PCユーザーならば,自作PC派でなくても,猛暑のこの夏,PCの各パーツの温度は気になるところだろう.最近のメーカー製デスクトップPCは,タワー型からコンパクト型にシフトしており,結果的にPC内部を冷却するためのエアフローの確保が難しくなってきている.しかも省スペースのみならず,静音性も同時に要求されるコンパクト・デスクトップPCにおいては,密閉度が高くなっており,よりエアフローの確保は難しい.
PCの内部パーツの中でも特に,温度が寿命や故障と密接な関係のあるHDDについては,常時温度をモニタし,温度が高いようならば,何らかの対策を施したいところだ.上記リンクページにもあるように,最近のHDDには温度センサーが内蔵されているため,HDDのS.M.A.R.T.(注:HDDの健康状態自己診断)機能にアクセスすれば,この温度センサーの値を読み出すことができる.この機能を利用したフリーのHDD温度表示ソフトの代表格は,DTempとHDDLifeといったところだろう.これらのソフトを使用すれば,タスクトレイ内にHDD温度を常時表示でき,温度が設定温度よりも高くなった場合には警告を発してくれる.
しかし,特にPC自作派でPCをサーバとして連続稼働しているのであれば,HDD温度のみならず,CPU温度や,HDDの他のS.M.A.R.T.指標(注:例えば,故障の予期に重要なリアロケーション),さらにはファン回転数や各種電圧等もモニタしたくなるだろう.最近のマザーボードには,ハードウエアモニタソフトが付属しているため,S.M.A.R.T.モニタソフトと付属のハードウエアモニタソフトを併用すれば,ほぼこれらの指標についてはモニタできる.しかしながら,2つのソフトを併用すれば,表示部位がそれぞれのソフトに分かれてしまうため,それこそsmartではない.
ここで登場するのが,有名なフリーソフトであるハードウエアモニタMBM5だ.MBM5ならば,HDD温度のみならず,CPU温度やファン回転数等をひとまとめ(Dashboard)にして,常時表示することができる.但しMBM5では,HDD温度以外のS.M.A.R.T.指標を得ることができない.そのため,MBM5と,他のS.M.A.R.T.モニタソフトの併用が推奨される.つまり,HDD温度表示はMBM5に任せ,その他のS.M.A.R.T.指標のモニタを,別のS.M.A.R.T.モニタソフト(注:HDD温度表示をオフに設定する)に任せるという方法だ.
さてこの他にも,サーバ動作させているPCについては,気になる指標がある.例えば,ネットワークトラフィックもその一つだ.もちろんWindowsXPのタスクマネージャやシステムモニタでも,モニタは可能ではあるが,さすがに常時表示向きではない.またFTPサーバなどを運用している場合は,HDDの空き容量も気になることだろう.
このように,常時運用するPCについては,自動車のダッシュボードのように,常時,様々なハードウエア指標をモニタ・表示しておくべきだろう.私のメインマシンはサーバ的運用だが,これらの指標をモニタ・表示するために,
の3つのフリーのモニタソフトを併用してきた.これらのソフトのコンビネーションは,問題も発生せず,すこぶる快適だったのだが,一つだけ問題があった.その問題点とは,MBM5の表示部位(Dashboard)の面積が大きく,じゃまなことだった.Dashboardを,17インチ液晶モニタの画面右下隅に置きたいのだが,その場所には既に,常時表示している2つのメッセンジャーのどちらかが居座っている.事実上,私のメインマシンの画面右端一列は,これらメッセンジャーソフト群(MSN,Yahoo!,Skype)の定位置だ.そこでやむを得ず,Dashboardをアルファブレンディングにより,半透明表示させ,メッセンジャーの上にオーバーラップさせているのだが,それでもじゃまな感じは残っていた.
そんなある日のこと,私は以前から気になっていたフリーソフトのWebページを見ていた.そのソフトとは,DesktopSideBarだ.DesktopSideBarは,次世代Windowsである「Windows Vista(コードネーム:Longhorn)」のベータ版に採用されていた画面右端一列に表示されるバーを,現在のWindowsXPで実現したものだ.残念ながら「Windows Vista」のバーと完全に機能的同じではないが,大半の機能を実現できているという.「Windows Vista」では,常時表示系とも言える「時計・カレンダー」「メッセンジャー」「メディアプレイヤー」「システムトレイ」「検索バー」等は,この画面右端のバーに納められるため,画面表示がすっきりするとのことだが,実際にはどうなのだろうかと,日頃疑問に持っていた私は,このDesktopSideBarで感触を確かめて見たかったわけだ.
インストールする前に,スクリーンショットのいくつかに目を通していた私は,その中の一つにギョッとした.なんと,DesktopSideBarの中に,ファンの回転数やら,電圧やらが表示されているではないか!しかも,それぞれの表示が微妙にカスタマイズされている.まさか,DesktopSideBarには,ハードウエアモニタ機能が含まれているのか?!期待に胸をふくらませながら私は,さっそくDesktopSideBarをインストールしてみた.
結論から先に言うと,DesktopSideBar自体は,ハードウエアモニタ機能をほとんど持っていなかった.DesktopSideBarは,一種のプラットフォームと言ってよいぐらいの柔軟な構造を持っており,プラグインによって様々な機能を拡張することができる.そしてこのプラグインの中には,単純に機能を提供するのではなく,他のソフトと通信をするためのインターフェースを提供するプラグインもあった.例えば,MSNメッセンジャー用のプラグインの場合,起動しているMSNメッセンジャーと通信を行い,DesktopSideBar内にメンバーリストとそのオンライン状態を表示する.同様に,DesktopSideBarの「システムパフォーマンス」プラグインは,いくつかの代表的なハードウエアモニタソフト(MBM5とHMonitor)と通信を行い,モニタソフトから得られたハードウエア指標をDesktopSideBar内に表示することができる.逆に言うと,DesktopSideBar単体では,これらのハードウエア指標は得ることができず,必ず他のハードウエアモニタソフトを併用する必要があると言うことだ.
さて,実際にMBM5とDesktopSideBarを併用し,DesktopSideBarをハードウエアモニタとして使用してみた.すると今まで,じゃまだったDashboardを表示する必要が無くなり,たいへんすっきりとハードウエア指標を表示できるようになった(画像参照).しかも,ネットワークトラフィックも表示できるため,TrayMeterを使用する必要もなくなった.それだけではない.今まで時報を鳴らすために使用していた時計ソフト「MFCLOCK」さえも,Alarmプラグインの導入により不要となってしまった.
さらにいろいろなプラグインをインストールし,カスタマイズした結果,意外なことに,もはやDesktopSideBarは,「必須の定番ソフト」といってよいぐらい,私の必需品となってしまった.
ハードウエアモニタ以外で,現在,私が使用している主なプラグイン・パネルは
- Process Viewer :プロセス一覧表示とその終了
- Service:サービス状態一覧とその起動・終了
- DSSHutDown:「再起動」「電源を切るボタン」を表示
- DSCalculator:電卓
- Recycle Bin:ゴミ箱状態表示と「空にする」
- Alarm Panel:アラーム用.設定により1時間毎の時報を鳴らすこともできる.
- Clipboard Viewer:クリップボードの内容を表示
- Skype:Skypeのメンバー状態表示及びアクション
- IP Address:IPアドレス表示
- Image Viewer:画像表示(現在はまだ未完成か?)
- Capture:スクリーンショットを撮る
- WinAmp:WinAmpの制御
- メディアプレイヤー:WMPの制御
- ニュースルーム:RSSニュースティッカー
- スライドショー:画像の連続表示
- 天気:天気予報の表示
- TVCam:接続したPCカメラやTVチューナー映像を表示(チャネル切替もあるが,まだ未完成部分が多い)
この中でも,特に「ニュースルーム」は秀逸で,新着の記事を発見すると,音と共に記事をポップアップしてくれる.これはいつも使用しているRSSバーよりも,便利な機能だ.
DesktopSideBarは,「Windows Vista」のテイストを味わうための「偽物」や「紛い物」ではない.すでに,十分な実用性を持つ「常時表示ソフトのための統一プラットフォーム」だ.今後も様々なプラグインが登場し,他の常駐系ソフトと連携していくことだろう.ただ現在のバージョンでは,Skypeプラグインが原因で,DesktopSideBarが固まるなど不安定な部分があるようなので,十分注意して欲しい.
参考リンク: