民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

32:期日請書

2007-01-15 07:14:42 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
                      平成18年(ネ)第5934号
東京高等裁判所第21民事部 御中

  平成19年1月9日
    
    控訴人      出羽やるか 印

        期 日 請 書

     控訴人   出羽やるか 
     被控訴人  国

 上記の事件について,下記の期日に出頭します・

                 記

    期     日 平成19年2月15日 午前11時00分
    期日の種類  口頭弁論


31:控訴理由 第21~23点

2007-01-15 06:46:01 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第21点 道路交通法70条に基づく本件事故の処分
 1 別件行政訴訟控訴審判決は以下のとおり判示して請求を棄却した。
   「第4当裁判所の判断2争点(2)について(甲第91号証の15~16頁)
  (1)当裁判所も,控訴人は,山間部を走る曲がりくねった片側1車線の本件道路
  を湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,最高速度時速40㎞,
  追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止との規制がされ,下り坂の左
  カーブで,雑草等があって見通しの良くない本件事故現場において,控訴人車
  のハンドル・ブレーキの操作を誤り,バランスを崩して中央線を越え対向車線
  に進出させたため,折から対向車線を進行してきた自衛隊車のうちの本件トレ
  ーラの右側タイヤ及びタイヤ枠付近に控訴人車の前部を衝突させ本件トレーラ
  に軽微な擦過痕を与えたものであり,このような状況の本件道路において本件
  事故現場付近で対向車線に進入することは他人に危害を及ぼすおそれのある危
  険な行為というべきであるから,控訴人としては当然そのような危険を排除す
  べく控訴人車のハンドル・ブレーキを的確に操作して進行すべき注意義務があ
  ったのにこれを怠った過失により対向車線に進入したものであり,控訴人は,
  法70条(安全運転の義務)に違反する行為をしたものと認めるのが相当であ
  って,別件行政訴訟被控訴人の本件更新処分のうち控訴人を一般運転者である
  と認定した本件認定部分には違法な点は認められず,控訴人の本件請求は理由
  がないと判断する。・・・」
                64/70頁
 2 控訴人は,平成17年11月25日上告し,別件行政訴訟は,平成18年
 (行ツ)第38号として係属中である。
 3 控訴人は,上告理由第1点として,別件行政訴訟控訴審判決がその判示のよ
  うな内容の注意義務を怠った過失によって控訴人の責任を認めたことは,その
  理由に食い違いないし理由不備の違法があると下記の3点を主張した。
 第1点 道路交通法70条に基づく本件処分の違法
  (1) 別件行政訴訟控訴審判決は,本件道路において対向車線に進入することは
   他人に危害を及ぼすおそれのある危険な行為というべきであるから,法70
   条(安全運転義務)に違反する行為をしたものというべきであると判示した。
  (2) 同法70条のいわゆる安全運転義務は,同法の他の各条に定められている
   運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり,同法7
   0条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は,いわゆる法
   条競合にあたるものと解するのが相当である。したがって,右各条の義務違
   反の罪が成立する場合には,その行為が同時に右70条違反の罪の構成要件
   に該当しても,同条違反の罪は成立しないものといわなければならない。
   (昭和45年(あ)第95号同46年5月13日最高裁第2小法廷決定)。
  (3) 別件行政訴訟控訴審判決は,控訴人車が,過失により対向車線に進入した
   ものと認められると認定判示している。対向車線に進入したものと認められ
   る場合,法17条4項(通行区分)に違反する行為をしたものというべきで
   ある。
  (4) 同法70条の安全運転義務が,同法の他の各条に定められている運転者の
   具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられていることから考えると,他の
   各条の義務違反のうち過失犯処罰の規定を欠く罪の過失犯たる内容を有する
   行為についても,同法70条の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充た
   すかぎり,その処罰規定が適用されるものと解するのが相当である。(昭和
   47年(あ)第1086号,同48年4月1日最高裁第1小法廷判決)。
                  65/70頁
  (5) 対向車線に進入したものと認められる場合,同法17条4項の罪責が問わ
   れ,同法70条の罪は成立しない。同法17条の過失犯の行為が,同法70
   条の安全運転義務の過失犯の構成要件を充たすかぎりにおいて,補充的に,
   その処罰規定が適用されるにすぎない。
 第2点 道路交通法70条,安全運転義務違反の過失犯の構成要件
  (1) 同法119条2項により過失による安全運転義務違反として処断するため
   には,過失によって,他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転した事実
   を確定しなければならない。
  (2) 対向車線に進入した場合,中央線の左側を通行しなかった点で同法17条
   4項の故意犯(同法119条1項2号の2)が成立するのであって,この場
   合過失による同法17条4項の罪(119条2項の罪)が成立するものでは
   ない。過失による同法17条4項違反の罪が成立するためには,対向車線に
   進入したこと自体について過失が存することを要する。このことは同法70
   条違反の罪についても同様である。
  (3) 別件行政訴訟控訴審判決が認定した事実よれば控訴人の安全運転の義務違
   反についていかなる過失が存したか確定されていない。
  (4) 別件行政訴訟の被控訴人は,現実に自衛隊車に危害を及ぼしているから,
   法70条違反の行為が存在していたことは明らかであると主張する。道路交
   通法70条は他人に危害を及ぼさないような云々と規定されているので人の
   生命身体に対して危害を加える場合にのみ限定すべきである(大津地彦根支
   判 昭和41・7・20 下級判集・7・1017)。衝突したことそれ自
   体は単なる情状に過ぎないし,過失により自衛隊車(器物)を損傷した所為
   はなんら罪にならない。
  (5) 本件事故は,片側1車線の道路での,対向する大型トラックに牽引された
   車両と自動二輪車の接触事故である。大型トラックの運転者は,接触する1
   5,6m前まで(時間にして0.36秒前まで)相手の自動二輪車が相手車
                 66/70頁
   線の中央を走行しているのを認識しており,全然危ないとは思わなかったと
   いう事案である。自動二輪車の運転者が,0.36秒の間に,どんな過失が
   原因で,いかなる具体的な速度,方法をとって,いかに他人の生命,身体に
   対する危険を具体的に発生させたのか明らかにされていない。
 第3点 道路交通法70条の趣旨 
  (1) 同条が,運転者に,他人に危害を及ぼさないような速度と方法による運転
   を義務づけている趣旨は,運転者の不適切な運転行為のうち,とくに,一般
   的にみて事故に結びつく蓋然性の高い危険な速度,方法による運転を禁止す
   ると解するのが相当である。したがって,同条違反の罪責を問うためには,
   それ自体が,一般的にみて事故に結びつく蓋然性の高い危険な速度,方法で
   ある運転行為であること,もしくは,道路,交通及び当該車両の具体的状況
   との関連で,それが前記同様の危険な速度,方法による運転行為であること
   を要する。(昭和58年(う)第1550号,同59年2月20日東京高裁第
   3刑事部判決)
  (2) 別件行政訴訟控訴審判決の認定判示は,同条の構成要件に該当する一般的
   にみて事故に結びつく蓋然性の高い危険な速度,方法である運転行為である
   ことの摘示としては具体性に欠け不十分である。
  (3) 別件行政訴訟控訴審判決は,本件現場付近道路等の状況について,下り坂
   の左カーブで,雑草等があって見通しの良くないと状況を記載しているのみ
   である。例えば,本件事故現場が,付近に人家もなく,歩行者もいない山の
   中の車の交通量も少ない道路である事実等,具体的な道路の状況,交通の状
   況等の摘示をも欠く。
 4 上記理由によっても,玖珠警察署が認定した控訴人の道路交通法違反はない。
第22点 小野寺の道路交通法70条違反
 1 原判決は,「前記1(1)の認定事実によれば本件事故は控訴人の過失に基づく
  結果であり,小野寺には何ら過失のないことが認められる」(判決書21頁),
                 67/70頁
  と認定し,この認定を大前提として,別件訴訟における浅香らの違法行為の存
  在を否定した。
 2 本件事故はカーブ事故である。カーブ走行では,遠心力が働き,車体や運転
  者はカーブと反対側に押し出され,横転や横すべりを起しやすくなる。遠心力
  は,① 速度が速ければ速いほど,② カーブの半径が小さければ小さいほど,
  ③ 車の重量が重ければ重いほど大きくなる(甲84-1)。
 3 本件カーブ事故は,自衛隊車のカッティイング走行か,控訴人車のセンター
  ラインオーバーによる接触事故かで争われている(甲84-2)。
   カーブ事故を避けるためのポイントは,カーブの手前で十分スピードを落と
  すことである(甲84-2)。
 4 原判決が控訴人のセンターラインオーバーを認めた根拠とする,本件道路の
  タイヤ痕と擦過痕については,控訴理由第3点で述べたとおり理由がない。
 5 道路交通法第70条は,「車両等の運転者は,当該車両のハンドル,ブレー
  キその他の装置を確実に操作し,かつ,道路,交通及び当該車両等の情況に応
  じ,他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
  (罰則第119条第1項第9号,同条第2項)」と安全運転の義務を規定する。
 6 原判決は,「本件道路は,半径約25メートルのいわゆる「ヘヤピンカー
  ブ」になっている。カーブが急であることと,控訴人車の進行道路外に背の高
  い雑草が存在することが原因で,いづれの進行方向からも,相互の見通しはあ
  まりよくない(判決書14頁)。」「小野寺は,時速約40キロメートルの速
  度で,本件道路の自衛隊車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前
  の右カーブに入ったところ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑
  草越しに,控訴人車が控訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危
  険を感じなかったので,そのまま進行した(判決書16頁)。」と認定した。
 7 小野寺は,炊事車を牽引した大型トラックを運転し,見通しのよくない半径
  約25メートルのカーブに進入する場合,十分に速度を落とし,他人に危害を
                  68/70頁
  及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない義務があったのに,最
  高速度と指定された40キロメートル毎時の速度のままカーブに進入し,他人
  に危害を及ぼしたのであるから,「小野寺には何ら過失のないことが認められ
  る。」との原審の認定の誤りは明らかで,この認定に基づいて浅香らの不法行
  為の存在を否定した原判決には誤りがある。
第23点 控訴人の主張に対する被控訴人の原審での態度
 1 控訴人は原審において,上記のとおり,請求原因事実を具体的に陳述したが,
  被控訴人は単純否認を繰り返すのみである。控訴人が請求原因事実を具体的に
  陳述した場合は,被控訴人の陳述も反対事実の陳述によって具体的になされる
  べきである。これを怠るときは,控訴人の事実主張を自白したものと見なされ
  るべきである。
 2 控訴人は,平成18年5月19日第4回口頭弁論期日に,準備書面(5)を陳
  述したが,控訴人の主張事実に対して,被控訴人はなんら陳述(反論)しない。
   口頭弁論で相手方の主張する事実を明らかに争わないときは,これを争う意
  思のないものとみてよいから,法は自白したものとみなし,その事実の証明を
  不要とする。(擬制自白)
 3 控訴人は,平成18年6月30日第5回口頭弁論期日に,準備書面(6)を陳
  述した。被控訴人は,「上記準備書面に対する反論は予定していない。早期終
  結を希望する。」と陳述した(第5回口頭弁論調書)。
   この被控訴人の陳述は,控訴人の主張する被控訴人に不利益な事実を争わな
  い旨の意思を表明する弁論としての陳述であるから,裁判上の自白が成立する。
 4 浅香らが別件訴訟で乙第1号証として提出した事故現場写真(甲24・
  7
)の事故当時の道路状況(熊本方面から別府方面)の写真及び控訴人自動二
  輪車転倒位置(白い部分)の写真には,事故現場見取図(甲23)のKP34.
  9の位置にKP34.9の里程標が写っている。
 5 控訴人は,準備書面(6)1頁第2「KP34.9の里程標」1控訴人の主張
                 69/70頁
  (1)で,「事故当日,事故現場見取図(甲23)のKP34.9の位置に里程
  標は存在しない。」と証拠を示し具体的に主張した。
   この事実は,被控訴人の違法(虚偽公文書作成)を基礎づける具体的な事実
  で,本件裁判上重要な事実である。自白が成立すれば証明する必要もなくなり,
  浅香らの違法が認定される。
 6 刑罰法規は処罰の対象となる行為を法定したものであるから,それに反する
  行為は不法行為上も強い違法性を帯び,刑罰法規違反により他人に損害を与え
  れば,侵害された被害の種類や程度を問わず違法となる。
   浅香らには,虚偽公文書作成罪(刑法156条)に触れる行為がある。
  終 わ り に
  正義を体現すべき立場にある捜査機関が犯罪を構成しかねない証拠物への作為
 に加担したのではないかと疑うのは情けないことであるが,軽々に「そのような
 ことはあり得ない」と断定するのは危険である。捜査機関の違法行為は,裁判所
 が指摘しなければ,他にこれを明らかにするものはいない。
  控訴人の主張を虚心坦懐に受け止め,疑問点につき十分な審理を遂げた上で判
 断を下されることを求める。
                                 以上
  附属書類
  1 控訴理由書  副本              1通
  2 証拠説明書(8) 正・副本 (甲85~91)  各1通
  3 控訴理由書  副本 (担当裁判官手控え用)  1通

               70/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第19~20点

2007-01-12 05:42:26 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第19点 事故直後の自衛隊車と控訴人車の停止位置
 1 浅香らは,事故現場見取図(甲23)を提出し,平成13年11月5日付け
  準備書面(甲21・5頁)で,「小野寺は,②地点において,控訴人車がロ地
                60/70頁
  点でハンドルが左右にぶれだし,カーブが曲がりきれない様子で,③地点にお
  いて,衝突の危険を感じ,ブレーキを踏もうとした瞬間,控訴人車は,ハ地点
  から自衛隊車運転席の横を通過するとほぼ同時に炊事車の右車輪付近に衝突し
  た。」と主張している。同見取図の一部を拡大した図(甲77)で検討する。
 2 事故現場見取図(甲77)で,ロ-ハ-ニ-Xと走行したバイクがX点で対
  向車に接触した場合,図示の転倒地点ホに至ることは,一般常識に属する経験
  則であるニュートンの法則からありえない。
 3 本件事故直後に現場写真を撮影した赤埴らが,最初に認識したのは事故直後
  停止した自衛隊車である。浅香らは,停止位置で撮影された自衛隊車の写真を
  提出していない(隠蔽している)。小野寺は,陳述書(甲25)で「私の運転
  する大型トラックの後方を前進していた別の大型トラックが到着し,その車両
  に乗車していた師団司令部付隊の隊員が交通統制を実施しました。それと並行
  して事故現場保存の目印をして警察の到着を待ちました。」と陳述している。
  浅香らは,自衛隊車の停止位置の示す目印の写真も提出していない。
 4 浅香らは,控訴人車の転倒位置の写真として,事故現場写真・控訴人自動二
  輪車転倒位置(白い部分)の写真(甲67⑧)を提出している。(白い部分)
  は控訴人車車線の中央に位置するが,明瞭ではない。
  警察現場写真(甲32⑮)に上記(白い部分)が写っている。写真(甲3
  2⑯
)には「バイク」という文字が写っているから,師団司令部付隊の隊員
  (保安警務隊の隊員)が目印したバイクの転倒位置の写真である。しかし,こ
  れらの写真は,「本件事故現場路面に印象されていた擦過痕を撮影したもの」
  と説明されている。この写真を撮影したのは堀部警部補であるとされているが,
  事故車両の最終転倒位置という重要な証拠が写された写真にその説明がないの
  は不自然である。自衛隊写真を流用している強い疑いがある。
 5 警察写真(甲32⑮)には,本件道路のガードレールが写されているから,
  控訴人車の転倒位置が控訴人車の進行車線の中央付近に目印されていることが
                 61/70頁
  認められる。
 6 ガードレール以外の背景は,見事に真っ黒に塗りつぶされており,もはや,
  コントラストの問題ではなく,警察写真も加工・ねつ造されている。
 7 原判決には,被控訴人(国)に不利な事実は判断しない違法がある。
第20点 自衛隊による事故再現見分に対する玖珠警察署の関与
 1 控訴人は,平成18年3月24日付け控訴人準備書面(3)で,第1の1「事故
  発生の状況4ブレーキを踏んだ地点の写真(甲64)に写っているバイクの後ろ
  を支えている,白色の半そでシャツと藍色の野球帽及びズボンを着用した人物
  (以下「野球帽の人物」という)は,着用している帽子が警察活動帽(甲72
  で,金線顎紐付であることなどから,幹部級の警察官である」,第1の3「陸上自
  衛官が使用する野球帽は,部隊識別帽と呼ばれ,第8師団の識別帽の色は基本的に
  濃緑色である(甲58)」と主張した。
 2 被控訴人は,平成18年3月24日付け被控訴人準備書面(3)で,「陸上自
  衛隊第8師団の司令部付隊の帽子は,濃緑色であるが,帽子は部隊識別帽であ
  り,同じ第8師団でも,第8師団特科連隊の帽子は青色である。甲第64号証
  に写っている青色の帽子を着用している人物は,この第8師団特科連隊に所属
  する隊員であり,控訴人の主張には誤解がある」と主張した。
 3 控訴人は,平成18年4月10日付け控訴人準備書面(4)で,「自衛官服装
  規則第4条は,部隊等の長は,自衛官の服装のせい一を図ることに努めなけれ
  ばならないとし,陸上自衛官服装細則は,同別表第3で,部隊識別帽は,「自
  衛隊の施設内において,勤務に従事しない場合,又は勤務に従事する場合にお
  いて部隊等の長が,略帽,作業帽及び運動帽に代えて着用することを認めた場
  合」に着用するとする。」,「(1)・事故再現写真(甲63甲64)に写っ
  ている自衛官は制帽に夏制服,作業帽又はヘルメットに作業服を着用し,防衛
  庁事務官はワイシャツにネクタイを着用している。野球帽の人物は服装の斉一
  (統一)を乱している。(2)・制帽に代えて識別帽を着用することは認められ
                 62/70頁
  ていない。(3)・警察の,特に警ら車に乗車する警官の,活動帽にはあごひも
  がついているが,自衛隊の識別帽にはあごひもはついていない。(4)・第8特
  科連隊が本件事故再現見分に参加する理由がない。(5)・撮影現場は自衛隊の
  施設外である。」と主張した。
 4 被控訴人は,平成18年5月19日付け被控訴人準備書面(4)第1で,甲第
  64号証の写真の左端の人物(野球帽の人物)の帽子については,帽子のつば
  部分に確認されるものはあごひもではなく,飾りのモールである(乙第2号
  証)。なお,同人について被控訴人準備書面(3)2に第8特科連隊所属の隊員
  としたが,より正確には,現在は第8特科連隊の所属であるが,写真の撮影当
  時は第8師団司令部法務官所属の隊員である。甲第64号証の写真で同人の帽
  子が青色に見えるのは,カラーコピーの具合により変色して見えるものと思わ
  れ,本来,同人の帽子の色は乙第2号証のとおり濃緑色であると主張する。
 5 控訴人の主張(1)・第8師団司令部法務官所属の隊員は,作業帽又はヘルメ
  ットに作業服を着用することになる。制帽に代えて識別帽を着用することは認
  められていない。撮影現場は自衛隊の施設外である。被控訴人の主張は一貫性
  がなく控訴人の主張に対する反論となっていない。
 6 控訴人の主張(2)・甲第64号証の写真で同人の帽子が青色に見えるのは,
  カラーコピーの具合により変色して見えるものと思われるのなら,変色してい
  ない甲64の写真を提出すればよい。野球帽子のつば部分に確認されるものは
  あごひもか,飾りのモールであるかも判明する。
 7 控訴人の主張(3)・控訴人は,平成18年3月24日付け控訴人準備書面(3)
  第1の5で,玖珠町には第8師団の玖珠駐屯地があり玖珠警察署との関係は深
  い,自衛隊から1等陸佐を含む上級幹部が参加しているから,儀礼的にも,玖
  珠警察署からも上級幹部が参加しているはずである,甲63のKP34.9の
  里程標のすぐ近くに写っている所属不明の人物は玖珠警察署の交通課長以上の
  上級幹部であろうと主張し,甲63の写真の原本の提出を申立てた。
                 63/70頁
 8 控訴人の主張(4)・平成18年3月24日第3回口頭弁論期日に,裁判所も
  被控訴人に対し,別件訴訟乙1及び乙4の写真を提出するよう努めるよう釈明
  した。被控訴人は,控訴人が提出を申立てている文書及び写真を進んで全部提
  出し,真実の発見に協力すべきである。
 9 自衛隊による事故再現見分に対する玖珠警察署の関与はないという主張は,
  浅香らの虚偽の主張の一つである。原判決には,判決に影響を及ぼすべき重要
  な事項について判断の遺脱がある。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第17~18点

2007-01-11 04:34:53 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第17点 本件事故による自衛隊車の制動痕
 1 控訴人は,準備書面(6)第5「本件事故による自衛隊車の制動痕」で,浅
  香らが証拠資料(自衛隊車の制動痕)を隠蔽・破棄したと主張・立証したが,
  原判決は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を示していない。
   原判決には控訴人が主張した,判決に影響を及ぼすべき重要な事項について
  の判断の遺脱がある。
 2 小野寺は,自衛隊車(炊事車を牽引している大型トラック)を運転し,時速
  40キロメートルで,本件道路のヘヤピンカーブに進入し,対向車線に控訴人
                 58/70頁
  車を30.1mの位置(㋐~①)で初認した直後,19.3mに接近したとこ
  ろ(㋑~②)で相手がセンターラインを割るかもしれないとして,瞬間的に急
  ブレーキをかけ,20.2mの距離(㋑~㋓)で停止したのである。小野寺が
  危険を感じ・ブレーキをかけた地点は㋑,衝突した時の自衛隊車は㋒,自衛隊
  車が停止した地点は㋓である。㋑~㋒の距離は10.9メートル,㋒~㋓の距
  離は9.3メートルである(実況見分調書・甲42の23頁・甲38)。
 3 小野寺は,別件訴訟で,「危険を感じるまでアクセルを踏んでいたことにな
  りますね。(はい。)危険を感じた後,ブレーキペダルに足を乗せただけでブ
  レーキは踏まなかった,さっきの話でね。(はい。)危険を感じてから実際に
  ブレーキを踏んでブレーキが効き始めるまで何秒ぐらいかかりましたか。(先
  ほど言いましたように,アクセルから足を離しブレーキペダルに足を乗せた瞬
  間には横を通り過ぎておりましたので,ブレーキを踏む時間はありません。衝
  突音がしてからブレーキを踏みましたので。)」と証言している(甲22の2
  1頁)。
 4 小野寺は,衝突音がしてから(衝突してから),ブレーキを踏み込み,㋒~
  ㋓の距離9.3メートルで停止した。制動距離は9.3メートルである。
 5 アスファルト道路における制動距離と制動時間は,交通事故損害賠償必携
  (新日本法規)の資料5-40(甲83)に記載されている。時速40キロメ
  ートルの場合,実制動距離は8.82メートルで,ブレーキを踏み込んでブレ
  ーキが効き始めるまでの時間を0.1秒とすると空走距離は1.11メートル
  であるから,制動距離は9.93メートルである。
 6 一般に,時速40キロで急ブレーキをかけた時の停止距離は22メートルに
  なるといわれている(甲84)。小野寺が,㋑の地点で危険を感じて急ブレー
  キが必要と判断した時点から自衛隊車が停止した地点を㋓までの距離は,20.
  2mである。(甲42の23頁)。
 7 以上から,小野寺が急ブレーキをかけたことは疑いがない。急ブレーキをか
                 59/70頁
  けると制動痕が印象される。浅香らは写真に写ってもいない控訴人車のタイヤ
  痕の存在を主張しながら,自衛隊車の制動痕の存在を一切認めない。自衛隊車
  の印象した制動痕が存在しなかったという浅香らの主張は事実及び経験則に反
  し信用できない。
 8 スリップ痕(制動痕)は衝突前,衝突後の自動車の運動を示す記録であるか
  ら,事故再現にとって数少ない物的証拠のひとつである。とくに衝突における
  最初の接触点を見出す場合には,スリップ痕が唯一の決め手となることが多い。
 9 浅香らは,重要な証拠を隠滅している。
第18点 炊事車の衝突痕
 1 控訴人は,準備書面(3)4頁 第2,3で,炊事車の衝突痕1~3の写真
  (甲67⑫)は事故当日に撮影されていないと主張・立証したが,原判決
  は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を示していない。
 2 甲67⑬の本件トレーラのタイヤホイール及びホイールナットには傷一つな
  く,塗装もはげていない。
 3 控訴人車前輪右ホークに傷がある。(甲67⑩甲69⑨⑩)。小野寺は別
  件訴訟で,この傷について見分した警官は「この傷は,トレーラのホイールナ
  ットがありますけれども,そのホイールナットのところと接触したときの傷だ
  と。」と言ったと証言している(甲22の26頁)。
 4 写真(甲67⑫⑬⑭)の説明で,炊事車の衝突痕(赤で囲った部分)として
  タイヤの側面に赤でしるしがつけられている。 タイヤは天然,合成ゴムで作ら
  れているから,控訴人車に上記の傷はつかない。
 5 よって,甲67⑬のトレーラは事故当日に撮影されていない。故に甲67の
  写真
で自衛隊車が写っている写真は事故当日に撮影されていない。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第15~16点

2007-01-10 02:44:05 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第15点 KP34.9の里程標(甲32⑪67①
   原判決の判示「当該里程標については,控訴人が平成11年10月29日に
  本件事故現場を撮影した写真(甲66)には,これが写っていないことが認め
  られる。しかし,右事実から直ちに同日以前の,本件事故当日に同里程標が存
  在しなかったとまではいうことができない。また,警察現場写真及び自衛隊現
  場写真を全体として検討しても,同里程標の部分が後に挿入された画像である
  と認められるような特別な事情は,これを認めることができない。」
 1 控訴人の主張(1) ・事故当日,事故現場見取図(甲23)のKP34.9の
  位置に里程標は存在しない。
   控訴人が平成11年10月29日に撮影した写真(甲66)には,里程標は
  写っていない。写真(甲66)は控訴人が玖珠警察署からの帰途,道路の南側
  の草地の東端に駐車し,その位置から西へ歩き,カーブの頂点付近で引き返し,
  本件事故現場を撮影した,同一の機会に撮影した一連の写真である。写真は普
  通の写真店でネガフィルムからプリントしてあるから「加工」はされてない。
  里程標は自分では動かない。里程標が写ってない理由は写真にはないものは写
  らないからである。被控訴人は写真(甲66)の成立を争っていない。
 2 控訴人の主張(2) ・警察及び自衛隊が撮影したKP34.9の里程標の写真
  と控訴人が平成13年10月30日に撮影した写真に写っている同里程標とは,
  地上高及び設置されている位置が異なる。
                 51/70頁
   別件行政訴訟で,担当裁判官の適切な釈明により,神奈川県公安委員会は,
  平成17年1月18日付けで,乙4号証として実況見分調書に添付された写真
  ⑪の拡大写真(甲33)を提出した。
   甲34①は,甲33の拡大写真である。甲34②は,控訴人が平成13年1
  0月30日に撮影した写真を拡大し,甲34①の画面と同じになるようトリミ
  ングした写真である。基点となるものとして,(1)ガードレール上の2個の視
  線誘導標,(2)その延長上にある擁壁上の(警ら車の後窓を通して見える)警
  戒標識,(3)間ノ瀬巡査部長の後ろにある警戒標識がある。
   ガードレールの袖の視線誘導標を基点として甲34①と②を重ね合わせ(透
  かして)見ると,(2)の警戒標識の高さは一致するが,甲34②の里程標の標
  示板は自衛官の肩付近の高さに位置する(甲80)。甲34①の標示板は自衛
  官の臀部に写っている(甲35①・②)から,甲34①の標示板の地上高は明
  らかに甲34②の標示板より低い。
   本件道路は,日本道路公団の「別府阿蘇道路」として,昭和39年10月,
  水分峠~一の宮間の有料道路として完成した。平成6年6月に大分・熊本県道
  別府一の宮線となり無料化された。その名残として里程標が設置されている。
  大分県「道の相談室」によると,里程標の立替えが平成12年6月頃から平成
  13年度に行なわれた(甲81)。立替えられた後の里程標の形状・寸法は甲8
  1に記載の図面及び写真のとおりである。地上高は1500mm程度で,標示
  板の寸法は,縦140mm,横350mmである。
   路側用ガードレールの高さは800mm前後であるから,ガードレールと比
  較しても,実況見分調書に添付された写真⑪(甲32⑪・33・35①・35
  ②)の里程標の地上高は,1500mmより明らかに低い。
 3 控訴人の主張(3) ・事故当時,本件道路の里程標は,キロメートル標(ポス
  ト)と100メートル標では形状寸法が異なっていた。KP34.9の里程標
  は100メートル標で,事故現場見取図(甲23)のKP34.9の位置の地
                 52/70頁
  点より45メートル前後別府よりにあった。警察,自衛隊の写真には,キロメ
  ートル標と同じ形状寸法の100メートル標が写っている。
   間ノ瀬巡査部長は,「現場を見てください,さっき紙をあげたでしょう,形
  でいったらですね,この紙よりも若干小さいぐらいの標板が道路の左側につい
  ているのです,水分峠から,キロメートルの地点ですよと書いてある標板なん
  ですよ,それのヘヤピンカーブの丁度その衝突地点のすぐそば,倒れられたす
  ぐ傍に34.9と書かれたあれがある」と述べている(甲5の15頁)。「さ
  っきあげた紙」は,交通事故担当者告知表(手書き書き込み部分 作成者 控
  訴人)である(甲82)。同告知表の寸法は,縦64mm,横89mmである。
  「34.9とかかれた標板の大きさ」は「縦64mm,横89mmより少し小
  さめである」との間ノ瀬巡査部長の認識,説明を疑うべき事情は存在しない。
   立替えられた里程標の標示板の寸法は,縦140mm,横350mmである
  から,本件事故当時存在した100メートル標の寸法と明らかに異なる。
 4 原判決は,上記1~3項の控訴人の主張を無視した,判断遺脱・理由の不備
  がある。
第16点 文書提出命令
   原判決の,第3争点に対する判断の6,控訴人の文書提出命令の申立てにつ
  いて(判決書24頁)の下記の部分の不服。「控訴人は,①陸上自衛隊第8師
  団司令部付隊及び陸上自衛隊西部方面総監部を相手方として,i本件事故の発
  生報告書及び事故現場見取図,ii実況見分調書,事故現場及び損害状況写真,
  iv小野寺と助手の片岡高房の供述書,車両運行指令書について文書提出命令
  の申立て(平成17年(モ)第2411号)及び②国を相手方として,i自衛隊現
  場写真の原本及びネガフィルムのべた焼き,ii本件再現見分写真の原本及びネ
  ガフィルムのべた焼きについて文書提出命令の申立て(平成18年(モ)第38
  6号)を,それぞれしている。しかし,いずれの申立てについても,申立てに
  かかる文書の存在を認めるに足りない。よって,控訴人の上記文書提出命令の
                 53/70頁
  各申立ては,いずれも理由がないものとしてこれを却下する。」
第1 本件文書の存在について (平成17年(モ)第2411号)
 1 被控訴人の意見は,「本件申立の文書は本件事故に関しては作成されていな
  いか,すでに廃棄されているため,存在しない。存在しないから文書提出命令
  を発令するための要件を欠いている」というものである。
 2 被控訴人は,基本事件の準備書面で,(1)「 本件事故の捜査担当は警察官で
  あり,警務隊により本件事故に関する捜査資料が作成されるものではない。」,
  (2) 「発生報告書及び実況見分調書等については,規則7条に定めるとおりで
  あり,本件事故については作成されていない。」(3)「本件事故は,賠償責任
  のない事故であることから,方面総監には報告を要しない案件である。」(4)
  「北熊本駐屯地業務隊長は,賠償事故に伴うことに関し,小野寺(国)には過
  失がないと判断したものであり,同隊長が小野寺に過失がないと決定したもの
  ではない。」と主張する。
 3 被控訴人の主張の論旨は明らかでないが,北熊本駐屯地業務隊長が賠償事故
  に伴うことに関し小野寺(国)には過失がないと判断したとの自白に注目する。
 4 論旨を明確にするため,陸上自衛隊損害賠償実施規則(甲28)での「賠償
  事故」の意義について検討する。
   規則第6条は,「隊員が,自己の職務遂行中に他人に損害を与えた場合には,
  当該隊員及び現場指揮官は,事故現場における証拠保全等必要な処置をとると
  ともに,順序を経て速やかに所属の部隊長等の長に報告するものとする。2 
  前項により報告を受けた部隊の長は,直ちに当該駐屯地業務隊等の長に賠償事
  故発生の概要及び処置した事項等について通知するものとする。・・・」と規
  定する。
   規則第7条は,「前条第2項の規定により賠償事故発生の通知を受け,又は
  第5条の規定により処理の移管を受けた駐屯地業務隊等の長は,所要の発生報
  告書及び事故現場見取図を作成し,方面総監に報告する。この場合において,
                 54/70頁
  陸上自衛隊に賠償責任がないものと思料される事故であっても現実に損害が発
  生し,かつ,将来賠償責任の可能性のある事故,又は政治的,社会的に重大な
  影響を及ぼすと認められるについての報告漏れのないように特に留意するもの
  とする。(法定第1号)」と規定する。
   規則第8条は,「賠償に係る事故が発生した場合は,当該賠償事故の調査は,
  原則として事故を担当する駐屯地業務隊等の長が行なうものとする。」と規定
  する。
   規則第11条は,駐屯地業務隊等の長は,・・・損害賠償審議会を設置して,
  次に掲げる事項を審議させ,その意見を徴するものとする。(1) 賠償事故の事
  実 (2) 賠償責任の有無及びその程度並びに損害の種別及び額 (3)  隊員に
  対する求償権の有無 (4) その他必要な事項 ・・・」と規定する。
 5 前項から,規則では,隊員が自己の職務遂行中に他人に損害を与えた場合を
  賠償事故の発生とし,賠償責任の有無に関係なく,順序を経て必要な処置・事
  故の調査報告が行なわれることは明らかである。
 6 本件文書は,規則に従い作成され,保存期間は10年であるから現存する
  (甲31の5)。
 7 よって,本件文書が本件事故に関しては作成されていないとの被控訴人の主
  張は到底信用することができない。
第2 本件申立の必要性 (平成17年(モ)第2411号)
 1 被控訴人は,「本件申立によれば本件各文書により証すべき事実は,本件事
  故の態様とされているところ,基本事件の争点は,浅香らが別件訴訟において
  証拠のねつ造・改ざん等を行なったか否かであるから要証事実との関係で本件
  各文書を証拠としてとり調べる必要はない」と主張する。
 2 基本事件では前記のとおり本件各文書の存否が争われている。文書の所持者
  に提出を命じることで,少なくとも,所持者が提出命令に従うか否か,従えな
  い理由は何か,本件文書の存否など,浅香らの不法行為を証するための要証事
                 55/70頁
  実(要件事実)を推認させる間接事実となる事実が明らかになる。
 3 もし必要なら,本件申立書に,証すべき事実として,予備的に,浅香らが別
  件訴訟において証拠のねつ造・改ざん等を行なったか否かを付け加える。
 4 事件の解明に役立つ資料の提出を国が妨げる理由が控訴人には解らない。被
  控訴人は,「本件事故態様については別件訴訟において審理を尽くした上判示
  されているから,その意味でも本件申立ては必要が認められない」と主張する。
  「別件訴訟において審理を尽くした」との主張は争うが,その点はおくとして,
  確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有するのであって,判決理
  由中の事実判断及び法適用には既判力が生じないことは明らかである。
第3 結語 (平成17年(モ)第2411号)
   控訴人は,別件訴訟において,平成13年9月3日付けで,陸上自衛隊北熊
  本業務隊の所有する本件事故に関する調査資料の提出を申立てたが,裁判所は
  採否の決定を行なわず,同文書は提出されないまま弁論を終結した。
   本件文書は,本件事故後の自衛隊の事故処理,調査報告等の行動の真相解明
  に役立つ唯一の文書であり,同じ文書は現に行政機関の保有する情報の公開に
  関する法律で開示されており,4号文書でもある(甲31)。証拠の偏在を是
  正し,別件訴訟における浅香らの行為の態様等の真実発見とそれに基づく公正
  な審理のために,本件申立てを認容されることを求める。 
第4 文書提出命令の申立に対する意見書(平成18年(モ)第386号)
 1 文書の趣旨:(1) 別件訴訟で,国が,平成13年10月11日に作成し,乙
  第1号証として提出した写真,及びネガフィルムのべたやき(解像度の高いも
  の)(2) 別件訴訟で,国が,平成13年10月11日に作成し,乙第4号証と
  して提出した写真,及びネガフィルムのべたやき(解像度の高いもの)
 2 事情:控訴人は,写しを保有しているが,写真の画質,焼付け,複写不良の
  ため,人物,道路路面,道路わきの草木の状態が不明な写真がある。ネガフィ
  ルムのべたやきは提出されていない。事故直後の自衛隊車の停止位置の写真な
                56/70頁
  ど,真実解明に必要な写真が他に存在したら,提出を求めたい。
 3 被控訴人の意見(平成18年3月20付け意見書(2))
   (1) 本件申立ては,本件申立書(2)「1文書の表示」欄に記載された文書(以
  下「本件各文書」という。) が民事訴訟法220条1号に該当するとして,そ
  の提出を求めるものである(本件申立書(2))。(2) しかしながら,被控訴人は,
  本件各文書を基本事件で引用していない。また,被控訴人は,本件各文書のう
  ち,別件訴訟の乙第1号証及び第4号証の各写真のネガフィルムのべたやきに
  ついては,いずれも作成していない。なお,ネガフィルムについては,既に別
  件訴訟も確定しており,被控訴人において現在保管していない。(3) 以上の次
  第で,本件申立ては理由がないから,速やかに却下されるべきである。なお,
  控訴人が主張している別件訴訟における証拠写真のねつ造・改ざんについては,
  別件訴訟において既に主張され,同訴訟の控訴審判決等で控訴人の主張が排斥
  され,同判決も既に確定していることを念のため申し添える。
第5 原判決の誤り
 1 原判決は,「いずれの申立てについても,申立てにかかる文書の存在を認め
  るに足りない。よって,控訴人の上記文書提出命令の各申立ては,いずれも理
  由がないものとしてこれを却下する。」とした。
 2 被控訴人は, 別件訴訟で国が平成13年10月11日に作成し,乙第1号
  証として提出した写真,及び,別件訴訟で国が平成13年10月11日に作成
  し,乙第4号証として提出した写真については,同文書を基本事件で引用して
  いないから,民事訴訟法220条1号に該当しないから提出しないというので
  あって,その存在を否定していない。
 3 上記から,乙第1号証及乙第4号証の写真は,本件事故について国が作成し,
  別件訴訟で書証として提出し,現在も所持していることを認めているのである。
 4 原判決は,「控訴人が挙げる種々の事情の大半は,写真画面上の単なるコン
  トラストの問題や,自衛官の位置等について,控訴人個人の主観に基づいてこ
                  57/70頁
  れを不自然であると論難しているにすぎないものであって,ねつ造・改ざんが
  あったことを疑わせるような客観的な根拠となるものではないと言わざるを得
  ない。」という(判決書22頁)。
   しかし,事故状況再現写真(甲27)事故発生の状況1バイクを確認した位
  置の写真,および,事故現場の車両状況1A①-イを見通した位置の写真には,
  は明らかにコントラストの問題がある。上記写真の拡大写真(甲63の1/2,
  甲63の2/2)では,肝心の草地の部分が,真っ白になるまで輝度調整がなさ
  れ,草地の状況が分からないのにくわえて,里程標の間近に立っている人物の
  着衣が確認できない。わずかに残された後頭部の映像から警察略帽を着用して
  いること及び自衛隊側の最上級幹部の間近に位置することから,同人物は玖珠
  警察署の幹部であり,相手当事者が否定している玖珠警察署の当該事故状況再
  現見分関与を示す証拠となる。浅香らの証拠写真の加工の一例である。
 5 被控訴人は,ネガフィルムについては,既に別件訴訟も確定しており,被控
  訴人において現在保管していないというが,発生報告書(法定第1号)の保存
  期間は10年間である(甲31の5)から現存すると推断される。
第6 結語 (平成17年(モ)第2411号)及び(平成18年(モ)第386号)
   よって,原判決の,「いずれの申立てについても,申立てにかかる文書の存
  在を認めるに足りない」との認定は明らかに誤っている。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第13~14点

2007-01-09 04:06:07 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第13点 控訴人車に積まれた控訴人の荷物(甲67①
   原判決の判示「控訴人は,本件事故当時,控訴人車に荷物は積まれていなか
                 47/70頁
  ったと主張するが,前記1(2)アの認定事実に反するもので採用できな
  い。」
   前記1(2)アの認定事実。「1(2)本件事故の実況見分の状況及び同調書の
  作成の経緯ア平成11年10月7日午後0時34分から午後1時20分までの
  間,玖珠警察署の間ノ瀬久太巡査部長を見分官とし,堀部金丸警部補及び早水
  満堯司法巡査を補助者(なお,見分官と補助者いずれも所属,階級は本件事故
  当時のものである。),小野寺を立会人とした本件事故の実況見分が行われた。
  控訴人は,本件事故直後に小国公立病院に搬送されていたため,実況見分が実
  施された際は事故現場にいなかった(そのため,同実況見分終了後に,小野寺が
  控訴人車に積まれていた控訴人の荷物を,同病院まで届けた。)。」
 1 控訴人は,本件事故当時,控訴人車に荷物は積まれていなかったと主張した
  ことはない。甲67①の写真が写された時点で控訴人車に荷物は積まれていな
  かったと主張しているのである。
 2 控訴人の主張は,甲67①の画面右に黄色の荷物を積んだ控訴人車とその後
  方に控訴人の靴が写っているが,この時点では控訴人車に荷物は積まれていな
  い。控訴人の荷物は,控訴人の身元確認のためなど内容を確認する必要があり,
  既に降ろされ,靴と共に控訴人の搬送先小国公立病院に運ばれるため車に積み
  込まれている,というのである。
 3 甲67①の写真は,小国警察署員から早水巡査長への捜査の引継ぎの場面を
  写していると思わせる写真である。通常の場合,引継ぎが終われば,すぐ移動
  できるように,荷物は近松3佐の車に積み込んでいる。バイクの近くに油を売
  っている自衛官が5,6名もいるではないか。
 4 控訴人の靴は作為的に写されているが,控訴人が着用していたヘルメットは
  どこにあるのか。
 5 原判決は,控訴人の主張の趣旨を曲解し,判断を誤っている。
 6 間ノ瀬巡査部長を見分官とする実況見分については,控訴理由第6点で主張
                 48/70頁
  したとおりで,原判決の認定は誤っている。
 7 ちなみに,控訴人の兄が小国公立病院に行ったとき病院には数人の自衛官が
  いた(甲74)。小野寺には,他になすべきことが山とあり,小野寺本人が控
  訴人車に積まれていた控訴人の荷物を同病院まで届ける必要はなかった。
第14点 控訴人車車線上のひし形マーク(甲67②
   原判決の判示「控訴人は,自衛隊現場写真に写っている9個のひし形マーク
  のうち,3個は本件事故当日に存在していなかった旨主張するが,当該写真と,
  控訴人現場写真(甲66①ないし③)とを比較検討すると,本件事故当日,事
  故現場に9個のひし形マークが存在していたものと認められる。」
 1 被控訴人の主張(1) 本件事故現場付近の路面上にペイントされているマーク
  は,前方にカーブがあることを示す警戒表示である減速マークが経年によって
  タイヤの通過箇所が摩滅したものと思われ,控訴人が主張するように被控訴人
  が書いたり消したりしたものではない。
 2 被控訴人の主張(2) 控訴人は,実況見分調書添付の写真に写ったマークは,
  警察署等の許可を得ずに設置するのは取締法違反であるから,実況見分調書に
  記載されるべきであるのにされていないことを主張しているが、控訴人の主張
  する「取締法規違反」などない。
 3 被控訴人の主張(3) 当該現場には「自衛隊写真②」のとおり9個のマークが
  存在している。「警察写真⑩」にはそのうちの6個のマークが写っているのであ
  り,甲第66号証①②⑨の各写真も同様に6個のマークが写っているのである。
 4 控訴人の主張
  (1) 取締法規・道路交通法第76条1項 何人も、信号機若しくは道路標識等
   又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。
   (罰則 第118条),及び道路法第43条 何人も,道路に関し、左に掲
   げる行為をしてはならない。1みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。
   (罰則第100条)。(何人もとあるからたとえ警察官,道路管理者でもみ
                 49/70頁
   だりに設置してはならないのである。)
  (2) 控訴人車線のひし形マークの存在は控訴人車の運転に影響を及ぼすから,
   堀部警部補が実況見分時このマークの存在を認めたら,実況見分調書に記載
   すべきところ,このマークについての記載はない。
  (3) 警察写真⑥及び⑦(甲32⑥)の控訴人車線に「徐行」の道路標示があ
   る。堀部警部補が実況見分時この徐行の道路標示の存在を認めたら,実況見
   分調書に記載すべきところ,この標示についての記載はない。控訴人車線の
   ひし形マークが減速マークであるとすると,道路標示は「この先カーブ」ま
   たは「速度落とせ」となる。本件事故後,警察,自衛隊が控訴人車車線に,
   違法に(みだりに)規制標識・警戒標識を設置した。減速マーク(甲78)
   は法定外表示であるが,「徐行」の道路標示は法定標示である。
  (4) 実況見分調書(甲42の22頁)「交通事故現場見取図第2図」によれば,
   湯布院方面から本件事故現場に至る直前にヘヤピンカーブが連続して存在す
   るが,これらのカーブには「減速マーク」が設置された形跡はない。本件事
   故現場のカーブだけ存在していることから意図的に設置されている。
  (5) 控訴人車線の「徐行」の道路標示及び控訴人車線のひし形マーク(減速マ
   ーク)は本件事故当時存在していないから,警察写真等は事故当日撮
   影されていない。
  (6) 減速マークは正規の方法で設置されていないのでタイヤの通過箇所が簡単
   に摩滅した。故意に消されたとも思われる。
  (7) 減速マークが経年によってタイヤの通過箇所が摩滅したものと思われるの
   であれば,本件事故によってその必要性が確認されたのであるから再塗装さ
   れるはずであるがその形跡はない。
  (8) 矢印型の減速マークのタイヤ通過箇所が摩滅した場合,残されたマークも
   矢印形(山形・シェブロン型)となるが,本件控訴人車線に残されたマーク
   はひし形である(甲66②甲32⑩甲67②)。控訴人車線に設置した
                50/70頁
   マークの存在を隠蔽する必要が生じた場合,消去するより,設置されたひし
   形マークを利用して矢印型の減速マークをペイントしてその一部に見せかけ
   たほうが簡単である。甲66②でみると,最初設置されたひし形マークがく
   っきり残っている一方,後日書き加えた減速マークはほとんど消えている。
   タイヤが通過したためでなく,減速マークの材料・工事の違いによる。
 5 原判決は,上記原審での当事者の弁論を全く無視し,控訴人の主張の趣旨を
  曲解し,恣意的な判断を行っている。
                51/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第11~12点

2007-01-08 04:48:36 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第11点 現場写真のねつ造・改ざん
   原判決の,第3争点に対する判断,4 争点(3) 本件事故当日の現場写真
  がねつ造・改ざんされたものかについて(判決書22~24頁)の下記の部分
  の不服。「控訴人は,本件事故当日の現場写真がねつ造・改ざんされたもので
  あると主張するので検討する。(1) 控訴人は,種々の事情を挙げて,警察現場
  写真及び自衛隊現場写真が,本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改
  ざんされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出する。しかし,控訴人
  が挙げる種々の事情の大半は,写真画面上の単なるコントラストの問題や,自
  衛官の位置等について,控訴人個人の主観に基づいてこれを不自然であると論
  難しているにすぎないものであって,ねつ造・改ざんがあったことを疑わせる
  ような客観的な根拠となるものではないと言わざるを得ない。なお,個別に検
                 43/70頁
  討を加えるべきものは,後記(2)のとおりである。これに対し,前記1(2)(3)
  の認定事実によれば,本件実況見分が本件事故直後に行われたこと及び警察現
  場写真及び自衛隊現場写真が,同実況見分の際に撮影されたものであることが
  明らかである。さらに,別件訴訟における小野寺の証言(甲22)や,玖珠警
  察署署員と控訴人の会話内容(甲5)を子細に検討しても,本件実況見分が事
  故当日行われたことを疑わせる点はないし,本件炊事車の擦過痕や本件事故現
  場道路の擦過痕が後日ねつ造されたような事情をうかがうこともできない。
   (2)控訴人の主張のうち,以下のアないしエについて個別に検討を加える。
  ア KP34.9の警戒標識(甲67①)控訴人は,上記警戒標識が本件事故
  当日に事故現場には存在しなかったと主張するが,控訴人が平成11年10月
  29日(本件事故の約3週間後)に撮影した現場写真(甲66,以下「控訴人
  現場写真」という。)には,上記警戒標識が写っていることが認められる。こ
  のことからすれば,当該警戒標識は本件事故当日から既に存在していたものと
  いうべきである。イ 控訴人車に積まれた控訴人の荷物(甲67①⑧)控訴人
  は,本件事故当時,控訴人車に荷物は積まれていなかったと主張するが,前記
  1(2)アの認定事実に反するもので採用できない。ウ 控訴人車車線上のひし
  形マーク(甲67②)控訴人は,自衛隊現場写真に写っている9個のひし形マ
  ークのうち,3個は本件事故当日に存在していなかった旨主張するが,当該写
  真と,控訴人現場写真(甲66①ないし③)とを比較検討すると,本件事故当
  日,事故現場に9個のひし形マークが存在していたものと認められる。 エ 
  KP34.9の里程標(甲32⑨,67①⑧)当該里程標については,控訴人
  が平成11年10月29日に本件事故現場を撮影した写真(甲66)には,こ
  れが写っていないことが認められる。しかし,右事実から直ちに同日以前の,
  本件事故当日に同里程標が存在しなかったとまではいうことができない。また,
  警察現場写真及び自衛隊現場写真を全体として検討しても,同里程標の部分が
  後に挿入された画像であると認められるような特別な事情は,これを認めるこ
                 44/70頁
  とができない。(3) したがって,警察現場写真及び自衛隊現場写真のいずれに
  ついても,ねつ造・改ざんがあったとは認められないから,この点をもって浅
  香らの違法をいう控訴人の主張は理由がない。5 以上のとおりであるから,
  別件訴訟における浅香らの違法行為をいう控訴人の主張はいずれも理由がなく,
  控訴人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。」
 1 事故当時の道路状況(熊本方面から別府方面)の写真(甲67①),および,
  控訴人自動二輪車転倒位置(白い部分)(甲67⑧)について,国民の視点・
  国民の感覚からして不自然な点(経験則から,通常人である控訴人が合理的に
  疑いをもつ点)は,下記のとおりである。
 2 通常人は,道路状況の写真を写すときは,特段の事情がある場合を除き,人
  物が写らないように道路およびその付属物を写す。同写真の,①画面左の早水
  巡査長,小国署員,近松3佐及び自衛官の一団と,②画面右の(油を売ってい
  る)自衛官の一団は,本件道路状況写真には余分である。通常の場合仮に現場
  にいたとしても写真に写らないように移動してもらう。
   現場付近には,捜査の引継ぎを行うのに適した草地がある(甲66)のに,
  なぜ,交通規制もせずに,本件道路の最も危険な場所であるヘヤピンカーブの
  頂点で引継ぎを行っているのか。同写真の提出者の作為を感じる。
 3 画面左の一団には,警務隊の腕章をつけた自衛隊幹部(警務隊長近松3佐)
  がおり,この一団の自衛隊員は直立不動の姿勢で立っている。それに比べて,
  右の一団は左の一団の存在を意識している様子は全くなく,リラックスして
  (だらけて)いる。
 4 画面右の一団は,写真(甲67⑧)の画面左上にも写っている。同写真の自
  衛官の一団の部分を拡大した写真(甲70)をみると,自衛官の一人は草地に
  座り込んでいる。軍隊に対する国民の視点からすると大きな違和感がある。
 5 写真(甲70)に写っている最も左側に立っている自衛官の像の背中の部分
  は直線になっていて,だれが見ても不自然である。同像が,切り抜き・貼り付
                 45/70頁
  けされ,同写真が加工されていることは明らかである。
 6 写真(甲67①)の画面左の一団の人物と,その背景の部分のコントラスト
  が過度に調整され(若しくは黒くペイントされ),背景の草木の部分が真っ黒
  になっている。にもかかわらず,一団の人物の後ろにKP34.9の警戒標識
  が,不自然に,はっきりと写っている。同写真の提出者の同警戒標識に対する
  こだわりと作為を感じる。
 7 写真(甲79)は,写真(甲67①)とその一部を拡大した写真である。
   草地の上に約6名のヘルメット,作業服の自衛官の一団が写っているが,左
  端の自衛官は他の自衛官に比べて,体格・鉄帽の大きさからみて明らかに小学
  生程度の大きさしかない。
 8 同写真(甲79)で,①画面左の早水巡査長の左足が車道にはみ出している。
  又,②画面右の自衛官の一人は車道に背を向けて完全に車道内に立っている。
  通常人の感覚では,上記自衛官の位置などについて,大きな違和感がある。
 9 控訴人は,写真(甲67①)に写っている,人物,控訴人車及び里程標は同
  道路写真撮影時には存在していないと主張しているのである。画面左の一団の
  大きさ,里程標の地上高,控訴人車のおおきさが,画面右のガードレールの大
  きさに比べて,遠近法を考慮にいれても,事実と異なる。
 10 原判決の判決理由中の説明は,事実認定の判断過程がまったく納得できず,
  常識上とうていありうべからざる推理に基づいた事実認定である。
 11 原審で控訴人は同写真の原本の提出を申立てたが,同写真の存在を認めるに
  足りないとして,却下された。下記控訴理由(第16点文書提出命令)で主張
  するとおり,同写真は存在するから,控訴審で原本を提出させ新たな証拠調べ
  が行われることを求める。
第12点 KP34.9の警戒標識(甲67①
   原判決の判示「控訴人は,上記警戒標識が本件事故当日に事故現場には存在
  しなかったと主張するが,控訴人が平成11年10月29日(本件事故の約3
                 46/70頁
  週間後)に撮影した現場写真(甲66,以下「控訴人現場写真」という。)に
  は,上記警戒標識が写っていることが認められる。このことからすれば,当該
  警戒標識は本件事故当日から既に存在していたものというべきである。」
 1 控訴人は,上記警戒標識が本件事故当日に事故現場には存在しなかったと主
  張したことはない。控訴人の論旨はこれら連続する3個の警戒標識は,南行き
  の車ために設置された線形誘導標であるが,警察写真⑩(甲32⑩,甲35③
  ④),及び控訴人現場写真(甲66③④)では,KP34.9の警戒標識は南
  行きの車から視認できないのはおかしいというのである。
 2 自衛隊写真①(甲67①,甲79,甲35⑦),写真⑪警察写真⑪(甲32⑪,甲
  33,甲34①・甲35①⑤)及び控訴人写真(甲66⑥⑦)では,北行きの
  車から真正面に見える。北行きの車からは,甲35⑩⑪⑫⑬⑭のように視認さ
  れなければおかしい(ならない)。
 3 自衛隊写真②(甲67②)に比べて,平成11年10月29日撮影された控
  訴人写真66ではこれら線形誘導標の標示板の塗装は真新しい。KP34.9
  の警戒標識は本件事故当時擁壁上にあって草木に隠されていたか,若しくは,
  標識板を単一の柱に取り付け路端に設置されていたが標識板が脱落していたの
  で本件事故後再設置した。この時,標示板の設置角度を誤り南行きの車から見
  えない角度で設置したのである。自衛隊写真①に線形誘導標の標示板が写って
  いるが,写真を加工して,設置角度を誤った標示板を挿入している。
 4 原判決は,控訴人の主張の趣旨を曲解し,判断を誤っている。
 5 ちなみに,控訴人が熊本赤十字病院から外出許可が出た平成11年10月2
  6日朝,間ノ瀬巡査部長に電話し玖珠警察署で話を聞きたい旨を伝えた時,同
  部長は,10月26,27,28日の3日間は所用があるとのことで,10月
  29日午後1時に出頭することになった経緯がある。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第9~10点

2007-01-07 06:15:33 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第9点 運行記録計
   原判決の,第3争点に対する判断,2争点(1),(4)運行記録計について(判
  決書20~21頁)の下記部分の不服。「前記1(2)の事実に別件訴訟における
  小野寺証言(甲22)及び本件実況見分調書(甲42)を総合すれば,本件事
  故の実況見分が,小野寺立会の下で,現場の模様や,控訴人車と本件大型トラ
  ックの距離,位置関係を記録,計測したものであり,それ自体適切に行われた
  ものであることが認められ,上記実況見分の実施について違法性をうかがわせ
  る資料は存在しない。そうすると,このような本件実況見分の結果をまとめた
  本件実況見分調書も,適法に作成されたものというべきである。確かに本件実
  況見分調書に運行記録計の記録紙が添付されていないことが認められる(甲4
  2)が,上記の事実が直ちに同調書の作成の適法性を否定する根拠にはならな
  いものである。したがって,本件実況見分調書に運行記録計の記録紙が添付さ
  れていないことをもって同調書の適法性を否定する控訴人の主張は採用できな
  い。」
 1 控訴人は,別件訴訟控訴審第1回口頭弁論期日に,準備書面(1)を陳述し,
  運行記録計について下記のとおり主張した。「73式大型トラックの保安基準
  は,自衛隊の使用する自動車に関する訓令第10条により別冊1で定められて
  いる。別冊1の項目45で運行記録計を備えることになっている。この記録計
  は,24時間以上の継続時間内における当該自動車について,すべての時刻に
  おける瞬間速度とすべての2時刻間における走行距離を自動的に記録できる構
  造である。運行記録計を備えなければならないこととされている自動車の使用
  者は、運行記録計により記録された当該自動車に係る記録を、内閣府令で定め
  るところにより一年間保存しなければならない。(道路交通法第63条の2)
   航空機事故の調査にフライトレコーダー(飛行記録装置)の解析が欠かせな
  いのと同じく,本件交通事故の調査には当該運行記録計のチャート(記録紙)
  の解析が事故の真相解明に必要である。たとえば,本件で当事者間に争いがあ
                 38/70頁
  る,本件事故現場に進入時の速力,草地に移動したかどうか,事故現場を離れ
  た時間なども記録紙から読み取れる。然るに国は当該記録紙を提出せず,その
  存在すら言及していない。
 2 大型トラックが人身事故を起こした場合,通常,捜査を行う司法警察職員は
  第一に運行記録計の記録紙の任意提出を求め領置し,所有権を任意に放棄させ,
  実況見分調書に証拠として添付するのが捜査の基本である。
 3 本件事故の場合,運行記録計の記録紙が添付されていない実況見分調書等の
  資料は適法に作成されているとはいえない。」
 4 原判決は,「本件実況見分調書は,適法に作成された」から「本件実況見分
  調書に運行記録計の記録紙が添付されていないことをもって同調書の適法性を
  否定する控訴人の主張は採用できない。」と判示する。
   控訴人の主張は,「本件実況見分調書に運行記録計の記録紙が添付されてい
  ないこと」も「上記実況見分の実施について違法性をうかがわせる」というの
  である。原判決の論理は理解できない。
 5 大型トラックの事故を防止するために,国が法令で設置を定め,国民が多額
  の設置費用を負担して設置している運行記録計の記録紙で,かつ本件事故解明
  の最重要な証拠を隠蔽する警察や浅香らの行為は,著しく正義に反する。
 6 裁判所は,証拠が偏在している本件の場合,事案解明・審理の充実・促進化
  と公平な審理を実質化するため釈明権を行使する義務がある。同記録紙が提出
  されれば,本件で当事者間に争いがある本件事故現場に進入時の速力,草地に
  移動したかどうか,事故現場を離れた時間なども記録紙から読み取れるから裁
  判の結果が重大な変更をうける。
 7 原判決は,運行記録計設置の意義を理解せず,同記録紙を隠蔽した行為を容
  認するもので,著しく正義に反する。
第10点 自衛隊の実況見分調書
   原判決の,第3争点に対する判断,3争点(2)浅香らが,自衛隊の実況見分調
                 39/70頁
  書等を隠蔽したか,(1)(2)(判決書21~22頁)の下記部分の不服。「浅香
  らは,自衛隊が本件事故直後に作成した実況見分調書等を隠蔽したと主張する
  ので検討する。(1)前記1(1)の認定事実によれば,本件事故は控訴人の過失に
  基づく結果であり,小野寺には何ら過失のないことが認められる。ところで,
  「自衛隊と警察との犯罪捜査に関する協定」(乙1の1)を受けて作成された
  「自衛隊と警察との犯罪捜査に関する協定の運用に関する了解事項」(乙1の
  2)によれば,道路交通法に定める車両の交通に関する犯罪の捜査は,人の死
  傷又は物の損壊を伴うものにあっては,自衛隊の隊員が犯したものであり,か
  つ,被害者が自衛隊の隊員である場合又は被害物件が自衛隊の所有し,若しく
  は使用する物件である場合においては,警務官が分担し,その外の場合におい
  ては,すべて警察官が分担することとされている。これに基づいて検討すると,
  本件事故は,非自衛隊員の控訴人のみが負傷者となっているから,上記了解事
  項に照らして,本件事故の捜査は警察官が行うものと認められ,その他一件記
  録を精査しても,本件事故直後に自衛隊が自ら実況見分を行ったことを示唆す
  るに足りる証拠は,これを見いだすことができない。したがって,自衛隊自ら
  が本件事故の実況見分を行った事実はなく,自衛隊作成の実況見分調書の存在
  を前提に浅香らの違法をいう控訴人の主張は採用することができない。(2) な
  お,控訴人は,「陸上自衛隊損害賠償実施規則」(甲28)中に,大要「自衛隊
  員が,職務執行中に他人に損害を与えた場合には,速やかに所属の部隊等の長
  に報告するものとすること,報告を受けた部隊等の長は,直ちに当該駐屯他業
  務隊等の長に賠償事故発生の概要及び処置した事項等について通知するものと
  すること,当該駐屯他業務隊等の長は,所要の発生報告書及び事故現場見取図
  を作成し,方面総監に報告する。この場合において,陸上自衛隊に賠償責任が
  ないと思料される事故であっても現実に損害が発生し,かつ,将来賠償請求の
  可能性のある事故等について報告漏れのないよう特に留意するものとする。」旨
  の規定があることを根拠に,自衛隊作成の本件事故の「発生報告書」「実況見
                    40/70頁
  分調書」が存在することを主張する。しかし,前記1(3)アの認定事実に照ら
  せば,本件事故直後に現場写真を撮影した赤埴らは,本件事故現場の自衛隊車
  進行車線内に控訴人車のタイヤ痕が残っていたことを認識していたものと認め
  られる。そうすると,本件事故につき,小野寺には過失がなく,自衛隊が事故
  発生報告書等を作成するまでの必要がないとした陸上自衛隊北熊本駐屯他業務
  隊長の判断は,上記事故現場の状況に照らして不合理なものではないといえる
  から,控訴人の主張は採用できない。」
 1 「浅香らは,自衛隊が本件事故直後に作成した実況見分調書等を隠蔽したと
  主張するので検討する。」の部分。浅香らは,自衛隊が本件事故直後に作成し
  た実況見分調書等を隠蔽したと認識していたが,主張はしていない。
 2 控訴人は,本件事故の捜査は警察官が分担することは最初から認めている。
  しかし,警務官(自衛隊)が本件事故の捜査をしてはいけないとか,捜査をし
  なくてもいいとかということではない。
 3 自衛隊の規則(甲28)よれば,隊員が自己の職務遂行中に他人に損害を与
  えた場合を賠償事故の発生とし,賠償責任の有無に関係なく,順序を経て必要
  な処置・事故の調査報告が行なわれる。
 4 賠償事故発生の通知を受けた駐屯地業務隊も独自に現場検証(実況見分)等
  を行い,業務隊防衛事務官が,実況見分調書・事故現場見取図・事故情況等写
  真・供述書・運転免許証写し・自動車車検証写し・根拠命令等写し・車両運行
  指令書を作成し業務隊長に提出する(甲31)。
 5 業務隊長は,発生報告書(法定1号)を作成し,方面総監に報告する。この
  場合において,陸上自衛隊に賠償責任がないものと思料される事故であっても
  現実に損害が発生し,かつ,将来賠償責任の可能性のある事故・・・について
  の報告漏れのないように特に留意する(甲28)。
 6 被控訴人のいう警務隊は,警務隊組織及び運用に関する訓令(陸上自衛隊訓
  令61)に定める警務隊で,控訴人のいう警務隊は,北熊本駐屯地の第8師団
                   41/70頁
  司令部付隊(業務隊)隷下の保安警務隊をいうが,一般人にとってはいずれも
  自衛隊の警務隊であり,警務隊員を警務官と呼ぶ場合もありうる(甲58)。
 7 控訴人は,文書提出命令の申立書の文書の趣旨で,本件事故について陸上自
  衛隊損害賠償実施規則に基づいて,北熊本駐屯地業務隊が作成し,西部方面総
  監に報告された文書と特定している。
 8 被控訴人は,「北熊本駐屯地業務隊長は,賠償事故に伴うことに関し,小野
  寺(国)には過失がないと判断したものであり,同隊長が小野寺に過失がない
  と決定したものではない。」と陳述している。このことからも,同隊長が過失
  の有無を判断する材料としての,自衛隊が作成した資料が存在したことは明ら
  かである。(小野寺に過失がないと決定したのは,第8師団司令部法務官室で
  あり,業務隊長には責任がないということなどはここでは意味がない。)
 9 原判決は,「本件事故直後に自衛隊が自ら実況見分を行ったことを示唆する
  に足りる証拠は,これを見いだすことができない。」と判示するが,本件事故
  現場に,事故10分後の午前11時5分ころから,午前11時50分に現場に
  到着した早水巡査長が小国署員からの捜査の引継ぎを終える時間までは,複数
  の警務隊員及び近松3佐(師団司令部付隊長)が現場にいて,事故現場保存,
  捜査・実況見分,現場写真撮影など行なったことは証拠上明らかである(上記,
  控訴理由第5点 本件事故処理の経緯)。
 10 陸上自衛隊損害賠償実施規則(甲28)は,「隊員が,自己の職務遂行中に他
  人に損害を与えた場合の処理」のマニュアルで,高卒程度の国語力で十分理解
  できるよう書かれている。同規則は,賠償責任の有無に関係なく,事故発生報
  告書等を作成するよう念を押している。小野寺の過失の有無と事故発生報告書
  作成必要性とは無関係である。常識的に考えても,無責を主張する場合にこそ,
  無責を証明するために,より事故情況等写真,実況見分調書等が必要である。
 11 原判決の,「小野寺には過失がなく,事故発生報告書等を作成する必要がな
  いとした自衛隊の判断は,不合理なものではないといえる」との判示は,上記
                 42/70頁
  規則(甲28)を曲解した,不合理なものである。
 12 原判決は,「前記1(3)アの認定事実に照らせば,本件事故直後に現場写
  真を撮影した赤埴らは,本件事故現場の自衛隊車進行車線内に控訴人車のタイ
  ヤ痕が残っていたことを認識していたものと認められる。そうすると,本件事
  故につき,小野寺には過失がなく,自衛隊が事故発生報告書等を作成するまで
  の必要がないとした陸上自衛隊北熊本駐屯他業務隊長の判断は,上記事故現場
  の状況に照らして不合理なものではないといえるから,控訴人の主張は採用で
  きない」と判示した。
 13 本件事故直後に現場写真を撮影した赤埴は,第8師団の広報班で写真撮影を
  していた陸曹長である(甲22の13頁)。赤埴らが本件事故現場の自衛隊車
  進行車線内に控訴人車のタイヤ痕が残っていたことを認識していた証拠はなく,
  もともと小野寺の過失の有無の認定には,本件の場合,赤埴らの認識の有無は
  意味がない。
 14 原判決の事実認定は,判断過程が非常識,もしくは論理的に飛躍していて,
  通常人の常識ではまったく理解も納得もできない。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ
 http://blog.goo.ne.jp/yaruka/

31:控訴理由 第7点 第8点

2007-01-06 10:58:56 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第7点 車両使用請求書・車両運行指令書
   原判決の,第3争点に対する判断,2争点(1),(2)車両使用請求書・車両運
  行指令書について(判決書19~20頁)の下記の部分の不服。「前記1(6)ア
  (ウ)の認定事実及び証拠(甲62)によれば,確かに別件訴訟の裁判所が,当該文
  書の送付嘱託の申立てについて,明示的には採否の決定をしていないことがう
  かがえるところである。しかし,別件訴訟の判決文(甲8)等から推認できる
  訴訟経過に照らせば,別件訴訟の裁判所は,当該申立てに対しては黙示にこれ
  を却下したものと認められるのであるから,採否の判断をしなかった点におけ
  る国の違法をいう控訴人の主張は採用できない。」。
 1 別件訴訟で,控訴人は平成14年4月24日に,第42普通科連隊が所持す
  る,自衛隊車の平成11年10月7日から平成11年10月15日を含む期間
  が記載されている上記書面の文書送付を申し立てた。
 2 別件訴訟第一審裁判所は,採否の決定を行わず提出されなかった。
 3 この書類は当事者間に争いのある下記事項を明らかにするのに必要である。
  (1) 事故後の自衛隊車の操縦手はどの時点で誰が任命されたか。(自衛隊車
   を事故直後の停止位置から移動した操縦手は誰か。)
  (2) 自衛隊車が事故現場を離れた時刻
  (3) 演習地から帰ったあと,自衛隊の実地調査が行われた事実
  (4) 事故当時の自衛隊車の車長は誰であったか。(小野寺は証人尋問で車長
   であったことを否定している。)
  (5) 小野寺は事故当時自衛隊車の操縦手に任命されていたか。
 4 上記文書は公正かつ迅速な訴訟の追行に必要である。
 5 裁判所は,民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め,当事者は信義に
  従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない(民事訴訟法第2条)。
 6 国は,正義を実現し国民を庇護すべき立場にあるから,民事訴訟の当事者と
  なった場合でも,通常の当事者とは異なり,事件の解明に役立つ資料は進んで
                 34/70頁
  全部提出し,真実の発見に協力すべきである( 東京高裁決定昭 50.8.7 )。
   国の代理人である訟務職員が個々の事件の指定代理人として訴訟を担当する
  に当たっては、国家行政組織の中で仕事をするわけだから、その職責は正義
  (ジャステス)の実現に対する奉仕であることを念頭に置かねばならない。
  (法務省訟務総括審議官 都築弘)
 7 控訴人は,別件訴訟第一審で採否の判断をしなかった点における裁判官の違
  法をいうのではない。浅香らが上記の文書を提出しないなどの不誠実な訴訟活
  動が公正かつ迅速な訴訟の妨げになり,職務違背ともなるというのである。浅
  香らが,自己が代理した法律事務に関連して違法な行為が行われるおそれがあ
  ることを知った場合には,これを阻止するよう最大限の努力をすべきもので,
  これを黙過することは許されない。浅香らは自衛隊に本件事故の隠蔽の意図が
  あることを知り得たのであるから,国を説得して第三者に損害を与えないよう
  にする義務(事情確認義務・一般的損害発生回避義務・誠実義務)違反がある。
第8点 当事者照会
   原判決の,第3争点に対する判断,2争点(1),(4)当事者照会について(判
  決書20頁)の下記の部分の不服。「別件訴訟の判決文(甲8)によれば,別
  件訴訟の争点は,本件事故の原因が控訴人及び小野寺のいずれの過失によるも
  のであったかの点であると認められる。ところが,控訴人が当事者照会を求め
  た事項は,前記1(6)イのとおり,必ずしも上記争点と関連するとはいえない微
  細な点に及ぶものである。したがって,浅香らがこれらの照会に応じる必要が
  ないと判断したことは,別件訴訟の争点との関係で格別不合理とはいえないか
  ら,当事者照会に浅香らが回答しない違法をいう控訴人の主張は採用できな
  い。」
 1 控訴人は,平成14年5月27日民事訴訟法第163条による当事者照会を
  おこなった(甲29)。
 2 照会事項は,①平成14年3月25日証人小野寺の速記録に記載された証言
                 35/70頁
  中言及された「近松3佐」について(本件事故当時の)氏名及び階級,職種及
  び職務,所属部隊(例えば保安中隊),特別司法警察職員か否か,事故当日の
  動静(事故現場に到着した時刻および経緯,事故現場を離れた時刻および小国
  に到着した時刻を含む),②乙第1号証〔事故現場写真〕に写されている人物
  の特定:事故当時の道路状況(別府方面から熊本方面)(甲67②)に写され
  ている人物;警官と話している自衛官の氏名・階級・職務及び所属部隊;自衛
  官と話している警官の氏名・階級及び所属,③乙第4号証〔事故状況再現写真
  (甲27)〕に写されている人物の特定:事故発生の状況の4,ブレーキを踏
  んだ地点に写されている下記警官の氏名・階級及び所属,バイクのハンドルを
  両手で支えている警官,バイクの後部を持っている警官,ヘルメットをかぶっ
  ている警官,事故現場の車両状況の3,③-ハを見通した位置に写されている
  警官のうち,上記1-3に写されていない4人目の警官の氏名・階級及び所属
  ④玖珠警察の実況見分調書の写真に写されている人物の特定:警察現場写真
  (甲32⑦)に写されている下記警官の氏名・階級及び所属;作業帽をかぶっ
  ている自衛官,ヘルメットをかぶっている自衛官,警官である。
 3 照会に対し平成14年6月7日国が回答書を提出した(甲30)。国は,本
  件照会事項は控訴人の主張とどのような関係に立つのか不明確であり,「主張
  又は立証を準備するために必要な事項」に該当するものとは認められないので,
  当事者照会の対象にならないとして全ての照会事項に回答しない。
 4 照会事項は証人尋問の記録や事故現場の証拠写真の内容等についての照会で,
  同条に定める除外理由に該当しない。その他当事者照会の要件を満たしている。
  主張又は立証を準備するために必要な事項とあるが,主張責任,立証責任を負
  う事項に限らず,反論や反証のための準備に要する事項も含まれる。また,
  「準備するため」であるから,照会事項それ自体が主張,立証に直接結びつく
  必要はなく,何らかの関連性のある事項であれば,間接的な事項についてまで
  広く照会することができると解すべきである。
                 36/70頁
   本案件では,情報が国に偏在しており,国の持つ情報の開示が訴訟の充実を
  はかるために不可欠である。例えば,「近松3佐」についての情報は,玖珠署
  の間ノ瀬巡査部長が事故後小国警察署から横浜の控訴人の自宅に電話した事実
  など,本件事故後の自衛隊,小国警察署及び玖珠警察署の捜査状況を明らかに
  するのに必要である。
 5 控訴人は,本件事故の調査ができず,証人とすべき人証の特定ができないの
  で証拠申出もできない。
 6 自衛隊現場写真(甲67)の写真に,長者原の交番の警察官及び小国警察署
  の警官2名は写されているが,事故直後実況見分をしたと主張する玖珠警察署
  の警察官・堀部警部補及び間ノ瀬巡査部長の映像がないことが明らかである。
  事故直後の事故現場の捜査・見分は,警務官(近松3佐),長者原の交番の警
  官(早水巡査長)及び小国警察署の署員2名で行われたと推認される。
 7 原判決は,「別件訴訟の争点は,本件事故の原因が控訴人及び小野寺のいず
  れの過失によるものであったかの点である。控訴人が当事者照会を求めた事項
  は,上記争点と関連するとはいえない微細な点に及ぶものである。したがって,
  浅香らは照会に応じる必要がない」とした。「微細な点に及ぶものである」と
  の文言は仰々しいが,控訴人は浅香らが提出した事故現場写真等に写された人
  物の特定を求めただけである。照会事項は,①近松3佐,②乙第1号証〔事故
  現場写真〕(甲67②)2名,③乙第4号証〔事故状況再現写真(甲27)〕
  4名,④警察現場写真(甲32⑦)3名合計10名の氏名・階級及び所属で,
  10行程度で回答できる簡単な照会である。
 8 本件事故では,情報が一方当事者に偏在しており,早期に的確な争点整理を
  行うには,情報を有する者からの開示が不可欠である。浅香らは情報を開示し
  て訴訟の充実をはかるべき義務を負う。
 9 原判決は,当事者照会制度について独自の解釈をし,民事訴訟制度が何のた
  めに設けられ運営されているのかの解釈を誤るものである。
               37/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第6点

2007-01-05 10:42:20 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第6点 玖珠警察署の実況見分調書
   原判決の,第3争点に対する判断,2争点(1),(1)玖珠警察署の実況見分調
  書について(判決書19頁)の下記の部分の不服。「前記1(2)で認定したとお
                 27/70頁
  り,本件事故に対する玖珠警察署員による実況見分は,本件事故当日に行われ
  たこと,別件訴訟の裁判所に提出された本件実況見分調書は,作成日付こそ本
  件事故から約2年後ではあるが,内容としては,本件事故当日に実施された実
  況見分に基づく調書であることが明らかである。そして,警察が本件事故直後
  に,本件実況見分調書とは別個の新たな実況見分調書を作成したと認めるに足
  りる証拠もない。よって,浅香らが,警察が本件事故直後に作成した実況見分
  調書を提出しなかった違法をいう控訴人の主張は採用できない。また,本件事
  故現場の見取図が,別件訴訟で浅香らが陳述した平成13年11月5日付け準
  備書面に添付されていることも同準備書面(甲21)から認めることができる
  から,浅香らが別件訴訟で同見取図を提出しなかった違法をいう控訴人の主張
  も,採用できない。」
 1 間ノ瀬巡査部長は,平成11年10月29日に玖珠警察署において控訴人に
  対し,「一応見分時間は11時50分になっていますね。11時50分から開
  始と駐在所の方が書いていますね。
」と述べている(甲5の5頁)。
   事故当日の玖珠警察署の実況見分は,駐在所の方,すなわち,早水巡査長が
  見分を行なって,調書を書いたのである。早水巡査長は司法巡査である。
 2 間ノ瀬巡査部長は,「(この、なんと読む、小野寺さん?)はい、小野寺さ
  ん。(この人からは事情を聞かれた?)え、見分と調書は取りました。ただ、
  争うということであれば、小野寺さんにはもう一度来ていただいて、基本で捜
  査します。通常は、えーあの、こういう場合は、切符で処理するんですよ、だ
  から簡単な書類で処理している、・・方法であれば、争う,・・・現場での写
  真も撮っていますので、早急に写真を、多分あの中のどれかに入っているんで、
  まだフィルムは現像していないので、それも含めてうちの方は処分するよ
  う・・・。(甲5の9頁)」とも述べている。
 3 別件行政訴訟の,相手方の準備書面(1)(甲86の18頁),控訴人の玖珠警
  察署への来署(イ)に「そこで,間ノ瀬巡査部長は,控訴人に対して平成11
                 28/70頁
  年10月8日に作成した交通切符様式の実況見分調書等に基づいて本件交通事
  故の発生状況を説明
するとともにその発生原因は,控訴人が中央線を越えたこ
  とによって発生したと認められると説明した。すると控訴人は驚いた様子で,
  「相手の車がセンターラインを越えて来たと聞いていたので,今の説明には納
  得がいかない。」と,自身が本件交通事故の被害者である旨を申立てた。」と
  の記載がある。
 4 上記のとおり,玖珠警察署は,「平成11年10月8日に作成した交通切符
  様式の実況見分調書」を作成,所持していたことを認めていた(甲86)。
  「警察が本件事故直後に,本件実況見分調書とは別個の新たな実況見分調書を
  作成したと認めるに足りる証拠
」となる。
 5 玖珠警察署は長者原駐在所の早水巡査長に対し,事故現場に急行して事実調
  査と現場保存を行うよう指示し,同巡査長は午前11時50分ころ現場に到着
  した。別件行政訴訟で相手方は,早水巡査長は「事実調査と現場保存」を行っ
  たのであって,実況見分は行っていないと主張したが詭弁である。
   有斐閣法律用語辞典は,「実況見分」を,「捜査過程において,犯罪の現場
  その他の場所,人の身体あるいは物について,その状況を確認することを実況
  見分
といい,その結果を録取した捜査上の文書を実況見分調書という。実況見
  分は検証と類似するが任意処分にとどまる点で異なる。」と説明する。犯罪捜
  査規範第84条は,「警察官は,現場臨検を必要とする犯罪の発生を知ったと
  きは,捜査専従員たると否とを問わず,すみやかにその現場に臨み,必要な捜
  査を行わねばならない。」と規定し,同第104条は「現場等について事実発
  見のために必要があるときは,実況見分を行わなければならない。実況見分は
  関係者の立会いを得て行い,その結果を実況見分調書に正確に記載しておかな
  ければならない。」と規定している。
   事故当日,早水巡査長が,事故現場,自衛隊車及び控訴人車について事実発
  見のため,小野寺その他の関係者の立会いを得て実況見分を行ったことは証拠
                 29/70頁
  上明らかである。
 6 小野寺は,「① 平成11年10月7日,本件事故発生の約40分後小国警察
  署員が事故現場に到着し,少し遅れて早水巡査長が到着した(甲25)。②救
  急車は現場に5分くらいいた(甲22の20頁)。③救急車が去った後で玖珠
  警察署員2名が到着し現場検証を始めたので立会った(甲25)。④玖珠警察
  署署員が現場に到着したのは午後0時30分である。⑤玖珠警察署員は普通の
  パトカーできた。⑥現場検証の時間は約40分であった(甲22の20頁)。
  ⑦自衛隊車は検証が終わるまで別府よりの道路上に置き,誘導員をつけて片側
  通行を行った(甲22の26頁)」と証言・陳述している。
 7 救急車が事故現場に到着したのは午前11時33分で(甲85)で去ったの
  は5分後の11時38分ころである。小国署員が現場に到着したのは事故発生
  の約40分後の午前11時35分ころである。小野寺は,証人尋問で「救急車
  が去った後,玖珠警察署員2名が到着したと言いましたけど,救急車が去って
  から何分ぐらいでしたか,相当待ちましたか。」との問いに,「12時半です。
  (甲22の20頁)」と答えている。通常人は「何分ぐらいでしたか,相当待
  ちましたか。」と尋ねられたら,「いや,30分くらいです」とか「そうです
  ね,1時間くらいは待ちました」と答える。小野寺の答えはあやしい。
   玖珠警察署員が12時半到着なら,小野寺の陳述書の記載は,「救急車が去
  った後,1時間ほどしてから,玖珠警察署員2名が到着し,現場検証を始めた
  ので立会しました」となろう。救急車が去った後で到着し現場検証を始めたの
  は小国警察署員2名であることは明らかである。
 8 小野寺は,玖珠警察署員は普通のパトカーできたと証言している(甲22の
  20頁)。別件行政訴訟で相手方は,堀部警部補らは「玖珠61」という交通
  事故処理車で現場に向かった,と陳述している(甲86の12頁)。
   小野寺は,自衛隊車は検証が終わるまで別府よりの道路上に置き,誘導員を
  つけて片側通行を行ったと証言している(甲22の26頁)。別件行政訴訟で
                30/70頁
  相手方は,堀部警部補らは,事故当日午後0時25分ころが現場に到着したが,
  自衛隊車は既に道路外に移動されていた,と陳述している(甲86の12頁)。
   これら双方の主張の食い違いからも,本件事故に対する堀部警部補らによる
  実況見分が,本件事故当日に行われたとすることに,合理的疑いがある。
 9 刑事訴訟法第246条は「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法
  律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を
  検察官に送致しなければならない。但し,検察官が指定した事件については,
  この限りではない。」と規定する。同条は全件送致主義について規定したもの
  で,捜査の結果犯罪の嫌疑が消滅した場合であっても事件を送致しなければな
  らない。
 10 平成13年11月16日,本件事故について,控訴人を法70条,119条
  1項9号違反の違反者とする玖珠警察署長の大分県警察本部長に対する行政処
  分報告書(甲第87号証)が同県警に受理されたことになっている。同報告書
  の欄外には「処分対象外」のゴム印が押され,①相被疑者番号・氏名,②報告
  番号・報告年月日,③処理経過,④ 受付印の受付番号の欄は空白であり犯罪
  事実の欄に,「もって他人に危害を及ぼうような安全な速度と方法で運転した
  ものである。」との記載の下線の部分を,「およぼす」に手書きで訂正してい
  るが訂正印はない。⑥大分県情報公開条例に基づく控訴人からの請求に対して
  平成16年5月29付けで公開されたときは,同報告書の欄外の「処分対象
  外」のゴム印押捺部分を含め,ほとんど全部のらんが黒く塗られていた(甲第
  88号証)。大分県警は上記黒く塗られた部分をなぜ隠蔽したのか。
 11 玖珠警察署が,関係書類を日田区検察庁に送致したのは,平成13年11月
  20日である(甲第89号証)。
 12 控訴人が別件訴訟を提起したのは平成13年7月23日である。提起を受け
  て平成13年9月18日自衛隊による事故再現見分が行なわれた。別件訴訟の
  裁判所に提出された本件実況見分調書は,作成日付こそ本件事故から約2年後
                 31/70頁
  の平成13年9月27日であるが,玖珠警察署長の大分県警察本部長に対する
  行政処分報告書が同県警に受理されたのは,平成13年11月16日である
  (甲87)。玖珠警察署は平成11年10月7日の本件事故後のほぼ2年間,
  本件事故についての行政処分を行わなかった。
 13 大分合同新聞(夕刊)2003年(平成15)年2月22日に「玖珠署が摘
  発した10人の交通違反事件10件を検察庁に送致しておらず,いずれも時効
  になっていたことが22日までに分かった。県警監察課によると,摘発したの
  は1999年3月から11月までで,飲酒運転や無免許運転,速度違反など,
  同署交通課の巡査長が反則切符を署内に置いたまま,送致するのを忘れていた。
  別の交通違反事件の捜査をする過程で,処理していないことが分かった。同署
  は昨年12月,時効となった事件の書類を日田区検に送った。10人は手続が
  スムーズ済む行政処分に関し,免許停止などの処分を受けたが,裁判所への呼び
  出しなどが必要な刑事処分は時効を迎えたため,罰金は科せられなかった。監
  察課は「巡査長が故意に処理をしなかったのではなく,忘れていた事案であり,
  刑事上の責任はないが,巡査長,上司らは適正に処分した」と説明した。」と
  の報道がある(甲第90号証)。1999年(平成11年)3月から同年11
  月まで玖珠警察署の処理した交通違反事件10件が放置されたのである。
 14 犯罪捜査規範(222条)は,「交通法令違反事件については、犯罪事件受
  理簿(62条)及び犯罪事件処理簿(201条)に代えて、長官が定める様式
  の交通法令違反事件簿を作成し、これにより第19条(捜査指揮)第一項及び
  第193条(送致及び送付の指揮)に規定する指揮の責任及び事件の送致又は
  送付その他の経過を明らかにしておかなければならない。」と規定する。同事
  件簿の保存期間は3年であるから,大分県警察本部長が,玖珠警察署の本件行
  政処分報告書を受付けた平成13年11月16日には存在している。
   上記3のとおり,間ノ瀬巡査部長は,平成11年10月8日に作成した交通
  切符様式の実況見分調書所持していたのであるから,本件は間ノ瀬巡査部長
                 32/70頁
  手持ち事件である。「巡査長が送致するのを忘れていた」で済む事案ではない。
 15 なお,小野寺および片岡に陳述書の日付は平成13年10月12日で,国の
  準備書面(1)は平成13年11月5日に陳述された。小野寺の証人尋問は平成1
  4年3月25日に行われた(甲25,26,22)。
   別件訴訟の提起を知った時点から,玖珠警察署の調書は平成13年11月1
  6日,小野寺および片岡の陳述書は平成13年10月12日,小野寺の証言内
  容は平成14年3月25日,国の準備書面は平成13年11月5日の,各日付
  の直前まで,各当事者の支配下にあり,内容は自由に作成変更されえた。
 16 本件は人身事故で,切符での処理も微罪処分もできない。事件を送致するに
  は,司法警察員の捜査が必要と考え,司法巡査である早水巡査長の捜査,実況
  見分及び実況見分調書を隠滅し,間ノ瀬巡査部長を見分官としての,(形ばか
  りの)実況見分を行なったのである。
 17 なお,原判決は,本件事故現場の見取図について,「浅香らが別件訴訟で同
  見取図を提出しなかった違法をいう控訴人の主張も,採用できない。」という
  が,控訴人は,「浅香らが別件訴訟で同見取図を,証拠として提出しなかった
  点について,浅香らの,数々の信義誠実の原則(民訴訟2条)違反の一つとし
  ていうのである。(控訴理由第2点 浅香らが提出した証拠)
 18 原判決は,本件事故に対する玖珠警察署員による実況見分が,本件事故当日
  に行われたことを認めながら,同見分の結果を録取した実況見分調書は作成さ
  れていないと判示する。著しく不合理な事実認定である。
 19 ちなみに,玖珠警察署の実況見分調書(甲42)は,控訴人を被疑者とした
  道路交通法違反事件についての調書である。上記第3項のとおり,控訴人は間
  ノ瀬巡査部長に診断書を提出し,自身が本件交通事故の被害者である旨を申立
  てたのであるから,同巡査部長は被害届けを受理し,犯罪事件受理簿に登録し
  なければならない。当然に小野寺を被疑者とする業務上過失傷害事件について
  の捜査が行われ,その結果を録取した実況見分調書が存在しなければならない。
                 33/70頁

31:控訴理由 第5点 10-11

2007-01-05 10:29:01 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
 10 間ノ瀬巡査部長が語ったストーリー
                 21/70頁
   平成11年10月29日,玖珠警察署で間ノ瀬巡査部長は,控訴人に対し下
   記の発言をした。(甲5)( )内の発言は控訴人。
  (1)「わずか0.6メートルくらいのところが衝突地点というふうに,タイヤ
   痕が・・・その時の出羽さんの位置はまだセンターラインは越えておりませ
   ん,ただぶっつかった位置からすると,ぶっつかった位置はそういう風に推
   測はつくわけですよ,私らも。」(甲5の2頁) 
  (2)(これは結局,証人は一人もいないのですか?)「いません。唯一証人に
   なるとすればこの自衛隊車両が連続進行ですので,その前を走っていた方が
   証人になるくらいでしょうね,」
   控訴人の主張(1)・本件大型トラックの助手席には助手の片岡高房2等陸曹
   が,後部荷台には自衛隊員5名が乗車していた。助手の片岡が目撃証人とな
   るほか,後部荷台に乗車している自衛隊員は通常後方を見ているから,牽引
   しているトレーラとの衝突場面を目撃している。5名の自衛隊員は一級の目
   撃証人となる。自衛隊車両は通常1名で運転することはない。目撃者として
   自衛隊車の助手が存在することを間ノ瀬巡査部長が知らないはずはない。
  (3) 「相手の車が自衛隊車両の後ろのセミトレーラというのをね,確かあれね,
   給油タンクというんですか,水を運ぶようなやつを運んでいた,(甲5の4
   頁)」
   控訴人の主張(2)・炊事車と給水車では形状が全く異なる。間ノ瀬巡査部長
   は平成11年10月29日の時点では,本件トレーラを現認していない。す
   なわち,実況見分を行なっていない。

   控訴人の主張(3)・警察写真⑦(甲32⑦)では,間ノ瀬巡査部長が2名の
   自衛隊員と本件トレーラ(炊事車)の右タイヤ付近を覗き込んでいる。間ノ
   瀬巡査部長の実況見分に自衛隊が関与している。
   控訴人の主張(4)・間ノ瀬巡査部長は平成11年10月29日の時点では本
   件トレーラを現認していないから,警察写真⑦は,平成11年10月30日
                 22/70頁   
   以後に撮影されている。(5)・別件行政訴訟で,平成11年10月7日,堀
   部警部補は実況見分の補助者となり,車両の損傷状況及び道路状況の写真撮
   影を行なったと主張し(判決正本・8頁(甲17),実況見分調書(甲4
   2)に,「本職が作成した写真16葉を本調書末尾に添付することにし
   た。」と記載している。この写真16葉の1葉が警察写真⑦であるから,虚
   偽の記載である。
  (4)「えー,現場にですね,まず駐在所が到着して,それから私なんかが着く
   ようになりますので,一応見分時間は11時50分になっていますね。11
   時50分から開始と駐在所の方が書いていますね,」(甲5の5頁)
   控訴人の主張(6)・駐在所の方は,早水巡査長である。早水巡査長が11時
   50分から実況見分を開始した。間ノ瀬巡査部長らは実況見分をしていない。
  (5)「・・相手が危険を感じて急ブレーキをかけたかとききたいやろんでしょ
   けど,ブレーキ痕がつくほど急ブレーキは踏んでおりませんし,急ブレーキ
   をかけるほどの時間はなかったと推定しています,カーブの形状からしても
   危険を感じて,というのが,時速当時50キロ位でこの方が走られておった
   ということで,向こうが・・。」(向こうが,相手が50キロですね?)
   「時速50キロで相手が走っておれば,あ,50キロ,ごめんなさい,時速
   40キロで走っておればですね,一秒間に11.2メートル走るんです
   よ,」(甲5の6頁)
   控訴人の主張(7)・小野寺も急ブレーキは掛けていないという。急ブレーキ
   を掛けるとスリップ痕が残る。
   控訴人の主張(8)・小野寺は時速50キロで走行していた疑いが強い。平成
   11年12月8日,控訴人との電話での会話で,小野寺は50キロぐらいで
   走行していたと話している。(甲75の4頁)
  (6)「・,通常の車でもあのヘヤピンカーブをですよ40以上のスピードで
   曲がれません,よっぽど若い連中でないと,あのう,そのいわゆる飛ばし屋
                  23/70頁
   仕様で走っているなら別ですけども,そういう車でなければまあ40,出て
   も50それ以上になれば外側に出るでしょう。」(甲5の8頁)
   控訴人の主張(9)・小野寺はカーブに近づくとき十分速度を落とさず,危険
   な速度で走行し人身事故を起した。小野寺には道路交通法70条違反がある。
  (7)(この人からは事情を聞かれた?)「え,見分と調書は取りました。ただ,
   争うということであれば,小野寺さんにはもう一度来ていただいて,きほん
   で捜査します。通常は,えーあの,こういう場合は,切符で処理するんです
   よ,だから簡単な書類で処理している,・・方法であれば,争う,・・,現
   場での写真も撮っていますので,早急に写真を,多分あの中のどれかに入っ
   ているんで,まだフィルムは現像していないので,それも含めてうちの方は
   処分するよう・・・。」(甲5の9頁)
   控訴人の主張(10)・人身事故は切符で処理できない。
   控訴人の主張(11)・写真は撮影したら遅滞なく現像するのが基本。
  (8)「えー,現場に残ったそれこそ真新しい擦過痕,で,えー,まー,一番最
   初,衝突方向,えー,こっちがその出羽さんのこられた方向ですね,こっち
   の方向から,一番近いところ,道路中央線から37センチ,のところから擦
   過痕が始まっている。いえ,だから擦過痕が始まっているのが,だから,こ
   の全体的な流れは,道路の中央線側から,こういう風に流れている訳ですね,
   今フリーハンドで申し訳ないけど,こういう方向に流れているわけです,逆
   にこれをたどっていったところが衝突地点になる,普通は判断します,普通
   はと言って普通以外何も無いんですけどね,すくなくとも,単車がこの線の
   上を滑走していったことは間違いない訳です,だからできている訳です,そ
   れの始まりがあの,出羽さんの進路,からの始まりですよ,始まりが道路の
   中央付近から37センチのところ,いいですか,そして,一番最後の,目視
   できる擦過痕の終わりが1メーター69センチ,だから,今こう簡単に書い
   ていますけど,実際は擦過痕自体は,37センチと1メーター約70であれ
                 24/70頁
   ば,こういう感じに流れるわけですよね,わかりますか,ということは,今
   も言うように,流れていった方向の逆で衝突をしたであろうと,判断する,
   そうなると自分は道路を,道路の左側を私はもうトロトロ行ってたんですよ
   と現場に行って言われても,」(甲5の10頁)
   控訴人の主張(12)・間ノ瀬巡査部長は事故現場で計測していない。通常計
   測は巻尺で行なう。ロードメジャーでは計測できない。机上の作図であり,
   しかも経験則に反する作図である。
  (9)「出羽さんが何らかの理由でセンターラインを越えようとしたところで相手
   と衝突した,なぜ,越えようというかというと,ぶっつかった時のタイヤの
   自分の位置がねセンターラインの上ぐらいになるのですよ,完全に越えてい
   ないんですよ,例えば越えて相手の正面にどーんとぶっつかったというので
   あれば越えたといえますけどね,越えようとしたところでぶっつかっている
   んですよ,越えようとした,それでセンターラインを何らかの理由で,セン
   ターラインを越えて対向車線にはみ出そう,はみ出したと,はみ出そうとし
   て今回の事故になった,ということで私どもは認定しております。」
    (はみだそうとしてですか,はみ出していないのですか?)「それはね,
   ものすごく日本語のね,あれでね,あの,一歩間違うと表現の仕方が違うん
   で,言葉を選ばなならんから,私の方もはみ出したかはみ出してないかとな
   れば,ぶっつかってればはみ出しているというしかない,もしぶっつかって
   なければ,具合良くぶっつかってなければそのまま路外にでているでしょう,
   もしくはガードレールをこさぎ,こすりながらでもとまったでしょう。」
   (甲5の23頁)
   控訴人の主張(13)・小野寺は業務上過失傷害事件の被疑者である。警察の認
   定は意見として付し,検察庁に送致しなければならない。
  (10)(相手はセンターラインを,)「越えてきたとは言いますけども,実際の
   ところ越えてきたところを見ちょりませんからね,カーブ,ヘヤピンカーブ,
                25/70頁
   ワーとブレーキ踏みながら,止まろうとする,ね,その間に自分の後ろのト
   レーラ付近にぶっつかったものが,センターラインを越えたかどうかわかり
   ませんわ,相手がいやわたしがこういきよったら,こう,こうやってセンタ
   ーラインを越えて後ろにぶっつかったんですよ,と仮に相手が言ったところ
   で,馬鹿言いなさんな,そんな信用できません,あと信用できるのは,現場
   に残った痕跡でしかない,その痕跡が,あのう,相手の供述と合うようであ
   れば私の方は,それは私に限らず誰でも信じていいとなる,この車がここに
   ジーと止まっていたんであれば,別ですよ,走っている,移動しながらなん
   でね,実際のところ,この人もセンターラインを越えてこようとして来た車
   しかたしか見てないんですよ,最初ポコット見えた,あ,単車やった,と思
   ったほんの次の瞬間ですよ,あ,ヤベー,センターラインを割るかもしれな
   いちゅうて,パット急ブレーキを踏んだ,そしたところが,ドーンと,やっ
   てしもうたちゅうんで,止まって見てみたら転んでいた,そんですぐに自衛
   隊が全部きて,だから,私のほうは,話が前後して申し訳ないけど,私の気
   持ちとしてはこの事故はセンターラインを越えた出羽さんのいっぱん的過失
   によるものではあるけれども,この結果の事故によって出羽さん自体が重傷
   を負われている,いわゆる,身体,わたしこのへん,ちゃんとあのお兄さん
   と(不明),身体的にも財産的にも,単車,十分損害を受けている,
    だから今回は処分をしないで,綴り込み,警察だけで終わっちゃいましょ
   うやということで係長の許可はもらっている
んですよ,だから私はそのつも
   りでおった,本当のことを言いまして,ただ,今後民事で争われる事件につ
   いて私の方は綴り込み出来ません,十分に今後民事で争いになるということ
   になれば私の方も裁判所の方から鑑定資料を送りなさいと言われてくるけれ
   ども送りません,その場合出しません,」(綴り込みしたら?)「処罰は全
   く何もしません,検察庁にも書類を送りません,点数もひきませんと言うこ
   とです,何にもせんちゅうことです,事故はあったけれども,」(甲5の2
                  26/70頁
   6~27頁)
   控訴人の主張(14)・間ノ瀬巡査部長は,上記(5)で,(小野寺は)急ブレー
   キは踏んでいないと発言したが,(9)ではパット急ブレーキを踏んだと言う。
   通常人は衝突の危険を感じたら急ブレーキを掛ける。
   控訴人の主張(15)・急ブレーキを掛けるとスリップ痕(タイヤ痕・制動
   痕)が残る。自衛隊車のタイヤが事故現場の路面に残したスリップ痕は事故
   形態推定の重要な証拠の1つである。浅香らは,重要な証拠を隠蔽している。

   控訴人の主張(16)・トレーラをけん引中に,急ブレーキを踏むと,ジャッ
   クナイフ現象 (けん引車とトレーラが “ジャックナイフ”のように折れ曲
   がってしまう現象。)が起きる。急ブレーキによって後ろから押してくるト
   レーラが バランスを崩し,連結部を軸にけん引車とトレーラがジャックナ
   イフのように曲がってしまう。これを避けるためには,トレーラをけん引中
   は絶対急ブレーキを踏まないという心がけが大切になる。特にコーナリング
   時には,減速はコーナーに入る前にすませておくことは自動車運転術の基礎
   である。
   控訴人の主張(17)・小野寺が急ブレーキを掛けたことは,証拠上明らかで
   あるのに頑なに否定する。実際は,本件事故でもジャックナイフ現象が起き,
   事故直後自衛隊が撮影した写真にはその状況が写っている。この惨状が写っ
   た写真は表に出すことができない。日を改めて実況見分を行い,その時撮影
   した写真を事故当日撮影した写真だとしている。
   控訴人の主張(18)・ちなみに,部隊識別帽が青色の 第8特科連隊も,同様
   の事故を起している。(甲76
 11 玖珠警察署の実況見分調書については,第6点で主張する。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第5点 1-9

2007-01-05 10:23:25 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第5点 本件事故処理の経緯
   原判決の,第3争点に対する判断の1,(2)本件事故の実況見分の状況及び
  同調書の作成の経緯ア(判決書16頁)の下記の部分の不服。「平成11年1
  0月7日午後0時34分から午後1時20分までの間,玖珠警察署の間ノ瀬巡
  査部長を見分官とし,堀部金丸警部補及び早水満堯司法巡査を補助者,小野寺
  を立会人とした本件事故の実況見分が行われた。控訴人は,本件事故直後に小
  国公立病院に搬送されていたため,実況見分が実施された際は事故現場にいな
  かった(そのため,同実況見分終了後に,小野寺が控訴人車に積まれていた控
  訴人の荷物を,同病院まで届けた。)。」及び,第3争点に対する判断の1,
   (3)自衛隊員による本件事故現場写真の撮影ア(判決書16~17頁)の下記
  の部分の不服。「上記実況見分が実施された際,これに並行して,陸上自衛隊
  第8師団第42普通科連隊第4中隊陸曹長赤埴源蔵(所属,階級は本件事故当
  時のものである。以下「赤埴」という。)が,本件事故現場の写真を撮影し
  た。」
 1 間ノ瀬巡査部長は下記のとおり述べている(甲5の5頁)。
   (事故は10時55分、現場に行かれたのは?)えーとですね、まずですね、
  これがね、ちょうどあそこは熊本県境に近いんで先に熊本に入るんですよ、そ
                 14/70頁
  れで熊本経由でぐるぐるぐるぐるまわって、こちらに通報が有ったのはですね、
  午前11時25分です。(行かれたのは?)えー、現場にですね、まず駐在所
  が到着して、それから私なんかが着くようになりますので、一応見分時間は
  1時50分になっていますね。11時50分から開始と駐在所の方が書いてい
  ます
ね。)
 2 小野寺は下記のとおり証言している(甲22の24頁)
   「乙第1号証(甲67)を示す。」(2枚目の上の写真,事故当時の道路状
  況(熊本方面から別府方面)という写真を見てください。この中に証人は写っ
  ていますか。)写っていると思います。左のグループの右から。(白い制服を
  着た警官が1人写っていますけれども,これはだれですか。)この方は長者原
  の警官だと思います。(空色の制服を着た2人が写っていますが、これはだれ
  ですか。)小国警察署か玖珠警察署の署員だと思います。(どちらですか。)
  はっきり分かりません。これは撮った時間がわかりませんので。(右側に写っ
  ている自衛官はどういう人たちですか。)これは私の車両の後ろに乗っていた
  隊員が何名かおります。(その下の別府方面から熊本方面の写真を見てくださ
  い。自衛官と警官が話していますね。はい。(この警官はだれですか。どこの
  警官ですか。)長者原の方だと思います。(それから長者原のさっき言ったジ
  ープ型というパトカーはそのことですね。)はい。(玖珠からきた自動車はい
  ない
わけですね。)この時点ではいないと思います。(この写真の上と下では
  同じ場所を写していますね。)はい。(上の写真にはパトカーが写っていない
  んですけれども,当然どこかに写っているはずですが,何で写っていないんで
  すか。)時間がずれているので移動した
んだと思います。(事故後,自衛隊車
  両はどうしましたか。)私の車両はほかの隊員が私の中隊長に許可をもらって
  演習場のほうに持っていってもらいました。私は近松さんのジープで病院のほ
  うに行きました。(検証が終わる前にもう自衛隊車両は行ったわけですね。)
  いや,検証が終わってからです。(検証が終わるまではどこにおいてありまし
                 15/70頁
  たか。)この写真でいいますと,別府よりにあります。(要するにバイクさえ
  移動すれば,自衛隊車両がいても片側は通行が確保されているわけだから,別
  府よりのところにとめていたということですね。)はい。(道路上に。)そう
  ですね。ちゃんと誘導員を付けておりました。(誘導員を付けて道路上に置い
  たまま片側通行でやったということですね。)はい。

 3 上記,別件訴訟における小野寺の証言(甲22),間ノ瀬巡査部長の録音内
  容反訳書(甲5),自衛隊写真(甲67),消防長の回答(甲第85号証)等
  の証拠および別件訴訟・別件行政訴訟の関係者の陳述によれば,本件事故当日
  の経緯はおおむね次のとおりである。
   ① 午前10時55分ころ,本件事故が発生し,午前11時05分119番
  通報(甲85)および110番通報がなされた。②午前11時05分ころ,警
  務隊による本件道路の交通統制,事故現場保存,片側通行が開始された。②午
  前11時33分,救急車が現場に到着した(甲85)。③本件事故が110番
  通報で熊本県警察本部に入ったが,熊本県小国警察署に転送され,同署員2名
  が現場に向かい午前11時35分ころ現場に到着した。ところが,途中事故現
  場が大分県警察本部管内であることが判明したため,大分県竹田警察署を経由
  して午前11時25分ころ(甲5の5頁)に玖珠警察署に電話連絡がされた。
  ④ 玖珠警察署は長者原駐在所の早水巡査長に対し,事故現場に急行して事実
  調査と現場保存を行うよう指示し,同巡査長は午前11時50分ころ現場に到
  着した。(早水巡査長が午前11時50分ころ本件現場に到着したことは各当
  事者間に争いはない。)⑤早水巡査長は現場に到着後,小国署員2名,小野寺,
  近松3佐及び警務隊員とともに引継ぎ・見分を開始し,赤埴陸曹長はひきつづ
  き写真撮影をした。⑥引継ぎ時間を30分間とすると,午後0時20分ころ
  見分及び引き継ぎが終了し,小国署員は現場を離れた。この引継ぎの終了時,
  赤埴陸曹長が自衛隊写真①(67①)を撮影した。
⑦小国署員が現場を離れた
  後,早水巡査長は,小野寺,近松3佐及び警務隊員とともにさらに必要な見分
                 16/70頁
  を行なった。⑧自衛隊写真②(67②)は,上記⑦の早水巡査長の見分が終了
  し,自衛隊車が演習場に向け現場を離れた後で撮影されている。近松3佐が何
  らかの資料を早水巡査長に手渡している状況を写している。上記自衛隊写真①
  と②撮影された時間のずれは,少なくとも20分はあるとすると,午後0時4
  0分以降
となる。⑨その後,小野寺は近松3佐の車で,控訴人車に積載されて
  いた控訴人の荷物を持って小国公立病院に向かった。
 4 原判決は,「平成11年10月7日午後0時34分から午後1時20分まで
  の間,玖珠警察署の間ノ瀬巡査部長を見分官とし,堀部金丸警部補及び早水満
  堯司法巡査を補助者,小野寺を立会人とした本件事故の実況見分が行わ
  れた。」と判示するが,上記1ないし3の経緯と時間的に整合しない。
 5 玖珠警察署の実況見分調書添付の写真(甲32⑪)に,間ノ瀬巡査部長と,
  同部長に随行している,早水巡査長,作業帽着用の幹部自衛官及び鉄帽着用の
  自衛官の計4名が写っている。堀部警部補と小野寺の映像はない。
 6 控訴人は,平成18年4月10日付け準備書面(4)第6本件事故処理の事実経
  過で,下記(7~10)のとおり主張した。
 7 玖珠警察署の主張(別件行政訴訟の被控訴人準備書面(1)(甲第86号証)で
  の玖珠警察署の主張)
  (1) 平成11年10月7日11時25分頃,事故発生の電話連絡を受けた堀部
   警部補は早水巡査長に出動を命じ,早水巡査長は同日午前11時50分頃,
   事故現場に到着した。(甲86の11~12頁)
  (2) 同日午後0時25分頃,堀部警部補と間ノ瀬巡査部長が本件事故現場に到
   着し,同日午後0時34分から同日午後1時20分まで,小野寺立会いのも
   とに,実況見分を行なった。(甲86の12,16頁)
   控訴人の主張(1)・堀部警部補らは事故当日は実況見分を行なっていない。
  (3) 平成11年10月8日 ,間ノ瀬巡査部長は,交通切符様式の実況見分調
   書を作成し,小野寺に同月12日に任意出頭するようを求め,小野寺は同日
                 17/70頁
   に玖珠警察署に出頭し供述調書に署名押印した。(甲86の17~18頁)
   控訴人の主張(2)・小野寺は人身事故の加害者である。切符処理は出来ない。
   控訴人の主張(3)・間ノ瀬巡査部長は事故当日は実況見分を行なっていない。
   控訴人の主張(4)・小野寺は,同月14日まで演習に参加していたという。
  (4) 平成11年10月29日,控訴人は玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね,
   控訴人が被害者である旨申立て,平成11年10月14日付け熊本赤十字病
   院医師磯貝正久作成の診断書を提出した。(甲86の18頁)
  (5) 平成11年11月11日から数回,間ノ瀬巡査部長は供述調書作成のため
   控訴人に出頭を求めたが控訴人は出頭に応じなかった。(甲86の19頁)
  (6) 平成12年2月10日,堀部警部補は玖珠警察署長まで報告の上,本件事
   故の処理を一時保留扱いとした。(甲86の20~21頁)
 8 小野寺の証言及び陳述
   (平成14年3月25日付け別件訴訟での速記録(甲22)及び平成13年
  10月12日付け小野寺の陳述書(甲25))
  (1) 平成11年10月7日,本件事故発生の約40分後小国警察署員が事故現
   場に到着し,少し遅れて早水巡査長が到着した(甲25)。
  (2) 〔救急車は現場に5分くらいいた〕(甲22の20頁)。救急車が去った
   後で玖珠警察署員2名が到着し現場検証を始めた
ので立会った(甲25)。
   玖珠警察署署員が現場に到着したのは午後0時30分である。現場検証の時
   間は約40分であった。(甲22の20頁)
   控訴人の主張(1)・玖珠警察署員2名は,堀部警部補及び間ノ瀬巡査部長を
   さすが,両名は本件事故当日事故現場に臨場せず現場検証は行なっていない。
  (3) 現場検証後吉田1尉に同行してもらい,小国公立病院に行った。病院でバ
   イクの運転者(控訴人)の兄に会い事故の状況及び現場検証の概要を説明し
   た。するとバイクの運転者の兄から「弟が悪かった」と頭を下げられ,握手
   を求められた。またこの時「国民健康保険で治療する」ともいわれた。(甲
                 18/70頁   
   25)
   控訴人の主張(2)・小野寺は証人尋問時,現場検証後同行してもらった人物
   を吉田1尉から近松3佐に訂正した。吉田1尉は第8師団司令部付隊の管理
   小隊の班長で,事故当時本件自衛隊車を含む10両編成の指揮をしていた
   (甲22の13頁)。近松3佐は第8師団司令部付隊の隊長である(甲2
   6)。小野寺が間違えるはずはない。法務官が近松3佐の名前を出すのを嫌
   ったのだ。
   控訴人の主張(3)・控訴人の兄は,控訴人の問合せに対し,「加害者が小野
   寺であることを知ったのは,事故後数日経過してから自宅に本人が電話して
   きたときが初めてです。小野寺は自分に過失がないことをるる述べましたが,
   私はまだ警察の説明も受けておらず,現場も確認していない時点で弟の過失
   について云々することはできないと云いました。事故の日に自衛隊から自宅
   に電話連絡を受け,小国公立病院に行きました。病院には数人の自衛官がい
   ました。その中の一人が事故状況を説明しましたが,自衛隊側の一方的説明
   であり,私が弟の非を認めるわけはなく,ましては頭を下げたり握手を求め
   たりしたことはありません。「国民健康保険で治療する」とは云っていませ
   ん。当時は緊急事態で病院の支払いを等について云々する状況下になく,病
   院も支払いについて言及はしておらず,私は弟が加入している保険の種類も
   知っていません。」と回答した。(甲74)
   控訴人の主張(4)・「弟が悪かったと頭を下げて握手を求められた。国民健
   康保険治療するといわれた。」との陳述は虚偽の陳述であり,かつ控訴人の
   兄をも侮辱する内容である。この陳述の脚本を書いた浅香らの行為は到底許
   せない。
  (4) 同7日午後3時頃小国公立病院から演習場に行った。(甲75の3頁)
  (5) 演習場から熊本に帰ったのは1週間後くらいである。(6) 演習場から帰る
   とき小野寺は車両を運転して事故現場を通った。(甲22の12頁)。
                 19/70頁
   控訴人の主張(5)・直前に重傷の人身事故を起した兵を演習に参加させるか。  
   控訴人の主張(6)・人身事故を起したばかりの者に公道で車を運転させるか。
  (7) 平成11年10月11日か12日,供述調書作成のため玖珠警察署に出頭
   した。被疑者として調べられてはいない。
   控訴人の主張(7)・小野寺が演習場から熊本に帰ったのは事故から1週間後
   位だという。1週間後は平成11年10月14日である。
   控訴人の主張(8)・小野寺は業務上過失傷害事件の被疑者である。
  (8) 警務官は供述調書を取らなかった。
   控訴人の主張(9)・通常,業務隊の防衛事務官が供述調書を作成する。
  (9) 陳述書(甲25)は代理人(法務官)に供述した。
   控訴人の主張(10)法務官は第8師団司令部法務官室法務課の法務官である。    
 9 控訴人の主張するストーリー(控訴人車線のひし形マークの謎を解く。)
  (1) 平成11年10月10日は祝日(体育の日)で,日曜日だったので,翌日
   の11日は振替休日であった。
  (2) 自衛隊は,小野寺及び関係者の事情聴取や事前の準備があり,本件道路は
   平日の交通量は少ないが連休中は観光客の車両の通行が多いことから,実況
   見分を連休明けに行なうことにした。
  (3) 自衛隊は,連休後の12,13,14日に事故調査・事情聴取・実況見
   分・事故処理対策会議等を行なった。
(4) 平成11年10月12日,自衛隊は,事故直後の捜査で得た資料に基づき,
   「控訴人車線のひし形マーク」等を設置し,自衛隊写真②を撮影するなど,
   実況見分の下準備をした。
  (5) 平成11年10月12日, 熊本赤十字病院に入院中の控訴人を訪ねて,第
   8師団司令部付隊の斉藤1尉と称する者が来た。控訴人は,本件事故は自車
   線内の事故と控訴人の妻から聞いており,相手も同じ認識だと思っていたの
   で,控訴人には事故当時の記憶がないことを話した。事故の態様や治療費の
                 20/70頁
   支払い等についての会話はなかった。(甲65)
  (6) 平成11年10月15日, 熊本赤十字病院に入院中の控訴人を訪ねて,陸
   上自衛隊北熊本駐屯地業務隊・防衛庁事務官・奥田重盛という名刺を持った
   者が来た。奥田は昨日で自衛隊の調査が終わったと述べた。控訴人は控訴人
   車の処置について聞いたが,勝手にしたらいいと言う無愛想な態度で,会話
   は続かなかった。(甲65)
  (7) 同日,奥田重盛が去った直後熊本赤十字病院の大石信清事故処理室長が病
   室に来て,「大変なことになっているから,治療を健康保険に切り替えたほ
   うがいい」と控訴人に告げた。(甲65)
  (8) 「大変なことになっている」というのは,上記斉藤1尉の報告を受けて,
   自衛隊の事故対応の方針が変わり,衝突位置が控訴人車線上から自衛隊車線
   上に変更されたということである。
  (9) 自衛隊の衝突位置の変更に伴い,自衛隊写真②に写っていた9個の控訴人
   車線のひし形マークのうち6個を残して,控訴人車転倒位置に近いほうのひ
   し形マークが消された。
  (10) 警察写真⑩が撮影されたのは,控訴人車線のひし形マークが6個になっ
   てからである。
  (11) 控訴人は,熊本赤十字病院から外出許可が出たので,平成11年10月
   26日朝,間ノ瀬巡査部長に電話し,玖珠警察署で話を聞きたい旨を伝えた。
  (12) 間ノ瀬巡査部長は,10月26,27,28日の3日間は所用があると
   のことで,10月29日午後1時に出頭することになった。
  (13) 平成11年10月29日,玖珠警察署で間ノ瀬巡査部長は,控訴人に対
   して平成11年10月8日に作成した交通切符様式の実況見分調書等に基づ
   いて本件交通事故の発生状況を説明したという。間ノ瀬巡査部長は,現場写
   真は未だ現像していないといい,現場見取図を含め書面等は見せなかった。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第4点

2007-01-05 10:13:51 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第4点 本件事故の態様
   原判決の,第3争点に対する判断の1,(1)本件事故発生の状況オ(判決書
  16頁)の下記の部分の不服。「小野寺は,時速約40キロメートルの速度で
  本件道路の自衛隊車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前の右カ
  ーブに入ったところ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑草越し
  に,控訴人車が控訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危険を感
  じなかったので,そのまま進行した。ところが,控訴人車と本件大型トラック
  が15,6メートルにまで接近したところで,控訴人車がコントロールを失っ
  て左右に大きく振れ,小野寺の視点からは,控訴人車が自衛隊車の方に突っ込
  んで来るように見えた。小野寺はとっさにブレーキを踏もうとしたが,ブレー
  キを踏むより早く,控訴人車が本件大型トラックの運転席の横を通り過ぎて,
  本件炊事車に衝突ないし接触した。」
 1 小野寺は,実況見分調書(甲42の19頁)では,「小野寺が最初に控訴人
                 10/70頁
  車を認めた地点は㋐,その時控訴人車は①,危険を感じ・ブレーキをかけた地
  点は㋑,その時の控訴人車は②,衝突した地点はⓍ,その時小野寺は㋒,控訴
  人車はⓍが右前部,小野寺が停止した地点は㋓,控訴人が転倒した地点は③,
  控訴人のバイクが転倒した地点は④」と各地点を指示説明した。各地点関係位
  置は交通事故現場見取図第3図(甲38)記載のとおりである。
 2 小野寺は,別件訴訟の証言調書速記録(甲22)では,「カーブに入る手前
  は,右側が杉林になって見通しは悪いが,①の地点で見通しがよくなる(甲2
  2の6頁)。小野寺が①の地点で,イ地点の控訴人車(バイク)を発見した。
  ①の時点では異常は認められなかったので,バイクに注意しながら進行した。
  小野寺が②の地点,バイクがロの地点で危険を感じた。②の時点でバイクとの
  距離は10から15m以内であった。危険を感じてから一瞬のことで,ブレー
  キをかける間もなく,ハンドルを切る時間もなく,バイクは横を通り過ぎ,小
  野寺が④の地点で,トレーラがⓍの地点で衝突した。(甲22の7~8頁)」
  と証言した。各地点は事故現場見取図(甲23)記載のとおりである。
 3 実況見分調書添付の交通事故現場見取図(甲38)と自衛隊の事故現場見取
  図(甲23)を,自衛隊車の最終停止位置(甲38の㋓と甲23の⑤)を重ね,
  擁壁になっている西側の道路の外側線を重ね合わせると,衝突位置付近の道路
  及び控訴人車の転倒位置は大体一致する(甲40・本図では,甲6を甲23,
  甲7を甲38と読み替える。)
   この控訴人作成の事故現場見取図(甲40)で検証(事実を確認・証明す
  る)すると,小野寺が控訴人車を初認した位置方向距離などについての,警察
  官への指示説明(甲42,甲38)の場合はバイクを「右方向の視界を遮る草
  木の左側に」に初認しているが,別件訴訟の小野寺の証言(甲22,甲23)
  の場合はバイクを「草地越しに」に初認していていることになり,全く異なる。
 4 事故現場見取図(甲23)で,小野寺が,①地点で草地越しに(イ)地点の
  控訴人車を認めてから衝突するまで,自衛隊車は23.3メートル走行してい
                11/70頁
  る。自衛隊車が毎時40キロメートの速度で走行していたと仮定すると,初認
  後2.097秒で衝突が発生している,控訴人車が小野寺に初認された地点
  (イ)から,衝突地点Ⓧ)までの走行距離は45メートルである。控訴人車が
  毎時40キロメートルの速度で走行していたと仮定すると,2.097秒で2
  3.3メートル走行する。自衛隊・警察の主張する衝突時刻には控訴人車は衝
  突地点から21.5メートルの地点にいる (45-23.3=21.5)。
  浅香らが主張する事故の態様では本件事故は発生しない。
 5 自衛隊車の助手席に乗っていた片岡は,別件訴訟における陳述書(甲26)
  で,「右前方約30~40mぐらいの位置に同カーブに近づいてくるバイクを
  確認しました。対向車線は,道路に端に沿って約1mぐらい草刈りしてあった
  ので見通しは良好でした。」と陳述している。片岡は「カーブの内側にある草
  地越しに」ではなく「右方向の視界を遮る草木の左側に」控訴人車を認めたの
  である。小野寺も警察官への指示説明(甲42,甲38)では,小野寺が㋐の
  位置で①の位置に控訴人車を認めている。すなわち,「右方向の視界を遮る草
  木の左側に」控訴人車を初認したと供述している。
 6 控訴人の主張する本件事故の態様を,控訴人作成の事故現場見取図(甲39,
   1/2
)及び同付属書類(甲39,2/2)に記載した。
   小野寺は,同現場見取図(甲39)の◎の地点で,(ロ)の地点を走行して
  くる控訴人車を「右方向の視界を遮る草木の左側に」に約31mの距離で初認
  した。本件事故現場付近の◎の地点で右カーブに高速で進入する大型トラック
  の運転手は全神経を進路方向に集中している。◎若しくは,①の地点で(イ)
  の方向を見る余裕もなく,もし見たとしたらわき見運転である。もともと(イ)
  方向は草木に遮られ見通せない。
 7 事故現場見取図の「カーブの内側にある,道路外の草地」には,道路脇に沿
  って,1乃至2メートルに破線が描かれている。甲38では草地が道路側から
  「草地」と「草」とに区別されている。小野寺が最初に控訴人車を認めた地点
                 12/70頁
  ㋐とその時控訴人車は①の地点を結ぶ線は甲38の「草地」の上を通る。
 8 事故当時の現場付近の草地の状況は,控訴人が平成11年10月29日に撮
  影した本件事故現場道路写真(甲66)のとおりである。
 9 自衛隊撮影の事故現場写真(甲67)の写真甲67①は当時の草地の茅(か
  や)の状況がわかる。自衛隊車が写っている写真(甲67⑤⑥)では茅の生育
  状態が他の写真と異なる。実況見分調書添付の写真(甲32)も自衛隊車が写
  っている写真では茅の生育状態が他の写真と異なる(甲32⑤⑦)。甲37②
  も茅の生育状態が他の写真と異なる。
 10 本件のように,相互の見通しの良くない場所での現場写真には,相手を初認
  した位置からの見通しの状況を示す写真が存在しなければならない。現に事故
  再現写真(甲27)の第1番目に「バイクを確認した位置」のような草地の状
  況を明らかにする写真が示されている。(事故再現見分時には現場の状況が変
  更されていることは,訴状(18頁)第3,第2点12(5)で主張した。)
   本件事故直後,現場には交通事故処理のプロである保安警務隊がいて,撮影
  を担当する隊員が現場写真を撮影したことは証拠から明らかである。信用する
  に足る写真で,草木の状態がわかるのは,自衛隊写真(甲67①・⑧)及び実
  況見分調書添付の写真(甲32③)の3枚だけで草地の上の相互の見通しの状
  況がわかる写真は一枚も提出されていない。
   浅香らは,事故直後撮影された重要な現場写真を隠蔽している。
 11 原判決は,「小野寺は,時速約40キロメートルの速度で本件道路の自衛隊
  車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前の右カーブに入ったとこ
  ろ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑草越しに,控訴人車が控
  訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危険を感じなかったので,
  そのまま進行した。ところが,控訴人車と本件大型トラックが15,6メート
  ルにまで接近したところで,控訴人車がコントロールを失って左右に大きく振
  れ,小野寺の視点からは,控訴人車が自衛隊車の方に突っ込んで来るように見
                 13/70頁
  えた。小野寺はとっさにブレーキを踏もうとしたが,ブレーキを踏むより早く,
  控訴人車が本件大型トラックの運転席の横を通り過ぎて,本件炊事車に衝突な
  いし接触した。」と認定し,「本件事故は控訴人の過失に基づく結果であり,
  小野寺には何ら過失のないことが認められる。」と判示した。
 12 原判決は,原審が採用した証拠(甲17)別件行政訴訟の判決正本の認定を
  丸写しした判断であるが,浅香らが主張する事故の態様を採用したこの場合,
  上記4で指摘したとおり,本件事故は発生しない。
 13 原判決は,浅香らが作成した虚偽の図画(甲23)及び虚偽の事実主張に欺
  かれ,本件事故の態様についての事実認定を誤っている。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ

31:控訴理由 第1~3点

2007-01-05 10:01:05 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
横浜地方裁判所平成18年(ワネ)414号
控訴人 出羽やるか
被控訴人 国
           控 訴 理 由 書
                          平成18年12月25日
東京高等裁判所 御中
   控訴人 出羽やるか
上記当事者間の横浜地方裁判所平成17年(ワ)3710号国家賠償請求事件
(平成17年(モ)第2411号 文書提出命令申立事件,同18年(モ)38
6号 文書提出命令申立事件)について,平成18年11月10日に言渡された
判決は不服であるから,平成18年11月17日に控訴したがその理由は下記の
通りである。なお,略称等は原審の例によるものとする。
          理  由  要  旨
 1 本件は,控訴人運転の自動二輪車(控訴人車)と自衛隊員小野寺運転の自衛
 隊車との接触事故により受傷し,国に対し損害賠償請求訴訟(別件訴訟)を提
  起し敗訴した控訴人が,同訴訟で国の指定代理人ら(浅香ら)が,控訴人の権
 利を害する意図のもとに,虚偽の文書・図画を作り,虚偽の事実を主張して裁
 判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,本来ありうべからざる内容
 の判決が確定し控訴人に損害を与えたとして,国に対し,国家賠償法1条に基
 づき,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及びこ
 れに対する不法行為後である平成17年11月9日から支払済みまで民法所定
 の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 2 本件事故は,平成11年10月7日に発生した。控訴人は,事故当日入院し
 た熊本市内の病院を退院する前日,約3ヶ月の加療を要すとる見込みとの内容
  の診断書を玖珠警察署に提出したが,同署は事件を送致せず,約2年間放置し
 た。加害者である小野寺は無責を主張し,自衛隊からは何ら連絡はなかった。
1/70頁
 3 玖珠警察署は,別件訴訟の提起を受けて,平成13年11月20日に控訴人
  を道路交通法70条の違反者として送致した。加害者である小野寺の事件(刑
  法211条)は送致されていない。道路交通法違反関係書類の検察庁での保存
  期間は1年とされているが,業務上過失致死傷等の罪の時効は3年である。
   刑事訴訟法第246条は全件送致主義について規定したもので,捜査の結果
  犯罪の嫌疑が消滅した場合であっても事件を送致しなければならない。
 4 原審で,控訴人は,書証第1~84号証を提出し,請求原因事実を具体的に
  陳述し,浅香らの違法行為について具体的に主張した。
 5 被控訴人は,「別件訴訟判決では,本件事故の態様の認定にかかる証拠資料
  等に関しては,ねつ造,改ざんされたということはできない旨判示され,本件
  事故は控訴人の一方的過失によるものであるとの判示がされている。控訴人の
  主張の趣旨が,本件事故の態様に関して,控訴人に過失がないという意味で主
  張を引用するのであれば,別件訴訟の蒸返しともいうべきものであり,本件事
  故の態様に関する審理は不要である。」と主張して単純否認を繰り返し,控訴
  人の主張に対しなんら抗弁・反論をしなかった。原審においては,事実整理又
  は争点整理が行われず,十分な審理が行われていない。
 6 控訴人は,確定判決は主文に包含するものに限り,既判力を有するのであり,
  判決理由中の判断には既判力は生じないから,被控訴人の主張が失当であるこ
  とは明らかである,と主張した。
 7 原判決判示の事故態様では本件事故は発生しない。小野寺が,草地越しに控
  訴人車を認めてから衝突するまで,自衛隊車は23.3メートル走行している。
  自衛隊車が毎時40キロメートの速度で走行していたと仮定すると,初認後2.
  097秒で衝突が発生している,控訴人車が小野寺に初認された地点から,衝
  突地点までの走行距離は45メートルである。控訴人車が毎時40キロメート
  ルの速度で走行していたと仮定すると,2.097秒で23.3メートル走行
  する。原判決の認定した衝突時刻には控訴人車は衝突地点から21.5メート
                2/70頁
  ルの地点にいる (45-23.3=21.5)。
   原判決は,浅香らが作成した虚偽の図画(甲23)及び虚偽の事実主張に欺
  かれ本件事故の態様についての事実認定を誤った別件訴訟確定判決と同じ誤っ
  た事実認定を行っている。
 8 控訴人は,準備書面(6)第5「本件事故による自衛隊車の制動痕」で,浅
  香らが証拠資料(自衛隊車の制動痕)を隠蔽・破棄したと主張・立証したが,
  原判決は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を遺脱している。
   原判決には,控訴人が原審で主張した,判決に影響を及ぼすべき重要な事項
  について判断の遺脱がある。
 9 浅香らは,事故現場見取図(甲23)で,控訴人車の急ブレーキによるタイ
  ヤ痕の位置を,「現場見取り図においては,同図作成当時,すでに急ブレーキ
  によるタイヤ痕が消失していたが,同写真におけるセンターライン(黄色)の
  中央部分のひび割れ部分から,小野寺及び片岡が確認の上,タイヤ痕の位置を
  特定した(甲21の6頁)。」という。事故再現見分が行なわれたのは,平成
  13年9月18日であるから,事故から712日経過している。「急ブレーキ
  によるタイヤ痕の位置」は,国が主張する衝突位置を決定した唯一の証拠であ
  る。これにより,控訴人の全面的過失による事故とされ,特別刑法の被疑者と
  して送致されたのである。浅香らの主張は不法というか無法な主張である。
   原判決は,供述(捜査記録や法廷供述)という一方当事者に偏した非物的証
  拠のみに基づき,これらの信用性をほとんど吟味もせずに引用して,「本件事
  故現場の自衛隊車進行車線内に控訴人車のタイヤ痕が印象されていた」とまず
  認定した。原判決には,適法な弁論や証拠調べを無視した事実認定及び著しく
  不合理な事実認定などがあり,事実認定の資料とその資料に基づく推論の過程
  が判決理由中で明らかにされていない。
 10 よって,下記にあげた控訴理由第1点ないし第23点について,あらためて
  事実判断と法律判断の上,審理及び裁判をされることを求める。
                 3/70頁
              目      次
    理由要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1点 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第2点 浅香らが提出した証拠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第3点 本件道路のタイヤ痕と擦過痕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第4点 本件事故の態様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
第5点 本件事故処理の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
第6点 玖珠警察署の実況見分調書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
第7点 車両使用請求書・車両運行指令書・・・・・・・・・・・・・・・・34
第8点 当事者照会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
第9点 運行記録計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
第10点 自衛隊の実況見分調書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
第11点 現場写真のねつ造・改ざん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
第12点 KP34.9の警戒標識・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
第13点 控訴人車に積まれた控訴人の荷物・・・・・・・・・・・・・・・・47
第14点 控訴人車車線上のひし形マーク・・・・・・・・・・・・・・・・・49
第15点 KP34.9の里程標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
第16点 文書提出命令・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
第17点 本件事故による自衛隊車の制動痕・・・・・・・・・・・・・・・・58
第18点 炊事車の衝突痕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
第19点 事故直後の自衛隊車と控訴人車の停止位置・・・・・・・・・・・・60
第20点 自衛隊による事故再現見分に対する玖珠警察署の関与・・・・・・ 62
第21点 道路交通法70条に基づく本件事故の処分・・・・・・・・・・・・64
第22点 小野寺の道路交通法70条違反・・・・・・・・・・・・・・・・・67
第23点 控訴人の主張に対する被控訴人の態度・・・・・・・・・・・・・・69
    終わりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
          控  訴  理  由
第1点 事案の概要
   原判決の,第2事案の概要(判決書1~2頁)の下記の部分の不服。「本件
  は,自衛隊車両との接触事故により受傷したとして,国に対し損害賠償請求訴
  訟を提起し敗訴した控訴人が,同訴訟で国の指定代理人らが,証拠資料を隠ぺ
  い破棄し提出せず,証拠資料のねつ造・改ざんを行い,あるいは不法に作成さ
  れた証拠を弁論に使用した違法があると主張して,」
 1 上記部分は,「本件は,控訴人運転の自動二輪車(控訴人車)と自衛隊員小
  野寺運転の自衛隊車との接触事故により受傷し,国に対し損害賠償請求訴訟
  (別件訴訟)を提起し敗訴した控訴人が,同訴訟で国の指定代理人ら(浅香
  ら)が,控訴人の権利を害する意図のもとに,虚偽の文書・図画を作り,虚偽
  の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,本来あ
  りうべからざる内容の判決が確定し控訴人に損害を与えたとして,」が正しい。
第2点 浅香らが提出した証拠
   原判決の,第2,1争いのない事実等(4) (判決書3頁)の下記の部分の不
  服。「浅香らは,別件訴訟で,事故現場見取図,事故現場写真,小野寺の陳述
  書,本件大型トラックの助手であった2等陸曹片岡高房(以下「片岡」とい
  う。)の陳述書及び事故状況再現写真を,証拠として提出した。」
 1 上記部分から,「事故現場見取図」を削除する。
 2 浅香らは,上記事故現場見取図を別件訴訟の準備書面の別紙として提出して
  いるが,書証の申出はしていない。(国の証拠説明書に記載がない。)
第3点 本件道路のタイヤ痕と擦過痕
   原判決の,第3争点に対する判断の1,(1)本件事故発生の状況エ(判決書
  15~16頁)の下記の部分の不服。「本件道路面には,中央線から自衛隊車
  進行車線側に約40センチメートル入ったところに控訴人車のタイヤ痕1条が
  印象され,更にそれに連なるように,中央線から控訴人車進行車線上に入った
                5/70頁
  ところに控訴人車の転倒によって生じた擦過痕2条がそれぞれ印象されてい
  た。」
 1 小野寺は,別件訴訟の証言調書速記録(甲22の9~10頁)で,「現場検
  証した警察官は本件事故の状況について,バイクのタイヤ痕が中央線より約6
  0センチ自衛隊車の車線上にはっきり残っていたので,バイクが中央線をオー
  バーしたのだなといった。急ブレーキによるタイヤ痕の写真(甲67⑦)でい
  うと,白い線で囲まれた部分で60センチオーバーしているというふうに言っ
  ていた。」と証言している。
 2 浅香らは,別件訴訟準備書面(1)(甲21の5~6頁)で,「自衛隊車と控訴
  人車の衝突場所は,自衛隊車の走行車線において,センターラインから約40
  センチメートルの位置に約40センチメートルの急ブレーキによるタイヤ痕が
  認められたことから,自衛隊車走行車線内であると認められる。急ブレーキに
  よるタイヤ痕の写真(甲67⑦)は本件事故発生直後に撮影された。控訴人車
  の右前ブレーキが本件トレーラ(炊事車)の右タイヤフェンダーに接触したた
  め,控訴人車の前輪に急ブレーキがかかり,スリップし,タイヤ痕が残ったも
  のと考えられる。」と主張した。
 3 堀部警部補は,実況見分調書(甲42の19頁)6事故の模様(1)現場の痕跡
  等に,「自衛隊車の進路上中央線付近に,新しいタイヤ痕1条,a,同タイヤ
  痕の反対側車線上つまり控訴人車の進路上,新しい擦過痕2条,c・d,が印
  象されていた。別添交通事故見取図第3図(甲42の23頁・甲38)写真⑫
  ~⑯(甲32⑫~⑯)」と記載している。
   堀部警部補は,「控訴人車の右前ブレーキレバーが曲がり,炊事車の右タイ
  ヤフェンダーには,ブレーキレバーと同じくらいの高さの部分に接触痕が認め
  られたこと,自衛隊車の進路上中央線から約43センチメートル入った所に約
  35センチメートルの真新しいタイヤ痕が印象されていたこと,同地点から控
  訴人車の進路上に向けて擦過痕が印象されていたこと,自衛隊車の進路上には,
                 6/70頁
  上記のタイヤ痕以外には痕跡がなかったこと」が判明したという。
 4 実況見分調書添付の交通事故現場見取図(甲38)と自衛隊の事故現場見取
  図(甲23)を,自衛隊車の最終停止位置(甲38の㋓と甲23の⑤)を重ね,
  擁壁になっている西側の道路の外側線を重ね合わせると,衝突位置付近の道路
  及び控訴人車の転倒位置は大体一致する(甲40・本図では,甲6を甲23,
  甲7を甲38と読み替える。)
   同見取図(甲40)で検証すると,甲23及び甲38の衝突位置Ⓧは中央線
  に平行に約4.6m前後に位置する。
 5 甲23及び甲38の衝突位置は共にタイヤ痕の位置を基準に決定されている
  から,甲38のタイヤ痕の南方約4.6mに甲23のタイヤ痕が存在すること
  になる。4.6メートルの違いは誤差としては大きすぎる。
 6 別件訴訟で国(自衛隊)は,本件事故発生直後に撮影されたとして,40cm
  の長さの「急ブレーキによるタイヤ痕」の写真(甲67⑦)を提出した。自衛
  隊犯罪捜査服務規則第118条は,「警務官等は,現場において撮影をすると
  きは,物の長短,大小などを明らかにするため,巻尺,方眼紙などを添え,で
  きる限り紙片に年月日,場所を記載し,これに立会人又は第三者の署名を求め,
  これとともに撮影するようにしなければならない。」と定められているが全く
  守られてない。同写真(甲67⑦)は,測定基準が写されていないので位置が
  特定できず,道路面だけでしか写されていないので付近の草木の状況もわから
  ず撮影の時期も推定できない。そもそも,真新しく残っていたと国が主張して
  いる,40cmの急ブレーキによるタイヤ痕も写っていないのである。
 7 堀部警部補は,自衛隊車の進路上中央線から約43センチメートル入った所
  に約35センチメートルの真新しいタイヤ痕が印象されていたとして実況見分
  時撮影した写真(甲32⑬)を実況見分調書に添付した。この写真も上記自
  衛隊写真(甲67⑦)と同様の代物でタイヤ痕も写っていない。交通事故処理
  車で出動した交通課係長の警部補が撮影した写真とは到底思えない。テレビド
                 7/70頁
  ラマに出てくる新人の警察官でも,現場写真を撮影する時には,巻尺,方眼紙
  等がなくても,紙幣の一枚,タバコの一箱など添えて撮影する。
 8 擦過痕については,別件訴訟で国はその存在を主張していない。堀部警部補
  は実況見分調書添付の写真(甲32)で,写真⑫⑮⑯は擦過痕を撮影したもの
  と説明しているが,擦過痕は写っておらず,写っていたとしてもその位置は特
  定できない。
 9 タイヤ痕(スリップ痕,制動痕,タイヤマーク)は,さまざまなタイヤのす
  べり現象によって生じ,印象するスリップ痕の模様もそれぞれ異なる。「新し
  いタイヤ痕」の写真には,タイヤ痕の,模様,長さ,方向,幅,濃淡などが写
  されていなければならない。
 10 タイヤ痕が印象された原因について,(1) 前輪の制動痕説・小野寺及び堀部
  警部補説,(2) 衝突時の衝撃による前輪の押し戻し痕説・間ノ瀬巡査部長説,
  (3) 後輪の制動痕説・控訴人説が主張された。本件実況見分の見分官とされる
  間ノ瀬巡査部長と,補助者とされる堀部警部補の説明がまったく異なる。
  (1) 前輪の制動痕説・小野寺及び堀部警部補の説明
    小野寺は,別件訴訟で,写真(甲67⑦)に写されているタイヤ痕につい
   て,バイクの前輪ブレーキレバーとトレーラの右側タイヤ枠が衝突したため,
   急ブレーキがかかり印されたと現場検証した警察官は考えたのだと思うと供
   述している。証言調書速記録(甲22の10頁)。(擦過痕についてのその
   存在の言及すら無い。)
    片岡の別件訴訟での陳述書(甲25)に,「(本件事故後)バイクを移動
   しようとしましたが,ブレーキが壊れていてブレーキがかかったままの状態
   で,前に進ませることができませんでした。」との記載がある。控訴人車の
   前輪ブレーキは油圧式のディスクブレーキで右のレバーで操作するが,レバ
   ーが壊れても,構造的にブレーキがかかったままの状態にはならない。(甲
   69)
                 8/70頁
  (2) 衝突時の衝撃による前輪の押し戻し痕説・間ノ瀬巡査部長の説明
    間ノ瀬巡査部長は,「対向車と衝突した時,衝突した衝撃で,押し戻され
   タイヤが道路に印をつける。急ブレーキもかけていないのにタイヤ痕がある
   のは衝突の衝撃で押し戻されて印されたからである。だから私はタイヤ痕と
   いう,ブレーキ痕とはいわない。」と述べた。(甲5の24頁)
  (3) 後輪の制動痕説・控訴人の説明
    控訴人は,上記(1),(2)では長さ40センチメートルの制動痕は印象され
   ないと主張する。衝突時,控訴人の右足(傷の部分)がバイクのギヤケース
   (クランクケース)に激しく衝突し,写真に写されているケース表面の擦過
   痕を残した(甲69⑬⑭)。このとき控訴人の右足には足の傷の部分を支点
   にする力が生じ,ステップバーを押し曲げ,後輪ブレーキが破損するまで強
   くかかったと推断される(甲69⑤⑥)。ステップバー及び後輪ブレーキペ
   タルに道路面と接触した傷はない。接触したとされる右レバー先の損傷も擦
   過程度で(甲69③),右手指の負傷が軽微であることなどから,前輪ブレ
   ーキはかかっておらず,ブレーキ痕が存在したら後輪ブレーキによるもので
   あり,控訴人車車線上に存在したと主張する。
 11 原判決は,「本件道路面には,中央線から自衛隊車進行車縁側に約40セン
  チメートル入ったところに控訴人車のタイヤ痕1条が印象され,更にそれに連
  なるように,中央線から控訴人車進行車線上に入ったところに控訴人車の転倒
  によって生じた擦過痕2条がそれぞれ印象されていた。」と認定し,「本件事
  故は控訴人の過失に基づく結果であり,小野寺には何ら過失のないことが認め
  られる。」と判示した。
 12 原判決は,原審が採用した証拠(甲17)別件行政訴訟の判決正本の認定を
  丸写しした判断で,上記1ないし10の控訴人の主張についての判断をせず,
  原審での被控訴人の主張立証はないまま,浅香らがその存在を主張していない
  擦過痕までをも認定した。
                   9/70頁
 13 原判決は,「本件事故直後に現場写真を撮影した赤埴らは,本件事故現場の
  自衛隊車進行車線内に控訴人車のタイヤ痕が残っていたことを認識していたも
  のと認められる。」と判示している(判決書22頁8行)。赤埴は,師団の広
  報班の写真撮影をしている(甲22の13頁)から,写真撮影についてはプロ
  である。「はっきり残っていた40センチメートルのタイヤ痕(甲67⑦)」
  を撮影したら,経験則上,タイヤ痕がはっきり写った写真を撮影する。
   プロが撮影したタイヤ痕が写っていない写真の道路面には,特段の事情がな
  い限り,タイヤ痕は印象されていなかったと,通常の人は判断する。
 14 浅香らは,虚偽の文書・図画を作り,虚偽の事実を主張した。
 15 原判決は,本件事案解明の大前提となる,衝突位置に関する事実認定におい
  て,証拠の評価を誤った認定,あるいは,証拠に基づかない認定を行っている。
  原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな,事実認定の誤りが認められ,
  上記判示には理由がない。
                 10/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ