猿八座 渡部八太夫

古説経・古浄瑠璃の世界

説経祭文とチョンガレ、そして瞽女唄

2015年07月22日 11時24分07秒 | 調査・研究・紀行
説経祭文の「信徳丸」を依頼されたので、薩摩若太夫正本を探したが、版本に行き着くことができなかった。薩摩派の写本を調べてみると、「善兵衛住処」という、呪いの釘を鍛冶屋に打たせる場面しか残っていない。これは、10年以上前に「祈り釘」という段として節付けしたことがあり、私の譜面が残っている。古説経の信徳丸では無く、説経祭文としての全段が、どこかに残っていないかと、調べている内に、「日本庶民生活資料集成第17巻」に、ようやくその文言を見つけることが出来た。しかし、これは、版本ではなく、新潟県上越市高田の市川信次氏の所蔵する、若太夫正本の写本であると書かれていた。説経祭文が、高田瞽女の段物、祭文松坂の原文テキストとして使われたらしいというのである。そこで、逆に、このテキストを、祭文として採用しうるのかを、確かめる爲に、長岡市在住の瞽女研究家鈴木昭英氏を訪ねた。鈴木氏は、集成17巻の著者である五来重博士(東大)の御弟子さんである。

説経祭文の節を聴いていただいた。
 結論的には、かなりの頻度で、祭文語りやチョンガレがやってきて、若太夫正本を使った語りをしたので、瞽女も同じような演目の段物を、習得するようになったらしいのである。この集成17巻の「写本信徳丸」は、実は、明らかに越後訛りで記録されているのだが、そこに注意をしながら、説経祭文のテキストとして採用してみようと思う。

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