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モダニズムだけじゃない建築ブログ

「いざ鎌倉!腰越強行突破」’08鎌倉・東京建築紀行 その6“住宅”

2008年12月02日 18時10分08秒 | 建築
 札幌に帰ってから知ったのであるが、吉田五十八氏設計(既存民家を改築)の「吉屋信子記念館/旧吉屋信子邸」は普段、一般公開していないようだ。たまたま自分が訪れた日は、年に何回かの公開日に当たっていた。それで、今改めて良かったなあと思い返している。何せ小生は多少悪戯心も持っていて、isamuさんの「聞いてないよー!」の一言を聞くのも建築探訪の原動力となっているのだから困ったものである。中を見ていないとあっては、isamuさんに自慢できない。

 既存の改築とは言え、内部外部共に一味違う雰囲気を感じることが出来た。これまで見た吉田五十八建築は上野の「日本芸術院会館」だけである。住宅建築は初めての体験だ。雰囲気の良い玄関から居間へ入ると、まずその天井に目を奪われた。網代目透かし張りボードの目地内に、銀色の紙かテープが貼られていた。
 書斎も独特である。トップライトは拡散照明で柔らかい光を机上に落としている。収納の扉の仕上げが格好良い。
 真壁の柱、所々小口の見える梁材、鴨居、長押、落し掛けの焦げ茶色と白い壁とのコントラストに心を奪われる。絵夢さんも玄関の床材である欅に相好を崩されていた。

 ところでこんな小生にも苦手な人種がいて、あろうことかこの素晴しい建築で多数出会ってしまった。両足を投げ出し長時間ソファーを独占し、だらだらと稚拙なスケッチを続ける連中のおかげで居間のまともな写真が無い。他の訪問者も吉田五十八デザインのソファに座ってみたかっただろうに、そういうことを考えられないのか。自分の学生なら一喝していたが・・・。(指導者は公共性という言葉を教えるべき。)

 翌日何年かぶりに日本芸術院会館を訪れた。イーゼルを立てた恐らく美術学生であろう、2人組を見た。真剣な眼差しで描くカンバスの中の吉田五十八建築は、どちらも素晴しい出来だった。

「吉屋信子記念館/旧吉屋信子邸」
設計者:吉田五十八 竣工:1962年 鎌倉市長谷1-3-6