北欧デンマークおばさんの独りごちブロ

「住み慣れた地域で最期まで」をテーマにデンマーク高齢者福祉を研究し、世界のこと・日本のことを独りごちっています。

「ふたご住宅」の近撮

2009-03-21 | デンマーク建築・まち
「土曜日の建築シリーズ 第17弾」

次回に引き続きまして、コペンハーゲンのウォーターフロントに1995年完成した「ふたご住宅」です。
近くで写したものですが、建物の下部に見える土台のようなものがかつてのサイロ部分にあたります。
(より詳しい情報は、3月15日をご覧くださいませ)

これを心棒にして、住宅を張り付けたような形で「ふたご住宅」を作ったのです。

偉大なるコンバージョン(用途変更)!リノベーション(改築)!あんた何ション(だじゃれ)?

8階建てで、各階には10戸の住戸があります。
サイロが二つですから、
それぞれのサイロに4戸の住宅が張り付き、サイロとサイロの間にも各1戸の住戸を張り付けて、1フロア10戸の構成です。

どこかの階は、面積が小さな住戸があるのか、全体で84戸です。

サイロに張り付いた十戸のテラスは張り出す形となっていますが、
サイロとサイロの間の十戸は、当然のことながら、テラスは凹む形となります。

サイロの内部は住戸とせず、上下に移動する階段、エレベータスペースなどのコモン・スペースとしたわけです。
ですから、各住戸への入口部分に穴をあけて外に十戸を張り付けた。

それにしても、MVRDV建築集団は、とてつもない発想をするものです。
心棒に十戸を張り付けるのが得意なようで、デンマーク ロドーブル市にもファンキーにして奇怪な集合住宅を完成しているようです。

ところで、MNRDVは1992年、ロッテルダムにできた建築家集団で、
デンばあに関係の深い、100人のための高齢者住宅WoZoCoをアムステルダムに
作ったことで有名になりました。
この住宅は、18戸が張り出しています。

核の材に、貼り付けて、張り出して、、、、、
そういう技法が得意のようです。
住んでいる人は、垂直線を下におろした時に、地面に下りて行かない。
空中に浮いて住んでいるわけですね。そういう住宅に独自の境地があるようで、
建築界のアドベンチャーのような方々ですね。

名前は、立ち上げた建築家のイニシャルをとって名付けられています。

 Winy Maas (M)
Jacob van Rijs (VR)
Nathalie de Vries (DV)

来週はいよいよ、今年度最後の週となります。
お忙しいでしょうが、
さくらも開き始めました。

よい週末をお過ごしください。

サイロを改築した「ふたご住宅」

2009-03-15 | デンマーク建築・まち
「土曜日の建築シリーズ第16弾」
昨日は遠方に出かけており、日曜日となってしまいました。

さて、ヨーロッパ各国では港湾エリアのリノベーションが盛んにおこなわれているようですが、ここコペンハーゲンでも同様です。

写真は並ぶ二つの円筒形サイロを一般住居へとコンバージョンした、感動的な作品です。
建築家は、オランダを代表する建築家集団MVRDV。
集団を立ち上げた建築家の頭文字をとってMVRDVと名付けられています。
日本では、表参道の「GYRE」が彼らの手によるものです。

これは、コペンハーゲンのウォーターフロントにあり、
84世帯が住む一般住居となっています。
まわりにも、それなりに意匠を凝らした集合住宅が建てられていますが、
この建物はかなり人目をひきます。

初めて見たときには、
「この形には何の意味があるんだろう?」と、不思議に思ったものです。
「ふたご住宅」と名付けられたこの建物は、ふたつの円筒形のサイロを
住宅へとコンバージョンされたもので、その歴史を知れば、
この異様で過激な形にも理解ができ、
美しくデザインされた様子や、昔からあるものを未来へとつなげようという
工夫に感動を覚えます。

もちろん、コンペで勝ち取ったものですが、
コンクリートのサイロのリングに穴をあけるのが大変だったようで、
とにかくドアの高さの穴をあけるだけで、最小限にとどめたようです。
建物の下に見えている細い部分が昔のサイロです。

円筒の外側を各住居のテラスとし、円筒の内側のコアから出入りするようにして、
コア部分には上下して使えるような共用空間を作ったようです。

一般住居なので、外から見るだけですが、
中に忍び込んでみたいものですねえ。

オランダの近代建築の特徴は「キューブ」にあり、キューブを角度を変えて積み重ねたような建築が多いと理解していましたが、そんなオランダの建築家集団が「円」に挑戦したわけですね。

ウォーターフロント開発では、以前の港湾のイメージをこわさないようにすることが重要であり、円筒形のサイロも湊のモニュメント的な意味をもっていたので、「次への過激なるステップ」の味つけも施しながら、このような建物にまとめたようです。

2005年に完成しています。



オーフスの社会福祉部

2009-03-07 | デンマーク建築・まち
土曜日の建築シリーズ。
本日は、オーフスの社会福祉部門Social Forvaltning の建物です。

コの字型の建物の内側に囲まれた部分の外壁に、
薄緑のすりガラスを張り巡らしています。

すりガラスには、書きなぐったような跡が見えますか?
これは、ラテン文字だそうで、
ラテン文字で傷を入れ、そこだけが透明になっています。

建物にたどりつくまでは、何の変哲もない建築物ですが、
内側が見え始めると、アッ!と、驚きます。

また、この「書きなぐったようなラテン文字」はこの建物の
モチーフになっていて、事務所で出していただいた
コーヒーカップにも、この模様がついておりました。

この遊び心は、精神的にも、財政的にも
ゆとりがあればこそ、できる、というもの。

中に入ると、おおきな吹き抜けになっていて、
その周りを部屋が囲む形式でした。



ルイジアナ美術館ジャコメッティの部屋

2009-02-28 | デンマーク建築・まち
「土曜日の建築シリーズ 第14弾」

月日のたつのは早いものです。
今週は、先週の「スプリング・パケージ2.0」の発表に伴って、
税金の話が多くなりましたが、国民としては「受け入れられないもの」
というように、感じているようです。

写真は、現代美術館として有名な「ルイジアナ美術館」です。
コペンハーゲンから北へ約30分。
海岸の隆起に、身を委ねるようにして建物が広がり、
各建物は、蛇行する廊下で結ばれています。

夏は、海に向かって広がる芝生の庭にねそべると、一日そのまま過ごしたく
なるような環境。

写真は、その中のジャコメッティの部屋です。
階下に降りることができるのですが、
このように、ちょっと上から一面のガラス戸をとおして、池と柳を借景に
ジャコメッティの作品を見るのがいいと、言われています。

アクセシビリティにも配慮がなされていますが、
この部屋に限っては、階下に降りるリフトがついていません。

それは、「下に降りる必要がない」から。

中央駅から、北のエルシノア行きの電車にのり、
ホムルベックという駅で降りてください。
2車線の道にでたら、左に曲がって、約15-20分ほど歩きます。

そのあたりに、ルイジアナ美術館はあります。

今日は、晴れました。
あしたも、晴れますように。









オペラハウスの立ち見席は320円

2009-02-21 | デンマーク建築・まち
さてさて、「土曜日の建築シリーズ」第12弾。

このブログの読者なら、ここがどこか、すぐにおわかりと思う。
そう、デンマークが世界に誇る「Operaen オペラハウス(コペンハーゲン)」である。
Henning Larsen ヘニン・ラーセン設計による
デンマークが全ヨーロッパ、世界に誇るオペラ・ハウスである。

昨年末のデンマーク滞在は、研究所で自分なりのテーマに取り組んでおり、もうひとつ大きな調査テーマがあったので、オペラを楽しむというのような余裕はなかった。

しかし、なんとか時間を見つけて、、、、と、Operaen オペラハウス(コペンハーゲン)でのオペラ鑑賞に時間をとった。

なんと!

ヴェルディのLa Traviata を年末の目玉講演として上演しているではないか。
しかしながら、チケット売り場には「立ち見席」しかなかった。

そのお値段、20クローナ(約320円)なり。
数字に弱いのと記憶力の低下により、あやふやではある。
が、パンフレットが40クローナで
「パンフレットより安く見ることができたんだあ」と感激したのを覚えているのでたぶん間違いないと思う。


「当日の4時から、オペラハウス(コペンハーゲン)で25枚に限って切符の販売 がありますえ。
 行列しておしやすさかい、あんはんが買えるかどうかはわからしまへん。
 それに、座席切符が買えたとしても、立見席の分は払い戻しでけしまへん。
 どない、しおやす?」

と、切符売り場の方がおっしゃる。
立見席を買った。

La Traviata は、「椿姫」として日本では知られている。

現代風にアレンジしてあって、病に伏すヴォレッタは、大きなワイシャツ風の寝巻きを着て、裸足でわが身の不幸を切々と歌っていたが、どうもこの現代化はピンとこなかった。

とはいえ、デンマークでは古い歌劇を現代に置き換えて演出するという手法に、ひとつの特徴を見出しているようなところがある。

そこで、この新オペラハウスの内部であるが、右側の巨大な木の球状のものが劇場であり、通常のオペラハウスのように、ステージがあって客席は5層の馬蹄形に並んでいる。内部の形状は、通常のオペラハウスと変わりはない。あるとすれば、シンプルでモダンな意匠ぐらいだろうか。

例えば、劇場内の明かりは、すべて壁面にあけられた横に走る線状の穴からもれてくるようにデザインされている。壁面は木で、色は紺色が基調。シートもブルー。暖色系の色は、赤のみで緞帳の模様に少し使われているのみである。

この球から約8-10m離れ、土星の輪のような形で幕間の時間がすごせるようににホワイエが丸い廊下のようにはりめぐらされている。この土星の輪(ホワイエ)は、建物を覆うガラスの壁面に沿ってぐるりとめぐっている。

この輪に、バーもあるので、そこでワインやビールが買える。この写真では、2階の輪のホワイエにバーらしきものが見える、でしょ?キンキラの球形シャンデリアの下。

そして、球状の劇場から出ると、橋を渡るような形でこの輪(ホワイエ)に出るわけである。

オペラは8時開始、7時半開演なので、7時半まではこの廊下でビールなど飲んで待つ。7時半きっかりに劇場の各ドアが開く。

写真の一番下に見えるところが、建物の入り口から入ったところで、いわゆる「もぎり」である。別に何もおいていなくて、おにいさんが立ってもぎっているだけ。

レストランは、1階と階上(といっても、「輪のホワイエの最上」であるが、、、)にある。
あるいは食事は、対岸にある「Skuespillhuset 演劇者ハウス」で食べるもよし。

3時間以上続くので、終わるのは11時を過ぎる。
帰りは、水上バスに乗り、Nyhavn ニューハウンまで歩いて(このころには独りに)、Kongens Nytov コンゲンス・ニュート まで行って地下鉄に乗り、Norroer Port ノアポートで電車に乗り換えて中央駅へと帰る。Kongens Nytov コンゲンス・ニュートからはバスに乗って、目的地にあわせたバスに乗ることもできる。

以前は、バスをしたたてやってきたグループも見かけたが、昨年はいなかった。

というわけで、Operaen の肝心の「立ち見席」であるが、最上階(5層)の一番うしろの座席の後ろが「立ち見席」であった。
ずらっと、50名以上が並んで立ってみていたであろうか。

ここで、
「席があいていたら、座ってもいいですか?」と、たずねた。
これまでの経験から、最初に空いている席には、必ず人はこないのである。

「第一幕間でいないことを確認して、次の幕間でなら座ってもいい」とのこと。

しかし、年末のLa Traviate.
最後まで、空席を見つけることはできなかった。

切符購入は、古い王立劇場の左手横にあるチケットオフィスで。

建築に関する少し詳しい情報は、2008年6月21日に、
外観写真は、同11月2日にあります。

6時からは、英語による案内ツアーをしているはず。
では、みなさま、よい週末を!







オーフス市庁舎の時計台

2009-02-14 | デンマーク建築・まち
「土曜日の建築シリーズ」第11弾。

有名なオーフス市庁舎の時計台です。

なぜ、有名か?
それは、アーネ・ヤコブセンの設計だから。

しかしながら、この建築物には、あまり感動を覚えないのであります。
写真は、昨年オーフス市に行った時のものです。

建物のファサードというのでしょうか。
表面の質感がなんとも、個性的というか、まだら模様というか、「しぶいなあ」というか。中に入ってみなければわからい部分もあるでしょうが、その時間がありmせんでした。

お昼近くの時間帯ですが、日が低いため、日が傾きかけているように見えます。

では、よい週末をお過ごしくださいませ!


コリング城の廃墟ギャラリー

2009-02-08 | デンマーク建築・まち
「土曜日の建築シリーズ 第10弾」
1日遅れの日曜日にお送りいたします。

コリング城の「廃墟ギャラリー」です。

コリング Kolding は、首都コペンハーゲンがあるシェラン島から、オーデンセのあるヒュン島を通り、ユトランド半島に渡ってすぐの所にある古い町です。

ユトランド半島の南は、現在ドイツと接していますが、シュレースビ公国と常に国境争いをしていたところです。
コリング城は国を守る城砦として13世紀に築かれたもので、国境争いの歴史舞台となってきた城です。

デンマークが南に領土を広げてからは、ここに要塞をおく必要もなくなり、一時は王家の夏の居城としても使われたようです。
しかし、19世紀初頭ナポレオン戦争のころ、この城に駐留していたスペイン軍の火の不始末が原因で火事となり、城は使われなくなってしまいます。

1980年に遺跡として保存することが決められるまで、150年もの間放置された城は廃墟化するばかりでした。

廃墟化した城の改修にとりくんだ建築家は、ヨハネス・エクスナー Johannes Exner。
廃墟の廃墟感をそのまま生かした改修を行い、写真の「廃墟ホール」はコリング城城のなかでも圧巻中の圧巻。

500年、600年以上の風雪に耐えてきたむき出しのレンガを温存し、これを内側にそのまま保つように、外壁をつけています。
縦に伸びる木の柱は、朽ち果てたレンガにやさしい緊張感を与えています。

ここには、さまざまな仕掛けがあるようですが、また書きます。






ええだろう!エーダル教会

2009-01-31 | デンマーク建築・まち
ツーカーさんから、「エーダル教会というモダンな教会があるから見てきたらいい」という連絡が入りまして、えっちらこっちら、電車とバスに乗って行ってまいりました。昨年末のことです。
(エルシノアに行く電車 Kystban をコッケダルKokkedalで降り、150Sバスに乗る。あとはEgedal Kirke どこ?と、運転手さんに聞いてね。)

一週間ははやいですね。
やってきました!「土曜日の建築シリーズ第9弾」だったかな?

バスから降りて、道路側から見る外観は、何の変哲もない教会なのですが、
裏側に回って見ますと、広い芝生の庭が広がっており、左右対称に羽を広げたよう教会を裏側から見る事ができました。

1990年に完成した新しい教会です。
改築ではなく、新築です。
が、教会を新しく作ったりするのでしょうか?!

実は、デンマークにはその昔sogn(ソーン)という教会を中心としたコミュニティがあり、これを単位として1640の地方自治体がありました。

1970年に行政改革があり、1640から275へと統合され、いわゆる275コムーネ(市町村)の時代が長く続きました。
2007年1月の改革では、98コムーネになりました。

ということで、コムーネはもともと教会区である「ソーン」が母体となっており、デンマーク人の宗教心は、どんどん薄れていっているとは言え、「あれが、おらがまちの教会だあ」というような意識は残っているのです。

つまり!

赤ちゃんが生まれた時
堅信礼の時(14歳)
結婚の時
亡くなった時 には教会のお世話になりますし、クリスマスの時だって小学生が集まって聖歌を歌ったりします。
そして、国民は教会税を納めてもいます。

小さな田舎町にも、立派な教会がたくさんあり、
見て回ってもおもしろいです。

そうした中で、このエーダル教会があるカルボー教会区には、1990年までは2つの教会しかなかった。
1970年代の終わりごろに、「もう一つ作ろうではないか」という話が持ち上がったようです。

「カルボ教会区は人口1万人。そこに教会2つでは少なカルボ、チーズはマリボー」てなわけでしょうか。
1982年には土地が購入され、1990年にこの新しい教会ができあがったのだそうです。

豪勢な話ですねええ

建築家は、ヨアン・フォーとパー・ヒュルナー。
Fogh og Foelner という設計会社では、多くの教会の設計のコンペで勝ち抜い
ているようです。

http://www.fogh-folner.dk/

でも、1984年に出した「2400万クローナ(消費税込み)」の見積もりが
「高カルボー」とのことで、再見積もりにて
「2000万クローで、どないでっカルボー」を再見積もりを提出。
1988年に合意を得て、建築がスタートしました。
1990年6月3日に牧師がやってきて、実質的にオープンしたそうです。


向かって左に教会堂があり、右手は地域の人々が利用できる集会所のようになっています。
世代を超えた地域の人々の集まりなども開かれるようで、地域福祉にも一役かっているようです。

中の様子は、次の写真をご覧ください。
このように、デンマークでは、知られざる近代建築の秀作が町の至るところに隠されているのですね。

エーダル教会の内部

2009-01-31 | デンマーク建築・まち
エーダル教会の内部です。
白木と統一されたモダンな内装。

正直言って、「モノがなさすぎ」で、
ちょっと戸惑ってしまったくらいです。

しかし、少しすると、このしらじらとした清らかな空間の意味を身体が理解し始めるというか何というか、心が洗われるような、そんな気持ちになり始めました。不思議な空間でした。

ペンダントライトは、ヘニン・ラーセンのものでしょうか。
似ていますね。

天井から吊り下げられたものは、クリスマス前約4週間から1週間ごとに1本ずつロウソクに火を灯していくアドベントのロウソク台です。
もみの木で丸い台を作り、その上に4本のロウソクを置き、紫のリボンで飾っていますね。

余談になりますが、アドベントのロウソクは、「11月30日にもっとも近いクリスマスイブから4週間前の日曜日」とされており、教会だけでなく各家で用意して、1週間ごとにロウソクを灯していきます。

新しい王立劇場「演劇ハウス」

2009-01-24 | デンマーク建築・まち
さて、デンばあが満を持してお贈りする
「土曜日の建築シリーズ 第8弾」。

今回は、
Operaren (新オペラ・ハウス)の対岸にできた 
Skuespilhuset (プレイハウス、演劇ハウス)です。

右手奥に、Operaen 新オペラハウスをとらえた!
この構図を撮るのに、苦労したのよ。
要するに、新オペラハウスの対岸に立っているのであります。

演劇専用の劇場として建てられたもので、
この誕生によって、王立劇場全体として次のような3つの構成で、
デンマークのパフォーマンス芸術を支えることとなりました。

古い王立劇場 Gamle Scene (バレー)
新オペラハウス Operaren (オペラ)
演劇ハウス  Skuespilhuset (演劇)

建築家は、Boje Lundgaard & Lene Tranberg。
ルンゴーは、アーネヤコブセンの下も働いたこともあるようで、
1980年代初頭に、トランベアと組んで仕事を始めました。

Skuespilhuset については、2002年に
国際デザインコンペを勝ち抜いて設計を任された後、
その完成を見ることなく、60歳の若さで2004年4月この世を去りました。

彼の設計思想は、
「美」をこわすことなく「環境」に融和する。というもの。

まさに、「エコロジーの形」(新評論)でClause が言っていることと
同じです。

なんと!

コリングのトラップホルト美術館の設計もLundgaard の手に
よるもので、コリングのフィヨルドの雄大な自然との調和を
考えながら、美術館の設計をしたのでありましょう。

アーネヤコブセンの「キュービック・フレックス」という
サマーハウスが置かれている美術館です。
(この「デンマーク建築・まち 2008年10月11日」にあります)

さて、この演劇ハウスは、海の風景との調和、
古いコペンハーゲンの風景との調和について考えられており、
内側からも、その風景を贅沢に楽しめる構造です。

つまり、巨大にデザインされたホワイエは、いまやレストラン「Oferia」として使われていますが、ここでの食事は、海の風景を真横に見ながら楽しめるというもの。

さらに最上階まで上ると(上に見えるガラスの箱部分)、全体がガラス張りの巨大キューブですから360度の方向に海とコペンハーゲンの歴史的町並みを楽しめる。

特徴的エレメントは、ガラス、使い古した平レンガ、木。
残念ながら、劇場内には足を踏み入れたことはありませんが、
中間階にほどこされている時間の経過を感じさせるレンガの壁は、
劇場内の壁面に展開されるもので、真っ赤な椅子と絶妙の
コントラストを奏でているとのことです。

コペンハーゲンにいかれた方は、古い王立劇場の向かって左横の
チケット・オフィスで切符を買って、
是非、劇場に足を踏み入れてください。

ちなみに、1階レストランはお試し終了しました。オペラ鑑賞の前にビール1杯ひっかけるもよし、リッチにお食事楽しみたい向きには3コース278クローナで料理もセンスよく、「オススメ!」と見た。
給仕の女性も男性もニコニコと、しあわせそうに働いていました。

笑顔は料理をうまくします。

天井からたっくさんの棒がぶらさがっており、「なんじゃらほい」と見てみますと、照明なんですね。先っぽが紫色に輝いており、外から見ると、あたかも夜空に星がまたたいているような風情なのであります。

そこに身をおくだけで、「しあわせを感じる空間」。
ルンゴーさん、たくさんの人にしあせをありがとう。
(と、ちょっと「悼む人」になってみました)

よい週末を!

シンプル&すっきりな点字ブロック

2009-01-18 | デンマーク建築・まち
さて、この点字ブロック。
コペンハーゲンの横断歩道前の様子です。

地下鉄の階段の「テボ」と同様に、
以上に主張することなく、まち環境に溶け込んでいます。
同時に、非常にシンプルです。
しかも、視覚障害者にとっては非常にわかりやすいのです。

「わかりやすく視覚に訴えるものでないと、
 (とくに弱視の方に)役立たないのでは?」と
思われるかもしれませんが、
行政と研究者が、実際に視覚障害をもった方に
実験してもらって、こうしたコントラストでも
十分であることを、確認しました。

実際に、
視覚障害をもった方は、杖でブロックを確認したり、
足裏で感じて確認されるわけなので、
「視覚障害者にとってわかりやすいとは何か?」
を、実際に視覚障害者にテストしてもらうのが一番、
というわけです。

その結果、
「ライン」の表示は、1本か2本くらいのほうが、
視覚的ノイズが少なくてわかりやすい、、、という
結果を得たようです。

しかも材質は、金属を使っています。
耐久性にすぐれていることは確か。
杖で確かめる際には、硬い質感が分かりやすい
のかもしれません。
また、石道との異なる質感は、
街を共有するみんなに
ある「美しさ」を提供するものになっていないでしょうか。

また、
コペンハーゲン中央駅の視覚障害者用誘導ブロックも、
約1ミリ程度のレリーフが誘導するというもので、
これは、「視覚障害者団体が認めた」(105p)ものであることが
後述の田中先生の本にも書かれています。

そして、「都市景観と視覚障害者への配慮がギリギリの議論で
バランスがとられている」と、この本には書かれています。

日本の点字ブロックは、最近でこそ
落ち着いた色調のものが現れ始めていますが、
まだまだ黄色が主流です。

しかしながら、日本のそれをよく見ていると、
「ライン」と「ドット」がごちゃごちゃで、
却ってわかりにいくのでは?と、懸念されるものが多い。

さてさて、ここで「ライン」と「ドット」についての
ミニ・レクチャー。

「ライン」は「この方向に進め」を意味しますが、
「ドット(てぼ)」は
「アウェアネス・エリア」と言って、
「何か新しいことが始まるので、知って気をつけて!」を
意味するのです。

もちろん「止まれ」も含まれますが、
「曲がる場所だよ」とか
「階段の踊り場だよ」とか
「ドアがあるよ」とか
「次に、階段が始まるよ」などなど、新しい何かのはじまりを
「知ってください!注意して!」と、教えているのです。

だから、「ライン」と「ドット」は、
この写真のように、シンプルに分かりやすく
視覚的ノイズが少ないデザインにしないと
とくに全盲の方には、知覚不能となります。

田中直人先生の「五感を刺激する環境デザイン」には、
先生が、日本の黄色の点字ブロックをデンマークの専門家に
見せた時に次ぎのように言われた、と書かれています。

「確かに充実していて感心するが、街は視覚障害者だけのもの
ではない」(104p)

デンマークにおいては、
「障害者がもっている機能障害disabilityは、
環境の工夫をすればhandicap にはならない。
環境がバリアとなって、彼らの機能障害をhandicap にしているだけ。
だから、環境(アクセシビリティ)整備が、大事なのだ」
と考えます。

「障害者のdisability をhandicap にしてしまうのは
社会の責任。だからこそ、
障害がある人が健常者と同じように生活ができるように
保障するために、さまざまな取り組みを社会保障の一環として
環境を整備する」
これが、ノーマライゼーションの考え方です。

「街は視覚障害者だけのものではない」という
デンマーク専門家の言葉は、
ノーマリゼーションに徹底して取り組んでいるデンマーク
の人だからこそ明言できるのでしょう。
安易な取り組みしかやっていない国の専門家は、
こうした強い発言はできないはず。

視覚障害者にとっての本当の機能を考え、
街の環境も考えた点字ブロック。
の、話でした。








美しい環境としあわせを取り持つ時計

2009-01-16 | デンマーク建築・まち
すみません。
機能のデンマーク地下鉄(METRO)の写真も、
本文と、微妙に、かなり食い違っておりました。

メトロの時計の写真は、これを使おうと思っており、
昨日、間違ったものを使用してしまいました。

地下鉄駅舎の総合監修をしたのは、
ヘニン・ラーセンです。
CBS(コペンハーゲン・ビジネス・スクール)、
最近では、「Operaren (新オペラハウス)」などを
手がけた、83歳現役のおじいちゃんです。

よって、ですね、
時計まで監修したんだなあと、いうことなのです。

この時計、すべての地下鉄の駅舎に使われていますが、
いかにもデンマークらしいシンプルさ美しさに
あふれているではありませんか。

中心の少し上に文字がみえますが、
「あれ?ヘニン・ラーセンがサインを残したのかな?」と
近寄ってみてみましたら
「metro」と書いてありました。

彼のデザインした空間には、この時計が
似合うのでしょう。

そして、、、、、

こうした、美しい空間に身をおき、
きれいと感じる、心地よいと感じる。
その時間を「しあわせ」だとして、大切にする国民性。

culture とnature が共存し、持続していく世界を
作り出しているのだと思います。

昨日、天童荒太の「悼む人」が直木賞を受賞しました。
日経書評で紹介されていたので、買って、読み始めたところ
だったのでびっくりしました。

が、、、、

天童荒太の
「どうしようもない状況に対処していく時に、
作家としての視点・立場は、そんな状況におかれた人を
外側からみるのではなく、内側から見てみたかった。
この時、作家は嘘はつけない。読者はすぐに見破る」
というようなコメントをしていました。

そう、、、

「しあわせ」を軽くあつかってはいけない。

どうしようもない状況に陥った時、
この「しあわせ」に執心して作り上げた環境や時間・空間は
どんな風な意味をもつのかな?
という、ことでした。

もうどうしようもない状況に心が陥った時、
陥り続けている時、
この美しい環境は、人間を力づけてくれたり、
癒してくれたり、、、、そんなことをしてくれるのでは
ないのかなあああ。

とも、思いました。

なんで、「時計」からこんな話になるねん?

ごめん、昨日、直木賞を受賞した天童荒太のコメントを
聞いて、ちょっと、感じたものでっさかいに、、、、