etceterakoの勝手にエトセトラ

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花組「愛と死のアラビア-高潔なアラブの戦士となったイギリス人-/Red Hot Sea」

2008年08月04日 | 宝塚歌劇

 いつもながらネタバレ全開です。舞台ばかりか、原作のネタ(一番大事なとこを堂々とバラしとります。)もバラしまくりますのでよろしくお願いします。
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【愛と死のアラビア-高潔なアラブの戦士となったイギリス人-】

●タイトルがネタバレだ!

 面白かった。感動した。
 けどねえっ。
 わたし思うんだけど、谷せんせー!!タイトルでネタバレしてます!
 「-高潔なアラブの戦士となったイギリス人-」って、コレいらないですよねえー!?
 このサブタイトルを読んだだけで「ああ。イギリス人が最後はアラブの誇りを身につけて、アラブで死ぬんだな」って、わかっちゃうじゃないですかー!

 前回の「さくらー妖しいまでに美しいおまえー」の時も書いたと思うけど、谷先生はタイトルが饒舌すぎるんですよ。一言多い。長さを生かして、なんか効果が出てるかっていうと、特に何も出てないですから。単にネタバレしてるだけになっとる。

 春琴抄の「殉情」も、悲恋をにおわすタイトルでこれもネタバレはネタバレですが、春琴抄レベルの有名作になると、見る人のほとんどがアラスジを知ってて、「舞台でどう料理されるか」を楽しみに見るワケだから、ちょっと違うと思うんですよ。
 「愛と死のアラビア」は、宝塚で過去にやった題材とはいえ、マイナーな原作で、誰もが筋を知ってるワケじゃないんだから、タイトルで筋を教えちゃうのは先走りだと思いますねえ。「主人公はイギリスに帰るのかな、どうなのかな」って、ドキドキさせてくださいよー。

 タイトルに限らず、谷作品が愛にしても正義にしても平和にしても、何かと「クドい」と観客に受け取られるのは、ずばり一言多いからだと思うなー。ダメ押ししようとするんだけど、それがあまり効果的に働いてない。ラストは最期を迎える主人公に、身分違いの恋人アノウドが寄り添い、抱き合って幕ーーーなんだけども、ココでもただ愛を確かめ合って抱き合うだけでコトは足りるところを、「結婚」とかダメ押しを口走っちゃうわけですね。強調したい部分が、丸わかりなんだよなあ・・・。

 いや、いいけど。別にいいんだけど。(感動したし。)
 レビューで始まって男同士があって女とあれこれあって、泣きの大芝居で盛り上げてーって、植田しんじ先生と作風はおんなじなのに、わたしは植田しんじ脚本には、過不足を感じたことはあまりないんですね。おなじ路線でも、植田せんせーのほうがセンスいいってことなんだなぁ。(と、わたしは思った)

 ??「クドいと言えば、あんたが一押しの木村信司せんせーはどうなるのだ!あれはOKで谷先生にはNG出すって、どういうこと!?」って??

 あー。だって木村先生は一言どころじゃなく五言ぐらい多いじゃないですか(笑)あそこまでクドいのは、もはや「芸」でしょー。谷先生のは、芸まで行かないのに、ハンパに一言多いなあーと思うのですよ。
 それに木村せんせーは天才ですからね。天然だもん。天与の才(言うなればノリと勘と感性)だけで書いてる人と、明らかに「頭ひねって」書いてる作風の谷せんせいを一緒にしたらダメですよ。
 
 ●原作を読んでみた

 原作は・・・皆様お読みになりまして??
  値段、高かったですねえー。(感想第一声がそれかよっ)
 ※←上巻294ページで1890円もするのだ。
 高くて重いのを、ムラからかついで帰ってきて、ちゃんと読みましたよわたし。
 うーむ。歴史小説だ。たしかに歴史小説だ。
 これぁ、本当に宝塚にピッタリだなあ。
 男同士の友情、男性社会のタテ組織のアレコレ、戦闘シーン、そしてとってつけたような恋愛
 宝塚にコレ欲しい!っていう要素は、全部入ってます。誰がやっても、ふつーに面白い歌劇になるんじゃないですか。原作がとっても宝塚的だもん。
 後書き読んだら、なんか「アノウド」ってもともと架空のキャラクターらしいですよ。トマス・キースの体験談はほとんど史実みたいだけど、恋愛だけは作者の想像で書いた話だそうです。まあ、なんだ。政治だ戦争だのただの史実通りの歴史物語では華がないから、娯楽小説の場合、こーゆー時は恋仲の女性を登場させて、華やぎを作ることになっとるんですな。

 この、「恋愛のとってつけ」感が、なんだかすっごく宝塚に似合いだと思ってしまいました。基本、オトコたちの物語で、そこに華やぎのためだけに(恋愛対象としてだけの)オンナが入るっていうバランスが、とっても宝塚的だ。

 「血と砂」、歴史小説が苦手なわたしでも、けっこうさらさらーっと読めました。なんか、キャラクター小説として読めてしまう。キャラが立ってるんだよね。特にトゥスン。宝塚のために書き下ろしたのではないかと疑いたくなる、男役向きかつ宝塚の「男同士の絆」にピッタリなキャラだーっ。

●ラストについて

 ところで、わたしは原作のラストに、いたく感動してしまったのだ。原作だと、トマスは戦場で死ぬんだよね。このラストでの舞台も、見てみたかったなあ。(谷版ラストも嫌いではないけどね。)
 死んだトマスの遺体を見ながら、敵方の将と兵隊が、
「異教徒の犬のなれのはてさ」
「だが、この男がわれわれの敵でなく味方だったら・・・」

(↑会話をスーパー要約しました)
 などと語り合うんですよ、原作では。なんだか小池修一郎演出で見てみたい感じがしませんか??この無常観は小池美学でしょー。

 谷先生がこのラストを使わなかったというのは、ちょっとわかる気がするよね。主人公について、他人行儀に語る人々で寂寥をうつす、っていうのでは、谷先生らしい饒舌さを発揮できないもんねえ。谷先生の物語は一人称なんだよね。主人公が「オレオレ!!」って主張して盛り上げるんだもんね。原作のトマスって、もっとアッサリしてんだよね。そんなに「アラブに残ったオレ!!」をクドく主張しない。葛藤はあるけども、それこそ「イン・シャー・アッラー」、神の意のままに・・・っていう、達観した雰囲気がある。谷版で見ると、「オレの決断を見よーーーーっ!」って感じになるんですね。いや・・・行動で見ればわかるよ・・・と観客は思うわけですが、場面も立ち姿も、すべてが「オレの決断と悲劇!」を雄弁に物語りまくるワケです。

 見てる時は場面のイキオイに飲まれて「おおーーーっ!感動したわーーーっ!」って思うんだけども、原作を読んでアタマが冷えると、歴史物語としては、もっと冷徹さにつながる良い意味での「冷淡さ」があったほうがいいかもねえ、などと思ってしまった。小池エリザが成功したのは、小池先生に歴史の残酷さを語る冷徹さがちゃんとあったからだよね。

●キャストうんぬん

 トゥスンの原作ラストがすごいよね。さすが歴史モノ。運命が容赦ない。
 トゥスンはトマスが死んだ最後の戦いのあと、父上の不興をかって左遷格下げ。左遷された地で、24歳の若さで伝染病にかかって死亡したんですと。えりたんのトゥスン、芝居の方向性ばっちりじゃないですか??あけっぴろげで正義感がある、気のよい性格。そーゆー人って、出世しにくいもんね。えりたんのトゥスン、24歳で左遷されて不遇を迎えそうな感じするじゃないですか。良い人すぎて。
 壮一帆くん、えりたんのトゥスンは当たり役でしたねー!雪組FANのわたくししては、雪組から花組へ異動したえりたんの成長と活躍に、涙を流さんばかりでしたよー!
 でも、これも「メランコリック・ジゴロ」があったからだと思う。
 あれの攻め気な友人役は、えりたんの新境地だったねー。そうなんだよねえ。えりたんって、なで肩の細身だし、容姿はおっとり優しそうに見えるけど、弱い役や悩む役より、攻める役・強気な役のほうが似合うんだよねーーーっ!メランコリック・ジゴロは、本当ーーーーによかった。えりたん、資質にあった役が来て、努力してきたお芝居が開花する日が来て本当に良かったねえっ。(←親ゴコロ)

 そしてわたしは主張します。
 いまこそ、時代は「まと・えり」だあああああーーっ。
 トップの真飛聖サマとえりたんの芝居は、なんて相性がいいのっっ。メランコリック~から、わたしは感動しっぱなしです。ああ、ベルばらが楽しみだわ(うっとり)
 真飛サマもフレンドリー男役で、えりたんもフレンドリー男役。それでいて二人とも、ナルシシズムが少ない芸風。ふたりが組む芝居の、さらっとした友情の風味が、なんとも言えずたまらんわ!俗な言い方をするなら、萌えました。

 真飛サマとね、桜乃彩音ちゃんのカップルも、すごくいいのよねーーーーーっっ!恋愛の機微にはざっくりとしか応じなさげ(←フレンドリーでぶっきらぼうな芸風の)真飛サマに、彩音ちゃんが恋愛ビームを送りまくるのが最高ですね。真飛サマも、最初はいなしつつ、だんだん彩音ちゃん(てゆーか役だけど。)の恋心を受け止めてーーーって、そういうのが似合うわ!アラビアは、まと・あやにすごく似合う恋愛の型だったわっ。

 ゆうひくんがねーっ、またイイですねーーっ。
 ゆうひくん、ものすごい戦力ぶりでしたねえ!
 芝居やショーの中心に立つとき、なんかベテランの貫禄があるんだよね。さすが上級生スターだよねえーっ。月組でずーっと、上手すぎるキリヤンとセットで見ていたから、ゆうひくんは若々しくスターらしい華やぎの人ってイメージを持ってたんですが、異動して芝居してるのみたら・・・(まあ、芸の細かい部分はさておき、舞台に必要な存在感という意味で)実力派でしたねえ。上級生スターっていいなあ。大事だよなあ。トップより年上の役をやれるスター級って、宝塚にはなかなか育たないですよね。貴重で大切なスターさんだ。来年の韓流演目、楽しみだね。

【Red Hot Sea】


●ファンタジック・・・
 これ、草野先生の個性炸裂で面白いショーだったですよね。
 まあ、なんだ。たしかに「サザンクロスレビュー」が脳内をチラチラするけどっ。(タカラヅカ絢爛は見てないのよ。)
 まー、得意パターンがあって、自己模倣みたいになっちゃうのは、しかたないよね。タカラヅカみたいに、毎年一本コンスタントに、過去に計何十本も作っていればねえ。得意パターンがあるのは強みだと思うし、それで減点しようとはわたしは思わないのだ。芝居とちがって、ショーは難しいやね。物語(芝居)は他のメディアから借りてこられたり、世の流行があったりまだ進化の途中ですが、ショーやレビューって、もはや「お手本なき世界」に突入してるもんねえ。空想を織り込みながら、ファンタジックに展開する「レッド・ホット・シー」、コンスタントに年間8本の新作レビューを作り続けてきたタカラヅカの「実力」って感じがするわ。

 最近の草野レビューでは、出色の出来だったと思うなあ。
 船の上で着飾った男女がパーティで酔い踊るなんて、いかにも草野先生らしい場面ですけども、それを海の上の「幽霊船」って設定で入れるのは、自然でいいわ。
 草野せんせーは架空性のある設定のほうが面白いですよね。フィクションをフィクションらしく作るのが、ホントに似合う人だ。(源氏物語とか、現実的なヒューマンドラマは、ほんらい適性じゃないんだろうな・・・)

 妖精シェルをやった愛音羽麗くん、みわっちがすごく印象に残るよねー。みわっちって、いかにも架空の男役造形でフェアリータイプだから、草野先生の虚構性が強いレビューには似合うんだろうな。

 一ヶ月たつと、ショーは細部を忘れます・・・(ごめん)
 最近、ショーの感想が淡泊でごめんよ。見た時はもっと興奮したんだけどねー。
 お気に入りです、Red Hot Sea。真飛サマが主演するショーってどれも面白い気がする。ショースターだよね。熱く盛り上がれるね! 

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 余談になりますが、生意気娘Kはかねてから、歴史モノといえばタカラヅカでコレをやって欲しいとずっと思っていたのですじゃ。

 →背教者ユリアヌス (辻邦夫/中公文庫)上中下と三巻です。

 かしちゃんorとうこちゃん主演で見たいと思ってたのよね。(かしちゃんは退団しちゃいましたが・・・) 芝居を得手としてる人で見たいのよ。あっ。キムちゃんとか、みっちゃんもいいなっ。できれば小池演出で!!(ぜーたく~)

 アラビアを見て、ふっとそのmy希望を思い出したのよ。「背教者ユリアヌス」も歴史もので、悲劇とゆーかネガティヴなラストで、ヒロインが架空(たしかヒロイン?の踊り子が辻の空想した架空のキャラクターだったはず)なんだよ。アラビアと似てるでしょ??タカラヅカ向きだと思うんだよねえー。いつかやって欲しいなーっ。


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2 コメント

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Unknown (ひろ)
2008-08-05 18:07:40
花組さん、観てきました。
お芝居は、まとぶんがずっと良い人で、もうちょっと戸惑いとか悩みとか出して欲しかった。
壮さんは、壮さんキャラですね。まっすぐに良い人。
ユウヒ君、存在感が大きかった。
でね、まとぶんとゆうひ君の歌声が似ていて、ショーでは、まとぶんの個性がイマイチだった気が。
みわっちは、印象に残ります。歌も一番うまく聞こえた・・・・。
ショー、思ったよりも暑苦しくなくて爽やかで楽しみました。
ああ、お芝居のあやねちゃんの「取って付けた感」いっぱいさには、唖然でした。いかにも「宝塚的」だったー。いかにも男役中心主義丸出しで、ちょっとひどいんじゃない?と思いましたよ。
もう一度見ます。感想変わるかな?
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ひろさんへ♪ (なまいきむすめK)
2008-08-08 22:49:42
みわっちかっこよかったですねー!
歌うまいし、とても華やかですよね。

>お芝居は、まとぶんがずっと良い人で、もうちょっと戸惑いとか悩みとか出して欲しかった。

まーなんか、話をまとめて消化するだけでいっぱいいっぱいな感じでしたね。一時間半でやるのって大変ですよねえ~。
あやねちゃん、上手い娘役トップだから、あの使われ方だとちょっともったいないですよね。
宝塚ではなかなか、娘役は報われないですね。。。

>ショー、思ったよりも暑苦しくなくて爽やかで楽しみました。

わたしも思いました!
見る前はもっと焼け付くように暑苦しいかと(笑)
花組さんの芸風の影響なんですかね~。
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