映画に 乾杯! / 知の彷徨者(さまよいびと)

名作映画に描かれている人物、物語、事件、時代背景などについて思いをめぐらせ、社会史的な視点で考察します。

「ことば」と哲学 14

2013-07-17 21:06:58 | 科学論

より複雑な文の構造と修飾語

 では、より複合的で高度な文の構造を分析するという角度から、修飾語の仕組みや役割を考えてみましょう。これは、修飾語の応用編です。

■少し複雑な修飾語■

 次の文の[ ]【 】で囲んだ修飾語が、どの言葉(文節)にかかっているか考えてみましょう。【 】は、[ ]よりも大きなまとまり(括り)です。

① 【[重い荷を][背負った]】山男たちは、【[高い][嶺を]】越えていった。
② [実際の]風景は、【[写真よりも][ずっと]】美しい。
③ 彼が[任された]仕事は、[思ったとおり]、【[非常に][難しい]】仕事だった。

 ①について: 「重い荷を」は「背負った」を修飾。背負うものが何かを説明しています。そして、これらの語群が全体として「山男たちは」を修飾しています(どんな「山男たち」なのかを説明)。
 「高い」は「嶺を」にかかり、これらがまとまって、「越えていった」を修飾しています。越えていった場所を説明するわけです。

 ②について: 「実際の」は「風景は」にかかる。「写真よりも」は「美しい」にかかり、「ずっと」も同じです。どちらも美しさの度合いを説明しています。そして、これらは合体して、これまた「美しい」を修飾しています。

 ③について: 「任された」は「仕事は」にかかり、「思ったとおり」は「難しい」にかかります。ただし、より厳密に「難しい仕事だった」にかかるので、「難しい」だけでは不完全だ、と見ることもできます。「非常に」は「難しい」に、「難しい」は「仕事だった」にかかり、これらが一体となって「仕事だった」を修飾します。
 ③の「思ったとおり」のように、どこにかかるか判定が難しい場合もあります。その場合は、許される範囲で、より大きなブロックに関係させておきます。

 ここで重要なのは、自分で書く修飾語がどこに直接にかかるか(どこにかかわらせたいか)を、明確に自覚して文章をつくらなければならない、ということです。どの語(の属性)を詳しく特定したいのかを意識して文章を書くこと。

■主語=述語関係の並存と重層■

いましがた見た例文①では、「山男たちは」を修飾する「【[重い荷を][背負った]】」のなかには、修飾語と述語の関係が含まれています。そして、「重い荷…男たちは」が全体として、この文全体の「主語のはたらきをする語群」をなしています。
 この語群を、「主部」(主語のブロック)と呼びます。

 これに対して、「高い嶺を越えていった」は全体として「述語のはたらきをする語群」をつくっています。これを「述部」と呼びます。
 語群として修飾語になるブロックを、「修飾部」と」呼ぶことができます。しかし、話がややこしくなるので、ここでは度外視します。

 ここで意識してほしいことは、1つの文のなかに、主語=述語関係が2通り以上成り立っていることです。これには、
 ①単に並列・並立している場合
と、
 ②重層的な構造になっている場合
とがあります。
 次の例文を見てください。

① 風は横殴りに吹きまくり、波は大きくうねっていた。
② 私は、街路を役人たちが通り過ぎるのを、眺めていた。

 ①では、「風が吹きまくる」ことと「波が大きくうねっている」ことが、ただ並立し、同じ重さで並んでいます。文法上は、因果関係が示されているわけではないので、この2つの部分の順序を入れ換えても、文脈上の意味は変わりません。
 つまり、

 波は大きくうねり、風は横殴りに吹きまくっていた。

でも、ほぼ同じ意味の文になります。
 つまり、主語=述語関係が2つあって、並立しているのですが、これを「重文」といいます。文が単純に重ねられているということです。

 これに対して、②では「私は、眺めていた=A」と「街路を役人たちが通り過ぎる=B」というように、主語=述語関係がやはり2つですが、これらは入れ換えができません。文は立体的になっていて、Aの述部の「眺める」という動詞の客語=目的語がB全体なのです。
 つまり、AとBは「入れ子」構造、重層的な仕組みになっていて、Aという主語=述語関係の部分としてBがはめ込まれているのです。Bは全体として、「眺めていた」という述語の修飾語となっていて、文全体の大きな構造から見て、述部の一部分をなしているのです。
 このような仕組みの文を「複文」といいます。
 この文の場合、ヨーロッパ語の文法に倣って、Bの部分を「目的語節」と呼ぶことにします。主語=述語関係をつくる語群を「節」と呼び、この節が、文全体の述語動詞の目的語となっているということです。

 ところで、このBの節は、Aと比較すると、文全体のうち付属的ないし従属的な位置づけになっています。中心的ないし支配的な節はAの部分です。そこで、Aを「主節」ないし「独立節」、Bを「従節」ないし「従属節」と名づけておきます。複文を書いたり読んだりする場合、最も重要なことは、どれが「主」でどれが「従」なのかを素早く読み取り、文の骨格と組み立てを理解することです。
 この技術・技能を身につければ、文章を速く読み、そして書く能力を養うことにつながります。



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