<2022年8月20日に書いた以下の記事を復刻します>
<はじめに>
「旧統一教会」のことばかり考えていると、暗たんとした気持ちになる。救いようのない感じになるのだ・・・ ほかになにか書くことはないかと模索していたら、唾液腺のことを思い出した。少し下品な話になるかもしれないがお許し願いたい。
1) よく涙腺が崩壊して涙がとまらないと言うが、唾液腺ももちろん崩壊する時がある。私は医学的、生理学的なことには素人だが、今や老境に入ったので、自分の体験を話していきたい。
唾液腺が崩壊した主な体験は3つある。まず、それは小学6年の時の“給食”の時間に起きた。 育ち盛りの頃は誰でも経験しているだろうが、並んで給食を待っている時(当時は順番待ちで給食を受けた)、カレーライスなどの匂いがただようと、急に唾液が湧き上がり口中に広がった。すぐに飲み込んだが、また湧き上がってくるのだ。
こんな経験はほとんどの生徒がしているだろう。なつかしい思い出なので忘れられない。
2) 次から、きわめて個人的な話に移る。私が27~8歳の頃だったか、当時、某民放テレビ局の記者として警視庁クラブにいた。その頃は1970年の日米安保条約の改定を前に、反対の学生運動が全国的に吹き荒れていた。
東京でも100前後の大学で毎日 ストやデモが繰り広げられ、騒然とした雰囲気になっていた。令和の今では考えられないことだ。このため、警視庁詰めの記者であるわれわれは毎日 各大学の状況を取材して歩いた。
ある日、私はお茶の水女子大学に出向いて取材をしていたが、構内に入ったところで10数人の女子学生がスクラムを組んでデモ行進をしていた。お茶の水女子大生だけでなく、他の大学の学生も混じっていたと思う。 ところが、大学側の要請でやって来た警視庁の機動隊が彼女らの行進を規制し始めた。
大きな楯を持ち、ヘルメット姿で武装した機動隊員は50人以上はいただろうか。 彼らは指揮官の命令で女子学生らを“排除”していく。要するに「解散しろ」ということだ。たくましい機動隊員は、彼女らをまるで“虫けら”のように押しまくっていった。それでも、女子学生たちはシュプレヒコールを上げたりして、右往左往しながら必死に抵抗する。
しかし、圧倒的な機動隊の圧力の前に、少人数の彼女らが叶うわけがない。ある者は弾き飛ばされ、またある者は転んで痛そうな顔をしている。それでも彼女らはスクラムを組み直して、果敢に機動隊に立ち向かっていく。見ていて、私はかわいそうになってきた。
できることなら、機動隊に「もうやめなさい」と言ってやりたいぐらいだ。そうも言えず、私はその模様をじっと眺めていた・・・ すると突然、口中に“唾液”が充満してきた。私はあわてて飲み込んだが、唾液はあとからあとから湧いてくる。
これは一体どういうことだ? 機動隊の側に立って、サディスティックな気分になったのか。それとも女子学生の側に立って、マゾヒスティックな気持に陥ったのか・・・ それは分からないが、ただ私は、こみ上げる唾液に困惑し立ちすくんでいた。
3) もう一つ個人的な体験は、それから1~2年たった頃だったか、今度は国会で野党クラブを担当していた時だった。 ある日、日本社会党の参議院議員・望月優子さんが記者会見場に現われた。小柄な“おばさん”といった感じの人だ。
望月さんは母親役がぴったりの女優で、当時は知らない人がいないぐらいの有名人だった。彼女はいわゆるタレント議員として、社会党の“広告塔”になっていたのだろう。
さて、望月さんは席に着くと、中国を訪問した話を一方的に始めた。当時は日中両国が国交を回復する直前で、与野党を問わず多くの国会議員が訪中していたのだ。それはいいが、望月さんの話はこれという内容ではなかった。
今ではほとんど覚えていないが、周恩来首相と会見し、彼とダンスをしたという話を盛んに述べ立てていたと思う。たぶん、それが自慢話だったのだろうが、さすが有名女優だけに話に“実感”がこもっていた。
私は幸運にも(?)望月さんの真正面の席に座って話を聞いていたが、彼女の迫力に次第に圧倒されるような気がしてきた。 すると突然、唾液が湧き上がってきたのである。次から次に湧いてくるので、口中に唾液があふれてきた。
私は必死に唾液を飲み込んだが、どうすることもできない。こうなると記者会見の話どころではない。唾液との闘いだ。となりの記者がいぶかしげな顔をして、こちらの様子をうかがう。私は会見が早く終わることだけを願っていた。
やがて望月さんの話が終わると、やっと安堵した。彼女はもう50代の決して美人という感じではなかったが、その存在感や迫力に、私は飲み込まれたのだろうか。医学的、生理学的なことは分からないが、今でも忘れられない思い出である。
以上、唾液腺の崩壊について語ったが、若い頃はそういう体験が多いのだろう。なにかの参考になれば幸いである。失礼しました。 (2022年8月20日)