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PCとネットワークに関するニュースコラム.

新登場!MSNメッセンジャー7.0正式版 - 「ビデオ会話」の技術的側面

2005-04-08 05:44:51 | ネットワーク技術
 多くのメジャーなPCニュース系サイトで取り上げられたように,本日7日,コンシュマー向けインスタントメッセージングソフトの代表格「MSNメッセンジャー7.0正式版(Build7.0.0777)」がリリースされた.既に先行公開されていた「MSNメッセンジャー7.0お試し版(ベータ版)」よりも,様々な機能が追加されている.

 ベータ版からの主な変更点は…
  • メンバーを300人まで追加できる
  • ビデオ会話」機能の追加(「ビデオチャット」ではない.詳細は後述)
  • サーバー経由での音声チャット
  • 写真共有機能の無料化
  • メンバーの今聞いている音楽のタイトル表示及びMSNミュージックとの連携
  • 表示メッセージ機能の追加
  • MSNスペースのマイスペースへの移動ボタン追加
  • メンバリストの各メンバ状態アイコンの代わりに,メンバ画像を表示
  • 「ウインク」のアニメ変更,及び有償提供
  • 「シェイク」の時間を短くした
  • 文字や背景,表示アイコンをD&Dで設定可能
  • コンテンツパックの提供:カスタマイズされた絵文字,背景,表示アイコン,ウインクのセット(現在は提供されていない)
  • サインインする前の状態のデフォルト化
  • Passport にサインインするときに一覧に表示される名前の編集
 この他に現在,日本でサポートされていない新機能としては
  • 有料のビデオコールを申し込んで高品質のビデオ機能と音声機能を利用する
  • ダイナミック表示アイコン(アバター機能)の有償提供
  • musicmix: 特定のメンバの間で音楽をリストに投稿したり,他のメンバが投稿した音楽を聴く
  • 携帯端末等のSMS(ショートメッセージ・サービス)へのIM送受信
  • SPOT対応腕時計「MSN Direct Watch」へのIM送信
 これらの新機能の中で,特に私が気に入ったものは「表示メッセージ」機能だ.自分としては今まで,MSNメッセンジャーの「状態」の詳細をメンバに知らせるため,「WaterMind@修理中」と言った風に表示名を変えて対処してきた.今回の新機能「表示メッセージ」を使えば,表示名は変えずに表示メッセージだけ打ち直せば,「状態」の詳細をメンバに知らせることができる.但し,Yahoo!メッセンジャーのように,以前に入力した表示メッセージの履歴から,表示メッセージを選択することはできない.この点は早く改善して欲しいと思う.

 さて新機能の使い方や紹介は,他のサイトやオンラインヘルプに任せるとして,我々は新機能の技術的側面,特に「ビデオ会話」についてを見ていこう.

 新機能「ビデオ会話」は,従来の「ビデオチャット」とは全く似て非なるもので,ロジクールが新たに開発したアーキテクチャーを採用した,より高品位な「TV電話」を実現した機能だ.

 「ビデオ会話」機能の特徴としては…
  • ブロードバンドに対応
  • 接続性の改善:サーバー経由通信であるため,従来,ファイヤーウォールのためにビデオチャットできなかった環境でも,できる可能性が大きくなった.
  • 解像度の拡張による画像の不鮮明さ排除
  • ビデオ画像の全画面表示
  • 音声とビデオのずれを補正したスムーズな映像
  • 他のオペレーティング システムを使用しているメンバとの接続をサポート
 従来採用されてきた,UPnP対応ルーター経由のナローバンドでP2Pで通信する「ビデオチャット」の場合,音声と映像はそれぞれ独立した機能であったため,音声と映像がシンクロしない場合があった(注:私の推測).今回の「ビデオ会話」では,音声と映像はミックスして,同時に1つのストリームにビデオ・エンコードされるため,このような問題は発生しない(注:具体的な技術の詳細は,公開されていないので推測)

 ただし,本バージョンでも「ビデオチャット」機能は残されている.今後,「ビデオチャット」の用途は
  1. 自分または相手が,ナローバンド(ダイヤルアップ接続)の場合
  2. 相手が MSN Messenger 7.0 をインストールしていない場合
  3. 相手がビデオ会話を受信できない地域にいる場合
と行ったケースで,「ビデオ会話」が十分に,あるいは全く機能しない場合に用いられることになる.ちなみに,3番目のケースは,おそらく,ビデオ会話中継サーバが設置されていない地域だと思われる.ではなぜ「受信できない」ではないのか?

 おそらく,この3番目のケースで「相手は受信できないのに,送信だけはできる」と想定されているのは,「ビデオ会話」において,「受信がサーバー経由,送信がP2P」で行われるためと想像される.通常,ファイヤーウォールが遮るのは,インターネット側からの接続(インバウンド)であり,インターネット側への接続(アウトバウンド)は遮断されない.つまり「ビデオ会話中継サーバ」の役割は,この受信に関するファイヤーウォール問題を解決することであり,「ビデオ会話」の送信部には何ら携わっていないと推測される.ちなみに従来の「ビデオチャット」は,ルーターのUPnP機能によって,ファイヤーウォール越しであってもP2P接続のみでも送受信していた(ファイヤーウォールに自動的に穴を開けていた).「「ビデオ会話」機能は,MSNメッセンジャーの音声・ビデオチャットに必須とされていた,「双方のルーターがUPnPに対応していなければならない」という条件を消滅させる事に成功したのだ.なお,音声チャットに関しても,本バージョンからP2Pで通信できない場合は,サーバ経由になるとのことだ.

 さて,ここらでまとめてみよう.MSNメッセンジャーの音声・ビデオ機能には次のものがある.
  • 旧バージョン音声チャット:音声のみ,P2P接続,UPnP対応ルータ必須,Win9x系も使用可
  • 新バージョン音声チャット:音声のみ,P2P接続またはサーバ接続,UPnP対応ルータ不要,Win9x系も使用可
  • WebCam:映像のみ,サーバ経由,UPnP対応ルータ不要,Win9x系でも使用可
  • ビデオチャット:音声&映像,P2P接続,UPnP対応ルータ必須,WinXP同士のみ
  • ビデオ会話:音声&映像,送信:P2P接続,受信:サーバ経由,Win9x系でも使用可


 比較のため,Yahoo!メッセンジャー6.0の音声・ビデオ機能についてもあげておこう.
  • ボイス機能:音声のみ,サーバ経由,UPnP対応ルータ不要,Win9x系も使用可
  • ビデオ機能(通常モード):映像のみ,サーバ経由,UPnP対応ルータ不要,Win9x系でも使用可
  • ビデオ機能(拡張ビデオモード):映像のみ,P2P接続,ファイヤーウォール設定必要,Win9x系でも使用可
 見て頂ければわかるが,Yahoo!メッセンジャーは,音声チャットやビデオチャットの品質よりも,接続性を重視している.これに対して,ライバルのMSNメッセンジャーは,接続性よりも音声チャットやビデオチャットの品質を重視してきた.

 MSNメッセンジャー7.0正式版の新機能「ビデオ会話」「新音声チャット」の登場により,Yahoo!メッセンジャーに比べて劣っていた,MSNメッセンジャーの音声・ビデオ機能の接続性の問題は,ほぼ解決された.その上,音声と映像のシンクロ問題も解決したこのMSNメッセンジャー7.0正式版の「ビデオ会話」は,PCによるインターネット経由「TV電話」の中で,最も優れたものになるかもしれない.ただし,その他の多くの機能や操作性については,まだまだYahoo!メッセンジャーに勝っているとは思えない(特に音声・ビデオ・カンファレンス機能は欲しい).しかもちょいと気になるのはYahoo!メッセンジャーの映像機能も,ロジクールの技術を採用している点だ.今後Yahoo!メッセンジャーが,「ビデオ会話」機能と同等の機能を採用する可能性がないわけではない.そして,接続性の良さや高品質音声チャットで知られるネット電話ソフトSkypeも,今後はビデオ機能を持つようになるのかもしれない.これからも,これらのソフトが良い競争を繰り広げて,消費者にメリットをもたらしてもらいたいものだ.

 …とは言うものの,3つもIM系ソフトを常時立ち上げておくのは,メモリ的画面的にちょいとつらいなァ.


参考リンク