「シン・クライアント(Thin Client)」といえば,HDDが内蔵されておらず,リモート・デスクトップ・サーバ(ターミナルサーバ,プレゼンテーションサーバ)に接続し,それに対する単純な入出力機能しか持たない低価格なクライアント端末と言うイメージが私にはある.いわば,「ゲームコントローラの代わりに,キーボードとマウスをくっつけた,高解像度表示のネットワーク機能付きテレビゲーム機」とでも言ったイメージだ.私は時々,Win98SEマシンから,WindowsXP PROにリモートデスクで接続し,操作を行うことがあるが,別段不自由を感じない.ちなみにこのWin98SEマシンは,233MhzのCPUと64MBのメモリしか持っていない.それゆえ,「シン・クライアントは安いはず」と,常々思っているのだが,実際はそうはいかない.
以前の記事「HDDレスのノート型端末 FLORA Se210 登場」で紹介した端末も,最低価格が26万円であり,私のイメージするハードウエアとしてのシン・クライアントからはほど遠い.
ところが7日に,私のイメージするシン・クライアントに,非常に近いマシンの発売が発表された.HPの「HP t5710 Thin Client」がそれだ.主なスペックは…
「HP t5710 Thin Client」のOSやその設定はフラッシュに保存されるため,OSの更新にも対応可能.これらのハードウエアの省略や,省電力CPUであるTransmeta(涙)のCrusoe800MHzを使用しているためか,消費電力は最大でも40Wと最近のPCと比べて,これまたかなり小さい.熱発生も少ないため,ファンは内蔵されておらず,ある意味では「究極の節電・無音・小型デスクトップマシン」とも言える.
さらにご存じのようにシン・クライアントの特徴の一つとしては,「セキュリティの確保のしやすさ」がある.「HP t5710 Thin Client」は,セキュリティ機能として,
問題の価格だが,¥60,900と決して安いとは言えない.事実,この値段ならばOS付のPCが購入できてしまう.しかも,見えないコストとして,サーバマシンのハードウエア料金(最も安いエントリー向けサーバのHPの例),サーバ・ライセンス料金,クライアント・ライセンス料金(CAL)(例:HPのWebショップならば,Windows Server 2003 Standard Edition(5CAL)で¥80,000,サーバなし5CALのみなら¥31,500)が別途かかることになる.これらはサーバに接続するシン・クライアントの台数で割り算されるが,サーバOSのライセンス料金を台数で割った単価(上記の例ならば,¥80,000÷5クライアント=¥16,000)は,だいたいWindowsXPの価格に近いので,OSにかかる経費から見ると,「¥60,900」は,PCで言えば「OS無しのマシン価格(但し,サーバ機分価格を含まない)」と見なしていいだろう.
試しに,1台当たりのサーバコスト(ハードとOSのみ)を試算してみた.「P4-3.2Ghz, 512MB, RAID5(ホットプラグ対応SATA80GB*3), FDDなし,保守無し」と,ぎりぎりまで能力を絞るカスタマイズを施した,HPの最も安いエントリー向けサーバProLiant ML110 G2に,Windows Server 2003 Standard Edition(5CAL)をインストールした場合,税込み価格は¥235,200となった.これを単純に5クライアントで割ると,1台当たりのサーバコストは,¥47,040となる.
ここまで「見えないコスト」について見てきたが,「見えないコスト削減」も同時に発生しているのを忘れてはならない.PCを所有する場合よりも,いわゆる,TCOが,より少なくなるからだ.それを価格に反映させたとするのであれば,1台当たりのサーバ経費ぐらいは,差し引くことができるのかもしれない.ここら辺は実に微妙で,運用実績のない「HP t5710 Thin Client」においては,未知数と言える.
いずれにしてもシン・クライアントのハード本体価格として,「HP t5710 Thin Client」は,今までで一番安いのではないかと思う.レガシーなインターフェースが削り,大量生産が可能ならば,まだ価格は安くできそうだ.そうなれば,一般家庭においても「シン・クライアント&ネット家電&ホームサーバ」が浸透する可能性が無いわけではない.「さらば!PC!」と言うわけだ.
今までこの手のコンセプトのマシンは,何度も登場しては消えていった.JavaStation(詳しくはこちら),OracleのNCなどがその代表格だが,今回のシン・クライアントには「セキュリティ確保義務」「個人情報保護法」という強力な助っ人がいる.まずは,HPのお手並み拝見と行きたい.
以前の記事「HDDレスのノート型端末 FLORA Se210 登場」で紹介した端末も,最低価格が26万円であり,私のイメージするハードウエアとしてのシン・クライアントからはほど遠い.
ところが7日に,私のイメージするシン・クライアントに,非常に近いマシンの発売が発表された.HPの「HP t5710 Thin Client」がそれだ.主なスペックは…
- OS:Microsoft Windows XP Embedded Service Pack 2
- CPU: Transmeta Crusoe 800MHz
- フラッシュメモリ: 512MB
- メモリ:512MB DDR SDRAM
- ビデオチップ: ATI Radeon 7000M(メインから16MBシェア)
- インタフェース:RS-232C,パラレル,USB2.0×4,PS/2×1,アナログRGB,マイク,ヘッドフォン,LAN(100BASE-T)
- スロット: PCIスロット×1(PCIスロット拡張キットによる)
- 付属品: 109Aキーボード(PS2),スクロールマウス(PS2)
- 大きさ・重量: W100×D195×H230mm,約1.39kg
- 消費電力: 最大40W
- 付属ソフト:
- リモート管理ソフト:Altiris Deployment Solution 5.6(注:スペックページでは,「Development(開発)」と誤表記されているが,「Deployment(配備)」の誤り,バージョン古い,なぜ?)
- Webブラウザ: Internet Explorer 6.0
- リモート・デスクトップ・クライアント:Microsoft Remote Desktop Protocol(RDP)5.1
- MetaFrameクライアント:Citirix Independent Computing Architecture 8.0
- メディアプレイヤ: Media Player 9
「HP t5710 Thin Client」のOSやその設定はフラッシュに保存されるため,OSの更新にも対応可能.これらのハードウエアの省略や,省電力CPUであるTransmeta(涙)のCrusoe800MHzを使用しているためか,消費電力は最大でも40Wと最近のPCと比べて,これまたかなり小さい.熱発生も少ないため,ファンは内蔵されておらず,ある意味では「究極の節電・無音・小型デスクトップマシン」とも言える.
さらにご存じのようにシン・クライアントの特徴の一つとしては,「セキュリティの確保のしやすさ」がある.「HP t5710 Thin Client」は,セキュリティ機能として,
- 本体が盗まれないためのセキュリティロック(ケーブルはオプション)
- USBメモリ等にファイルをコピーさせないための「USBストレージセキュリティオプション」
- フラッシュメモリの内容を管理者以外に書き換えられないようにするための「エンハンスド・ライト・フィルタ(EWF)」
問題の価格だが,¥60,900と決して安いとは言えない.事実,この値段ならばOS付のPCが購入できてしまう.しかも,見えないコストとして,サーバマシンのハードウエア料金(最も安いエントリー向けサーバのHPの例),サーバ・ライセンス料金,クライアント・ライセンス料金(CAL)(例:HPのWebショップならば,Windows Server 2003 Standard Edition(5CAL)で¥80,000,サーバなし5CALのみなら¥31,500)が別途かかることになる.これらはサーバに接続するシン・クライアントの台数で割り算されるが,サーバOSのライセンス料金を台数で割った単価(上記の例ならば,¥80,000÷5クライアント=¥16,000)は,だいたいWindowsXPの価格に近いので,OSにかかる経費から見ると,「¥60,900」は,PCで言えば「OS無しのマシン価格(但し,サーバ機分価格を含まない)」と見なしていいだろう.
試しに,1台当たりのサーバコスト(ハードとOSのみ)を試算してみた.「P4-3.2Ghz, 512MB, RAID5(ホットプラグ対応SATA80GB*3), FDDなし,保守無し」と,ぎりぎりまで能力を絞るカスタマイズを施した,HPの最も安いエントリー向けサーバProLiant ML110 G2に,Windows Server 2003 Standard Edition(5CAL)をインストールした場合,税込み価格は¥235,200となった.これを単純に5クライアントで割ると,1台当たりのサーバコストは,¥47,040となる.
ここまで「見えないコスト」について見てきたが,「見えないコスト削減」も同時に発生しているのを忘れてはならない.PCを所有する場合よりも,いわゆる,TCOが,より少なくなるからだ.それを価格に反映させたとするのであれば,1台当たりのサーバ経費ぐらいは,差し引くことができるのかもしれない.ここら辺は実に微妙で,運用実績のない「HP t5710 Thin Client」においては,未知数と言える.
いずれにしてもシン・クライアントのハード本体価格として,「HP t5710 Thin Client」は,今までで一番安いのではないかと思う.レガシーなインターフェースが削り,大量生産が可能ならば,まだ価格は安くできそうだ.そうなれば,一般家庭においても「シン・クライアント&ネット家電&ホームサーバ」が浸透する可能性が無いわけではない.「さらば!PC!」と言うわけだ.
今までこの手のコンセプトのマシンは,何度も登場しては消えていった.JavaStation(詳しくはこちら),OracleのNCなどがその代表格だが,今回のシン・クライアントには「セキュリティ確保義務」「個人情報保護法」という強力な助っ人がいる.まずは,HPのお手並み拝見と行きたい.