<以下の記事は2002年3月28日に書いたものですが、原文のまま復刻します。>
辻元清美さん(2009年当時)
1) これほどパフォーマンスが豊かで、これほど自分勝手な、また往生際の悪い政治家も珍しい。 社民党の辻元清美さんが、元政策秘書の給与不正流用疑惑の責任を取って、議員辞職した。
疑惑が発覚してから1週間、テレビ、新聞などマスコミは完全に彼女に振り回されていた。 また、社民党自体も、最後の方は彼女にキリキリ舞いさせられていたようだ。 予定されていた記者会見はすっぽかすし、土井党首ら党幹部の説得も蹴飛ばして、自分勝手にテレビに二度も出て、言いたい放題なのだ。 こう言うと叱られそうだが、テレビを見ている方としては、おもしろいと言うか、痛快と言うか、“笑劇”を見ているようだった。 さぞや、関係者は苦労しただろうと察する。
議員辞職願を衆議院議長あてに提出した後、辻元さんは記者会見をしたが、ものすごい数のテレビカメラを前にして、彼女は議員バッジを自ら外してみせた。 これなどは、パフォーマンスの最たるものだ。普通の議員だったら、こんな真似はできない。 テレビを意識しての行動以外の何ものでもない。
2) 辻元さんと言えば、大阪弁を織りまぜながら歯切れの良い口調で、政府を鋭く追及していく姿が、実に印象に残る。 先の鈴木宗男代議士の証人喚問でも、「なぜ、ウソをつくのか」と厳しく追及していた。まことに見映えのする、颯爽たる女性議員である。 まさに、テレビ時代に打ってつけの“役者”という感じがする。
つい最近、私はテレビ局時代の友人達と会食していたら、こういう人達が活躍するのを、「テレポリティックス(テレビ政治)と言うんだ」と教えられた。 そう言えば、田中真紀子さんも小泉総理もそういう感じがする。小泉内閣は最初の頃、「ワイドショー内閣」と呼ばれていた。
テレビというのは、どうしても“人気者”を作ってしまう。 これは意図的に作ることが多い。 私はここで、古巣のテレビ局の話をするつもりはない。テレビ局の問題やあり方については、後日じっくりと述べたいと思う。 ただ一つだけ言っておくと、辻元さんのような政治家は、「視聴率が取れる」ということだ。
どうやら、辻元さんはテレビにハマってしまったようだ。 25日夜には某民放テレビに出演し、自分の違法行為は棚上げにして、証人喚問に呼んでくれとか、議員辞職勧告決議案を出してくれとか、言いたい放題の始末である。 要するに、テレビを利用しているのだ。 疑惑の真相には触れようとしないで、問題をすり替えてばかりいる。 これでは、筋違いもはなはだしい。与野党がこぞって怒るわけだ。
3) 彼女は大ウソがバレたというのに、「間違っていた」「ミスがあった」と言うだけで、「ウソをついた」とは決して言わない。 「反省しています」と何度も言うが、あれでは本当に反省しているのか、と疑いたくなる。
辻元さんの往生際の悪さにも、呆れるほどだ。 なんとしても、鈴木、加藤両代議士を始め、その他の国会議員を“道連れ”にしようと、もがいていた。 本人は「七転八倒した」と言うが、要するに議員を辞めたくないから、あがき苦しんだだけだ。 あんまり往生際が悪いので、心配した両親が大阪から駆けつけたほどだ。 “じゃじゃ馬”だか“鬼っ子”だか知らないが、なんとも世話のかかる女性である。
1週間におよぶ“ドタバタ劇”は終わった。 こう言うとまた叱られそうだが、テレビを見ていると、正直言って結構おもしろかった。彼女の一挙手一投足が、ブラウン管を通じて手に取るように分かる。 笑劇というか喜劇というか、永田町のドタバタ劇だった。 社民党の関係者や記者諸君は、さぞや大変だったと思う。
4) 問題はこれからだ。 辻元さんには詐欺の疑いもあるわけだから、どうなるか分からない。 秘書の制度や兼任問題などは、これから国会が考えればいいが、彼女が再び国会を目指すとしたら、そちらの方が俄然注目される。
かつて、故田中角栄氏は、ロッキード疑惑もなんのその、逮捕されても有罪判決が出ても、圧倒的な最高得票で国会に返り咲いてきた。 今の日本の政治家の中では、テレビで最も“人気”のある辻元氏が、返り咲くかどうかが焦点となる。
辻元氏が、詐欺罪で立件されるかどうかで情勢は変わってくるが、彼女には確かに“魅力”がある。 もちろん今は、政治倫理が厳しく問われる時代だから、どんなに魅力があろうとも、違法行為をしたり逮捕された人間が復帰するのは、容易なことではない。
しかし、日本人というのは“同情”に弱い。“判官びいき”でもある。 また、熱しやすく冷めやすくて、忘れっぽい。物事を“水に流す”ことが好きだ。 彼女が詐欺罪で立件されなかった場合、国会に復帰してくることは大いにありえると思う。 まして、彼女の選挙地盤は大阪だ。 大阪は、あの横山ノックのような“問題の男”を、府知事に楽々と当選させた所である。 反権力、反権威の風潮が強い所だ。辻元氏の返り咲きも、あながち不可能とは言えないようだ。 (2002年3月28日)