視覚的ノイズが少なくてわかりやすい、、、という
結果を得たようです。

しかも材質は、金属を使っています。
耐久性にすぐれていることは確か。
杖で確かめる際には、硬い質感が分かりやすい
のかもしれません。
また、石道との異なる質感は、
街を共有するみんなに
ある「美しさ」を提供するものになっていないでしょうか。

また、
コペンハーゲン中央駅の視覚障害者用誘導ブロックも、
約1ミリ程度のレリーフが誘導するというもので、
これは、「視覚障害者団体が認めた」(105p)ものであることが
後述の田中先生の本にも書かれています。

そして、「都市景観と視覚障害者への配慮がギリギリの議論で
バランスがとられている」と、この本には書かれています。

日本の点字ブロックは、最近でこそ
落ち着いた色調のものが現れ始めていますが、
まだまだ黄色が主流です。

しかしながら、日本のそれをよく見ていると、
「ライン」と「ドット」がごちゃごちゃで、
却ってわかりにいくのでは?と、懸念されるものが多い。

さてさて、ここで「ライン」と「ドット」についての
ミニ・レクチャー。

「ライン」は「この方向に進め」を意味しますが、
「ドット(てぼ)」は
「アウェアネス・エリア」と言って、
「何か新しいことが始まるので、知って気をつけて!」を
意味するのです。

もちろん「止まれ」も含まれますが、
「曲がる場所だよ」とか
「階段の踊り場だよ」とか
「ドアがあるよ」とか
「次に、階段が始まるよ」などなど、新しい何かのはじまりを
「知ってください!注意して!」と、教えているのです。

だから、「ライン」と「ドット」は、
この写真のように、シンプルに分かりやすく
視覚的ノイズが少ないデザインにしないと
とくに全盲の方には、知覚不能となります。

田中直人先生の「五感を刺激する環境デザイン」には、
先生が、日本の黄色の点字ブロックをデンマークの専門家に
見せた時に次ぎのように言われた、と書かれています。

「確かに充実していて感心するが、街は視覚障害者だけのもの
ではない」(104p)

デンマークにおいては、
「障害者がもっている機能障害disabilityは、
環境の工夫をすればhandicap にはならない。
環境がバリアとなって、彼らの機能障害をhandicap にしているだけ。
だから、環境(アクセシビリティ)整備が、大事なのだ」
と考えます。

「障害者のdisability をhandicap にしてしまうのは
社会の責任。だからこそ、
障害がある人が健常者と同じように生活ができるように
保障するために、さまざまな取り組みを社会保障の一環として
環境を整備する」
これが、ノーマライゼーションの考え方です。

「街は視覚障害者だけのものではない」という
デンマーク専門家の言葉は、
ノーマリゼーションに徹底して取り組んでいるデンマーク
の人だからこそ明言できるのでしょう。
安易な取り組みしかやっていない国の専門家は、
こうした強い発言はできないはず。

視覚障害者にとっての本当の機能を考え、
街の環境も考えた点字ブロック。
の、話でした。