民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

31:控訴理由 第1~3点

2007-01-05 10:01:05 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
横浜地方裁判所平成18年(ワネ)414号
控訴人 出羽やるか
被控訴人 国
           控 訴 理 由 書
                          平成18年12月25日
東京高等裁判所 御中
   控訴人 出羽やるか
上記当事者間の横浜地方裁判所平成17年(ワ)3710号国家賠償請求事件
(平成17年(モ)第2411号 文書提出命令申立事件,同18年(モ)38
6号 文書提出命令申立事件)について,平成18年11月10日に言渡された
判決は不服であるから,平成18年11月17日に控訴したがその理由は下記の
通りである。なお,略称等は原審の例によるものとする。
          理  由  要  旨
 1 本件は,控訴人運転の自動二輪車(控訴人車)と自衛隊員小野寺運転の自衛
 隊車との接触事故により受傷し,国に対し損害賠償請求訴訟(別件訴訟)を提
  起し敗訴した控訴人が,同訴訟で国の指定代理人ら(浅香ら)が,控訴人の権
 利を害する意図のもとに,虚偽の文書・図画を作り,虚偽の事実を主張して裁
 判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,本来ありうべからざる内容
 の判決が確定し控訴人に損害を与えたとして,国に対し,国家賠償法1条に基
 づき,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及びこ
 れに対する不法行為後である平成17年11月9日から支払済みまで民法所定
 の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 2 本件事故は,平成11年10月7日に発生した。控訴人は,事故当日入院し
 た熊本市内の病院を退院する前日,約3ヶ月の加療を要すとる見込みとの内容
  の診断書を玖珠警察署に提出したが,同署は事件を送致せず,約2年間放置し
 た。加害者である小野寺は無責を主張し,自衛隊からは何ら連絡はなかった。
1/70頁
 3 玖珠警察署は,別件訴訟の提起を受けて,平成13年11月20日に控訴人
  を道路交通法70条の違反者として送致した。加害者である小野寺の事件(刑
  法211条)は送致されていない。道路交通法違反関係書類の検察庁での保存
  期間は1年とされているが,業務上過失致死傷等の罪の時効は3年である。
   刑事訴訟法第246条は全件送致主義について規定したもので,捜査の結果
  犯罪の嫌疑が消滅した場合であっても事件を送致しなければならない。
 4 原審で,控訴人は,書証第1~84号証を提出し,請求原因事実を具体的に
  陳述し,浅香らの違法行為について具体的に主張した。
 5 被控訴人は,「別件訴訟判決では,本件事故の態様の認定にかかる証拠資料
  等に関しては,ねつ造,改ざんされたということはできない旨判示され,本件
  事故は控訴人の一方的過失によるものであるとの判示がされている。控訴人の
  主張の趣旨が,本件事故の態様に関して,控訴人に過失がないという意味で主
  張を引用するのであれば,別件訴訟の蒸返しともいうべきものであり,本件事
  故の態様に関する審理は不要である。」と主張して単純否認を繰り返し,控訴
  人の主張に対しなんら抗弁・反論をしなかった。原審においては,事実整理又
  は争点整理が行われず,十分な審理が行われていない。
 6 控訴人は,確定判決は主文に包含するものに限り,既判力を有するのであり,
  判決理由中の判断には既判力は生じないから,被控訴人の主張が失当であるこ
  とは明らかである,と主張した。
 7 原判決判示の事故態様では本件事故は発生しない。小野寺が,草地越しに控
  訴人車を認めてから衝突するまで,自衛隊車は23.3メートル走行している。
  自衛隊車が毎時40キロメートの速度で走行していたと仮定すると,初認後2.
  097秒で衝突が発生している,控訴人車が小野寺に初認された地点から,衝
  突地点までの走行距離は45メートルである。控訴人車が毎時40キロメート
  ルの速度で走行していたと仮定すると,2.097秒で23.3メートル走行
  する。原判決の認定した衝突時刻には控訴人車は衝突地点から21.5メート
                2/70頁
  ルの地点にいる (45-23.3=21.5)。
   原判決は,浅香らが作成した虚偽の図画(甲23)及び虚偽の事実主張に欺
  かれ本件事故の態様についての事実認定を誤った別件訴訟確定判決と同じ誤っ
  た事実認定を行っている。
 8 控訴人は,準備書面(6)第5「本件事故による自衛隊車の制動痕」で,浅
  香らが証拠資料(自衛隊車の制動痕)を隠蔽・破棄したと主張・立証したが,
  原判決は,争点及び主張として判決書に記載せず,判断を遺脱している。
   原判決には,控訴人が原審で主張した,判決に影響を及ぼすべき重要な事項
  について判断の遺脱がある。
 9 浅香らは,事故現場見取図(甲23)で,控訴人車の急ブレーキによるタイ
  ヤ痕の位置を,「現場見取り図においては,同図作成当時,すでに急ブレーキ
  によるタイヤ痕が消失していたが,同写真におけるセンターライン(黄色)の
  中央部分のひび割れ部分から,小野寺及び片岡が確認の上,タイヤ痕の位置を
  特定した(甲21の6頁)。」という。事故再現見分が行なわれたのは,平成
  13年9月18日であるから,事故から712日経過している。「急ブレーキ
  によるタイヤ痕の位置」は,国が主張する衝突位置を決定した唯一の証拠であ
  る。これにより,控訴人の全面的過失による事故とされ,特別刑法の被疑者と
  して送致されたのである。浅香らの主張は不法というか無法な主張である。
   原判決は,供述(捜査記録や法廷供述)という一方当事者に偏した非物的証
  拠のみに基づき,これらの信用性をほとんど吟味もせずに引用して,「本件事
  故現場の自衛隊車進行車線内に控訴人車のタイヤ痕が印象されていた」とまず
  認定した。原判決には,適法な弁論や証拠調べを無視した事実認定及び著しく
  不合理な事実認定などがあり,事実認定の資料とその資料に基づく推論の過程
  が判決理由中で明らかにされていない。
 10 よって,下記にあげた控訴理由第1点ないし第23点について,あらためて
  事実判断と法律判断の上,審理及び裁判をされることを求める。
                 3/70頁
              目      次
    理由要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1点 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第2点 浅香らが提出した証拠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第3点 本件道路のタイヤ痕と擦過痕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第4点 本件事故の態様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
第5点 本件事故処理の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
第6点 玖珠警察署の実況見分調書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
第7点 車両使用請求書・車両運行指令書・・・・・・・・・・・・・・・・34
第8点 当事者照会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
第9点 運行記録計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
第10点 自衛隊の実況見分調書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
第11点 現場写真のねつ造・改ざん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
第12点 KP34.9の警戒標識・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
第13点 控訴人車に積まれた控訴人の荷物・・・・・・・・・・・・・・・・47
第14点 控訴人車車線上のひし形マーク・・・・・・・・・・・・・・・・・49
第15点 KP34.9の里程標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
第16点 文書提出命令・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
第17点 本件事故による自衛隊車の制動痕・・・・・・・・・・・・・・・・58
第18点 炊事車の衝突痕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
第19点 事故直後の自衛隊車と控訴人車の停止位置・・・・・・・・・・・・60
第20点 自衛隊による事故再現見分に対する玖珠警察署の関与・・・・・・ 62
第21点 道路交通法70条に基づく本件事故の処分・・・・・・・・・・・・64
第22点 小野寺の道路交通法70条違反・・・・・・・・・・・・・・・・・67
第23点 控訴人の主張に対する被控訴人の態度・・・・・・・・・・・・・・69
    終わりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
          控  訴  理  由
第1点 事案の概要
   原判決の,第2事案の概要(判決書1~2頁)の下記の部分の不服。「本件
  は,自衛隊車両との接触事故により受傷したとして,国に対し損害賠償請求訴
  訟を提起し敗訴した控訴人が,同訴訟で国の指定代理人らが,証拠資料を隠ぺ
  い破棄し提出せず,証拠資料のねつ造・改ざんを行い,あるいは不法に作成さ
  れた証拠を弁論に使用した違法があると主張して,」
 1 上記部分は,「本件は,控訴人運転の自動二輪車(控訴人車)と自衛隊員小
  野寺運転の自衛隊車との接触事故により受傷し,国に対し損害賠償請求訴訟
  (別件訴訟)を提起し敗訴した控訴人が,同訴訟で国の指定代理人ら(浅香
  ら)が,控訴人の権利を害する意図のもとに,虚偽の文書・図画を作り,虚偽
  の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,本来あ
  りうべからざる内容の判決が確定し控訴人に損害を与えたとして,」が正しい。
第2点 浅香らが提出した証拠
   原判決の,第2,1争いのない事実等(4) (判決書3頁)の下記の部分の不
  服。「浅香らは,別件訴訟で,事故現場見取図,事故現場写真,小野寺の陳述
  書,本件大型トラックの助手であった2等陸曹片岡高房(以下「片岡」とい
  う。)の陳述書及び事故状況再現写真を,証拠として提出した。」
 1 上記部分から,「事故現場見取図」を削除する。
 2 浅香らは,上記事故現場見取図を別件訴訟の準備書面の別紙として提出して
  いるが,書証の申出はしていない。(国の証拠説明書に記載がない。)
第3点 本件道路のタイヤ痕と擦過痕
   原判決の,第3争点に対する判断の1,(1)本件事故発生の状況エ(判決書
  15~16頁)の下記の部分の不服。「本件道路面には,中央線から自衛隊車
  進行車線側に約40センチメートル入ったところに控訴人車のタイヤ痕1条が
  印象され,更にそれに連なるように,中央線から控訴人車進行車線上に入った
                5/70頁
  ところに控訴人車の転倒によって生じた擦過痕2条がそれぞれ印象されてい
  た。」
 1 小野寺は,別件訴訟の証言調書速記録(甲22の9~10頁)で,「現場検
  証した警察官は本件事故の状況について,バイクのタイヤ痕が中央線より約6
  0センチ自衛隊車の車線上にはっきり残っていたので,バイクが中央線をオー
  バーしたのだなといった。急ブレーキによるタイヤ痕の写真(甲67⑦)でい
  うと,白い線で囲まれた部分で60センチオーバーしているというふうに言っ
  ていた。」と証言している。
 2 浅香らは,別件訴訟準備書面(1)(甲21の5~6頁)で,「自衛隊車と控訴
  人車の衝突場所は,自衛隊車の走行車線において,センターラインから約40
  センチメートルの位置に約40センチメートルの急ブレーキによるタイヤ痕が
  認められたことから,自衛隊車走行車線内であると認められる。急ブレーキに
  よるタイヤ痕の写真(甲67⑦)は本件事故発生直後に撮影された。控訴人車
  の右前ブレーキが本件トレーラ(炊事車)の右タイヤフェンダーに接触したた
  め,控訴人車の前輪に急ブレーキがかかり,スリップし,タイヤ痕が残ったも
  のと考えられる。」と主張した。
 3 堀部警部補は,実況見分調書(甲42の19頁)6事故の模様(1)現場の痕跡
  等に,「自衛隊車の進路上中央線付近に,新しいタイヤ痕1条,a,同タイヤ
  痕の反対側車線上つまり控訴人車の進路上,新しい擦過痕2条,c・d,が印
  象されていた。別添交通事故見取図第3図(甲42の23頁・甲38)写真⑫
  ~⑯(甲32⑫~⑯)」と記載している。
   堀部警部補は,「控訴人車の右前ブレーキレバーが曲がり,炊事車の右タイ
  ヤフェンダーには,ブレーキレバーと同じくらいの高さの部分に接触痕が認め
  られたこと,自衛隊車の進路上中央線から約43センチメートル入った所に約
  35センチメートルの真新しいタイヤ痕が印象されていたこと,同地点から控
  訴人車の進路上に向けて擦過痕が印象されていたこと,自衛隊車の進路上には,
                 6/70頁
  上記のタイヤ痕以外には痕跡がなかったこと」が判明したという。
 4 実況見分調書添付の交通事故現場見取図(甲38)と自衛隊の事故現場見取
  図(甲23)を,自衛隊車の最終停止位置(甲38の㋓と甲23の⑤)を重ね,
  擁壁になっている西側の道路の外側線を重ね合わせると,衝突位置付近の道路
  及び控訴人車の転倒位置は大体一致する(甲40・本図では,甲6を甲23,
  甲7を甲38と読み替える。)
   同見取図(甲40)で検証すると,甲23及び甲38の衝突位置Ⓧは中央線
  に平行に約4.6m前後に位置する。
 5 甲23及び甲38の衝突位置は共にタイヤ痕の位置を基準に決定されている
  から,甲38のタイヤ痕の南方約4.6mに甲23のタイヤ痕が存在すること
  になる。4.6メートルの違いは誤差としては大きすぎる。
 6 別件訴訟で国(自衛隊)は,本件事故発生直後に撮影されたとして,40cm
  の長さの「急ブレーキによるタイヤ痕」の写真(甲67⑦)を提出した。自衛
  隊犯罪捜査服務規則第118条は,「警務官等は,現場において撮影をすると
  きは,物の長短,大小などを明らかにするため,巻尺,方眼紙などを添え,で
  きる限り紙片に年月日,場所を記載し,これに立会人又は第三者の署名を求め,
  これとともに撮影するようにしなければならない。」と定められているが全く
  守られてない。同写真(甲67⑦)は,測定基準が写されていないので位置が
  特定できず,道路面だけでしか写されていないので付近の草木の状況もわから
  ず撮影の時期も推定できない。そもそも,真新しく残っていたと国が主張して
  いる,40cmの急ブレーキによるタイヤ痕も写っていないのである。
 7 堀部警部補は,自衛隊車の進路上中央線から約43センチメートル入った所
  に約35センチメートルの真新しいタイヤ痕が印象されていたとして実況見分
  時撮影した写真(甲32⑬)を実況見分調書に添付した。この写真も上記自
  衛隊写真(甲67⑦)と同様の代物でタイヤ痕も写っていない。交通事故処理
  車で出動した交通課係長の警部補が撮影した写真とは到底思えない。テレビド
                 7/70頁
  ラマに出てくる新人の警察官でも,現場写真を撮影する時には,巻尺,方眼紙
  等がなくても,紙幣の一枚,タバコの一箱など添えて撮影する。
 8 擦過痕については,別件訴訟で国はその存在を主張していない。堀部警部補
  は実況見分調書添付の写真(甲32)で,写真⑫⑮⑯は擦過痕を撮影したもの
  と説明しているが,擦過痕は写っておらず,写っていたとしてもその位置は特
  定できない。
 9 タイヤ痕(スリップ痕,制動痕,タイヤマーク)は,さまざまなタイヤのす
  べり現象によって生じ,印象するスリップ痕の模様もそれぞれ異なる。「新し
  いタイヤ痕」の写真には,タイヤ痕の,模様,長さ,方向,幅,濃淡などが写
  されていなければならない。
 10 タイヤ痕が印象された原因について,(1) 前輪の制動痕説・小野寺及び堀部
  警部補説,(2) 衝突時の衝撃による前輪の押し戻し痕説・間ノ瀬巡査部長説,
  (3) 後輪の制動痕説・控訴人説が主張された。本件実況見分の見分官とされる
  間ノ瀬巡査部長と,補助者とされる堀部警部補の説明がまったく異なる。
  (1) 前輪の制動痕説・小野寺及び堀部警部補の説明
    小野寺は,別件訴訟で,写真(甲67⑦)に写されているタイヤ痕につい
   て,バイクの前輪ブレーキレバーとトレーラの右側タイヤ枠が衝突したため,
   急ブレーキがかかり印されたと現場検証した警察官は考えたのだと思うと供
   述している。証言調書速記録(甲22の10頁)。(擦過痕についてのその
   存在の言及すら無い。)
    片岡の別件訴訟での陳述書(甲25)に,「(本件事故後)バイクを移動
   しようとしましたが,ブレーキが壊れていてブレーキがかかったままの状態
   で,前に進ませることができませんでした。」との記載がある。控訴人車の
   前輪ブレーキは油圧式のディスクブレーキで右のレバーで操作するが,レバ
   ーが壊れても,構造的にブレーキがかかったままの状態にはならない。(甲
   69)
                 8/70頁
  (2) 衝突時の衝撃による前輪の押し戻し痕説・間ノ瀬巡査部長の説明
    間ノ瀬巡査部長は,「対向車と衝突した時,衝突した衝撃で,押し戻され
   タイヤが道路に印をつける。急ブレーキもかけていないのにタイヤ痕がある
   のは衝突の衝撃で押し戻されて印されたからである。だから私はタイヤ痕と
   いう,ブレーキ痕とはいわない。」と述べた。(甲5の24頁)
  (3) 後輪の制動痕説・控訴人の説明
    控訴人は,上記(1),(2)では長さ40センチメートルの制動痕は印象され
   ないと主張する。衝突時,控訴人の右足(傷の部分)がバイクのギヤケース
   (クランクケース)に激しく衝突し,写真に写されているケース表面の擦過
   痕を残した(甲69⑬⑭)。このとき控訴人の右足には足の傷の部分を支点
   にする力が生じ,ステップバーを押し曲げ,後輪ブレーキが破損するまで強
   くかかったと推断される(甲69⑤⑥)。ステップバー及び後輪ブレーキペ
   タルに道路面と接触した傷はない。接触したとされる右レバー先の損傷も擦
   過程度で(甲69③),右手指の負傷が軽微であることなどから,前輪ブレ
   ーキはかかっておらず,ブレーキ痕が存在したら後輪ブレーキによるもので
   あり,控訴人車車線上に存在したと主張する。
 11 原判決は,「本件道路面には,中央線から自衛隊車進行車縁側に約40セン
  チメートル入ったところに控訴人車のタイヤ痕1条が印象され,更にそれに連
  なるように,中央線から控訴人車進行車線上に入ったところに控訴人車の転倒
  によって生じた擦過痕2条がそれぞれ印象されていた。」と認定し,「本件事
  故は控訴人の過失に基づく結果であり,小野寺には何ら過失のないことが認め
  られる。」と判示した。
 12 原判決は,原審が採用した証拠(甲17)別件行政訴訟の判決正本の認定を
  丸写しした判断で,上記1ないし10の控訴人の主張についての判断をせず,
  原審での被控訴人の主張立証はないまま,浅香らがその存在を主張していない
  擦過痕までをも認定した。
                   9/70頁
 13 原判決は,「本件事故直後に現場写真を撮影した赤埴らは,本件事故現場の
  自衛隊車進行車線内に控訴人車のタイヤ痕が残っていたことを認識していたも
  のと認められる。」と判示している(判決書22頁8行)。赤埴は,師団の広
  報班の写真撮影をしている(甲22の13頁)から,写真撮影についてはプロ
  である。「はっきり残っていた40センチメートルのタイヤ痕(甲67⑦)」
  を撮影したら,経験則上,タイヤ痕がはっきり写った写真を撮影する。
   プロが撮影したタイヤ痕が写っていない写真の道路面には,特段の事情がな
  い限り,タイヤ痕は印象されていなかったと,通常の人は判断する。
 14 浅香らは,虚偽の文書・図画を作り,虚偽の事実を主張した。
 15 原判決は,本件事案解明の大前提となる,衝突位置に関する事実認定におい
  て,証拠の評価を誤った認定,あるいは,証拠に基づかない認定を行っている。
  原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな,事実認定の誤りが認められ,
  上記判示には理由がない。
                 10/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ