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○ ★種の保存法の指定前の標本の流通規制について
憲法違反だらけ、疑問だらけの 環境省回答に対する当方らのコメント・議論
(f-1) 一般に昆虫類は多産多死の生物であり、哺乳類や鳥類のような少産少死の生物と は異なり、個体をフィールドで得ることが容易なため、標本数が桁違いに多くなる必 然性がある。
(f-2) 前回指定のヒョウモンモドキも同様であるが、今回の追加指定種3種はかつて個 体数が非常に多い種であった結果、民間で所有されている標本数は膨大な数に上る。
(f-3) 種の違いによるきめ細やかな対応や蝶の標本数の実態把握が「作業が煩雑になる からできない」というのは役所の論理であり、到底容認できない。そのような姿勢で の指定はきわめて杜撰である。
(f-4) 種の保存法第 12 条による「譲渡し等の禁止」措置は、国民の最も重要な財産権 のひとつである所有権のほとんど(自ら保持すること、捨てること、相続することを 除く)をいきなり奪うことを意味するが、かような規制を一律にかけることと、追加 指定種の「種の保存」の必要性との間に合理的なバランスが取れていないのではない か。
(f-5) かつて多くの棲息地があり、個体数も多かったこれらの指定種は、開発や自然環 境の変化でその棲息地が極めて限局された場所しか遺されていない種であり、今や国 が予算措置を講じてでも保存しなければ絶滅してしまいかねない希少種であることは 共通認識である。
(f-6) 他方、膨大な数の標本数が民間で所有されているこれらの指定種の標本(特にゴ マシジミ中部亜種は数万頭に達するものとの推定が成り立つ)が存在している(した がって、標本価値もそれほどない)のに、指定前の標本の流通を自由にしたからとい ってわざわざ厳重に保護されている棲息地に犯罪者になるリスクを侵して採集(密漁) に出向き、それを販売(密売)する者がはたしてどれだけ出てくるのか、その因果関 係を肯定する根拠に乏しいのではないか。
(f-7) よしんば指定前の標本の流通に一定の規制をかけることを認めるにしても、より 制限的でない手段(たとえば、相当期間を設けて民間の手持ち標本のデジタル登録を させて、登録標本については ID 番号を与えるなどして識別可能としたうえで自由な譲 渡し等を認めるなど)をどうして採れないのか、甚だ疑問である。
(f-8)大学や博物館などの公的機関にしても、指定種の標本ばかり膨大な数が寄贈され ても収蔵数に限界があるためにすべてを受け入れることはできず、結局、貴重な標本 を廃棄せざるをえない状況も将来的に出てくるであろう。実際に寄贈依頼が来ても断 らざるを得ないケースが多く出始めている。ただし、もし現在の公的機関に収蔵庫拡 充が可能な資金源を補填してもらえるなら、あるいは、収納できるだけの新たな公的 機関を新設できるのであれば、本問題は解決できる事案である。
(f-9) 指定動植物の個性に応じて、指定前の標本についてはもっときめ細やかで国民の 昆虫趣味の自由(憲法第 13 条)、法の下の平等(憲法第 14 条)、学問の自由(憲法第 23 条)、財産権の不可侵(憲法第 29 条)に対する配慮を行き届かせることが種の保存 法第 3 条の趣旨からも必要があるのではないか。
(f-10) もともと適法な所有権の対象である蝶の標本をこのようないわば「後出しじゃん けん」のような追加指定により(指定後に種の保存法に違反して採集された標本と同 視して)所有権を実質的に奪うのは、「事後法の禁止」を定めた憲法第 39 条の趣旨に 適合しないのではないか。
(f-11) 日本は世界唯一といってよいほど昆虫採集・昆虫趣味が非常に盛んな国であり、 民間のアマチュア愛好家・収集家が作成し保管していた標本が昆虫研究の場で大きな 寄与をしてきたという、世界でも類を見ない歴史的な背景があるが、今般のような国 内希少種の追加指定は、かような日本が世界に誇れる文化的基盤の一つを構成してき た昆虫趣味の絶滅を招くのではないかと強く危惧する。
(f-12) 環境省の種の保存法第 12 条の解釈適用は、今般の追加指定に見られるような短 兵急な国内希少種の指定と相まって、「アマチュアの同好者が国内希少種の標本の譲渡 し等を受けて研究したり、図鑑を出版したり、展示会を開いたりすること、年長者の 同好者が年少者の同好者に標本を譲渡し等してコレクションの世代間保存を行うとい う行為」がすべからく違法行為と化してしまう結果を導く。このことは、日本の国内 希少種の保存という目的が過度に重視される反面、日本に住み、その存立を支えてい る国民の権利が不当に軽視される、いわば本末転倒を招くものであって、全く納得できない。(朝日がイシダシジミの項の一部の執筆を担当した、本年2月発行の「珠玉の 標本箱 12(アサマシジミ・ミヤマシジミ・ヒメシジミ)」を担当官に示し、「この標本 プレートに図示されているアサマシジミ北海道亜種(イシダシジミ)の標本は、アマ チュア執筆者が自ら所有しているもののみならず、他の同好者から買ったり、もらっ たり、借りたりしたものが含まれているが、こうした出版に至る過程も指定後は「違 法」となるわけですね?」という質問を投げかけたところ、担当官は「まあ、そうい うことになります」と答えたが、この問答がこの問題の本質の一端を如実に表してい る)
★ゴマシジミ本州中部亜種の指定について
(f-13) ゴマシジミ中部亜種 ssp.kazamoto がどのような外観的な特徴を備えた変異集団 であるかということに明確に答えられる者は学者にもアマチュアにも皆無であろう。
(f-14)「亜種」という概念自体が主観的な認識・判断を含むものであり、そもそも一つ の棲息地内でも極めて変異に富むゴマシジミに「亜種」が認められるかという議論さ え存在し得る。
(f-15) 仮に ssp. kazamoto という変異集団を認めるとしても、その分布境界はどこに引 かれるのか、「関東地方」の集団は「中部亜種」に入るのか、中部地方に隣接する山形 県などの集団の扱い、高山に棲む別亜種(ssp. hosonoiなど)と認識される集団との境 界などの明確な切り分けが困難な問題が内包されており、かような括りで追加指定し て罰則の対象にすることは罪刑法定主義(=ある行為を犯罪として処罰するためには、 立法府が制定する法令において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科され る刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。憲法第 31 条)に反するのではないか。
★その他
(f-16) 一般に我々蝶類の愛好家は、種の保存法が目指している絶滅危惧種の実効性ある 保全の必要性を理解している。これまでの文化財保護法や地方公共団体の条例による 「天然記念物」指定のように、「指定したら終わり」ではなく、蝶の場合においても、きちんと国がお金も人 も出してモニタリングはもとより環境保全に関しても力を尽くし、公共事業などで環境破壊のおそれのあるときは手遅れになる前に適切に対処するなど、効果的に希少種の絶滅を防ぐことにはまったく賛同しており、できるだけの協力もし たいと考えている。
(f-17)しかし、指定前の標本の流通に対して、現在の環境省による種の保存法第 12 条 の解釈適用による規制をかけることは、少なくとも蝶類の標本に限っては、過剰な規 制であり、何ら種の保存に寄与しない反面、いたずらに法律違反者を出すことにもな る。これは種の保存法第 3 条に適合した法律解釈とはいえず、憲法の諸条項にも違反 する疑いがあるのではないかと思われる。この標本の取り扱いに関する問題点が大き いため、その他の希少種保全に関する優れた内容が理解されない要因にさえもなりう る。
(f-18) 幸い、国内希少種の指定については3年ごとの見直しも図られる制度設計になっているので、その際の見直しを要請すると共に、昆虫標本の流通に対しては「野生生 物をお金に替えるのはいかがなものか」といった一方的な感情論ではなく、希少動植物の実効 性ある保護と国民の権利・利益の正当な保護をどう合理的にバランスさせるべきかと いう冷静な議論を経て、合理的な着地点に到達することを強く望む。
この項、続く。
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○ ★種の保存法の指定前の標本の流通規制について
憲法違反だらけ、疑問だらけの 環境省回答に対する当方らのコメント・議論
(f-1) 一般に昆虫類は多産多死の生物であり、哺乳類や鳥類のような少産少死の生物と は異なり、個体をフィールドで得ることが容易なため、標本数が桁違いに多くなる必 然性がある。
(f-2) 前回指定のヒョウモンモドキも同様であるが、今回の追加指定種3種はかつて個 体数が非常に多い種であった結果、民間で所有されている標本数は膨大な数に上る。
(f-3) 種の違いによるきめ細やかな対応や蝶の標本数の実態把握が「作業が煩雑になる からできない」というのは役所の論理であり、到底容認できない。そのような姿勢で の指定はきわめて杜撰である。
(f-4) 種の保存法第 12 条による「譲渡し等の禁止」措置は、国民の最も重要な財産権 のひとつである所有権のほとんど(自ら保持すること、捨てること、相続することを 除く)をいきなり奪うことを意味するが、かような規制を一律にかけることと、追加 指定種の「種の保存」の必要性との間に合理的なバランスが取れていないのではない か。
(f-5) かつて多くの棲息地があり、個体数も多かったこれらの指定種は、開発や自然環 境の変化でその棲息地が極めて限局された場所しか遺されていない種であり、今や国 が予算措置を講じてでも保存しなければ絶滅してしまいかねない希少種であることは 共通認識である。
(f-6) 他方、膨大な数の標本数が民間で所有されているこれらの指定種の標本(特にゴ マシジミ中部亜種は数万頭に達するものとの推定が成り立つ)が存在している(した がって、標本価値もそれほどない)のに、指定前の標本の流通を自由にしたからとい ってわざわざ厳重に保護されている棲息地に犯罪者になるリスクを侵して採集(密漁) に出向き、それを販売(密売)する者がはたしてどれだけ出てくるのか、その因果関 係を肯定する根拠に乏しいのではないか。
(f-7) よしんば指定前の標本の流通に一定の規制をかけることを認めるにしても、より 制限的でない手段(たとえば、相当期間を設けて民間の手持ち標本のデジタル登録を させて、登録標本については ID 番号を与えるなどして識別可能としたうえで自由な譲 渡し等を認めるなど)をどうして採れないのか、甚だ疑問である。
(f-8)大学や博物館などの公的機関にしても、指定種の標本ばかり膨大な数が寄贈され ても収蔵数に限界があるためにすべてを受け入れることはできず、結局、貴重な標本 を廃棄せざるをえない状況も将来的に出てくるであろう。実際に寄贈依頼が来ても断 らざるを得ないケースが多く出始めている。ただし、もし現在の公的機関に収蔵庫拡 充が可能な資金源を補填してもらえるなら、あるいは、収納できるだけの新たな公的 機関を新設できるのであれば、本問題は解決できる事案である。
(f-9) 指定動植物の個性に応じて、指定前の標本についてはもっときめ細やかで国民の 昆虫趣味の自由(憲法第 13 条)、法の下の平等(憲法第 14 条)、学問の自由(憲法第 23 条)、財産権の不可侵(憲法第 29 条)に対する配慮を行き届かせることが種の保存 法第 3 条の趣旨からも必要があるのではないか。
(f-10) もともと適法な所有権の対象である蝶の標本をこのようないわば「後出しじゃん けん」のような追加指定により(指定後に種の保存法に違反して採集された標本と同 視して)所有権を実質的に奪うのは、「事後法の禁止」を定めた憲法第 39 条の趣旨に 適合しないのではないか。
(f-11) 日本は世界唯一といってよいほど昆虫採集・昆虫趣味が非常に盛んな国であり、 民間のアマチュア愛好家・収集家が作成し保管していた標本が昆虫研究の場で大きな 寄与をしてきたという、世界でも類を見ない歴史的な背景があるが、今般のような国 内希少種の追加指定は、かような日本が世界に誇れる文化的基盤の一つを構成してき た昆虫趣味の絶滅を招くのではないかと強く危惧する。
(f-12) 環境省の種の保存法第 12 条の解釈適用は、今般の追加指定に見られるような短 兵急な国内希少種の指定と相まって、「アマチュアの同好者が国内希少種の標本の譲渡 し等を受けて研究したり、図鑑を出版したり、展示会を開いたりすること、年長者の 同好者が年少者の同好者に標本を譲渡し等してコレクションの世代間保存を行うとい う行為」がすべからく違法行為と化してしまう結果を導く。このことは、日本の国内 希少種の保存という目的が過度に重視される反面、日本に住み、その存立を支えてい る国民の権利が不当に軽視される、いわば本末転倒を招くものであって、全く納得できない。(朝日がイシダシジミの項の一部の執筆を担当した、本年2月発行の「珠玉の 標本箱 12(アサマシジミ・ミヤマシジミ・ヒメシジミ)」を担当官に示し、「この標本 プレートに図示されているアサマシジミ北海道亜種(イシダシジミ)の標本は、アマ チュア執筆者が自ら所有しているもののみならず、他の同好者から買ったり、もらっ たり、借りたりしたものが含まれているが、こうした出版に至る過程も指定後は「違 法」となるわけですね?」という質問を投げかけたところ、担当官は「まあ、そうい うことになります」と答えたが、この問答がこの問題の本質の一端を如実に表してい る)
★ゴマシジミ本州中部亜種の指定について
(f-13) ゴマシジミ中部亜種 ssp.kazamoto がどのような外観的な特徴を備えた変異集団 であるかということに明確に答えられる者は学者にもアマチュアにも皆無であろう。
(f-14)「亜種」という概念自体が主観的な認識・判断を含むものであり、そもそも一つ の棲息地内でも極めて変異に富むゴマシジミに「亜種」が認められるかという議論さ え存在し得る。
(f-15) 仮に ssp. kazamoto という変異集団を認めるとしても、その分布境界はどこに引 かれるのか、「関東地方」の集団は「中部亜種」に入るのか、中部地方に隣接する山形 県などの集団の扱い、高山に棲む別亜種(ssp. hosonoiなど)と認識される集団との境 界などの明確な切り分けが困難な問題が内包されており、かような括りで追加指定し て罰則の対象にすることは罪刑法定主義(=ある行為を犯罪として処罰するためには、 立法府が制定する法令において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科され る刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。憲法第 31 条)に反するのではないか。
★その他
(f-16) 一般に我々蝶類の愛好家は、種の保存法が目指している絶滅危惧種の実効性ある 保全の必要性を理解している。これまでの文化財保護法や地方公共団体の条例による 「天然記念物」指定のように、「指定したら終わり」ではなく、蝶の場合においても、きちんと国がお金も人 も出してモニタリングはもとより環境保全に関しても力を尽くし、公共事業などで環境破壊のおそれのあるときは手遅れになる前に適切に対処するなど、効果的に希少種の絶滅を防ぐことにはまったく賛同しており、できるだけの協力もし たいと考えている。
(f-17)しかし、指定前の標本の流通に対して、現在の環境省による種の保存法第 12 条 の解釈適用による規制をかけることは、少なくとも蝶類の標本に限っては、過剰な規 制であり、何ら種の保存に寄与しない反面、いたずらに法律違反者を出すことにもな る。これは種の保存法第 3 条に適合した法律解釈とはいえず、憲法の諸条項にも違反 する疑いがあるのではないかと思われる。この標本の取り扱いに関する問題点が大き いため、その他の希少種保全に関する優れた内容が理解されない要因にさえもなりう る。
(f-18) 幸い、国内希少種の指定については3年ごとの見直しも図られる制度設計になっているので、その際の見直しを要請すると共に、昆虫標本の流通に対しては「野生生 物をお金に替えるのはいかがなものか」といった一方的な感情論ではなく、希少動植物の実効 性ある保護と国民の権利・利益の正当な保護をどう合理的にバランスさせるべきかと いう冷静な議論を経て、合理的な着地点に到達することを強く望む。
この項、続く。
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