星全ツ「激情－ホセとカルメン－／BOLERO－ある愛－」

　名古屋公演みてきました。
　いやあ、ＢＯＲＥＬＯは熱い！！ＢＯＲＥＬＯ最高！！秀作レビューですなあ。

【激情】

　・・・ずんこさんの宙組のを、映像で見たことはあったけど、そのときは「スゴクおもしろい」とは思わなくって～。

　カルメンとホセのパッションの話だから、ナマで見ると全然違いますね。よくできた作品だなーと思ったです。ちえねねに合ってる作品だよね。

　まーしかし、すごいキャラクター設定ですなあ、それぞれ・・・。
　あんな性格のヒトたち、わたしの周囲にゃいないよ・・・。（いたら迷惑ですな。）

　柴田脚本の中でも、かなりハードな部類ですよね。
　人死にが出るわ出るわ・・・。

　でもって、ホセ。あんたは本気で幸せになる気があるのか！！

　と思ってしまったよ。
　なんというか、

　わざわざ不幸になるような選択肢を選んでいるようにしか思えん！！

　と思いませんー！？
　カルメンにも言いたいことがあるっ。いや、カルメンだけじゃないぞ。みんなに言いたいことがいろいろある！！

●カルメンに申し伝えたいこと
　自由とワガママは違うぞ！

●メリメに申し伝えたいこと
　あんた・・・不幸な選択肢をいこうとしてるヒトを面白がって見てないで、止めてあげなよー！

●ガルシアに申し伝えたいこと
　威圧的なのは良くないね。ＤＶとかパワハラやらないよーに。

●エスカミリオに申し伝えたいこと
　ナイス漁夫の利！それのみで運を使い果たしたのは誠にご愁傷様でした。

●ガルシアの部下たちに申し伝えたいこと
　パワハラな上司をのさばらすなー！！

　ふう。言いたいこと言ってスッキリ♪
（架空のキャラに説教するなって？）

　まあとにかくキャラ立ってるよねえ・・・。主張のぶつかりあいが激しいというか・・・。
　ちえねねと星組のパッション全開なお芝居で、なにかもう、エネルギーの空中戦がすごい・・・。えらいことになっとった。

　ちえちゃんとねねちゃんのお芝居の方向性が、
「オノレの気持ちに正直に生きる！それが自由！これが恋！俺の愛！貫く！ＧＯ！」
　って感じなので、少なくとも今回の星組版は、物語を見守る「メリメ」は要らないと思ってしまった・・・。

　まあ、脚本だけで見るならば、「キャラ死に」わんさかの話に、冷静に見るメリメ視点があることで、救いになってるんだなーと思うんだけど。キャラだけに感情移入して突っ走ると、完全な悲劇だから、後味わるいよね。「彼らから何かを感じましょう」っていうメリメの冷静視点は、物語をポジティヴな救いに誘導してくれる役割があるな、と思うんだけど・・・。

　ちえねねのお芝居だと、「心のままに生きる！それが幸福！」っていうふうに、もう何もかもがポジティヴだから。演出家が気ぃつかって救いを作らなくてもオッケーだなあ。ほんとはあれ、「自由って何だろう。自由はすばらしいけど、これは本当に幸福な結末なのか？」っていう深ーーーくて繊細ーーーな話だと思うんだけどね。今回の舞台では、はじめから「自由です。幸せです。オッケーです。」って、もう結論がでてるから。
　メリメがいるから話に深みがあるんだけどさ。それもまた、星組エネルギーでドッカーン！な舞台をみてると、そういう繊細さがかえってまどろっこしく見えたりしました（笑）

　カルメンのねねちゃん、体当たりの大熱演だったねー。すっごくちゃんと悪女に見えた・・・。怖い女だカルメン・・・ブルブル。

【ＢＯＲＥＬＯ】

　大劇場で見たときから思ってたけど・・・これ、すごい秀作じゃないですかっ。傑作、とまでいうのは大げさかもしれんけど、佳作と呼ぶだけでは物足りない。というわけで秀作。

　大劇場で見たときも、そして今回の全ツ版も・・・。観劇している時間がすごく刺激的で、そしてついつい、最近のレビュー公演、ショー公演を思い返して比較してしまったよ。最近、こんなにスゴいショーってあったっけ。楽しいショーはいっぱいあったけど・・・。まあ、楽しいのはイイコトなんだけども、こういうクリエイティヴなショーを見てしまうと、　「楽しいだけじゃ物足りないかも」的なことも、レビュヲタとしてはチラリと思ったり・・・。

レビュヲタの心の声のメッセージ
「三木先生、もうすこしジャズの使い方を工夫してくれたらな・・・」（ヒートオン～）
「稲葉先生、惜しいんだよなー。明るさをもっと押し出すほうが向いてると思う。荻田路線はキケンだと思う。期待してるから頑張って良いレビュー作家になってほしいよ」（カルネヴァーレ～）
「齋藤先生、猫耳とか、はっちゃけた部分を思い切ってだしていいと思うよ？楽しいけど無難で個性が薄いな～」（リオデ～）

　ＢＯＲＥＬＯ、何がいいってオリジナリティと創意工夫。これですよね～。すごくアタリマエのようで、ある程度「これやればウケる」っていう方程式がわかってしまっている宝塚レビューだと、なかなか難しいなと・・・。

　わたしにとっては、ショーやレビューは「芝居のあとについてる、観劇後の後味をよくする魔法のおまけ」なんかじゃなくって、むしろメインディッシュなので、たまにでいいから、変わったもんが見たい・・・。作家の個性も楽しみたいし、新しい挑戦っぽい場面も見たいのです。
　明るくって盛り上がるだけじゃなくって、作家の個性というか・・・オリジナリティがあって欲しいなあーと・・・。

　ＢＯＲＥＬＯは、わたしの願望をかなり満たしてくれました。めっちゃ満足度高かったです。

・初っぱなから、ちえちゃんの赤い衣装いきなり脱ぎ（大劇場だと釣ってましたよね。全ツはふたりがかりで、両側からバッと剥いてたけど）の仕掛けがあって面白い。あーゆー、ビックリさせるような仕掛け大好き～。

・意味不明な世界観のセットなのに、選曲が妙にスタンダードっていう齟齬がいい。

・ポエムは、最初は笑ってしまったけど、最後まで見切ってあの世界観にドップリひたってしまうと、むしろあってほしい。ハマってしまう。

・変な話だけど、ストーリーが意味不明なとこがかえってイイ～！抽象性があって、想像をかきたてられます。刺激的。

・主題歌があるようで無いのがいいっ。斬新っ。公演オリジナル主題歌を申し訳程度に使ってあるけど、このショーの真の主題歌（テーマ）は「ＢＯＲＥＬＯ」ですよね。最初と最後に切って使う、音楽の構成も凝っててよかった～。デュエットダンスのピアノソナタ（これまた切って断片的に使う）も素敵。

・草野先生の考える愛・・・わたしには伝わりました（真顔）

　あとまあ、やっぱり、ちえちゃんがダンサートップ！っていうのは、大きいですよね。素晴らしいですよね。ビバ！ダンサートップ！惚れ惚れしました。ダンサートップってなんて素晴らしいんだろうと思ってしまった。特に金色の背景のなかで、金色の衣装でおどる、キンキラキンのボレロ。あそこのちえちゃんのダンス、めっちゃすごい。腕や足に重力を感じないすばらしいダンス！

　柴田歌劇には絶対にある、（激情の）プロローグのダンスや祭りの踊り場面も、ちえちゃんだと映えるっ！！ポーズひとつひとつが美しくて、とってもかっこよかった～！

　ああ、ちえちゃん・・・。トップになってくれて心からありがとう！！
　これからも、ビシバシと名作ショーを生み出してくださーい！！
　劇団サマ！！星組には意欲的な良いレビュー作家をつけてねっ！！

　あ、そうそう。なんといってもトマケ。あれは・・・すごい場面だなあ。ゾクゾクしますね。特に大劇場版は、お面のセットの下から、ぞろぞろーってヒトが出てくるじゃないですか。あの演出はすごく好きだった。ラインダンスに入るときの「流れ」や「間」もすごく良かったし。ラインダンス、若手作家さんだと特に「おざなり」に感じて寂しかったりするので、うまく流れを作って、ラインダンスが盛り上がると嬉しく感じますねえ。やっぱりラインダンスが無いと、始まらないですからねえ。

　大劇場版が、いろんな仕掛けやセットの効果を生かした演出がいろいろあったんで、全ツ版はショボく感じるかなあ、とちょっと思ってたんですけど。全然そんなことなかったです。

　人数や、お面のサイズや、ボレロの背景の金色の量とか・・・。いろいろボリュームダウンしてても、それでもＢＯＲＥＬＯの作品が持つフシギなパワーは、全然衰えてなかったよ。星組パワーもあるかもだけど・・・でもそれ以前に、やっぱこれ、よくできたショーだと思います。出来がよいものって、ちょっとぐらいの条件ダウンでは、魅力が褪せたりしないんだなー。

　うん。わたしは「ＢＯＲＥＬＯーある愛ー」が好きだーーーー！

　草野作品で、こんなに夢中になったのってはじめてで、自分でも意外でしたわ。

　あ、そうそう。ご当地アドリブは・・・。

「名古屋では喫茶店で飲み物頼むと、タマゴとかいろいろついてくるんだぎゃあ！」
「どえりゃあ応援ありがとうー！」

　でした。ちえちゃんが元気いっぱいに叫ぶ名古屋弁・・・。なんだかこそばゆいぞ（笑）←でもすごく嬉しい

　他にもアドリブあった気がする。（よく聞き取れなかったとこがあった。）
　サービス精神いっぱいだったです。

　愛知県出身者紹介、さすが星組というか・・・名前呼ばれて、ハイッ！って挨拶がめっちゃエネルギッシュで元気なんだよね！テンション高くて面白かった～。

　芝居もショーも、舞台上に良いテンションっていうか、集中力がみなぎってましたねえ。イキオイがあって、ちえちゃんかっこいいしー！ねねちゃんはサッパリと華やかだし！　

　楽しかったー！！
　あのテンションとエネルギーをキープして、全国を回って毎日公演してるっていうのが・・・本当にすごい！