民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

31:控訴理由 第21~23点

2007-01-15 06:46:01 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
第21点 道路交通法70条に基づく本件事故の処分
 1 別件行政訴訟控訴審判決は以下のとおり判示して請求を棄却した。
   「第4当裁判所の判断2争点(2)について(甲第91号証の15~16頁)
  (1)当裁判所も,控訴人は,山間部を走る曲がりくねった片側1車線の本件道路
  を湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,最高速度時速40㎞,
  追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止との規制がされ,下り坂の左
  カーブで,雑草等があって見通しの良くない本件事故現場において,控訴人車
  のハンドル・ブレーキの操作を誤り,バランスを崩して中央線を越え対向車線
  に進出させたため,折から対向車線を進行してきた自衛隊車のうちの本件トレ
  ーラの右側タイヤ及びタイヤ枠付近に控訴人車の前部を衝突させ本件トレーラ
  に軽微な擦過痕を与えたものであり,このような状況の本件道路において本件
  事故現場付近で対向車線に進入することは他人に危害を及ぼすおそれのある危
  険な行為というべきであるから,控訴人としては当然そのような危険を排除す
  べく控訴人車のハンドル・ブレーキを的確に操作して進行すべき注意義務があ
  ったのにこれを怠った過失により対向車線に進入したものであり,控訴人は,
  法70条(安全運転の義務)に違反する行為をしたものと認めるのが相当であ
  って,別件行政訴訟被控訴人の本件更新処分のうち控訴人を一般運転者である
  と認定した本件認定部分には違法な点は認められず,控訴人の本件請求は理由
  がないと判断する。・・・」
                64/70頁
 2 控訴人は,平成17年11月25日上告し,別件行政訴訟は,平成18年
 (行ツ)第38号として係属中である。
 3 控訴人は,上告理由第1点として,別件行政訴訟控訴審判決がその判示のよ
  うな内容の注意義務を怠った過失によって控訴人の責任を認めたことは,その
  理由に食い違いないし理由不備の違法があると下記の3点を主張した。
 第1点 道路交通法70条に基づく本件処分の違法
  (1) 別件行政訴訟控訴審判決は,本件道路において対向車線に進入することは
   他人に危害を及ぼすおそれのある危険な行為というべきであるから,法70
   条(安全運転義務)に違反する行為をしたものというべきであると判示した。
  (2) 同法70条のいわゆる安全運転義務は,同法の他の各条に定められている
   運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり,同法7
   0条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は,いわゆる法
   条競合にあたるものと解するのが相当である。したがって,右各条の義務違
   反の罪が成立する場合には,その行為が同時に右70条違反の罪の構成要件
   に該当しても,同条違反の罪は成立しないものといわなければならない。
   (昭和45年(あ)第95号同46年5月13日最高裁第2小法廷決定)。
  (3) 別件行政訴訟控訴審判決は,控訴人車が,過失により対向車線に進入した
   ものと認められると認定判示している。対向車線に進入したものと認められ
   る場合,法17条4項(通行区分)に違反する行為をしたものというべきで
   ある。
  (4) 同法70条の安全運転義務が,同法の他の各条に定められている運転者の
   具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられていることから考えると,他の
   各条の義務違反のうち過失犯処罰の規定を欠く罪の過失犯たる内容を有する
   行為についても,同法70条の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充た
   すかぎり,その処罰規定が適用されるものと解するのが相当である。(昭和
   47年(あ)第1086号,同48年4月1日最高裁第1小法廷判決)。
                  65/70頁
  (5) 対向車線に進入したものと認められる場合,同法17条4項の罪責が問わ
   れ,同法70条の罪は成立しない。同法17条の過失犯の行為が,同法70
   条の安全運転義務の過失犯の構成要件を充たすかぎりにおいて,補充的に,
   その処罰規定が適用されるにすぎない。
 第2点 道路交通法70条,安全運転義務違反の過失犯の構成要件
  (1) 同法119条2項により過失による安全運転義務違反として処断するため
   には,過失によって,他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転した事実
   を確定しなければならない。
  (2) 対向車線に進入した場合,中央線の左側を通行しなかった点で同法17条
   4項の故意犯(同法119条1項2号の2)が成立するのであって,この場
   合過失による同法17条4項の罪(119条2項の罪)が成立するものでは
   ない。過失による同法17条4項違反の罪が成立するためには,対向車線に
   進入したこと自体について過失が存することを要する。このことは同法70
   条違反の罪についても同様である。
  (3) 別件行政訴訟控訴審判決が認定した事実よれば控訴人の安全運転の義務違
   反についていかなる過失が存したか確定されていない。
  (4) 別件行政訴訟の被控訴人は,現実に自衛隊車に危害を及ぼしているから,
   法70条違反の行為が存在していたことは明らかであると主張する。道路交
   通法70条は他人に危害を及ぼさないような云々と規定されているので人の
   生命身体に対して危害を加える場合にのみ限定すべきである(大津地彦根支
   判 昭和41・7・20 下級判集・7・1017)。衝突したことそれ自
   体は単なる情状に過ぎないし,過失により自衛隊車(器物)を損傷した所為
   はなんら罪にならない。
  (5) 本件事故は,片側1車線の道路での,対向する大型トラックに牽引された
   車両と自動二輪車の接触事故である。大型トラックの運転者は,接触する1
   5,6m前まで(時間にして0.36秒前まで)相手の自動二輪車が相手車
                 66/70頁
   線の中央を走行しているのを認識しており,全然危ないとは思わなかったと
   いう事案である。自動二輪車の運転者が,0.36秒の間に,どんな過失が
   原因で,いかなる具体的な速度,方法をとって,いかに他人の生命,身体に
   対する危険を具体的に発生させたのか明らかにされていない。
 第3点 道路交通法70条の趣旨 
  (1) 同条が,運転者に,他人に危害を及ぼさないような速度と方法による運転
   を義務づけている趣旨は,運転者の不適切な運転行為のうち,とくに,一般
   的にみて事故に結びつく蓋然性の高い危険な速度,方法による運転を禁止す
   ると解するのが相当である。したがって,同条違反の罪責を問うためには,
   それ自体が,一般的にみて事故に結びつく蓋然性の高い危険な速度,方法で
   ある運転行為であること,もしくは,道路,交通及び当該車両の具体的状況
   との関連で,それが前記同様の危険な速度,方法による運転行為であること
   を要する。(昭和58年(う)第1550号,同59年2月20日東京高裁第
   3刑事部判決)
  (2) 別件行政訴訟控訴審判決の認定判示は,同条の構成要件に該当する一般的
   にみて事故に結びつく蓋然性の高い危険な速度,方法である運転行為である
   ことの摘示としては具体性に欠け不十分である。
  (3) 別件行政訴訟控訴審判決は,本件現場付近道路等の状況について,下り坂
   の左カーブで,雑草等があって見通しの良くないと状況を記載しているのみ
   である。例えば,本件事故現場が,付近に人家もなく,歩行者もいない山の
   中の車の交通量も少ない道路である事実等,具体的な道路の状況,交通の状
   況等の摘示をも欠く。
 4 上記理由によっても,玖珠警察署が認定した控訴人の道路交通法違反はない。
第22点 小野寺の道路交通法70条違反
 1 原判決は,「前記1(1)の認定事実によれば本件事故は控訴人の過失に基づく
  結果であり,小野寺には何ら過失のないことが認められる」(判決書21頁),
                 67/70頁
  と認定し,この認定を大前提として,別件訴訟における浅香らの違法行為の存
  在を否定した。
 2 本件事故はカーブ事故である。カーブ走行では,遠心力が働き,車体や運転
  者はカーブと反対側に押し出され,横転や横すべりを起しやすくなる。遠心力
  は,① 速度が速ければ速いほど,② カーブの半径が小さければ小さいほど,
  ③ 車の重量が重ければ重いほど大きくなる(甲84-1)。
 3 本件カーブ事故は,自衛隊車のカッティイング走行か,控訴人車のセンター
  ラインオーバーによる接触事故かで争われている(甲84-2)。
   カーブ事故を避けるためのポイントは,カーブの手前で十分スピードを落と
  すことである(甲84-2)。
 4 原判決が控訴人のセンターラインオーバーを認めた根拠とする,本件道路の
  タイヤ痕と擦過痕については,控訴理由第3点で述べたとおり理由がない。
 5 道路交通法第70条は,「車両等の運転者は,当該車両のハンドル,ブレー
  キその他の装置を確実に操作し,かつ,道路,交通及び当該車両等の情況に応
  じ,他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
  (罰則第119条第1項第9号,同条第2項)」と安全運転の義務を規定する。
 6 原判決は,「本件道路は,半径約25メートルのいわゆる「ヘヤピンカー
  ブ」になっている。カーブが急であることと,控訴人車の進行道路外に背の高
  い雑草が存在することが原因で,いづれの進行方向からも,相互の見通しはあ
  まりよくない(判決書14頁)。」「小野寺は,時速約40キロメートルの速
  度で,本件道路の自衛隊車進行車線を南から北へ進行して,本件事故現場手前
  の右カーブに入ったところ,約30メートル前方の,カーブの内側道路外の雑
  草越しに,控訴人車が控訴人車進行車線を進行してくるのを認めたが,特に危
  険を感じなかったので,そのまま進行した(判決書16頁)。」と認定した。
 7 小野寺は,炊事車を牽引した大型トラックを運転し,見通しのよくない半径
  約25メートルのカーブに進入する場合,十分に速度を落とし,他人に危害を
                  68/70頁
  及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない義務があったのに,最
  高速度と指定された40キロメートル毎時の速度のままカーブに進入し,他人
  に危害を及ぼしたのであるから,「小野寺には何ら過失のないことが認められ
  る。」との原審の認定の誤りは明らかで,この認定に基づいて浅香らの不法行
  為の存在を否定した原判決には誤りがある。
第23点 控訴人の主張に対する被控訴人の原審での態度
 1 控訴人は原審において,上記のとおり,請求原因事実を具体的に陳述したが,
  被控訴人は単純否認を繰り返すのみである。控訴人が請求原因事実を具体的に
  陳述した場合は,被控訴人の陳述も反対事実の陳述によって具体的になされる
  べきである。これを怠るときは,控訴人の事実主張を自白したものと見なされ
  るべきである。
 2 控訴人は,平成18年5月19日第4回口頭弁論期日に,準備書面(5)を陳
  述したが,控訴人の主張事実に対して,被控訴人はなんら陳述(反論)しない。
   口頭弁論で相手方の主張する事実を明らかに争わないときは,これを争う意
  思のないものとみてよいから,法は自白したものとみなし,その事実の証明を
  不要とする。(擬制自白)
 3 控訴人は,平成18年6月30日第5回口頭弁論期日に,準備書面(6)を陳
  述した。被控訴人は,「上記準備書面に対する反論は予定していない。早期終
  結を希望する。」と陳述した(第5回口頭弁論調書)。
   この被控訴人の陳述は,控訴人の主張する被控訴人に不利益な事実を争わな
  い旨の意思を表明する弁論としての陳述であるから,裁判上の自白が成立する。
 4 浅香らが別件訴訟で乙第1号証として提出した事故現場写真(甲24・
  7
)の事故当時の道路状況(熊本方面から別府方面)の写真及び控訴人自動二
  輪車転倒位置(白い部分)の写真には,事故現場見取図(甲23)のKP34.
  9の位置にKP34.9の里程標が写っている。
 5 控訴人は,準備書面(6)1頁第2「KP34.9の里程標」1控訴人の主張
                 69/70頁
  (1)で,「事故当日,事故現場見取図(甲23)のKP34.9の位置に里程
  標は存在しない。」と証拠を示し具体的に主張した。
   この事実は,被控訴人の違法(虚偽公文書作成)を基礎づける具体的な事実
  で,本件裁判上重要な事実である。自白が成立すれば証明する必要もなくなり,
  浅香らの違法が認定される。
 6 刑罰法規は処罰の対象となる行為を法定したものであるから,それに反する
  行為は不法行為上も強い違法性を帯び,刑罰法規違反により他人に損害を与え
  れば,侵害された被害の種類や程度を問わず違法となる。
   浅香らには,虚偽公文書作成罪(刑法156条)に触れる行為がある。
  終 わ り に
  正義を体現すべき立場にある捜査機関が犯罪を構成しかねない証拠物への作為
 に加担したのではないかと疑うのは情けないことであるが,軽々に「そのような
 ことはあり得ない」と断定するのは危険である。捜査機関の違法行為は,裁判所
 が指摘しなければ,他にこれを明らかにするものはいない。
  控訴人の主張を虚心坦懐に受け止め,疑問点につき十分な審理を遂げた上で判
 断を下されることを求める。
                                 以上
  附属書類
  1 控訴理由書  副本              1通
  2 証拠説明書(8) 正・副本 (甲85~91)  各1通
  3 控訴理由書  副本 (担当裁判官手控え用)  1通

               70/70頁
・・・
{原審 横浜地裁 平成17年(ワ)第2710号 判決}
 民事第9部 裁判長裁判官 土屋文昭 裁判官 一木文智 裁判官 吉岡あゆみ