第4点 本件事故の態様
原判決の,第3争点に対する判断の1,(1)本件事故発生の状況オ(判決書
16頁)の下記の部分の不服。「小野寺は,時速約40キロメートルの速度で
本件道路の自衛隊車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前の右カ
ーブに入ったところ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑草越し
に,控訴人車が控訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危険を感
じなかったので,そのまま進行した。ところが,控訴人車と本件大型トラック
が15,6メートルにまで接近したところで,控訴人車がコントロールを失っ
て左右に大きく振れ,小野寺の視点からは,控訴人車が自衛隊車の方に突っ込
んで来るように見えた。小野寺はとっさにブレーキを踏もうとしたが,ブレー
キを踏むより早く,控訴人車が本件大型トラックの運転席の横を通り過ぎて,
本件炊事車に衝突ないし接触した。」
1 小野寺は,実況見分調書(甲42の19頁)では,「小野寺が最初に控訴人
10/70頁
車を認めた地点は㋐,その時控訴人車は①,危険を感じ・ブレーキをかけた地
点は㋑,その時の控訴人車は②,衝突した地点はⓍ,その時小野寺は㋒,控訴
人車はⓍが右前部,小野寺が停止した地点は㋓,控訴人が転倒した地点は③,
控訴人のバイクが転倒した地点は④」と各地点を指示説明した。各地点関係位
置は交通事故現場見取図第3図(甲38)記載のとおりである。
2 小野寺は,別件訴訟の証言調書速記録(甲22)では,「カーブに入る手前
は,右側が杉林になって見通しは悪いが,①の地点で見通しがよくなる(甲2
2の6頁)。小野寺が①の地点で,イ地点の控訴人車(バイク)を発見した。
①の時点では異常は認められなかったので,バイクに注意しながら進行した。
小野寺が②の地点,バイクがロの地点で危険を感じた。②の時点でバイクとの
距離は10から15m以内であった。危険を感じてから一瞬のことで,ブレー
キをかける間もなく,ハンドルを切る時間もなく,バイクは横を通り過ぎ,小
野寺が④の地点で,トレーラがⓍの地点で衝突した。(甲22の7~8頁)」
と証言した。各地点は事故現場見取図(甲23)記載のとおりである。
3 実況見分調書添付の交通事故現場見取図(甲38)と自衛隊の事故現場見取
図(甲23)を,自衛隊車の最終停止位置(甲38の㋓と甲23の⑤)を重ね,
擁壁になっている西側の道路の外側線を重ね合わせると,衝突位置付近の道路
及び控訴人車の転倒位置は大体一致する(甲40・本図では,甲6を甲23,
甲7を甲38と読み替える。)
この控訴人作成の事故現場見取図(甲40)で検証(事実を確認・証明す
る)すると,小野寺が控訴人車を初認した位置方向距離などについての,警察
官への指示説明(甲42,甲38)の場合はバイクを「右方向の視界を遮る草
木の左側に」に初認しているが,別件訴訟の小野寺の証言(甲22,甲23)
の場合はバイクを「草地越しに」に初認していていることになり,全く異なる。
4 事故現場見取図(甲23)で,小野寺が,①地点で草地越しに(イ)地点の
控訴人車を認めてから衝突するまで,自衛隊車は23.3メートル走行してい
11/70頁
る。自衛隊車が毎時40キロメートの速度で走行していたと仮定すると,初認
後2.097秒で衝突が発生している,控訴人車が小野寺に初認された地点
(イ)から,衝突地点Ⓧ)までの走行距離は45メートルである。控訴人車が
毎時40キロメートルの速度で走行していたと仮定すると,2.097秒で2
3.3メートル走行する。自衛隊・警察の主張する衝突時刻には控訴人車は衝
突地点から21.5メートルの地点にいる (45-23.3=21.5)。
浅香らが主張する事故の態様では本件事故は発生しない。
5 自衛隊車の助手席に乗っていた片岡は,別件訴訟における陳述書(甲26)
で,「右前方約30~40mぐらいの位置に同カーブに近づいてくるバイクを
確認しました。対向車線は,道路に端に沿って約1mぐらい草刈りしてあった
ので見通しは良好でした。」と陳述している。片岡は「カーブの内側にある草
地越しに」ではなく「右方向の視界を遮る草木の左側に」控訴人車を認めたの
である。小野寺も警察官への指示説明(甲42,甲38)では,小野寺が㋐の
位置で①の位置に控訴人車を認めている。すなわち,「右方向の視界を遮る草
木の左側に」控訴人車を初認したと供述している。
6 控訴人の主張する本件事故の態様を,控訴人作成の事故現場見取図(甲39,
1/2)及び同付属書類(甲39,2/2)に記載した。
小野寺は,同現場見取図(甲39)の◎の地点で,(ロ)の地点を走行して
くる控訴人車を「右方向の視界を遮る草木の左側に」に約31mの距離で初認
した。本件事故現場付近の◎の地点で右カーブに高速で進入する大型トラック
の運転手は全神経を進路方向に集中している。◎若しくは,①の地点で(イ)
の方向を見る余裕もなく,もし見たとしたらわき見運転である。もともと(イ)
方向は草木に遮られ見通せない。
7 事故現場見取図の「カーブの内側にある,道路外の草地」には,道路脇に沿
って,1乃至2メートルに破線が描かれている。甲38では草地が道路側から
「草地」と「草」とに区別されている。小野寺が最初に控訴人車を認めた地点
12/70頁
㋐とその時控訴人車は①の地点を結ぶ線は甲38の「草地」の上を通る。
8 事故当時の現場付近の草地の状況は,控訴人が平成11年10月29日に撮
影した本件事故現場道路写真(甲66)のとおりである。
9 自衛隊撮影の事故現場写真(甲67)の写真甲67①は当時の草地の茅(か
や)の状況がわかる。自衛隊車が写っている写真(甲67⑤⑥)では茅の生育
状態が他の写真と異なる。実況見分調書添付の写真(甲32)も自衛隊車が写
っている写真では茅の生育状態が他の写真と異なる(甲32⑤⑦)。甲37②
も茅の生育状態が他の写真と異なる。
10 本件のように,相互の見通しの良くない場所での現場写真には,相手を初認
した位置からの見通しの状況を示す写真が存在しなければならない。現に事故
再現写真(甲27)の第1番目に「バイクを確認した位置」のような草地の状
況を明らかにする写真が示されている。(事故再現見分時には現場の状況が変
更されていることは,訴状(18頁)第3,第2点12(5)で主張した。)
本件事故直後,現場には交通事故処理のプロである保安警務隊がいて,撮影
を担当する隊員が現場写真を撮影したことは証拠から明らかである。信用する
に足る写真で,草木の状態がわかるのは,自衛隊写真(甲67①・⑧)及び実
況見分調書添付の写真(甲32③)の3枚だけで草地の上の相互の見通しの状
況がわかる写真は一枚も提出されていない。
浅香らは,事故直後撮影された重要な現場写真を隠蔽している。
11 原判決は,「小野寺は,時速約40キロメートルの速度で本件道路の自衛隊
車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前の右カーブに入ったとこ
ろ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑草越しに,控訴人車が控
訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危険を感じなかったので,
そのまま進行した。ところが,控訴人車と本件大型トラックが15,6メート
ルにまで接近したところで,控訴人車がコントロールを失って左右に大きく振
れ,小野寺の視点からは,控訴人車が自衛隊車の方に突っ込んで来るように見
13/70頁
えた。小野寺はとっさにブレーキを踏もうとしたが,ブレーキを踏むより早く,
控訴人車が本件大型トラックの運転席の横を通り過ぎて,本件炊事車に衝突な
いし接触した。」と認定し,「本件事故は控訴人の過失に基づく結果であり,
小野寺には何ら過失のないことが認められる。」と判示した。
12 原判決は,原審が採用した証拠(甲17)別件行政訴訟の判決正本の認定を
丸写しした判断であるが,浅香らが主張する事故の態様を採用したこの場合,
上記4で指摘したとおり,本件事故は発生しない。
13 原判決は,浅香らが作成した虚偽の図画(甲23)及び虚偽の事実主張に欺
かれ,本件事故の態様についての事実認定を誤っている。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ
原判決の,第3争点に対する判断の1,(1)本件事故発生の状況オ(判決書
16頁)の下記の部分の不服。「小野寺は,時速約40キロメートルの速度で
本件道路の自衛隊車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前の右カ
ーブに入ったところ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑草越し
に,控訴人車が控訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危険を感
じなかったので,そのまま進行した。ところが,控訴人車と本件大型トラック
が15,6メートルにまで接近したところで,控訴人車がコントロールを失っ
て左右に大きく振れ,小野寺の視点からは,控訴人車が自衛隊車の方に突っ込
んで来るように見えた。小野寺はとっさにブレーキを踏もうとしたが,ブレー
キを踏むより早く,控訴人車が本件大型トラックの運転席の横を通り過ぎて,
本件炊事車に衝突ないし接触した。」
1 小野寺は,実況見分調書(甲42の19頁)では,「小野寺が最初に控訴人
10/70頁
車を認めた地点は㋐,その時控訴人車は①,危険を感じ・ブレーキをかけた地
点は㋑,その時の控訴人車は②,衝突した地点はⓍ,その時小野寺は㋒,控訴
人車はⓍが右前部,小野寺が停止した地点は㋓,控訴人が転倒した地点は③,
控訴人のバイクが転倒した地点は④」と各地点を指示説明した。各地点関係位
置は交通事故現場見取図第3図(甲38)記載のとおりである。
2 小野寺は,別件訴訟の証言調書速記録(甲22)では,「カーブに入る手前
は,右側が杉林になって見通しは悪いが,①の地点で見通しがよくなる(甲2
2の6頁)。小野寺が①の地点で,イ地点の控訴人車(バイク)を発見した。
①の時点では異常は認められなかったので,バイクに注意しながら進行した。
小野寺が②の地点,バイクがロの地点で危険を感じた。②の時点でバイクとの
距離は10から15m以内であった。危険を感じてから一瞬のことで,ブレー
キをかける間もなく,ハンドルを切る時間もなく,バイクは横を通り過ぎ,小
野寺が④の地点で,トレーラがⓍの地点で衝突した。(甲22の7~8頁)」
と証言した。各地点は事故現場見取図(甲23)記載のとおりである。
3 実況見分調書添付の交通事故現場見取図(甲38)と自衛隊の事故現場見取
図(甲23)を,自衛隊車の最終停止位置(甲38の㋓と甲23の⑤)を重ね,
擁壁になっている西側の道路の外側線を重ね合わせると,衝突位置付近の道路
及び控訴人車の転倒位置は大体一致する(甲40・本図では,甲6を甲23,
甲7を甲38と読み替える。)
この控訴人作成の事故現場見取図(甲40)で検証(事実を確認・証明す
る)すると,小野寺が控訴人車を初認した位置方向距離などについての,警察
官への指示説明(甲42,甲38)の場合はバイクを「右方向の視界を遮る草
木の左側に」に初認しているが,別件訴訟の小野寺の証言(甲22,甲23)
の場合はバイクを「草地越しに」に初認していていることになり,全く異なる。
4 事故現場見取図(甲23)で,小野寺が,①地点で草地越しに(イ)地点の
控訴人車を認めてから衝突するまで,自衛隊車は23.3メートル走行してい
11/70頁
る。自衛隊車が毎時40キロメートの速度で走行していたと仮定すると,初認
後2.097秒で衝突が発生している,控訴人車が小野寺に初認された地点
(イ)から,衝突地点Ⓧ)までの走行距離は45メートルである。控訴人車が
毎時40キロメートルの速度で走行していたと仮定すると,2.097秒で2
3.3メートル走行する。自衛隊・警察の主張する衝突時刻には控訴人車は衝
突地点から21.5メートルの地点にいる (45-23.3=21.5)。
浅香らが主張する事故の態様では本件事故は発生しない。
5 自衛隊車の助手席に乗っていた片岡は,別件訴訟における陳述書(甲26)
で,「右前方約30~40mぐらいの位置に同カーブに近づいてくるバイクを
確認しました。対向車線は,道路に端に沿って約1mぐらい草刈りしてあった
ので見通しは良好でした。」と陳述している。片岡は「カーブの内側にある草
地越しに」ではなく「右方向の視界を遮る草木の左側に」控訴人車を認めたの
である。小野寺も警察官への指示説明(甲42,甲38)では,小野寺が㋐の
位置で①の位置に控訴人車を認めている。すなわち,「右方向の視界を遮る草
木の左側に」控訴人車を初認したと供述している。
6 控訴人の主張する本件事故の態様を,控訴人作成の事故現場見取図(甲39,
1/2)及び同付属書類(甲39,2/2)に記載した。
小野寺は,同現場見取図(甲39)の◎の地点で,(ロ)の地点を走行して
くる控訴人車を「右方向の視界を遮る草木の左側に」に約31mの距離で初認
した。本件事故現場付近の◎の地点で右カーブに高速で進入する大型トラック
の運転手は全神経を進路方向に集中している。◎若しくは,①の地点で(イ)
の方向を見る余裕もなく,もし見たとしたらわき見運転である。もともと(イ)
方向は草木に遮られ見通せない。
7 事故現場見取図の「カーブの内側にある,道路外の草地」には,道路脇に沿
って,1乃至2メートルに破線が描かれている。甲38では草地が道路側から
「草地」と「草」とに区別されている。小野寺が最初に控訴人車を認めた地点
12/70頁
㋐とその時控訴人車は①の地点を結ぶ線は甲38の「草地」の上を通る。
8 事故当時の現場付近の草地の状況は,控訴人が平成11年10月29日に撮
影した本件事故現場道路写真(甲66)のとおりである。
9 自衛隊撮影の事故現場写真(甲67)の写真甲67①は当時の草地の茅(か
や)の状況がわかる。自衛隊車が写っている写真(甲67⑤⑥)では茅の生育
状態が他の写真と異なる。実況見分調書添付の写真(甲32)も自衛隊車が写
っている写真では茅の生育状態が他の写真と異なる(甲32⑤⑦)。甲37②
も茅の生育状態が他の写真と異なる。
10 本件のように,相互の見通しの良くない場所での現場写真には,相手を初認
した位置からの見通しの状況を示す写真が存在しなければならない。現に事故
再現写真(甲27)の第1番目に「バイクを確認した位置」のような草地の状
況を明らかにする写真が示されている。(事故再現見分時には現場の状況が変
更されていることは,訴状(18頁)第3,第2点12(5)で主張した。)
本件事故直後,現場には交通事故処理のプロである保安警務隊がいて,撮影
を担当する隊員が現場写真を撮影したことは証拠から明らかである。信用する
に足る写真で,草木の状態がわかるのは,自衛隊写真(甲67①・⑧)及び実
況見分調書添付の写真(甲32③)の3枚だけで草地の上の相互の見通しの状
況がわかる写真は一枚も提出されていない。
浅香らは,事故直後撮影された重要な現場写真を隠蔽している。
11 原判決は,「小野寺は,時速約40キロメートルの速度で本件道路の自衛隊
車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前の右カーブに入ったとこ
ろ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑草越しに,控訴人車が控
訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危険を感じなかったので,
そのまま進行した。ところが,控訴人車と本件大型トラックが15,6メート
ルにまで接近したところで,控訴人車がコントロールを失って左右に大きく振
れ,小野寺の視点からは,控訴人車が自衛隊車の方に突っ込んで来るように見
13/70頁
えた。小野寺はとっさにブレーキを踏もうとしたが,ブレーキを踏むより早く,
控訴人車が本件大型トラックの運転席の横を通り過ぎて,本件炊事車に衝突な
いし接触した。」と認定し,「本件事故は控訴人の過失に基づく結果であり,
小野寺には何ら過失のないことが認められる。」と判示した。
12 原判決は,原審が採用した証拠(甲17)別件行政訴訟の判決正本の認定を
丸写しした判断であるが,浅香らが主張する事故の態様を採用したこの場合,
上記4で指摘したとおり,本件事故は発生しない。
13 原判決は,浅香らが作成した虚偽の図画(甲23)及び虚偽の事実主張に欺
かれ,本件事故の態様についての事実認定を誤っている。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ