複文のタイプ
複文にはいくつかのタイプがあります。
今しがた見た文では、従節は修飾語のうちでも、述語動詞の目的語節の役割を演じていました。つまり、動作(述部)の目的=対象を説明していました。
このほかにも、述部をなしている動作や状態の〈原因や理由、前提条件、付帯状況〉を説明する節となる場合があります。例文で見てみましょう。
① [激しい暴風雨の接近が予想されたため]、港に停泊していた貨物船はその日の出航を見合わせた。
② 芍薬の花は、[初夏の雨を浴びて]、ひと際美しい。
③ [寒冷前線がすっかり通り過ぎれば]、激しい雷雨もおさまり、天候は急速に回復していくだろう。
④ 雪原に残る野兎の足跡は、[右に揺れたり左に揺れたりしながら]、[行ったり来たりの気紛れな曲線を描いて]、丘の向こうに消えていた。
①では、[ ]の節は、貨物船が出航を見合わせたという動作の理由・原因を示しています。
②でも、花がひと際美しい理由・原因が説明されています。ここでは、経緯というかできごとの時間的順序も示されています。
③の文で、従節は、天候の予測の前提条件(仮定)が示されています。ただし、ここで、「雷雨もおさまり」と「天候は急速に回復するだろう」という2つの述語は、重文の関係で並んでいます。
④では、[ ]が2つあります。両方ともに、足跡が丘の向こうに消えていく「付帯状況」を説明しています。付帯状況とは、ある動作や状態が進行・存在するうえでの付随的な同時並行的な動作や状態を意味します。
ここでも、[ ]以外の部分が文の主節です。意味の理解のためには、主節(の主語=述語)の意味することをまず理解し、そのことの理由・原因や条件などを詳しく把握して、文脈を正確・精密につかむこになります。
以上で見たのは、主節の述部(どうする/どうなる)の原因や理由、条件や付帯状況を説明するという文の構造・仕組みです。
こういう文を書こうと思ったら、あらかじめ文の組立て=設計を考えておかなければなりません。
また、こういう文構造の設計や分析をいつも考えていると、外国語からの翻訳、外国語への翻訳においても、この技法が適用できます。