民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

31:控訴理由 第7点 第8点

2007-01-06 10:58:56 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第7点 車両使用請求書・車両運行指令書
   原判決の,第3争点に対する判断,2争点(1),(2)車両使用請求書・車両運
  行指令書について(判決書19~20頁)の下記の部分の不服。「前記1(6)ア
  (ウ)の認定事実及び証拠(甲62)によれば,確かに別件訴訟の裁判所が,当該文
  書の送付嘱託の申立てについて,明示的には採否の決定をしていないことがう
  かがえるところである。しかし,別件訴訟の判決文(甲8)等から推認できる
  訴訟経過に照らせば,別件訴訟の裁判所は,当該申立てに対しては黙示にこれ
  を却下したものと認められるのであるから,採否の判断をしなかった点におけ
  る国の違法をいう控訴人の主張は採用できない。」。
 1 別件訴訟で,控訴人は平成14年4月24日に,第42普通科連隊が所持す
  る,自衛隊車の平成11年10月7日から平成11年10月15日を含む期間
  が記載されている上記書面の文書送付を申し立てた。
 2 別件訴訟第一審裁判所は,採否の決定を行わず提出されなかった。
 3 この書類は当事者間に争いのある下記事項を明らかにするのに必要である。
  (1) 事故後の自衛隊車の操縦手はどの時点で誰が任命されたか。(自衛隊車
   を事故直後の停止位置から移動した操縦手は誰か。)
  (2) 自衛隊車が事故現場を離れた時刻
  (3) 演習地から帰ったあと,自衛隊の実地調査が行われた事実
  (4) 事故当時の自衛隊車の車長は誰であったか。(小野寺は証人尋問で車長
   であったことを否定している。)
  (5) 小野寺は事故当時自衛隊車の操縦手に任命されていたか。
 4 上記文書は公正かつ迅速な訴訟の追行に必要である。
 5 裁判所は,民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め,当事者は信義に
  従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない(民事訴訟法第2条)。
 6 国は,正義を実現し国民を庇護すべき立場にあるから,民事訴訟の当事者と
  なった場合でも,通常の当事者とは異なり,事件の解明に役立つ資料は進んで
                 34/70頁
  全部提出し,真実の発見に協力すべきである( 東京高裁決定昭 50.8.7 )。
   国の代理人である訟務職員が個々の事件の指定代理人として訴訟を担当する
  に当たっては、国家行政組織の中で仕事をするわけだから、その職責は正義
  (ジャステス)の実現に対する奉仕であることを念頭に置かねばならない。
  (法務省訟務総括審議官 都築弘)
 7 控訴人は,別件訴訟第一審で採否の判断をしなかった点における裁判官の違
  法をいうのではない。浅香らが上記の文書を提出しないなどの不誠実な訴訟活
  動が公正かつ迅速な訴訟の妨げになり,職務違背ともなるというのである。浅
  香らが,自己が代理した法律事務に関連して違法な行為が行われるおそれがあ
  ることを知った場合には,これを阻止するよう最大限の努力をすべきもので,
  これを黙過することは許されない。浅香らは自衛隊に本件事故の隠蔽の意図が
  あることを知り得たのであるから,国を説得して第三者に損害を与えないよう
  にする義務(事情確認義務・一般的損害発生回避義務・誠実義務)違反がある。
第8点 当事者照会
   原判決の,第3争点に対する判断,2争点(1),(4)当事者照会について(判
  決書20頁)の下記の部分の不服。「別件訴訟の判決文(甲8)によれば,別
  件訴訟の争点は,本件事故の原因が控訴人及び小野寺のいずれの過失によるも
  のであったかの点であると認められる。ところが,控訴人が当事者照会を求め
  た事項は,前記1(6)イのとおり,必ずしも上記争点と関連するとはいえない微
  細な点に及ぶものである。したがって,浅香らがこれらの照会に応じる必要が
  ないと判断したことは,別件訴訟の争点との関係で格別不合理とはいえないか
  ら,当事者照会に浅香らが回答しない違法をいう控訴人の主張は採用できな
  い。」
 1 控訴人は,平成14年5月27日民事訴訟法第163条による当事者照会を
  おこなった(甲29)。
 2 照会事項は,①平成14年3月25日証人小野寺の速記録に記載された証言
                 35/70頁
  中言及された「近松3佐」について(本件事故当時の)氏名及び階級,職種及
  び職務,所属部隊(例えば保安中隊),特別司法警察職員か否か,事故当日の
  動静(事故現場に到着した時刻および経緯,事故現場を離れた時刻および小国
  に到着した時刻を含む),②乙第1号証〔事故現場写真〕に写されている人物
  の特定:事故当時の道路状況(別府方面から熊本方面)(甲67②)に写され
  ている人物;警官と話している自衛官の氏名・階級・職務及び所属部隊;自衛
  官と話している警官の氏名・階級及び所属,③乙第4号証〔事故状況再現写真
  (甲27)〕に写されている人物の特定:事故発生の状況の4,ブレーキを踏
  んだ地点に写されている下記警官の氏名・階級及び所属,バイクのハンドルを
  両手で支えている警官,バイクの後部を持っている警官,ヘルメットをかぶっ
  ている警官,事故現場の車両状況の3,③-ハを見通した位置に写されている
  警官のうち,上記1-3に写されていない4人目の警官の氏名・階級及び所属
  ④玖珠警察の実況見分調書の写真に写されている人物の特定:警察現場写真
  (甲32⑦)に写されている下記警官の氏名・階級及び所属;作業帽をかぶっ
  ている自衛官,ヘルメットをかぶっている自衛官,警官である。
 3 照会に対し平成14年6月7日国が回答書を提出した(甲30)。国は,本
  件照会事項は控訴人の主張とどのような関係に立つのか不明確であり,「主張
  又は立証を準備するために必要な事項」に該当するものとは認められないので,
  当事者照会の対象にならないとして全ての照会事項に回答しない。
 4 照会事項は証人尋問の記録や事故現場の証拠写真の内容等についての照会で,
  同条に定める除外理由に該当しない。その他当事者照会の要件を満たしている。
  主張又は立証を準備するために必要な事項とあるが,主張責任,立証責任を負
  う事項に限らず,反論や反証のための準備に要する事項も含まれる。また,
  「準備するため」であるから,照会事項それ自体が主張,立証に直接結びつく
  必要はなく,何らかの関連性のある事項であれば,間接的な事項についてまで
  広く照会することができると解すべきである。
                 36/70頁
   本案件では,情報が国に偏在しており,国の持つ情報の開示が訴訟の充実を
  はかるために不可欠である。例えば,「近松3佐」についての情報は,玖珠署
  の間ノ瀬巡査部長が事故後小国警察署から横浜の控訴人の自宅に電話した事実
  など,本件事故後の自衛隊,小国警察署及び玖珠警察署の捜査状況を明らかに
  するのに必要である。
 5 控訴人は,本件事故の調査ができず,証人とすべき人証の特定ができないの
  で証拠申出もできない。
 6 自衛隊現場写真(甲67)の写真に,長者原の交番の警察官及び小国警察署
  の警官2名は写されているが,事故直後実況見分をしたと主張する玖珠警察署
  の警察官・堀部警部補及び間ノ瀬巡査部長の映像がないことが明らかである。
  事故直後の事故現場の捜査・見分は,警務官(近松3佐),長者原の交番の警
  官(早水巡査長)及び小国警察署の署員2名で行われたと推認される。
 7 原判決は,「別件訴訟の争点は,本件事故の原因が控訴人及び小野寺のいず
  れの過失によるものであったかの点である。控訴人が当事者照会を求めた事項
  は,上記争点と関連するとはいえない微細な点に及ぶものである。したがって,
  浅香らは照会に応じる必要がない」とした。「微細な点に及ぶものである」と
  の文言は仰々しいが,控訴人は浅香らが提出した事故現場写真等に写された人
  物の特定を求めただけである。照会事項は,①近松3佐,②乙第1号証〔事故
  現場写真〕(甲67②)2名,③乙第4号証〔事故状況再現写真(甲27)〕
  4名,④警察現場写真(甲32⑦)3名合計10名の氏名・階級及び所属で,
  10行程度で回答できる簡単な照会である。
 8 本件事故では,情報が一方当事者に偏在しており,早期に的確な争点整理を
  行うには,情報を有する者からの開示が不可欠である。浅香らは情報を開示し
  て訴訟の充実をはかるべき義務を負う。
 9 原判決は,当事者照会制度について独自の解釈をし,民事訴訟制度が何のた
  めに設けられ運営されているのかの解釈を誤るものである。
               37/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ