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種の保存法に基づく国内希少種に蝶3種が新たに指定されたことに関して
組織/ 法規委員長 朝日純一
皆さんご承知と思いますが、今般の種の保存法に基づ く国内希少種に蝶3種(アサマシジミ北海道亜種・ゴマ シ ジ ミ 本 州 中 部 亜 種 ・ ウ ス イ ロ ヒョ ウ モ ン モ ド キ ) が 追 加指定された件について、去る平成 28 年 3 月 4 日、杠 隆史さん(当会理事・季刊「ゆずりは」主幹)・矢後勝 也さん(当会会員・日本鱗翅学会自然保護委員長・東 京大学総合研究博物館助教)に私を加えた3名で環境 省を訪問し、担当官2名と面談してきました。
今回の追加指定には、大きく2つの問題点を指摘でき ると思います。すなわち、
1 今回の突然1週間(2 月 8 日~ 15 日)という極めて 短いパブコメ期間での指定をいきなり発表し、その締切 の4日後(2 月 19 日)には閣議決定、そして1か月後の 3 月 15 日には追加指定の施行というやり方は、行政手続 きの公正さと透明性を求める行政手続法に違反している のではないか、という手続面での問題、そして、
2 種の保存法に基づく国内希少種への指定は、指定 種の採集禁止はもちろん、同法 12 条1項により、指定 後 に 採 集 さ れ た 標 本 に とど ま ら ず 、 指 定 前 の 標 本 も 一 切 の譲渡し等(売買、贈与、貸借、預入)が原則禁止され るというのが環境省の解釈ですが、そのような同法の解 釈適用は国民の財産権(標本の所有権)をいきなり奪う に等しい国家権力の行使であり、財産権の尊重を定めた 同法第 3 条の趣旨に悖るだけでなく、国民の基本的人権 を保障した憲法の諸規定(第 13 条、第 14 条、第 23 条、 第 29 条、第 31 条、第 39 条)に違反するのではないか、 という内容面での問題です。
環境省は、日本が加盟している生物多様性条約に基づ いて絶滅危惧動植物を国内希少種に指定して規制する国 際公約をしており(環境省は平成 32 年までに 300 種を 追加指定するとしています)、蝶も 24 種を指定するとし ています。
今回の追加指定で合計 6 種(ゴイシツバメシ ジミ、オガサワラシジミ、ヒョウモンモドキ、アサマシジ ミ北海道亜種、ゴマシジミ本州中部亜種、ウスイロヒョ ウモンモドキ)が指定されましたが、後数年の間にさら に 18 種が国内希少種に指定される可能性があります。
今後も今回のような安直な方法での指定が続けられれば、4年後には蝶に関して日本の土着種の実に1割が採 集はおろか標本の移動・流通も全面的に禁止されること になり、蝶の趣味の存立が足元から揺らぎかねない深刻 な事態を招く懸念を禁じえません。
種の保存法に基づく国内希少種の指定により、環境省 が(天然記念物の指定だけして何ら実効性ある対処をし てこなかった文科省と異なり)金も人も出して責任を持っ て希少種の保全を行うという点については高く評価でき ますが、桁違いの標本数が民間で所有・保存されている 蝶など昆虫の標本に対する処遇については、その特性に 応じた柔軟で現実的な対処が必要ではないかと思われる ところです。
環境省は、指定種の標本は博物館等の公的機関への 寄贈(種の保存法で認められている)で対処できるとし ていますが、膨大な数の標本が持ち込まれた場合には、 収蔵スペースと人的リソースが限られている公的機関で も収めきれなくなる事態となることは容易に想像されま す。
今 後 、 こ の よう な 流 れ に 何 と か 歯 止 め を か け 、 少 な く とも指定前の標本の移動・流通に対する規制を認める解 釈(「指定前の昆虫標本には譲渡し等の禁止は適用され ない」という解釈を打ち出させる)や措置(たとえば、 環境大臣が過去に個体数が多く民間所蔵の標本数が膨 大な数に上る蝶の標本の譲渡し等を規制から外す「特例 措置」をとることは法文上認められている)を実現すべ く、我々も声を上げて努力することが求められると思いま すが、そのためには今回の追加指定の問題点を正しく認 識・理解することが必要であると思われます。
この問題は多岐にわたる論点を含んでおり、先の環境 省訪問時のやりとりも全ての論点を網羅し尽くしているわ けではないと思われますが、訪問の際の問答の概要は 上記3名連名での報告書の形で取りまとめてあります。
この項 続く。
この記事は Butterfly Science Newsletter No. 6 2016 April に掲載されたものを 本人の御了解をもとに 本ブログでも紹介させていただいたものです。当同好会会員で弁護士でもある朝日さんの告発は正に説得力に満ちており
次回では さらに核心へとせまってゆきます。
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種の保存法に基づく国内希少種に蝶3種が新たに指定されたことに関して
組織/ 法規委員長 朝日純一
皆さんご承知と思いますが、今般の種の保存法に基づ く国内希少種に蝶3種(アサマシジミ北海道亜種・ゴマ シ ジ ミ 本 州 中 部 亜 種 ・ ウ ス イ ロ ヒョ ウ モ ン モ ド キ ) が 追 加指定された件について、去る平成 28 年 3 月 4 日、杠 隆史さん(当会理事・季刊「ゆずりは」主幹)・矢後勝 也さん(当会会員・日本鱗翅学会自然保護委員長・東 京大学総合研究博物館助教)に私を加えた3名で環境 省を訪問し、担当官2名と面談してきました。
今回の追加指定には、大きく2つの問題点を指摘でき ると思います。すなわち、
1 今回の突然1週間(2 月 8 日~ 15 日)という極めて 短いパブコメ期間での指定をいきなり発表し、その締切 の4日後(2 月 19 日)には閣議決定、そして1か月後の 3 月 15 日には追加指定の施行というやり方は、行政手続 きの公正さと透明性を求める行政手続法に違反している のではないか、という手続面での問題、そして、
2 種の保存法に基づく国内希少種への指定は、指定 種の採集禁止はもちろん、同法 12 条1項により、指定 後 に 採 集 さ れ た 標 本 に とど ま ら ず 、 指 定 前 の 標 本 も 一 切 の譲渡し等(売買、贈与、貸借、預入)が原則禁止され るというのが環境省の解釈ですが、そのような同法の解 釈適用は国民の財産権(標本の所有権)をいきなり奪う に等しい国家権力の行使であり、財産権の尊重を定めた 同法第 3 条の趣旨に悖るだけでなく、国民の基本的人権 を保障した憲法の諸規定(第 13 条、第 14 条、第 23 条、 第 29 条、第 31 条、第 39 条)に違反するのではないか、 という内容面での問題です。
環境省は、日本が加盟している生物多様性条約に基づ いて絶滅危惧動植物を国内希少種に指定して規制する国 際公約をしており(環境省は平成 32 年までに 300 種を 追加指定するとしています)、蝶も 24 種を指定するとし ています。
今回の追加指定で合計 6 種(ゴイシツバメシ ジミ、オガサワラシジミ、ヒョウモンモドキ、アサマシジ ミ北海道亜種、ゴマシジミ本州中部亜種、ウスイロヒョ ウモンモドキ)が指定されましたが、後数年の間にさら に 18 種が国内希少種に指定される可能性があります。
今後も今回のような安直な方法での指定が続けられれば、4年後には蝶に関して日本の土着種の実に1割が採 集はおろか標本の移動・流通も全面的に禁止されること になり、蝶の趣味の存立が足元から揺らぎかねない深刻 な事態を招く懸念を禁じえません。
種の保存法に基づく国内希少種の指定により、環境省 が(天然記念物の指定だけして何ら実効性ある対処をし てこなかった文科省と異なり)金も人も出して責任を持っ て希少種の保全を行うという点については高く評価でき ますが、桁違いの標本数が民間で所有・保存されている 蝶など昆虫の標本に対する処遇については、その特性に 応じた柔軟で現実的な対処が必要ではないかと思われる ところです。
環境省は、指定種の標本は博物館等の公的機関への 寄贈(種の保存法で認められている)で対処できるとし ていますが、膨大な数の標本が持ち込まれた場合には、 収蔵スペースと人的リソースが限られている公的機関で も収めきれなくなる事態となることは容易に想像されま す。
今 後 、 こ の よう な 流 れ に 何 と か 歯 止 め を か け 、 少 な く とも指定前の標本の移動・流通に対する規制を認める解 釈(「指定前の昆虫標本には譲渡し等の禁止は適用され ない」という解釈を打ち出させる)や措置(たとえば、 環境大臣が過去に個体数が多く民間所蔵の標本数が膨 大な数に上る蝶の標本の譲渡し等を規制から外す「特例 措置」をとることは法文上認められている)を実現すべ く、我々も声を上げて努力することが求められると思いま すが、そのためには今回の追加指定の問題点を正しく認 識・理解することが必要であると思われます。
この問題は多岐にわたる論点を含んでおり、先の環境 省訪問時のやりとりも全ての論点を網羅し尽くしているわ けではないと思われますが、訪問の際の問答の概要は 上記3名連名での報告書の形で取りまとめてあります。
この項 続く。
この記事は Butterfly Science Newsletter No. 6 2016 April に掲載されたものを 本人の御了解をもとに 本ブログでも紹介させていただいたものです。当同好会会員で弁護士でもある朝日さんの告発は正に説得力に満ちており
次回では さらに核心へとせまってゆきます。
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