WaterMind PC Blog

PCとネットワークに関するニュースコラム.

追悼・HDDメーカー Maxtor

2006-01-17 07:55:13 | ハードウエア

 昨年の年の瀬に飛び込んできた衝撃的なニュースを,読者の皆さんならばよくご存じだろう.12月21日,HDDの有名なブランドであった Maxtor を,やはりHDDの有名ブランド Seagate が買収したのだ.この超大型買収は,PC・IT業界にのみならず,家電業界にも多大な影響をもたらす大事件だ.もちろん,長年,PCを自作してきた者にとっては,計り知れない衝撃だっただろう.特に,Maxtorをずっと愛用してきた,私のようなユーザーにとっては…

 通常,PCのHDDを選定するにあたっては,「接続形式・容量・価格・回転数・バッファ量・シークタイム」といった基本スペックのみならず,次のようなスペックにも注意を払うべきだろう.

  • 寿命(MTBF
  • 発熱量や排熱効率
  • 最高動作環境温度
  • プラッタ数
  • シーク時及びアイドル時の動作音
  • ランダムアクセス向きか,シーケンシャルアクセス向きか
 私の愛用してきた MaxtorDiamondMax シリーズは,速度面や動作音にやや不満があるものの,その他の面では,ほぼ満足できる性能を発揮してくれた.特に,40度近くなる夏期の私の部屋に置いて,今だに1セクタの代替処理も起こさず,飄々と1年10カ月もの間,サーバ動作を続けているDiamondMaxPlus9(6Y120L0)は,Maxtorへの私の信頼を,揺るぎないものにした.

 ただし,その後導入した,MaxLineシリーズは,熱に弱いのか,一夏で20セクタほどの代替処理が行われていた.しかし,シーケンシャルな書き込み速度はかなり速く,バックアップ用のHDDとしての性能を,遺憾なく発揮してくれた.

 もちろんSeagateも使ってこなかったわけではない.特に最初に購入した 流体軸受barracuda IV(ST380021A) は,衝撃的ですらあった.2002年6月に購入したこのHDDは,自分にとっては初めて出会った「無音HDD」だったのだ.しかし,そのモデルかどうかは失念したが,その後,強烈に発熱するモデルに出くわして,運用中に大量のバッドセクタを発生させてしまった経験があり,それ以来Seagateから遠ざかってしまった.

 「強烈に発熱」というフレーズは,正確ではないのかも知れない.というのもこのトラブルの原因は,実際には「発熱」と言うよりも,「排熱」に問題があったと推測されるからだ.おそらく静音化のためだろうが,このHDDの裏(基盤側)は,スポンジを貼り付けた金属板でフタがされており,とても効率よく排熱出来る構造とは思えなかった.

 このSeageteの静音化へのこだわりは,パフォーマンスの低い廉価版モデルでも見られた.廉価版U4シリーズから始まったと記憶しているが,これら廉価版のHDDには,いわば裸ではなく,「パンツ」をはいていた.これが有名なSeageteの「ゴムパンツ」だが,これは防振用=静音のための着用だったようだ.しかしやはり,HDD表面を被ってしまうこのゴムパンツは,排熱の観点から見れば,邪魔者以外の何者でもなかった.

 自分の経験からすると,Maxtorは,先進的機能の取り込みには消極的だったものの,「標準的技術で壊れにくいHDD」を作り続けてきた気がする.今後は,燃えたチップで火傷した思い出のあるQuantumFireballシリーズが,MaxtorによるQuantumHDD部門買収後も発売され続けたように,SeageteからDiamondMaxシリーズやMaXLineシリーズが発売され続けるのだろうか?少なくとも,MaXLineシリーズやAtlasシリーズといった,企業向けの製品ラインについては,継続して製造されるとは思うが,仮にデスクトップ向けのDiamondMaxシリーズが製造中止になった場合,Maxtor御用達のユーザーは,どのメーカーの製品を今後購入するのだろうか?私としてはHitachi(HGST)が第1候補としてあげられるが…


参考資料:

さらばPentiumM,こんにちはCore

2006-01-08 05:38:00 | ハードウエア
あけましておめでとうございます.今回も手短に…

 「Pentium」といえば,ご存じの通り,現在でも頻繁に用いられるIntelのCPUの名称だ.詳しくはWikipediaの記述を読んで頂きたいが,本来このCPUは,「i586」という無味乾燥な呼称を予定されていた.しかし諸事情により,「5」を示すギリシア語と「要素」を示すラテン語から造語され,「Pentium」と呼称されることとなった.すなわち,一般的なLSIやICと同様に,このCPUにも,その呼称として数字(世代番号)が,密かに(?)割り当てられていたわけだ.

 このような命名方法は,「8080」などの8Bit CPU時代から,30年近くPCに関わっている私にとっては,なじみ深い慣習であり,重宝もしていた.なぜならCPUの優劣が,その名称である数字によって,簡単に判別できるからだ.例えば「8080」と「8085」ならば,「8085」の方が高性能,「80286」と「80386」ならば,「80386」の方が高性能,といったようにだ.ところが,この長く続いた Intel のセミコンダクタ屋的命名法も,ついに終わりの時を迎えたようだ.

 1月5日,「2006 International CES」の基調講演で,PentiumMの後継のIntel モバイルCPUの名称が,「Intel Core(コードネーム:Yonah)」となると発表された.「Core」のクロック・TDP・ラインナップについては,ITMediaの記事を参照して欲しい.基本的にはデュアルコアCPU(「Core Duo」)なのだが,現行のデュアルコアCPU「Pentium D」と異なり,同じくデュアルコアCPUのAMD「Athlon 64 X2」と同様,2つのコアがFSBを共有する.ちなみに二次キャッシュは個別ではなく,2つのコアで共有し,コア毎のキャッシュ割当量を動的に変化させる方法を採用している.但し,「EM64T」機能はないので,「Windows XP x64 Edition」等の 64bit OS は使用出来ない.詳しくは,アキバ総研の記事を参照して欲しい.

 すでに,この新CPUを搭載した企業向けノートPCが,NEC富士通から今月中に発売される予定で,今後少なくともほとんどのノートPCには,この「Core」が搭載されることになりそうだ.デスクトップCPUにも,今後,この「Core」が採用されるかどうかは,定かではないが,少なくともモバイルCPU分野において,「Pentium(M)」というブランドの確立している名称を, Intel はなぜ捨てる気になったのか?その答えについて,思い当たる節がないわけではない…

 すなわち「Core(核)」と言う名称は,「何かのデジタルデバイスの中心に存在する主要パーツ」を意味して命名されたのではないかということだ.言い換えれば「Core」は,単なるノートPC用CPUとして開発されたのではなく,STBやデジタルTV等のデジタル家電への採用をも視野に入れて開発されたのではないか.

 そしてもう一つ,気になることがある.

 「Core」という名称が,どうしてもSCE・ソニー・IBM・東芝共同開発のPS3用CPU「Cell」を想起させることだ.余談だが「Cell」は9個のコアを持っている(注:PS3では8個のコア).この「Cell」も,PS3だけでなく,サーバや様々なデジタル機器に組み込まれる事を想定しており,組み込み汎用CPUとしての地位を狙っている.これは推測だが,業務用ワークステーションだけではなく,一般のPCへの「Cell」の採用も目論んでいるに違いない.もちろんその為には,「Cell」用のWindowsが開発される必要があるが,Wintel は簡単に分裂しそうもないと考えると,それはかなり難しいことではあるだろう.

 しかしPS3が爆発的に売れれば,「Cell」の単価は,恐ろしく下がる事は間違いない.さらには,コア数増減によるスケーラビリティをも「Cell」は持ち合わせているため,スパコンも含めて,PC以外はすべて「Cell」CPUという Intel にとっては,悪夢のような世界が出現する可能性は否定できない.確かに,Intel は,ここらで手を打つ必要はあったのだろう.

 今後,PCから組み込み分野に攻め込む「核(Core)」と,PS3から攻め込む「細胞(Cell)」の壮絶な戦いが始まるのだろうか?確かに「細胞」よりも,「核」は固そうではある.しかし,その「核」を包み込んでいるは,「細胞」なのだが…