民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

31:控訴理由 第15~16点

2007-01-10 02:44:05 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第15点 KP34.9の里程標(甲32⑪67①
   原判決の判示「当該里程標については,控訴人が平成11年10月29日に
  本件事故現場を撮影した写真(甲66)には,これが写っていないことが認め
  られる。しかし,右事実から直ちに同日以前の,本件事故当日に同里程標が存
  在しなかったとまではいうことができない。また,警察現場写真及び自衛隊現
  場写真を全体として検討しても,同里程標の部分が後に挿入された画像である
  と認められるような特別な事情は,これを認めることができない。」
 1 控訴人の主張(1) ・事故当日,事故現場見取図(甲23)のKP34.9の
  位置に里程標は存在しない。
   控訴人が平成11年10月29日に撮影した写真(甲66)には,里程標は
  写っていない。写真(甲66)は控訴人が玖珠警察署からの帰途,道路の南側
  の草地の東端に駐車し,その位置から西へ歩き,カーブの頂点付近で引き返し,
  本件事故現場を撮影した,同一の機会に撮影した一連の写真である。写真は普
  通の写真店でネガフィルムからプリントしてあるから「加工」はされてない。
  里程標は自分では動かない。里程標が写ってない理由は写真にはないものは写
  らないからである。被控訴人は写真(甲66)の成立を争っていない。
 2 控訴人の主張(2) ・警察及び自衛隊が撮影したKP34.9の里程標の写真
  と控訴人が平成13年10月30日に撮影した写真に写っている同里程標とは,
  地上高及び設置されている位置が異なる。
                 51/70頁
   別件行政訴訟で,担当裁判官の適切な釈明により,神奈川県公安委員会は,
  平成17年1月18日付けで,乙4号証として実況見分調書に添付された写真
  ⑪の拡大写真(甲33)を提出した。
   甲34①は,甲33の拡大写真である。甲34②は,控訴人が平成13年1
  0月30日に撮影した写真を拡大し,甲34①の画面と同じになるようトリミ
  ングした写真である。基点となるものとして,(1)ガードレール上の2個の視
  線誘導標,(2)その延長上にある擁壁上の(警ら車の後窓を通して見える)警
  戒標識,(3)間ノ瀬巡査部長の後ろにある警戒標識がある。
   ガードレールの袖の視線誘導標を基点として甲34①と②を重ね合わせ(透
  かして)見ると,(2)の警戒標識の高さは一致するが,甲34②の里程標の標
  示板は自衛官の肩付近の高さに位置する(甲80)。甲34①の標示板は自衛
  官の臀部に写っている(甲35①・②)から,甲34①の標示板の地上高は明
  らかに甲34②の標示板より低い。
   本件道路は,日本道路公団の「別府阿蘇道路」として,昭和39年10月,
  水分峠~一の宮間の有料道路として完成した。平成6年6月に大分・熊本県道
  別府一の宮線となり無料化された。その名残として里程標が設置されている。
  大分県「道の相談室」によると,里程標の立替えが平成12年6月頃から平成
  13年度に行なわれた(甲81)。立替えられた後の里程標の形状・寸法は甲8
  1に記載の図面及び写真のとおりである。地上高は1500mm程度で,標示
  板の寸法は,縦140mm,横350mmである。
   路側用ガードレールの高さは800mm前後であるから,ガードレールと比
  較しても,実況見分調書に添付された写真⑪(甲32⑪・33・35①・35
  ②)の里程標の地上高は,1500mmより明らかに低い。
 3 控訴人の主張(3) ・事故当時,本件道路の里程標は,キロメートル標(ポス
  ト)と100メートル標では形状寸法が異なっていた。KP34.9の里程標
  は100メートル標で,事故現場見取図(甲23)のKP34.9の位置の地
                 52/70頁
  点より45メートル前後別府よりにあった。警察,自衛隊の写真には,キロメ
  ートル標と同じ形状寸法の100メートル標が写っている。
   間ノ瀬巡査部長は,「現場を見てください,さっき紙をあげたでしょう,形
  でいったらですね,この紙よりも若干小さいぐらいの標板が道路の左側につい
  ているのです,水分峠から,キロメートルの地点ですよと書いてある標板なん
  ですよ,それのヘヤピンカーブの丁度その衝突地点のすぐそば,倒れられたす
  ぐ傍に34.9と書かれたあれがある」と述べている(甲5の15頁)。「さ
  っきあげた紙」は,交通事故担当者告知表(手書き書き込み部分 作成者 控
  訴人)である(甲82)。同告知表の寸法は,縦64mm,横89mmである。
  「34.9とかかれた標板の大きさ」は「縦64mm,横89mmより少し小
  さめである」との間ノ瀬巡査部長の認識,説明を疑うべき事情は存在しない。
   立替えられた里程標の標示板の寸法は,縦140mm,横350mmである
  から,本件事故当時存在した100メートル標の寸法と明らかに異なる。
 4 原判決は,上記1~3項の控訴人の主張を無視した,判断遺脱・理由の不備
  がある。
第16点 文書提出命令
   原判決の,第3争点に対する判断の6,控訴人の文書提出命令の申立てにつ
  いて(判決書24頁)の下記の部分の不服。「控訴人は,①陸上自衛隊第8師
  団司令部付隊及び陸上自衛隊西部方面総監部を相手方として,i本件事故の発
  生報告書及び事故現場見取図,ii実況見分調書,事故現場及び損害状況写真,
  iv小野寺と助手の片岡高房の供述書,車両運行指令書について文書提出命令
  の申立て(平成17年(モ)第2411号)及び②国を相手方として,i自衛隊現
  場写真の原本及びネガフィルムのべた焼き,ii本件再現見分写真の原本及びネ
  ガフィルムのべた焼きについて文書提出命令の申立て(平成18年(モ)第38
  6号)を,それぞれしている。しかし,いずれの申立てについても,申立てに
  かかる文書の存在を認めるに足りない。よって,控訴人の上記文書提出命令の
                 53/70頁
  各申立ては,いずれも理由がないものとしてこれを却下する。」
第1 本件文書の存在について (平成17年(モ)第2411号)
 1 被控訴人の意見は,「本件申立の文書は本件事故に関しては作成されていな
  いか,すでに廃棄されているため,存在しない。存在しないから文書提出命令
  を発令するための要件を欠いている」というものである。
 2 被控訴人は,基本事件の準備書面で,(1)「 本件事故の捜査担当は警察官で
  あり,警務隊により本件事故に関する捜査資料が作成されるものではない。」,
  (2) 「発生報告書及び実況見分調書等については,規則7条に定めるとおりで
  あり,本件事故については作成されていない。」(3)「本件事故は,賠償責任
  のない事故であることから,方面総監には報告を要しない案件である。」(4)
  「北熊本駐屯地業務隊長は,賠償事故に伴うことに関し,小野寺(国)には過
  失がないと判断したものであり,同隊長が小野寺に過失がないと決定したもの
  ではない。」と主張する。
 3 被控訴人の主張の論旨は明らかでないが,北熊本駐屯地業務隊長が賠償事故
  に伴うことに関し小野寺(国)には過失がないと判断したとの自白に注目する。
 4 論旨を明確にするため,陸上自衛隊損害賠償実施規則(甲28)での「賠償
  事故」の意義について検討する。
   規則第6条は,「隊員が,自己の職務遂行中に他人に損害を与えた場合には,
  当該隊員及び現場指揮官は,事故現場における証拠保全等必要な処置をとると
  ともに,順序を経て速やかに所属の部隊長等の長に報告するものとする。2 
  前項により報告を受けた部隊の長は,直ちに当該駐屯地業務隊等の長に賠償事
  故発生の概要及び処置した事項等について通知するものとする。・・・」と規
  定する。
   規則第7条は,「前条第2項の規定により賠償事故発生の通知を受け,又は
  第5条の規定により処理の移管を受けた駐屯地業務隊等の長は,所要の発生報
  告書及び事故現場見取図を作成し,方面総監に報告する。この場合において,
                 54/70頁
  陸上自衛隊に賠償責任がないものと思料される事故であっても現実に損害が発
  生し,かつ,将来賠償責任の可能性のある事故,又は政治的,社会的に重大な
  影響を及ぼすと認められるについての報告漏れのないように特に留意するもの
  とする。(法定第1号)」と規定する。
   規則第8条は,「賠償に係る事故が発生した場合は,当該賠償事故の調査は,
  原則として事故を担当する駐屯地業務隊等の長が行なうものとする。」と規定
  する。
   規則第11条は,駐屯地業務隊等の長は,・・・損害賠償審議会を設置して,
  次に掲げる事項を審議させ,その意見を徴するものとする。(1) 賠償事故の事
  実 (2) 賠償責任の有無及びその程度並びに損害の種別及び額 (3)  隊員に
  対する求償権の有無 (4) その他必要な事項 ・・・」と規定する。
 5 前項から,規則では,隊員が自己の職務遂行中に他人に損害を与えた場合を
  賠償事故の発生とし,賠償責任の有無に関係なく,順序を経て必要な処置・事
  故の調査報告が行なわれることは明らかである。
 6 本件文書は,規則に従い作成され,保存期間は10年であるから現存する
  (甲31の5)。
 7 よって,本件文書が本件事故に関しては作成されていないとの被控訴人の主
  張は到底信用することができない。
第2 本件申立の必要性 (平成17年(モ)第2411号)
 1 被控訴人は,「本件申立によれば本件各文書により証すべき事実は,本件事
  故の態様とされているところ,基本事件の争点は,浅香らが別件訴訟において
  証拠のねつ造・改ざん等を行なったか否かであるから要証事実との関係で本件
  各文書を証拠としてとり調べる必要はない」と主張する。
 2 基本事件では前記のとおり本件各文書の存否が争われている。文書の所持者
  に提出を命じることで,少なくとも,所持者が提出命令に従うか否か,従えな
  い理由は何か,本件文書の存否など,浅香らの不法行為を証するための要証事
                 55/70頁
  実(要件事実)を推認させる間接事実となる事実が明らかになる。
 3 もし必要なら,本件申立書に,証すべき事実として,予備的に,浅香らが別
  件訴訟において証拠のねつ造・改ざん等を行なったか否かを付け加える。
 4 事件の解明に役立つ資料の提出を国が妨げる理由が控訴人には解らない。被
  控訴人は,「本件事故態様については別件訴訟において審理を尽くした上判示
  されているから,その意味でも本件申立ては必要が認められない」と主張する。
  「別件訴訟において審理を尽くした」との主張は争うが,その点はおくとして,
  確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有するのであって,判決理
  由中の事実判断及び法適用には既判力が生じないことは明らかである。
第3 結語 (平成17年(モ)第2411号)
   控訴人は,別件訴訟において,平成13年9月3日付けで,陸上自衛隊北熊
  本業務隊の所有する本件事故に関する調査資料の提出を申立てたが,裁判所は
  採否の決定を行なわず,同文書は提出されないまま弁論を終結した。
   本件文書は,本件事故後の自衛隊の事故処理,調査報告等の行動の真相解明
  に役立つ唯一の文書であり,同じ文書は現に行政機関の保有する情報の公開に
  関する法律で開示されており,4号文書でもある(甲31)。証拠の偏在を是
  正し,別件訴訟における浅香らの行為の態様等の真実発見とそれに基づく公正
  な審理のために,本件申立てを認容されることを求める。 
第4 文書提出命令の申立に対する意見書(平成18年(モ)第386号)
 1 文書の趣旨:(1) 別件訴訟で,国が,平成13年10月11日に作成し,乙
  第1号証として提出した写真,及びネガフィルムのべたやき(解像度の高いも
  の)(2) 別件訴訟で,国が,平成13年10月11日に作成し,乙第4号証と
  して提出した写真,及びネガフィルムのべたやき(解像度の高いもの)
 2 事情:控訴人は,写しを保有しているが,写真の画質,焼付け,複写不良の
  ため,人物,道路路面,道路わきの草木の状態が不明な写真がある。ネガフィ
  ルムのべたやきは提出されていない。事故直後の自衛隊車の停止位置の写真な
                56/70頁
  ど,真実解明に必要な写真が他に存在したら,提出を求めたい。
 3 被控訴人の意見(平成18年3月20付け意見書(2))
   (1) 本件申立ては,本件申立書(2)「1文書の表示」欄に記載された文書(以
  下「本件各文書」という。) が民事訴訟法220条1号に該当するとして,そ
  の提出を求めるものである(本件申立書(2))。(2) しかしながら,被控訴人は,
  本件各文書を基本事件で引用していない。また,被控訴人は,本件各文書のう
  ち,別件訴訟の乙第1号証及び第4号証の各写真のネガフィルムのべたやきに
  ついては,いずれも作成していない。なお,ネガフィルムについては,既に別
  件訴訟も確定しており,被控訴人において現在保管していない。(3) 以上の次
  第で,本件申立ては理由がないから,速やかに却下されるべきである。なお,
  控訴人が主張している別件訴訟における証拠写真のねつ造・改ざんについては,
  別件訴訟において既に主張され,同訴訟の控訴審判決等で控訴人の主張が排斥
  され,同判決も既に確定していることを念のため申し添える。
第5 原判決の誤り
 1 原判決は,「いずれの申立てについても,申立てにかかる文書の存在を認め
  るに足りない。よって,控訴人の上記文書提出命令の各申立ては,いずれも理
  由がないものとしてこれを却下する。」とした。
 2 被控訴人は, 別件訴訟で国が平成13年10月11日に作成し,乙第1号
  証として提出した写真,及び,別件訴訟で国が平成13年10月11日に作成
  し,乙第4号証として提出した写真については,同文書を基本事件で引用して
  いないから,民事訴訟法220条1号に該当しないから提出しないというので
  あって,その存在を否定していない。
 3 上記から,乙第1号証及乙第4号証の写真は,本件事故について国が作成し,
  別件訴訟で書証として提出し,現在も所持していることを認めているのである。
 4 原判決は,「控訴人が挙げる種々の事情の大半は,写真画面上の単なるコン
  トラストの問題や,自衛官の位置等について,控訴人個人の主観に基づいてこ
                  57/70頁
  れを不自然であると論難しているにすぎないものであって,ねつ造・改ざんが
  あったことを疑わせるような客観的な根拠となるものではないと言わざるを得
  ない。」という(判決書22頁)。
   しかし,事故状況再現写真(甲27)事故発生の状況1バイクを確認した位
  置の写真,および,事故現場の車両状況1A①-イを見通した位置の写真には,
  は明らかにコントラストの問題がある。上記写真の拡大写真(甲63の1/2,
  甲63の2/2)では,肝心の草地の部分が,真っ白になるまで輝度調整がなさ
  れ,草地の状況が分からないのにくわえて,里程標の間近に立っている人物の
  着衣が確認できない。わずかに残された後頭部の映像から警察略帽を着用して
  いること及び自衛隊側の最上級幹部の間近に位置することから,同人物は玖珠
  警察署の幹部であり,相手当事者が否定している玖珠警察署の当該事故状況再
  現見分関与を示す証拠となる。浅香らの証拠写真の加工の一例である。
 5 被控訴人は,ネガフィルムについては,既に別件訴訟も確定しており,被控
  訴人において現在保管していないというが,発生報告書(法定第1号)の保存
  期間は10年間である(甲31の5)から現存すると推断される。
第6 結語 (平成17年(モ)第2411号)及び(平成18年(モ)第386号)
   よって,原判決の,「いずれの申立てについても,申立てにかかる文書の存
  在を認めるに足りない」との認定は明らかに誤っている。
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ