民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

64-2:上告理由第1~4点

2008-05-29 12:31:12 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
上告理由第1点:原判決に対する不服・理由不備
 原判決は,当事者が主張していない事実を争点として判断している。
 原判決は,第3当裁判所の判断,2,争点(1),(別件訴訟で浅香らが証拠資料を
隠蔽破棄したか)(1)で,「控訴人(上告人)は別件訴訟で浅香らが,別件訴訟に提
出された堀部警部補作成の実況見分調書について,偽造,変造ないし隠蔽等の不法
行為をした旨主張しているので,以下この点について検討するに」として,判断,
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認定,判示している。
 上告人は,堀部警部補作成の調書(甲42)について,浅香らが,偽造,変造な
いし隠蔽等の不法行為をした旨主張したことはない。上告人は,同調書(甲42)
が,堀部警部補が作成した調書であること自体は争っていない。
 上告人は,浅香らが事故当日撮影したとして提出した書証(甲67)に事故当日
撮影していない写真があると主張し,浅香らには「応訴及び訴訟追行が相当なもの
か(違法なものでないか)検討吟味する義務がある」と主張した。
 原審で当事者が主張・整理した本件の争点は,(1)浅香らの違法行為の有無 (2)
察の実況見分への浅香らの関与の有無 (3)本件実況見分調書(甲42)作成の真
正,等下記上告理由で述べるとおりである。

上告理由第2点:理由不備
 原判決が上告人車のタイヤ痕の位置を認定した過程が不明確で判明し難い。
 原判決は,証拠(甲42,調査嘱託に対する平成19年3月26日付けの玖珠警
署長の回答)及び弁論の全趣旨から,「本件道路面には,中央線から自衛隊車進行
車線側に約40センチメートル入ったところに上告人車のタイヤ痕1条が印象され,
更にそれに連なるように,中央線から上告人車進行車線上に入ったところに上告人
車の転倒によって生じた擦過痕2条がそれぞれ印象されていた」と判示し,上告人
を加害者とした堀部警部補の判断を認めた。
 通常実況見分では,2個以上の固定物からの距離を測定し衝突地点等の位置を確
定する。本件実況見分調書(甲42)添付の事故現場見取図第3図では基点として
KP34.9の位置と,同基点から衝突位置Ⓧ間の距離6.5メートルが記載され
ているのみである。同調書添付の写真⑫~⑯(甲32⑫~⑯)には基点となる固定
物は写っていない。実況見分調書で最も重要な衝突位置が確定されていない。

上告理由第3点 証拠説明の欠缺・判断遺脱
 判決の結論に影響を及ぼす証拠(調査嘱託に対する平成19年8月17日付けの
玖珠警察署長の回答)が弁論に顕出されていない。
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 平成19年2月15日第1回口頭弁論期日に原審裁判長は「平成11年10月に
なされた実況見分の調書の作成日付が平成13年9月になっているが,被上告人は
その理由を説明し,証拠があれば提出されたい」と釈明した。
 被上告人は平成19年3月15日調査嘱託申し立てを行った。調査事項は(1)玖珠
警察署が作成した本件実況見分調書(甲42)の実況見分実施日と同調書作成年月
日が相違している理由,(2)同調書は何に基づいて作成されたのか。作成に際し用い
た資料(写真等)その他がある場合,その資料等の作成日等,である。平成19年
3月26日付け玖珠警察署長の調査結果は,「(1)当該実況見分調書の作成日時が実
施日時と異なった理由は,本件を一旦保留処分としていたところ,上告人から民事
提訴がなされ,送致する必要性を生じたため,検事の指揮を受けた上で,事故当日
の現場メモを基に実況見分調書を作成したという経緯による。(2)当該実況見分調書
は,平成11年10月7日の事故発生当日に堀部警部補らが実施した第2当事者の
小野寺立会いによる実況見分で,同警部補が自ら記録した現場メモに基づいて作成
したものである。従って,同現場メモの作成日は,事故当日の平成11年10月7
日となる。」である。
 被上告人は,さらに,平成19年8月14日付けで調査嘱託の申し立てを行った
(以下「2回目の調査嘱託」という)。原審は平成19年8月15日決定で申出を採
用した。2回目の調査嘱託に対する平成19年8月17日付けの玖珠警察署長の回
答は「調査(回答)事項 (1)・実況見分調書に添付されている写真の撮影年月日,
撮影場所及び撮影者(平成11年10月7日,事故現場にて撮影 撮影者 堀部金
丸警部補),(2)・(1)の写真のネガの現存の有無(有),(3)・平成11年10月7日
の事故発生時に,玖珠警察署交通課所属の堀部警部補が作成したとされている現場
メモの現存の有無(無),(4)・(1)の写真及び(3)の現場メモのほかに,同調書作成の
基となった資料等の有無(無)」である。 
 上告人が平成20年3月11日に複写した証人等目録(被上告人申出分)には,
被上告人が平成19年3月15日に申立てた調査嘱託について,備考欄に19.3.
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16嘱託,19.3.28到着,第2回弁論顕出との記載があるが,2回目の調査嘱
託についての記載がない。すなわち,口頭弁論に顕出されていない。
 堀部警部補は同調書が真正に作成されたとの供述をしていないこと,原審が同警
部補の証人申請を却下したことに加えて,堀部警部補が作成したメモが現存せず,
本件実況見分調書作成の資料等も存在しない事実は,同調書(見取図)の正確性・
真実性の担保がなく,その判断のいかんにより判決の結論に影響を及ぼす。

上告理由第4点 証拠説明の欠缺・理由不備
 原判決は,本件実況見分が平成11年10月7日に実施されたと認定しながら,
本件実況見分調書(甲42)以外に警察官が作成した実況見分調書があることを認
めるに足りる証拠はないと認定した。適法な証拠調べの結果を無視した違法がある。
 犯罪捜査規範104条は,「実況見分は,関係者の立会を得て行い,その結果を実
況見分調書に正確に記載しておかなければならない。」と規定する。
 間ノ瀬巡査部長は,上告人に「小野寺立会いの見分と調書は取りました」と述べ
ている(甲115・甲5)。小野寺は,「事故当日,警察に出頭して調書をとられた」
と述べている(甲75)。別件行政訴訟の被告準備書面(1)に,「間ノ瀬巡査部長は,
原告に対して平成11年10月8日に作成した交通切符様式の実況見分調書に基づ
いて本件交通事故の発生状況を説明するとともに,その発生原因は,原告が中央線
を越えたことによって発生したと認められると説明した。すると原告は驚いた様子
で,「相手の車がセンターラインを越えて来たと聞いていたので,今の説明は納得が
いかない。」と,自身が本件交通事故の被害者である旨を申し立てた。」との記載が
ある( 甲86)。
 原判決は,「堀部警部補らは,上告人立会いの実況見分を実施しようとしたが,上
告人が応じなかったので,本件事故発生から約4ヶ月が経過した平成12年2月1
0日,本件事故捜査を一時保留処分にした。」と判示した。
 立会人の指示説明が実況見分調書に記載されるのは、第一義的には実況見分の動
機・手段を明らかにする必要からであって、その内容の真実性を立証することを直
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接の目的として記載されるものではない。本件調書では小野寺が立会人とされ,指
示説明をしており,実況見分の対象は特定されているから,上告人立会いの実況見
分は必ずしも必要ではない。上告人立会いの実況見分を実施しなかったことは間ノ
瀬巡査部長が事故当日実施した実況見分の調書を作成しなかった理由とならない。

64-1 上告理由 事案の概要・目次

2008-05-28 05:40:01 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
平成20年(ネオ)第238号 
(原審 東京高等裁判所第21民事部 平成18年(ネ)第5934号)
                          平成20年5月20日
                          上告人 出羽 やるか
最高裁判所 御中
           上 告 理 由 書
 上告人  (1審原告,2審控訴人)  出羽やるか
 被上告人 (1審被告,2審被控訴人) 国                
 上記当事者間の東京高等裁判所平成18年(ネ)第5934号国家賠償控訴事件
について,平成20年3月25日に言渡された判決は不服であるから,平成20年
4月1日に上告したがその理由は下記の通りである。
 なお,略称等は原審の例によるものとし,原判決が引用した第1審判決(横浜地
方裁判所平成17年(ワ)第3710号)をあわせて原判決という。
 (訴訟物の価額)
 上告状に,訴訟物の価額を 金10万円とした趣旨は,金3000万円の一部と
して10万円の限度で裁判を求める趣旨である。
 (上告の原因)民事訴訟法312条2項6号
 (事案の概要)
 平成11年10月7日1055時師団規模で演習場に移動中の自衛隊車両と一人
でツーリング中の上告人車が付近に人家のない山中の県道上で接触し,上告人が受
傷し熊本赤十字病院に入院した。平成11年10月26日に同病院から外出許可が
出たので,上告人は間ノ瀬巡査部長に同日電話で予約し,同月29日玖珠警察署を
訪ね説明を聞き,診断書を提出し被害を届け出た。間ノ瀬巡査部長は加害者は本件
道路に残された痕跡等から本件道路の中央線を越えた上告人であると判断している
が,上告人が中央線を越えたことを認めれば,処分をしないで綴りこみ,警察だけ
で終わる許可を係長から得ていると述べた(甲5)。上告人は翌30日に横浜の自宅
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へ帰るのでその後家族と相談して返事すると述べた。上告人は間ノ瀬巡査部長の説
明に納得できなかったので,玖珠警察署の「呼出の葉書」を受け取った平成11年
11月15日に電話で出頭出来ないと申立,同巡査部長が「出頭しなければ強制捜
査を含めた然るべき措置を検討せざるを得ない」と告げたので「然るべき措置」を
とるよう申立てた( 甲86)。上告人はその後も治療を続けたが平成13年4月24
日に症状が固定した(甲7)。上告人は平成13年7月23日国に対して国家賠償法
第1条及び自動車損害賠償保障法第3条に基づき別件訴訟を提起した。浅香らは平
成13年11月5日付け準備書面(甲21)を提出し無責を主張した。
 本件は,別件訴訟に敗訴した上告人が,同訴訟において浅香らが証拠資料を隠ぺ
い又は破棄して提出せず,証拠資料の捏造又は改ざんを行ない,又は不法に作成さ
れた証拠を弁論に使用した違法があると主張して,被上告人に対し,国家賠償法第
1条に基づき,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の支払いを求めた事案
である。
 原審では,本件実況見分調書(甲42)は適正に作成されたか,浅香らが同調書
の作成に関与できる立場にあったか等,浅香らの違法行為の有無について争われた。
 原判決は,同調書(甲42)は真正に作成されており,同調書は上告人が証拠と
して提出したものであるから,その記載上に問題点があるとしても,浅香らの上記
違法はないとして上告人の控訴を棄却した。
 上告人は,「小野寺は第8師団司令部付隊(甲58)の管理小隊の車両数10両中
8号車を運転していた。事故直後同付隊の保安警務隊が交通統制及び現場保存を開
始した(甲97)。事故40分後熊本県警小国署員2名現場に到着,その後長者原
駐在所の早水巡査長が現場に到着,1150時から小国署員からの引継ぎ・実況見分
を行った。友田陸曹長は事故現場写真(甲67)を撮影した。本件事故と事故処理
の責任者である第8師団司令部付隊隊長の近松3佐は事故直後から現場に臨場し
た」と主張し,事故直後作成された警察の実況見分調書及び自衛隊が作成する報告
書(甲28・甲31)の存在を主張したが,原審は理由なしにその存在を否定した。
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 目   次
上告理由(事案の概要)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1点 当事者が主張していない事実を争点として判断・・・・・・・・・・・3
第2点 上告人車のタイヤ痕の位置を認定した過程が不明確・・・・・・・・・4
第3点 2回目の調査嘱託に対する警察署長の回答が弁論に顕出されていない・4
第4点 間ノ瀬巡査部長作成の交通切符様式の実況見分調書・・・・・・・・・6
第5点 警察現場写真(甲32)及び自衛隊現場写真(甲67)・・・・・・・7
 第1 警察写真(甲32-10)のバイクは上告人車ではない・・・・・・・・・7
 第2 KP34.9の警戒標識(甲67-1)の設置角度・・・・・・・・・・9
 第3 徐行の道路標示(甲32-7)の存在・・・・・・・・・・・・・・・10
 第4 炊事車の衝突痕(甲67-13)(甲32-9)・・・・・・・・・・・・11
 第5 自衛隊車及び上告人車の停止位置(甲32-16)(甲67-8)・・・・13
 第6 草地に移動された自衛隊車(甲67-5-6-12-13-14)(甲32-5~-9) ・ 14
 第7 KP34.9の里程標(甲67-1甲67-8,甲33・甲32-11)・16
第6点 本件事故処理の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
第7点 上告人車に積まれた上告人の荷物(甲67-1-8)・・・・・・・・・23
第8点 自衛隊の実況見分調書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
第9点 違法性についての浅香らの認識可能性・・・・・・・・・・・・・・26
    不当訴訟における不法行為責任の要件事実(甲95・法律文献)・・26
(終わりに)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

63:上告状・上告提起通知書

2008-05-24 02:09:48 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
          上   告   状

                        平成20年4月1日
最高裁判所 御中
                           上告人 出羽やるか

〒241-0005神奈川県横浜市00区0000丁目00番00号(送達場所)
     上告人(控訴人) 出羽やるか
     電話 045-954-4974 FAX 045-954-4974

〒100-8977 東京都千代田区霞ヶ関一丁目1番1号
     被上告人(被控訴人) 国 代表者 法務大臣 鳩山邦夫

     訴訟物の価額   金 10万円
     貼用印紙額   金 2000円

 上記当事者間の東京高等裁判所平成18年(ネ)第5934号国家賠償請求控訴
事件につき,同裁判所が平成20年3月25日言い渡した判決は不服であるから上告
を提起する。
   控訴審判決の表示
 1 本件控訴を棄却する。
 2 控訴費用は控訴人の負担とする。
   上告の趣旨
 原判決を破棄し,更に相当の裁判を求める。
  上告の理由
 追って,理由書を提出する。
                   1/1
-------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------
        上告提起事件番号 平成20年(ネオ)第238号
        --------------------------------------
                         平成20年4月3日
上告人 出羽やるか 様
  東京高等裁判所第21民事部
       裁判所書記官     矢口真知 公印

         上告提起通知書
            上告人  出羽やるか
            被上告人 国
 当裁判所平成18年(ネ)第5934号国家賠償請求控訴事件
 の判決に対して上告の提起がありましたので,民事訴訟規則
 189条1項により通知します。
 -----------------------------------------------------------
    
 


62:控訴審判決

2008-05-21 20:54:29 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
平成20年3月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官矢口真知
平成18年(ネ)第5934号 国家賠償請求控訴事件
(原審・横浜地方裁判所平成17年(ワ)第3710号)
口頭弁論終結の日 平成20年2月19日
       判        決
  横浜市00区000目00番00号
     控訴人(1審原告)       出羽やるか

     被訴人(1審被告)       国
     同代表者法務大臣       鳩山邦夫
     同指定代理人          藤原典子
     同                 山田正壽
     同                 大迫輝己
     同                 小田 昇
     同                 梅木俊洋
         主          文
 1 本件控訴を棄却する。
 2 控訴費用は控訴人の負担とする。
         事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は,控訴人に対し,3000万円及びこれに対する平成17年
  11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 本件は,控訴人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,控訴
  人所有の普通自動二輪車(以下「控訴人車」という。)を運転中,大分県
                -1-
  玖珠郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先
  付近路上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故
  を起こし,これにより受傷したよして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横
  浜地方裁判所平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提
  起したが敗訴し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指
  定代理人浅香幹子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破
  棄して提出せず,証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成され
  た証拠を弁論に使用した違法があると主張して,被控訴人に対し,国家賠
  償法第1粂に基づき,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計
  3000万円及びこれに対する上記不法行為後である平成17年11月9
  日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
  た事案である。
   原判決は,被控訴人の指定代理人らの証拠資料の隠ぺい又は破棄等を認
  めるに足りる証拠はないとして,控訴人の請求を棄却した。そこで,控訴
  人は,本件控訴を申し立てた。
 2 争いのない事実等,争点及び当事者の主張は,原判決の「事実及び理
  由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2に記載するとおりであるから,
  これを引用する。
第3 当裁判所の判断
 1 本件事故及びその後の捜査,訴訟の経緯について
   原判決の14頁の14行目から19頁9行目までの説示を引用する。た
   だし,「(2)(本件事故の実況見分の状況及び同調書の作成の経緯)(原判
   決16頁13行目から25行目まで)」を次のとおり改める。
  「証拠(甲42, 調査嘱託に対する平成19年3月26日付けの玖珠警
   察署長の回答)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
    玖珠警察署の堀部金丸警部補(以下「堀部警部補」という。)及び間ノ
                 -2-
   瀬久太巡査部長(以下「間ノ瀬巡査部長」という。)は,本件事故の届出
   を受けて,平成11年10月7日午後0時25分ころ,本件事故現場に臨
   場した。既に控訴人が救急搬送されていたので,堀部警部補らは間ノ瀬巡
   査部長を見分官とし,堀部警部補らを補助者として,国(陸上自衛隊)所
   有の野外炊事1号(以下「本件炊事車」という。)牽引の大型貨物自動車
   (以下「本件大型トラック」という。)を運転していた自衛隊員小野寺秀
   和(以下「小野寺」という。)の立会いの下,同日午後O時34分から午
   後1時20分までの間,実況見分を実施した。堀部警部補らは,本件道路
   に残された痕跡等から,第一当事者(加害者)は,本件道路の中央線を越
   えた控訴人であり,第二当事者(被害者)は,小野寺であると判断した。
   堀部警部補らは,その後控訴人の立会いの下で本件事故の実況見分を実
   施しようとしたが,控訴人は,退院後には玖珠警察署に出頭して実況見分
   に立ち会う旨約していたにもかかわらず,退院後神奈川県の自宅に帰って
   しまった。堀部警部補らは,控訴人に対し,郵便で玖珠警察署に出頭する
   よう要請したが,控訴人は,これに応じなかった。この間,自衛隊等が,
   本件大型トラック等に実質的な損害がないことなどから,控訴人の処罰を
   望まない旨申し立てたので,堀部警部補らは,本件事故発生から約4か月
   が経過した平成12年2月10日, 後日紛議が生じた場合には,捜査を再
   開して送致することを条件に本件事故捜査を一時保留処分とすることと
   した。
    堀部警部補らは,平成13年8月,控訴人が国に対して別件訴訟を提起
   したことが判明したので,上記保留処分を解除し,送致準備を進めること
   としたが,控訴人は,高齢と経済的な問題を理由に依然,玖珠警察署ヘ
   の出頭に応じることができない旨主張し続けた。堀部警部補らが日田区検
   察庁の上原検事に指揮を受けたところ,上原検事は,控訴人立会いの実況
   見分は必ずしも必要ではない旨指示した。そこで,堀部警部補は,本件事
               一3-
   故当時に作成していた現場メモに基づいて,同年9月27日付けで実況見
   分調書(甲4 2, 以下「本件実況見分調書」という。)を作成し,神奈川
   県まで赴き,控訴人の取調べを実施し,上記実況見分調書を示しながら被
   疑者供述調書を作成し,同年11月20日,控訴人を被疑者として日田区
   検察庁に送致した。そして,本件実況見分調書には,平成11年10月7
   日の上記実況見分の際に堀部警部補が撮影したとされる本件事故現場写真
   (以下「警察現場写真」という。)16枚が添付されている。」
 2 争点(1)(別件訴訟で浅香らが証拠資料を隠ぺい・破棄したか)について
  (1)控訴人は,別件訴訟で浅香らが別件訴訟に提出された堀部警部補作
   成の実況見分調書について,偽造,変造ないし隠蔽等の不法行為をした
  旨主張しているので,以下この点について検討するに,前記の事実によ
   れば,堀部警部補作成の平成13年9月27日付け実況見分調書(甲第
   42号証)は,別件訴訟において,浅香らが提出したものではなく,別
   件訴訟における控訴人の申立てに基づいて,別件訴訟の受訴裁判所が送
   付嘱託をしたのに基づいて送付されたものを控訴人が証拠として提出し
   たものである。また,前記の事実及び証拠(甲第60号証)によれば,
   控訴人による上記実況見分調書の送付嘱託に係る申立ては,別件訴訟提
   起後の平成13年9月3日付けでされているが,その時点では,上記実
   況見分調書が作成されておらず,堀部警部補は,控訴人が別件訴訟を提
   起したことを契機として,事故当時の現場での実況見分の結果の記録に
   基づいて上記実況見分調書を平成13年9月27日付けで作成したこと
   が認められる。
    控訴人は,上記実況見分調書は内容的に事故現場の実態を正確に反映
   しておらず,虚偽・変造によるものである旨主張しているが,その主張
   は,自己の主観的な認識と異なる細部について縷々偽造・変造をいうも
   のであって,本件全証拠によっても,控訴人が指摘する部分について,
               -4-
   いずれも偽造・変造がされたと認めるに足りる客観的な証拠は存しない。
   もっとも,上記実況見分調書(甲第42号証)には,本件事故直後に事
   故現場において実況見分に立ち会った小野寺の指示説明として,「私が
   最初に相手を認めた地点は⑦,その時の相手は①,危険を感じ,ブレー
   キをかけた地点は⑦,その時の相手は②,衝突した地点は②」との記載
   があることが認められるところ,他方証拠(甲第22号証)によれば,
   小野寺は,別件訴訟の第1審の証人尋問において,「衝突音がしてから
   プレー=キをかけた」旨証言していることが認められるのであって,仮に
   小野寺の上記証言が正しいとすれば,上記実況見分調書の上記小野寺の
   指示説明は,本件事故の最も重要な衝突前後の状況について事実と異な
   る内容の指示説明をしたこととなるし,仮に,小野寺が,上記指示説明
   においても,上記証言と同内容の説明をしたというのであれば,上記実
   況見分調書の記載内容が,重要部分について現実の指示説明と異なる記
   載であることとなり,また,仮に,上記指示説明が当時の上記小野寺の
   指示説明を正確に記載したものであるとすれば,上記小野寺の証言の正
   確性自体が問題となるところである。以上のように,上記実況見分調書
   における上記小野寺の指示説明部分の内容は,本件事故の事実経過にお
   いて最も重要な部分において上記小野寺の証言と異なっており,そのよ
   うな上記証言と異なる指示説明が上記実況見分調書に記載されるように
   なった経緯については,なお上記証言の信用性との関係において究明さ
   れるべき点が存したことは否めないところであるが,上記実況見分調書
   にこのような記載上の問題点かおるからといって,これをもって,直ち
   には別件訴訟の指定代理人が上記実況見分調書を隠蔽したとか,偽造・
   変造したということにはなり得ないし,他にこの点の控訴人の主張を認
   めるに足りる証拠はない。なお,控訴人は.上記実況見分調書に本件大
   型トラックの運行記録計の記録紙が添付されていないことについて纏々
               一5―
   非難しているところ,確かに,証拠(甲第42号証)によれば,控訴人
   の指摘するような運行記録計の記録紙が上記実況見分調書に示付されて
   いないことが認められるが,このことから,直ちには浅香らにおいて,
   控訴人の主張するような証拠資料の隠蔽等の不法行為をしたことを認め
   ることはできないし,他にこの点の控訴人の主張を認めるに足りる証拠
   はない。なお,控訴人は,上記実況見分調書以外に警察官が作成した実
   況見分調書があることを前提として浅香らがこれを隠蔽したかのような
   主張をもするかのようであるが,控訴人の上記主張事実を認めるに足り
   る証拠はない。
  (2) 控訴人は,別件訴訟において自衛隊車の車両使用請求書・車両運行指
   令書の送付嘱託の申立てをしたのに,受訴裁判所において採用されずに,
   結局国から提出されなかったことが浅香らの不法行為に当たるかのよう
   な主張をしているが,控訴人の上記主張は,その内容に照らして失当で
   あることは明らかである。また,控訴人は,別件訴訟において,国側か
   ら本件事故の事故現場見取図が提出されなかったことが浅香らの不法行
   為に当たる旨主張するかのようであるが,この点の控訴人の主張も主張
   自体失当といわざるを得ないところ,甲第21号証及び第23号証によ
   れば,浅香らは,別件訴訟において本件事故の事故現場見取図を受訴裁
   判所に提出していることが認められるから,控訴人の上記主張は,前提
   を欠く失当なものというほかない。
 (3) 控訴人は,別件訴訟において自ら行った当事者照会に対して,国側が
   自己の考えに沿った回答をしなかったことについて,浅香らの不法行為
   が成立するかのような主張をしているが,控訴人の主張事実を前提とし
   ても,この点について浅香らの不法行為が成立しないことは明らかであ
   る。
  (4) 控訴人は,浅香らが自衛隊作成の実況見分調書等を隠蔽した旨繍々主
                 -6-
   張するが,本件全証拠によっても,控訴人が隠蔽の対象として主張する
   ような自衛隊作成の実況見分調書が存在したことを認めることができず,
   したがって,控訴大の上記主張は,前提を欠く。控訴人は,その他の自             
   衛隊関係文書についても,それらが存在することを前提として浅香らが
   隠蔽した旨主張するが,控訴人が主張する文書の特定がされておらず,
   それが存在することを認めるに足りないことから,控訴人の上記主張は
   前提を欠く。
  (5) 控訴人は,別件訴訟において本件事故現場写真として提出されたもの
  が,ねつ造・改ざんされたものであり,これを提出した浅香らの不法行
   為が成立する旨主張するかのようであるが,本件全証拠によっても,控
   訴人の主張する本件事故現場写真がねつ造・改ざんされたと認めること
   はできないから,控訴人の主張は前提を欠く。
 3 以上によれば,控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきである。
第4 結論
  よって,原判決は結論において,相当であり,本件控訴は理由がないから
  これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
    東京高等裁判所第21民事部
          裁判長裁判官 濱野惺
             裁判官 高世三郎
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             裁判官 西口元
               -8-