第17点 本件事故による自衛隊車の制動痕
1 控訴人は,準備書面(6)第5「本件事故による自衛隊車の制動痕」で,浅
香らが証拠資料(自衛隊車の制動痕)を隠蔽・破棄したと主張・立証したが,
原判決は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を示していない。
原判決には控訴人が主張した,判決に影響を及ぼすべき重要な事項について
の判断の遺脱がある。
2 小野寺は,自衛隊車(炊事車を牽引している大型トラック)を運転し,時速
40キロメートルで,本件道路のヘヤピンカーブに進入し,対向車線に控訴人
58/70頁
車を30.1mの位置(㋐~①)で初認した直後,19.3mに接近したとこ
ろ(㋑~②)で相手がセンターラインを割るかもしれないとして,瞬間的に急
ブレーキをかけ,20.2mの距離(㋑~㋓)で停止したのである。小野寺が
危険を感じ・ブレーキをかけた地点は㋑,衝突した時の自衛隊車は㋒,自衛隊
車が停止した地点は㋓である。㋑~㋒の距離は10.9メートル,㋒~㋓の距
離は9.3メートルである(実況見分調書・甲42の23頁・甲38)。
3 小野寺は,別件訴訟で,「危険を感じるまでアクセルを踏んでいたことにな
りますね。(はい。)危険を感じた後,ブレーキペダルに足を乗せただけでブ
レーキは踏まなかった,さっきの話でね。(はい。)危険を感じてから実際に
ブレーキを踏んでブレーキが効き始めるまで何秒ぐらいかかりましたか。(先
ほど言いましたように,アクセルから足を離しブレーキペダルに足を乗せた瞬
間には横を通り過ぎておりましたので,ブレーキを踏む時間はありません。衝
突音がしてからブレーキを踏みましたので。)」と証言している(甲22の2
1頁)。
4 小野寺は,衝突音がしてから(衝突してから),ブレーキを踏み込み,㋒~
㋓の距離9.3メートルで停止した。制動距離は9.3メートルである。
5 アスファルト道路における制動距離と制動時間は,交通事故損害賠償必携
(新日本法規)の資料5-40(甲83)に記載されている。時速40キロメ
ートルの場合,実制動距離は8.82メートルで,ブレーキを踏み込んでブレ
ーキが効き始めるまでの時間を0.1秒とすると空走距離は1.11メートル
であるから,制動距離は9.93メートルである。
6 一般に,時速40キロで急ブレーキをかけた時の停止距離は22メートルに
なるといわれている(甲84)。小野寺が,㋑の地点で危険を感じて急ブレー
キが必要と判断した時点から自衛隊車が停止した地点を㋓までの距離は,20.
2mである。(甲42の23頁)。
7 以上から,小野寺が急ブレーキをかけたことは疑いがない。急ブレーキをか
59/70頁
けると制動痕が印象される。浅香らは写真に写ってもいない控訴人車のタイヤ
痕の存在を主張しながら,自衛隊車の制動痕の存在を一切認めない。自衛隊車
の印象した制動痕が存在しなかったという浅香らの主張は事実及び経験則に反
し信用できない。
8 スリップ痕(制動痕)は衝突前,衝突後の自動車の運動を示す記録であるか
ら,事故再現にとって数少ない物的証拠のひとつである。とくに衝突における
最初の接触点を見出す場合には,スリップ痕が唯一の決め手となることが多い。
9 浅香らは,重要な証拠を隠滅している。
第18点 炊事車の衝突痕
1 控訴人は,準備書面(3)4頁 第2,3で,炊事車の衝突痕1~3の写真
(甲67⑫⑬⑭)は事故当日に撮影されていないと主張・立証したが,原判決
は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を示していない。
2 甲67⑬の本件トレーラのタイヤホイール及びホイールナットには傷一つな
く,塗装もはげていない。
3 控訴人車前輪右ホークに傷がある。(甲67⑩,甲69⑨⑩)。小野寺は別
件訴訟で,この傷について見分した警官は「この傷は,トレーラのホイールナ
ットがありますけれども,そのホイールナットのところと接触したときの傷だ
と。」と言ったと証言している(甲22の26頁)。
4 写真(甲67⑫⑬⑭)の説明で,炊事車の衝突痕(赤で囲った部分)として
タイヤの側面に赤でしるしがつけられている。 タイヤは天然,合成ゴムで作ら
れているから,控訴人車に上記の傷はつかない。
5 よって,甲67⑬のトレーラは事故当日に撮影されていない。故に甲67の
写真で自衛隊車が写っている写真は事故当日に撮影されていない。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ
1 控訴人は,準備書面(6)第5「本件事故による自衛隊車の制動痕」で,浅
香らが証拠資料(自衛隊車の制動痕)を隠蔽・破棄したと主張・立証したが,
原判決は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を示していない。
原判決には控訴人が主張した,判決に影響を及ぼすべき重要な事項について
の判断の遺脱がある。
2 小野寺は,自衛隊車(炊事車を牽引している大型トラック)を運転し,時速
40キロメートルで,本件道路のヘヤピンカーブに進入し,対向車線に控訴人
58/70頁
車を30.1mの位置(㋐~①)で初認した直後,19.3mに接近したとこ
ろ(㋑~②)で相手がセンターラインを割るかもしれないとして,瞬間的に急
ブレーキをかけ,20.2mの距離(㋑~㋓)で停止したのである。小野寺が
危険を感じ・ブレーキをかけた地点は㋑,衝突した時の自衛隊車は㋒,自衛隊
車が停止した地点は㋓である。㋑~㋒の距離は10.9メートル,㋒~㋓の距
離は9.3メートルである(実況見分調書・甲42の23頁・甲38)。
3 小野寺は,別件訴訟で,「危険を感じるまでアクセルを踏んでいたことにな
りますね。(はい。)危険を感じた後,ブレーキペダルに足を乗せただけでブ
レーキは踏まなかった,さっきの話でね。(はい。)危険を感じてから実際に
ブレーキを踏んでブレーキが効き始めるまで何秒ぐらいかかりましたか。(先
ほど言いましたように,アクセルから足を離しブレーキペダルに足を乗せた瞬
間には横を通り過ぎておりましたので,ブレーキを踏む時間はありません。衝
突音がしてからブレーキを踏みましたので。)」と証言している(甲22の2
1頁)。
4 小野寺は,衝突音がしてから(衝突してから),ブレーキを踏み込み,㋒~
㋓の距離9.3メートルで停止した。制動距離は9.3メートルである。
5 アスファルト道路における制動距離と制動時間は,交通事故損害賠償必携
(新日本法規)の資料5-40(甲83)に記載されている。時速40キロメ
ートルの場合,実制動距離は8.82メートルで,ブレーキを踏み込んでブレ
ーキが効き始めるまでの時間を0.1秒とすると空走距離は1.11メートル
であるから,制動距離は9.93メートルである。
6 一般に,時速40キロで急ブレーキをかけた時の停止距離は22メートルに
なるといわれている(甲84)。小野寺が,㋑の地点で危険を感じて急ブレー
キが必要と判断した時点から自衛隊車が停止した地点を㋓までの距離は,20.
2mである。(甲42の23頁)。
7 以上から,小野寺が急ブレーキをかけたことは疑いがない。急ブレーキをか
59/70頁
けると制動痕が印象される。浅香らは写真に写ってもいない控訴人車のタイヤ
痕の存在を主張しながら,自衛隊車の制動痕の存在を一切認めない。自衛隊車
の印象した制動痕が存在しなかったという浅香らの主張は事実及び経験則に反
し信用できない。
8 スリップ痕(制動痕)は衝突前,衝突後の自動車の運動を示す記録であるか
ら,事故再現にとって数少ない物的証拠のひとつである。とくに衝突における
最初の接触点を見出す場合には,スリップ痕が唯一の決め手となることが多い。
9 浅香らは,重要な証拠を隠滅している。
第18点 炊事車の衝突痕
1 控訴人は,準備書面(3)4頁 第2,3で,炊事車の衝突痕1~3の写真
(甲67⑫⑬⑭)は事故当日に撮影されていないと主張・立証したが,原判決
は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を示していない。
2 甲67⑬の本件トレーラのタイヤホイール及びホイールナットには傷一つな
く,塗装もはげていない。
3 控訴人車前輪右ホークに傷がある。(甲67⑩,甲69⑨⑩)。小野寺は別
件訴訟で,この傷について見分した警官は「この傷は,トレーラのホイールナ
ットがありますけれども,そのホイールナットのところと接触したときの傷だ
と。」と言ったと証言している(甲22の26頁)。
4 写真(甲67⑫⑬⑭)の説明で,炊事車の衝突痕(赤で囲った部分)として
タイヤの側面に赤でしるしがつけられている。 タイヤは天然,合成ゴムで作ら
れているから,控訴人車に上記の傷はつかない。
5 よって,甲67⑬のトレーラは事故当日に撮影されていない。故に甲67の
写真で自衛隊車が写っている写真は事故当日に撮影されていない。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ