第11点 現場写真のねつ造・改ざん
原判決の,第3争点に対する判断,4 争点(3) 本件事故当日の現場写真
がねつ造・改ざんされたものかについて(判決書22~24頁)の下記の部分
の不服。「控訴人は,本件事故当日の現場写真がねつ造・改ざんされたもので
あると主張するので検討する。(1) 控訴人は,種々の事情を挙げて,警察現場
写真及び自衛隊現場写真が,本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改
ざんされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出する。しかし,控訴人
が挙げる種々の事情の大半は,写真画面上の単なるコントラストの問題や,自
衛官の位置等について,控訴人個人の主観に基づいてこれを不自然であると論
難しているにすぎないものであって,ねつ造・改ざんがあったことを疑わせる
ような客観的な根拠となるものではないと言わざるを得ない。なお,個別に検
43/70頁
討を加えるべきものは,後記(2)のとおりである。これに対し,前記1(2)(3)
の認定事実によれば,本件実況見分が本件事故直後に行われたこと及び警察現
場写真及び自衛隊現場写真が,同実況見分の際に撮影されたものであることが
明らかである。さらに,別件訴訟における小野寺の証言(甲22)や,玖珠警
察署署員と控訴人の会話内容(甲5)を子細に検討しても,本件実況見分が事
故当日行われたことを疑わせる点はないし,本件炊事車の擦過痕や本件事故現
場道路の擦過痕が後日ねつ造されたような事情をうかがうこともできない。
(2)控訴人の主張のうち,以下のアないしエについて個別に検討を加える。
ア KP34.9の警戒標識(甲67①)控訴人は,上記警戒標識が本件事故
当日に事故現場には存在しなかったと主張するが,控訴人が平成11年10月
29日(本件事故の約3週間後)に撮影した現場写真(甲66,以下「控訴人
現場写真」という。)には,上記警戒標識が写っていることが認められる。こ
のことからすれば,当該警戒標識は本件事故当日から既に存在していたものと
いうべきである。イ 控訴人車に積まれた控訴人の荷物(甲67①⑧)控訴人
は,本件事故当時,控訴人車に荷物は積まれていなかったと主張するが,前記
1(2)アの認定事実に反するもので採用できない。ウ 控訴人車車線上のひし
形マーク(甲67②)控訴人は,自衛隊現場写真に写っている9個のひし形マ
ークのうち,3個は本件事故当日に存在していなかった旨主張するが,当該写
真と,控訴人現場写真(甲66①ないし③)とを比較検討すると,本件事故当
日,事故現場に9個のひし形マークが存在していたものと認められる。 エ
KP34.9の里程標(甲32⑨,67①⑧)当該里程標については,控訴人
が平成11年10月29日に本件事故現場を撮影した写真(甲66)には,こ
れが写っていないことが認められる。しかし,右事実から直ちに同日以前の,
本件事故当日に同里程標が存在しなかったとまではいうことができない。また,
警察現場写真及び自衛隊現場写真を全体として検討しても,同里程標の部分が
後に挿入された画像であると認められるような特別な事情は,これを認めるこ
44/70頁
とができない。(3) したがって,警察現場写真及び自衛隊現場写真のいずれに
ついても,ねつ造・改ざんがあったとは認められないから,この点をもって浅
香らの違法をいう控訴人の主張は理由がない。5 以上のとおりであるから,
別件訴訟における浅香らの違法行為をいう控訴人の主張はいずれも理由がなく,
控訴人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。」
1 事故当時の道路状況(熊本方面から別府方面)の写真(甲67①),および,
控訴人自動二輪車転倒位置(白い部分)(甲67⑧)について,国民の視点・
国民の感覚からして不自然な点(経験則から,通常人である控訴人が合理的に
疑いをもつ点)は,下記のとおりである。
2 通常人は,道路状況の写真を写すときは,特段の事情がある場合を除き,人
物が写らないように道路およびその付属物を写す。同写真の,①画面左の早水
巡査長,小国署員,近松3佐及び自衛官の一団と,②画面右の(油を売ってい
る)自衛官の一団は,本件道路状況写真には余分である。通常の場合仮に現場
にいたとしても写真に写らないように移動してもらう。
現場付近には,捜査の引継ぎを行うのに適した草地がある(甲66)のに,
なぜ,交通規制もせずに,本件道路の最も危険な場所であるヘヤピンカーブの
頂点で引継ぎを行っているのか。同写真の提出者の作為を感じる。
3 画面左の一団には,警務隊の腕章をつけた自衛隊幹部(警務隊長近松3佐)
がおり,この一団の自衛隊員は直立不動の姿勢で立っている。それに比べて,
右の一団は左の一団の存在を意識している様子は全くなく,リラックスして
(だらけて)いる。
4 画面右の一団は,写真(甲67⑧)の画面左上にも写っている。同写真の自
衛官の一団の部分を拡大した写真(甲70)をみると,自衛官の一人は草地に
座り込んでいる。軍隊に対する国民の視点からすると大きな違和感がある。
5 写真(甲70)に写っている最も左側に立っている自衛官の像の背中の部分
は直線になっていて,だれが見ても不自然である。同像が,切り抜き・貼り付
45/70頁
けされ,同写真が加工されていることは明らかである。
6 写真(甲67①)の画面左の一団の人物と,その背景の部分のコントラスト
が過度に調整され(若しくは黒くペイントされ),背景の草木の部分が真っ黒
になっている。にもかかわらず,一団の人物の後ろにKP34.9の警戒標識
が,不自然に,はっきりと写っている。同写真の提出者の同警戒標識に対する
こだわりと作為を感じる。
7 写真(甲79)は,写真(甲67①)とその一部を拡大した写真である。
草地の上に約6名のヘルメット,作業服の自衛官の一団が写っているが,左
端の自衛官は他の自衛官に比べて,体格・鉄帽の大きさからみて明らかに小学
生程度の大きさしかない。
8 同写真(甲79)で,①画面左の早水巡査長の左足が車道にはみ出している。
又,②画面右の自衛官の一人は車道に背を向けて完全に車道内に立っている。
通常人の感覚では,上記自衛官の位置などについて,大きな違和感がある。
9 控訴人は,写真(甲67①)に写っている,人物,控訴人車及び里程標は同
道路写真撮影時には存在していないと主張しているのである。画面左の一団の
大きさ,里程標の地上高,控訴人車のおおきさが,画面右のガードレールの大
きさに比べて,遠近法を考慮にいれても,事実と異なる。
10 原判決の判決理由中の説明は,事実認定の判断過程がまったく納得できず,
常識上とうていありうべからざる推理に基づいた事実認定である。
11 原審で控訴人は同写真の原本の提出を申立てたが,同写真の存在を認めるに
足りないとして,却下された。下記控訴理由(第16点文書提出命令)で主張
するとおり,同写真は存在するから,控訴審で原本を提出させ新たな証拠調べ
が行われることを求める。
第12点 KP34.9の警戒標識(甲67①)
原判決の判示「控訴人は,上記警戒標識が本件事故当日に事故現場には存在
しなかったと主張するが,控訴人が平成11年10月29日(本件事故の約3
46/70頁
週間後)に撮影した現場写真(甲66,以下「控訴人現場写真」という。)に
は,上記警戒標識が写っていることが認められる。このことからすれば,当該
警戒標識は本件事故当日から既に存在していたものというべきである。」
1 控訴人は,上記警戒標識が本件事故当日に事故現場には存在しなかったと主
張したことはない。控訴人の論旨はこれら連続する3個の警戒標識は,南行き
の車ために設置された線形誘導標であるが,警察写真⑩(甲32⑩,甲35③
④),及び控訴人現場写真(甲66③④)では,KP34.9の警戒標識は南
行きの車から視認できないのはおかしいというのである。
2 自衛隊写真①(甲67①,甲79,甲35⑦),写真⑪警察写真⑪(甲32⑪,甲
33,甲34①・甲35①⑤)及び控訴人写真(甲66⑥⑦)では,北行きの
車から真正面に見える。北行きの車からは,甲35⑩⑪⑫⑬⑭のように視認さ
れなければおかしい(ならない)。
3 自衛隊写真②(甲67②)に比べて,平成11年10月29日撮影された控
訴人写真66ではこれら線形誘導標の標示板の塗装は真新しい。KP34.9
の警戒標識は本件事故当時擁壁上にあって草木に隠されていたか,若しくは,
標識板を単一の柱に取り付け路端に設置されていたが標識板が脱落していたの
で本件事故後再設置した。この時,標示板の設置角度を誤り南行きの車から見
えない角度で設置したのである。自衛隊写真①に線形誘導標の標示板が写って
いるが,写真を加工して,設置角度を誤った標示板を挿入している。
4 原判決は,控訴人の主張の趣旨を曲解し,判断を誤っている。
5 ちなみに,控訴人が熊本赤十字病院から外出許可が出た平成11年10月2
6日朝,間ノ瀬巡査部長に電話し玖珠警察署で話を聞きたい旨を伝えた時,同
部長は,10月26,27,28日の3日間は所用があるとのことで,10月
29日午後1時に出頭することになった経緯がある。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ
原判決の,第3争点に対する判断,4 争点(3) 本件事故当日の現場写真
がねつ造・改ざんされたものかについて(判決書22~24頁)の下記の部分
の不服。「控訴人は,本件事故当日の現場写真がねつ造・改ざんされたもので
あると主張するので検討する。(1) 控訴人は,種々の事情を挙げて,警察現場
写真及び自衛隊現場写真が,本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改
ざんされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出する。しかし,控訴人
が挙げる種々の事情の大半は,写真画面上の単なるコントラストの問題や,自
衛官の位置等について,控訴人個人の主観に基づいてこれを不自然であると論
難しているにすぎないものであって,ねつ造・改ざんがあったことを疑わせる
ような客観的な根拠となるものではないと言わざるを得ない。なお,個別に検
43/70頁
討を加えるべきものは,後記(2)のとおりである。これに対し,前記1(2)(3)
の認定事実によれば,本件実況見分が本件事故直後に行われたこと及び警察現
場写真及び自衛隊現場写真が,同実況見分の際に撮影されたものであることが
明らかである。さらに,別件訴訟における小野寺の証言(甲22)や,玖珠警
察署署員と控訴人の会話内容(甲5)を子細に検討しても,本件実況見分が事
故当日行われたことを疑わせる点はないし,本件炊事車の擦過痕や本件事故現
場道路の擦過痕が後日ねつ造されたような事情をうかがうこともできない。
(2)控訴人の主張のうち,以下のアないしエについて個別に検討を加える。
ア KP34.9の警戒標識(甲67①)控訴人は,上記警戒標識が本件事故
当日に事故現場には存在しなかったと主張するが,控訴人が平成11年10月
29日(本件事故の約3週間後)に撮影した現場写真(甲66,以下「控訴人
現場写真」という。)には,上記警戒標識が写っていることが認められる。こ
のことからすれば,当該警戒標識は本件事故当日から既に存在していたものと
いうべきである。イ 控訴人車に積まれた控訴人の荷物(甲67①⑧)控訴人
は,本件事故当時,控訴人車に荷物は積まれていなかったと主張するが,前記
1(2)アの認定事実に反するもので採用できない。ウ 控訴人車車線上のひし
形マーク(甲67②)控訴人は,自衛隊現場写真に写っている9個のひし形マ
ークのうち,3個は本件事故当日に存在していなかった旨主張するが,当該写
真と,控訴人現場写真(甲66①ないし③)とを比較検討すると,本件事故当
日,事故現場に9個のひし形マークが存在していたものと認められる。 エ
KP34.9の里程標(甲32⑨,67①⑧)当該里程標については,控訴人
が平成11年10月29日に本件事故現場を撮影した写真(甲66)には,こ
れが写っていないことが認められる。しかし,右事実から直ちに同日以前の,
本件事故当日に同里程標が存在しなかったとまではいうことができない。また,
警察現場写真及び自衛隊現場写真を全体として検討しても,同里程標の部分が
後に挿入された画像であると認められるような特別な事情は,これを認めるこ
44/70頁
とができない。(3) したがって,警察現場写真及び自衛隊現場写真のいずれに
ついても,ねつ造・改ざんがあったとは認められないから,この点をもって浅
香らの違法をいう控訴人の主張は理由がない。5 以上のとおりであるから,
別件訴訟における浅香らの違法行為をいう控訴人の主張はいずれも理由がなく,
控訴人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。」
1 事故当時の道路状況(熊本方面から別府方面)の写真(甲67①),および,
控訴人自動二輪車転倒位置(白い部分)(甲67⑧)について,国民の視点・
国民の感覚からして不自然な点(経験則から,通常人である控訴人が合理的に
疑いをもつ点)は,下記のとおりである。
2 通常人は,道路状況の写真を写すときは,特段の事情がある場合を除き,人
物が写らないように道路およびその付属物を写す。同写真の,①画面左の早水
巡査長,小国署員,近松3佐及び自衛官の一団と,②画面右の(油を売ってい
る)自衛官の一団は,本件道路状況写真には余分である。通常の場合仮に現場
にいたとしても写真に写らないように移動してもらう。
現場付近には,捜査の引継ぎを行うのに適した草地がある(甲66)のに,
なぜ,交通規制もせずに,本件道路の最も危険な場所であるヘヤピンカーブの
頂点で引継ぎを行っているのか。同写真の提出者の作為を感じる。
3 画面左の一団には,警務隊の腕章をつけた自衛隊幹部(警務隊長近松3佐)
がおり,この一団の自衛隊員は直立不動の姿勢で立っている。それに比べて,
右の一団は左の一団の存在を意識している様子は全くなく,リラックスして
(だらけて)いる。
4 画面右の一団は,写真(甲67⑧)の画面左上にも写っている。同写真の自
衛官の一団の部分を拡大した写真(甲70)をみると,自衛官の一人は草地に
座り込んでいる。軍隊に対する国民の視点からすると大きな違和感がある。
5 写真(甲70)に写っている最も左側に立っている自衛官の像の背中の部分
は直線になっていて,だれが見ても不自然である。同像が,切り抜き・貼り付
45/70頁
けされ,同写真が加工されていることは明らかである。
6 写真(甲67①)の画面左の一団の人物と,その背景の部分のコントラスト
が過度に調整され(若しくは黒くペイントされ),背景の草木の部分が真っ黒
になっている。にもかかわらず,一団の人物の後ろにKP34.9の警戒標識
が,不自然に,はっきりと写っている。同写真の提出者の同警戒標識に対する
こだわりと作為を感じる。
7 写真(甲79)は,写真(甲67①)とその一部を拡大した写真である。
草地の上に約6名のヘルメット,作業服の自衛官の一団が写っているが,左
端の自衛官は他の自衛官に比べて,体格・鉄帽の大きさからみて明らかに小学
生程度の大きさしかない。
8 同写真(甲79)で,①画面左の早水巡査長の左足が車道にはみ出している。
又,②画面右の自衛官の一人は車道に背を向けて完全に車道内に立っている。
通常人の感覚では,上記自衛官の位置などについて,大きな違和感がある。
9 控訴人は,写真(甲67①)に写っている,人物,控訴人車及び里程標は同
道路写真撮影時には存在していないと主張しているのである。画面左の一団の
大きさ,里程標の地上高,控訴人車のおおきさが,画面右のガードレールの大
きさに比べて,遠近法を考慮にいれても,事実と異なる。
10 原判決の判決理由中の説明は,事実認定の判断過程がまったく納得できず,
常識上とうていありうべからざる推理に基づいた事実認定である。
11 原審で控訴人は同写真の原本の提出を申立てたが,同写真の存在を認めるに
足りないとして,却下された。下記控訴理由(第16点文書提出命令)で主張
するとおり,同写真は存在するから,控訴審で原本を提出させ新たな証拠調べ
が行われることを求める。
第12点 KP34.9の警戒標識(甲67①)
原判決の判示「控訴人は,上記警戒標識が本件事故当日に事故現場には存在
しなかったと主張するが,控訴人が平成11年10月29日(本件事故の約3
46/70頁
週間後)に撮影した現場写真(甲66,以下「控訴人現場写真」という。)に
は,上記警戒標識が写っていることが認められる。このことからすれば,当該
警戒標識は本件事故当日から既に存在していたものというべきである。」
1 控訴人は,上記警戒標識が本件事故当日に事故現場には存在しなかったと主
張したことはない。控訴人の論旨はこれら連続する3個の警戒標識は,南行き
の車ために設置された線形誘導標であるが,警察写真⑩(甲32⑩,甲35③
④),及び控訴人現場写真(甲66③④)では,KP34.9の警戒標識は南
行きの車から視認できないのはおかしいというのである。
2 自衛隊写真①(甲67①,甲79,甲35⑦),写真⑪警察写真⑪(甲32⑪,甲
33,甲34①・甲35①⑤)及び控訴人写真(甲66⑥⑦)では,北行きの
車から真正面に見える。北行きの車からは,甲35⑩⑪⑫⑬⑭のように視認さ
れなければおかしい(ならない)。
3 自衛隊写真②(甲67②)に比べて,平成11年10月29日撮影された控
訴人写真66ではこれら線形誘導標の標示板の塗装は真新しい。KP34.9
の警戒標識は本件事故当時擁壁上にあって草木に隠されていたか,若しくは,
標識板を単一の柱に取り付け路端に設置されていたが標識板が脱落していたの
で本件事故後再設置した。この時,標示板の設置角度を誤り南行きの車から見
えない角度で設置したのである。自衛隊写真①に線形誘導標の標示板が写って
いるが,写真を加工して,設置角度を誤った標示板を挿入している。
4 原判決は,控訴人の主張の趣旨を曲解し,判断を誤っている。
5 ちなみに,控訴人が熊本赤十字病院から外出許可が出た平成11年10月2
6日朝,間ノ瀬巡査部長に電話し玖珠警察署で話を聞きたい旨を伝えた時,同
部長は,10月26,27,28日の3日間は所用があるとのことで,10月
29日午後1時に出頭することになった経緯がある。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ