高速LANを実現するGbEの普及により,パソコン周辺機器や内蔵ボードに関する考え方は,大きく変わりつつある.今までパソコン本体との高速な通信を必要とするために,PCIやCardBusあるいはUSB2.0で接続するしかなかった周辺機器類を,ネットワークに直接接続すると言う動き,すなわち「パソコン周辺機器のネットワーク機器化」だ.
ネットワーク機器ならば,LAN内のすべてのパソコンでその機器を共有できるため,個々のパソコンに周辺機器を購入しなくても済む場合も多い.また,パソコンのプリンタ共有やファイル共有の場合とは違い,共有機器の接続されたパソコンが起動しているかどうかを,使用時に気にする必要もないのもネットワーク機器の特徴だ.
現在,そのような「パソコン周辺機器的なネットワーク機器」というと,プリンタ(プリントサーバ)やNAS(HDD),あるいはカメラ(ネットワークカメラ)といったデバイスが,読者の方々にもなじみ深いと思う.これらのネットワーク機器は,Webページによる設定用ユーザーインターフェースと,イベント通知やコマンド送信を実現するためのメール送受信機能を持つのが一般的だ(即,理解できると思うが,これらのインターフェース等は,OS依存ではない事に注意したい).
一般的に,これらネットワーク機器をパソコンで使用するための設定は,USB接続等のパソコン周辺機器よりも面倒だ.その理由の一つは,ネットワーク機器のIPアドレスにある.ネットワーク機器にもよるが,工場出荷時にIPアドレスが「決め打ち」されている場合があり,それが接続予定のLANのネットワークアドレスと異なる場合がある.このような場合,パソコンとネットワーク機器をLANケーブルで1対1接続し,パソコン側のLANアダプタのネットワークアドレスを,ネットワーク機器のデフォルトのネットワークアドレスに合わせて設定し直し,なおかつ,ネットワーク機器のWebページを表示して,IPアドレスの設定を行わなければならない.
最近は,ルータ等のDHCPサーバが家庭内LAN内に存在するケースも多いためか,IPアドレスが決め打ちされておらず,DHCPによる自動割当がデフォルトとなっているネットワーク機器も増えてきた.しかし,DHCPによる自動割当の場合,ユーザーによるネットワーク機器のIPアドレスが把握が難しく,設定のためには,専用のクライアントソフトをインストールし,そのソフトでLAN内を検索しなければならないこともあるだろう.
このようなIPアドレスの問題に加えて,通信プロトコルがらみの設定もネットワーク機器にはつきものだ.例えばプリントサーバでは,パソコン側に「TCP/IPポートモニタ」を手動セッティングするケースが多い.これもパソコンに直接プリンタを接続する場合には,不要な作業だ.
このように,現在の「パソコン周辺機器的なネットワーク機器」は,パソコンに直接接続する周辺機器とは違い,ある程度のネットワークに関する知識と,作業ための時間を必要とする.しかし,我々はこのような努力をしなくても,簡単にネットワーク機器をパソコンにインストールできるはずではなかったか?そう,あのUPnP(Universal Plug and Play)にさえ,ネットワーク機器が対応していれば…
UPnPは,パソコン直結の周辺機器と同様に,いわゆる「Plug&Play」をネットワーク機器でも可能とする規格だったはずだ.ところが実際には,UPnPの技術ページに書かれている様々な「シナリオ」は,今でも夢物語のままになっている.もっぱら,「MSNメッセンジャーのビデオ・音声チャットのためのルータ規格」としては有名になったUPnPだが,もはやほとんどのルータがUPnPに対応している現在,ユーザはUPnPという規格の存在すら,忘れ去りつつある.
本来のUPnPはもちろん,ルータ(Internet Gateway Device)のみに関する規格ではない.実際,UPnPの標準規格書には,下記のネットワーク機器が規格化されている.
実は,UPnPを利用したネットワーク機器には,いくつかの問題があったのだ.「PNP-X Implementer’s Guide」によると,次の点がパソコン直結の周辺機器とは異なる.
おそらくこの他にも「セキュリティ問題」をあげる方もいるかもしれない.このような理由により,ポート1900と5000がファイヤーウォールによってデフォルトでブロックされたり,UPnP無効化Tipsなどが出てくるのだろう.このような逆風の中では,UPnP対応ネットワーク機器の販売は難しい.
そんな状況下,MS主催のハードウェア開発者会議「WinHEC 2005」のレポートの中におもしろい記事を見つけた.次期Windowsの「Longhorn」で採用されるかもしれない,ネットワーク機器のインストールに関する規格だ.
「PnP-X(Plug&Play Extensions for Network Connected Device)」は,従来のUPnPを改良したネットワーク機器をインストールするしくみだ.詳しくは,アーキテクチャーを示したスライド画像を見て欲しいが,PnP-Xは,ネットワークをPCIやUSBなどと同等に扱えるようにする上層レイヤーと,従来UPnPで「ネットワーク機器発見と機能の把握」のため使用されていたSSDP(Simple Service Discover Protocol),そしてUPnPとは異なる新たな発見技術「WS-Discovery(Web Service Discoverly)」を下層レイヤーとして持つ.このPnP-Xにより,IPネットワークはUSBやPCIバスと同等と見なされ,結果的にネットワーク機器はパソコン直結周辺機器と同様に扱うことが可能となる.先ほどのUPnPの持つ問題点が克服されるというわけだ.
図の点線からして,「Webサービスを行うネットワーク機器」の発見技術WS-Discoveryがメインのネットワーク機器発見手法であり,UPnPのSSDPは,補助的,もしくは下位互換性のためにあるようだ.PnP-Xのバージョンが上がっていけば,最終的にはUPnPのサポートも終わるのかもしれない.もっとも,次期Windows「Longhorn」までの道のりは長く,また普及にも時間がかかりそうで,あと数年はUPnPの時代(?)が続くことだろう.はたしてその間,「UPnPって,便利だな!」とユーザたちを唸らせるようなUPnP対応ネットワーク機器は発売されるのだろうか?
参考リンク:
ネットワーク機器ならば,LAN内のすべてのパソコンでその機器を共有できるため,個々のパソコンに周辺機器を購入しなくても済む場合も多い.また,パソコンのプリンタ共有やファイル共有の場合とは違い,共有機器の接続されたパソコンが起動しているかどうかを,使用時に気にする必要もないのもネットワーク機器の特徴だ.
現在,そのような「パソコン周辺機器的なネットワーク機器」というと,プリンタ(プリントサーバ)やNAS(HDD),あるいはカメラ(ネットワークカメラ)といったデバイスが,読者の方々にもなじみ深いと思う.これらのネットワーク機器は,Webページによる設定用ユーザーインターフェースと,イベント通知やコマンド送信を実現するためのメール送受信機能を持つのが一般的だ(即,理解できると思うが,これらのインターフェース等は,OS依存ではない事に注意したい).
一般的に,これらネットワーク機器をパソコンで使用するための設定は,USB接続等のパソコン周辺機器よりも面倒だ.その理由の一つは,ネットワーク機器のIPアドレスにある.ネットワーク機器にもよるが,工場出荷時にIPアドレスが「決め打ち」されている場合があり,それが接続予定のLANのネットワークアドレスと異なる場合がある.このような場合,パソコンとネットワーク機器をLANケーブルで1対1接続し,パソコン側のLANアダプタのネットワークアドレスを,ネットワーク機器のデフォルトのネットワークアドレスに合わせて設定し直し,なおかつ,ネットワーク機器のWebページを表示して,IPアドレスの設定を行わなければならない.
最近は,ルータ等のDHCPサーバが家庭内LAN内に存在するケースも多いためか,IPアドレスが決め打ちされておらず,DHCPによる自動割当がデフォルトとなっているネットワーク機器も増えてきた.しかし,DHCPによる自動割当の場合,ユーザーによるネットワーク機器のIPアドレスが把握が難しく,設定のためには,専用のクライアントソフトをインストールし,そのソフトでLAN内を検索しなければならないこともあるだろう.
このようなIPアドレスの問題に加えて,通信プロトコルがらみの設定もネットワーク機器にはつきものだ.例えばプリントサーバでは,パソコン側に「TCP/IPポートモニタ」を手動セッティングするケースが多い.これもパソコンに直接プリンタを接続する場合には,不要な作業だ.
このように,現在の「パソコン周辺機器的なネットワーク機器」は,パソコンに直接接続する周辺機器とは違い,ある程度のネットワークに関する知識と,作業ための時間を必要とする.しかし,我々はこのような努力をしなくても,簡単にネットワーク機器をパソコンにインストールできるはずではなかったか?そう,あのUPnP(Universal Plug and Play)にさえ,ネットワーク機器が対応していれば…
UPnPは,パソコン直結の周辺機器と同様に,いわゆる「Plug&Play」をネットワーク機器でも可能とする規格だったはずだ.ところが実際には,UPnPの技術ページに書かれている様々な「シナリオ」は,今でも夢物語のままになっている.もっぱら,「MSNメッセンジャーのビデオ・音声チャットのためのルータ規格」としては有名になったUPnPだが,もはやほとんどのルータがUPnPに対応している現在,ユーザはUPnPという規格の存在すら,忘れ去りつつある.
本来のUPnPはもちろん,ルータ(Internet Gateway Device)のみに関する規格ではない.実際,UPnPの標準規格書には,下記のネットワーク機器が規格化されている.
- ルータ:Internet Gateway Device
- メディアサーバとクライアント:MediaServer, MediaRenderer
- プリンタ,プリントサーバ:Printer Device, Print Basic Service
- スキャナ:Scanner (External Activity, Feeder, Scan, Scanner)
- 空調コントロールHVAC
- 無線LANアクセスポイント:WLAN Access Point Device
- 照明コントロール:Lighting Controls
- ネットワークカメラ:Digital Security Camera
実は,UPnPを利用したネットワーク機器には,いくつかの問題があったのだ.「PNP-X Implementer’s Guide」によると,次の点がパソコン直結の周辺機器とは異なる.
- デバイス検出とドライバ・インストール
- 設定操作用ユーザーインタフェース
- ドライバ更新の方法
おそらくこの他にも「セキュリティ問題」をあげる方もいるかもしれない.このような理由により,ポート1900と5000がファイヤーウォールによってデフォルトでブロックされたり,UPnP無効化Tipsなどが出てくるのだろう.このような逆風の中では,UPnP対応ネットワーク機器の販売は難しい.
そんな状況下,MS主催のハードウェア開発者会議「WinHEC 2005」のレポートの中におもしろい記事を見つけた.次期Windowsの「Longhorn」で採用されるかもしれない,ネットワーク機器のインストールに関する規格だ.
「PnP-X(Plug&Play Extensions for Network Connected Device)」は,従来のUPnPを改良したネットワーク機器をインストールするしくみだ.詳しくは,アーキテクチャーを示したスライド画像を見て欲しいが,PnP-Xは,ネットワークをPCIやUSBなどと同等に扱えるようにする上層レイヤーと,従来UPnPで「ネットワーク機器発見と機能の把握」のため使用されていたSSDP(Simple Service Discover Protocol),そしてUPnPとは異なる新たな発見技術「WS-Discovery(Web Service Discoverly)」を下層レイヤーとして持つ.このPnP-Xにより,IPネットワークはUSBやPCIバスと同等と見なされ,結果的にネットワーク機器はパソコン直結周辺機器と同様に扱うことが可能となる.先ほどのUPnPの持つ問題点が克服されるというわけだ.
図の点線からして,「Webサービスを行うネットワーク機器」の発見技術WS-Discoveryがメインのネットワーク機器発見手法であり,UPnPのSSDPは,補助的,もしくは下位互換性のためにあるようだ.PnP-Xのバージョンが上がっていけば,最終的にはUPnPのサポートも終わるのかもしれない.もっとも,次期Windows「Longhorn」までの道のりは長く,また普及にも時間がかかりそうで,あと数年はUPnPの時代(?)が続くことだろう.はたしてその間,「UPnPって,便利だな!」とユーザたちを唸らせるようなUPnP対応ネットワーク機器は発売されるのだろうか?
参考リンク: