新谷研究室

新谷研究室の教育・研究・社会活動及びそれにかかわる新谷個人の問題を考える。

不愉快なこと

2005年05月10日 15時32分51秒 | 教育・研究
 C女学園大のK氏が訪ねてきて、学会の打ち合わせをしたのはさておき、彼は最近村上龍の『半島を出よ』と三崎亜記『となり町戦争』を読んだという。なんとまったく僕の最近の読んだ本と重なっているではないか。それはかなりムッとしたことであった。『となり町戦争』はベッドサイドに置いておいて、目が覚めてから朝食を作るまでの間に読了してしまった。まさに朝飯前だ。K氏は飛行機の中で読み終えたという。いずれにしてもすいすい読める。目に見えない戦争が始まり市民の無関心の中で進行し、終わっていくところに現代の社会状況を想像できて興味深い。
 『半島を出よ』についてはK氏は期待はずれであったようだが、僕は着想はおもしろいし、それなりのリアリティはあると思った。デティールに力が入るせいか、話の進み方が遅い。映像化すると良いというのではK氏と意見は一致した。にしても、小さな島ひとつを制圧して人質を取ればこの国は簡単におさえられる、という発想はすごい。ただ、村上龍の描いた人物が単純な救国者になってしまうのはいささか残念。ニッポン壊滅まで話を進めてほしかったな。
 研究の合間に小説でも読むといい。多様な人間観が理解できるから。そうそう佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』の11巻目が出た。おすすめ。