北欧デンマークおばさんの独りごちブロ

「住み慣れた地域で最期まで」をテーマにデンマーク高齢者福祉を研究し、世界のこと・日本のことを独りごちっています。

ドアに絵画?認知症ケア

2009-03-20 | デンマーク高齢者
これは、デンマークのあるプライエセンターにある認知症ユニット(住まい)の壁面に描かれた絵画です。

ここがドアであることを分からせないようにするひとつの工夫として「ドアのある壁に絵画を描く」という手法があります。
こうすると、そこをドアであると認知されないので、自然の結果としてそこからは出て行かれないということになります。

よく見ていただくとわかりますが、絵のまんなかの手を取り合った部分がドアノブになっていて、これは外に通じる大きなドアなんですね。

話には聞きますが、実際にはあまり見たことがないので、
数はかなり少ないと思います。
が、実際にこのように存在しています。

日本の介護の現場で働いておられる方は、この絵画を見て、
どのように感じられるでしょうか?

現場の人手不足のきびしい現実を知らない人間が。理想のみを追い求めて不用意に発言することは差し控えたいと思います。
が、「不自然さ」を感じてしまうのです。

今の介護の現場の取り組みは、平たく言えば「普通の生活を支援する」「ご自宅での生活を継続できることを支援する」という方向を目指していると思います。

自宅のドアに、こんな絵を描くでしょうか?
先日紹介した大谷ルミ子さんが、このような絵画をグループホームに描かれるでしょうか?

この絵画を見て、「いい工夫だ、うちにも採用しよう」と感心する方と
「え?!デンマークで、こんなことやってるの?!」と落胆する方と別れると思います。
また、別の感じ方をされる方があるかもしれません。

たとえば、回りの壁紙と連続的に連ねていくなら、少しは話も分かりますが、
この壁面だけ、かなりインパクトある絵を壁一面に描くやり方は、もう少し工夫してもよかったのではないか?と思います。

デンマークでは、ベッドの下にセンサーマットをおくことすら拒否してきた国です。靴にチップを入れて、行き先が把握できるようにすることはできますが、市の高齢者福祉のトップの許可を必要とします。

みなさんは、どのように思われますか?

デンマークでも介護現場の労働不足は、大変な状況にあります。
現政権は、税率凍結を約束しており、国民は今以上の負担を望んではいません。
しかし、お年寄りは増えていきます。
介護現場の給料は安く、なり手が少ないのが悩みの種であることは
日本と同じです。

理想を求めるなら、さらなる負担が必要です。
理想を求めても、なんんらかの工夫によって、今以上の負担なくそれを実現する方法があるかもしれません。

その方法は、どのようなものなのでしょうか。










大谷るみ子さんの認知症ケアとデンマーク

2009-03-04 | デンマーク高齢者
昨日、NHKプロフェッショナルで、大谷るみ子さん(大牟田市)のグルホームでの認知症ケアについて放送していた。

すばらしい。

「あなたは、とても大切な人」という自然な気持ちで、
お年寄りと心を通わす。

すべての行動には理由があり、大声を出したり、不穏になったり、
徘徊される時には、お年寄り自身がとても不安で、苦しんでおられる証拠
なのである。

だから、その苦しみの気持ちを理解して、
その理由を探り、「たいへんだったねえ」「きつかったんだねえ」と
共感していく。

とことん、付き合う。

利用者の方は最後に大谷さんに「あなた、いい人」と言って、
険しい顔から、笑顔になって、落ち着いておられた。

大谷さんは、壁にぶつかったときに、デンマークに行かれたようである。
どこにいかれたんだろう。


ストの影響で、祖父母忙し

2008-05-23 | デンマーク高齢者
デンマークの看護師、介護士、保育士のストライキに
ついてである。

また、利用者の立場である高齢の女性(高齢者住宅在住)に
聞いてみた。

「私も、あまり影響ないわ。
 でも、孫のおもりにずいぶん忙しそうねえ」とのお返事。

保育士がストライキをしているので、子供を預かってもらえない。
子供のおとうさん、おかあさんが、
おじいちゃん、おばあちゃん家に預けにくるというわけだ。

デンマークでは核家族が基本で、
三世代の同居は4%である。
介護の問題にしても、完全というほどに社会化されている。
(じつは、これは見直そうという傾向にあるのだが、、、)

これを聞いた方は、「ずいぶんと冷たい社会だ」と
おっしゃることもある。
しかし、子供は基本的には18歳で家を出て独立する。
この延長線上に、高齢者は二人暮し、あるいは一人暮らし、
という結果があるのだ。

デンばあだって、大学の時に
兵庫県の田舎から神戸に出てきて一人暮らしを始めた。

親と別居した子供たちの態度で日本と異なるのは、
非常によく電話している、ということ。
近くに住んでいれば、
週末には訪問してお昼を食べて行く、という風である。

そこで、子供世代としても、自分の子供
(お年よりからすれば、孫)の世話を親に頼むことになる。

私の感触として、
「孫はかわいい。でも、一緒に住むのはねええ。
 保育士のストライキで困っているなら、
 喜んで預かりましょう」というところだろう。

孫というのは、
「来てうれしい、帰ってうれしい」という存在。
一緒にいれるのはうれしいけれど、
あまり長く守(もり)をすると疲れる、というもの。

デンマークのおじいちゃん、おばあちゃんも、
そろそろ疲れておいでなのではないでしょうか。