DOCOMORO100

モダニズムだけじゃない建築ブログ

ベルリンの亡霊

2006年12月27日 22時14分32秒 | 建築
 今日、ギターのお師匠様からチケットを頂き、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」の第83回定期演奏会を聴いた。場所は「札幌コンサートホールKitara大ホール」であった。マンドリンの音を聴くのは今回が初めてであったのだが、このサークルの実力が高く、とても良い演奏であった。ギターパートのリーダーを務めたのは同じギター教室の生徒さんだ。
 永田音響設計による様々な工夫も音質の良さの理由で、可動式の音響反射板は言うに及ばず、座席の座る部分が上がったままでも、板材に切った小さなスリットから吸音させるといった徹底ぶり。客の多い少ないに影響されない音響なのだ。

 一般に、音が良いコンサートホールの形態は「ムジーカ・フェラインザール」に代表されるシューボックスタイプとされている。ここ、Kitaraの大ホールはワインヤード型のオープンステージである。(札幌ウォーカー★クラッシク12月27日の記事に内部写真が掲載されています。私は残念ながら撮影出来ませんでしたのでホワイエを掲載します。)最近このオープンステージタイプに拘った造りのホールが多いようだ。シドニーのオペラハウス、ロスのウォルトデズニーコンサートホール、そしてKitaraの大ホール。
 これらオープンステージが数多く造られたのは、ハンス・シャウロン設計のベルリンフィルハーモニーコンサートホールの影響がある。このベルリンフィルはとても高い評価を得た。ウォルトデズニーコンサートホールを設計したフランク・O・ゲーリーなどは「シューボックスにすべき」という永田音響設計の提言を受け入れず、ハンス・シャウロンへのオマージュからオープンステージにしてしまったという。デコンストラクティブの形態が音響に良いというのはこじつけっぽいが、ベルリンフィルもウォルトデズニーも良い音だそうだ。
 Kitaraの大ホールは和船をモチーフにし、道産木材をふんだんに使った内部空間で、これでもか!と言わんばかりのワインヤードタイプである。木が幸いしてか、マンドリンのようなアコースティックコンサートにはとても合っているホールである。

「札幌コンサートホールKitara」
設計者:ドーコン 竣工:1997年 札幌市中央区中島公園1番15号