劇団夢桟敷 ☆2018.6〜山南ノート5

熊本アングラ万華鏡〜演劇とプライベートの徒然

訪問(6)「あしたのジョー」とマスク

2020-06-02 15:19:21 | 2020-2022 日記

「誰が力石を殺したか」寺山修司 

力石はスーパーマンでも同時代の英雄でもなく、要するにスラムのゲリラだった矢吹丈の描いた仮想敵、幻想の体制権力だったのである。丈の風来橋の下での生活、あの犯罪の日々、交番襲撃から集団窃盗、そしてじぶんの血を売って丈をボクサーにしようとした片目の丹下段平の父性への裏切りといったものが、しだいに「あしたのために1」といった紙片による学習へと綱領に組み込まれ、二流の技術のために一流の野性を失ってゆくことになったのである。 
「あした」を破産させられたあしたのジョーはどうするか? また新しく幻想の敵を獲得し、水前寺清子のように 
♪東京でだめなら名古屋があるさ・・・ 
と うそぶきながら、トレーニングにはげむか? それともスラムへ帰って昔の仲間たちと解放の夢からはなれて暴力団にでもはいるか? かつてのチャンピオン小林久雄のように浅草のなかを肩で風切りながら、ときにはテレビのボクシングを見て感傷するか? 
 力石は死んだのではなく、見失われたのであり、それは七〇年の時代感情の憎々しいまでの的確な反映であるというほかはないだろう。東大の安田講堂には今も消し残された落書きが「幻想打破」とチョークのあとを残しているが、耳をすましてもきこえてくるのはシュプレヒコールでもなければ時計台放送でもない。矢吹丈のシュッ、シュッというシャドウの息の音でもない。ただの二月の空っ風だけである。 

訪問劇(6)6.2火
仮想敵国とマスク

厚生労働省医政局経済課(マスク等物資対策班)より、嘲笑された「アホのマスク」が郵便ポストに投函されていた。…ゴミはないか?カビが生えていないか?
疑心暗鬼が増大した我がこころ。
アメリカでは黒人差別による「頸部圧迫」で警察が殺人を犯し、各地でそれに抗議する暴動が広がっている。
コロナストレスも起爆剤になっているのだろうか。
同時に抗議に反発する勢力も拡大する。
分断が意図されたかのように利用されてしまうのは世の常。暴力が衝突する。
トランプ大統領は軍隊で制圧することも示唆している。
日本も他人ごとではない。じわじわと仮想敵国への攻撃をする準備が進む。
中国人、韓国、朝鮮人差別だ。

少年漫画「あしたのジョー」で力石徹が亡くなった時に寺山修司さんの語ったことがこころにに響く。
暑い夏に向かって空を見上げれば、ゲリラ雷雨か暴風か?…「幻想打破」は残ったままだ。
とりあえずマスクにペケをつけて街を歩こう。ペケの意志を見失われないために
可視化する。