断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

レイのミンスキー本(3)

2016-02-11 21:25:38 | MMT & SFC
すでに何回か書いてきているけれど、
本書の第1章は、Overview of Minsky's main contributions
ということで、ミンスキーの業績を大雑把に概観しているのだが、
その章の最後のほうでは、晩年のミンスキーの思想について、
次のようなことが書かれている。

従来、ミンスキーは、実物投資が最も景気変動に影響するものと考えていた。
米国政府支出はGDPの20%にも及ぶものだったので、これを操作することで
景気変動をコントロールすることができると考えていた時期があったが、
それは、米国の対外経常収支がバランスしており、家計の消費支出が安定していたころのことである。
ところが対外収支の影響が大きくなり、家計の消費支出が、ローンによってかなり不安定になると、
不況期の支出の落ち込みは、以前に比べて非常に大きくなる。ミンスキーがこの点を
意識し始めるようになるのは、90年代になってからのことである。
となると、不況期の完全雇用政府支出予算はGDPの20%どころでは済まなくなってくる。かつ
税収も低下する。
なお、レイによるなら、ミンスキーは税金は、どんなものでもインフレ的と考えていた、とのことである。
(前にもふれたが、これは総需要が常に総供給を上回るような状況の下で
企業が価格支配力を持っている場合には、そのようなことになる。
今日とは、やや状況が違う。)
特に社会保障の源泉税と企業の法人税が
インフレ率を引き上げる。(前に論じたとおり、価格支配力がある場合、
企業は、まず目標税引後利潤を設定し、それに合わせる形で費用を逆算して
販売価格を決定する。そのため、法人税の引き上げはインフレ圧力となる。
また、源泉税の引き上げは、労働運動が強く、労務者が可処分所得を
維持しようとすれば、そのまま貨幣賃金総額の増加につながり、
そしてそれは価格に転嫁されることにならざるを得ない。ここで
これはマクロ的には、法人税や源泉税の増税による可処分所得の減少が
需要を十分に引き下げない場合に当てはまるケースである。)
さらに賃金に対して源泉税が課せられると、
これは経営者に対しては、労務者を機械に置き換えるインセンティブを与えることにつながる。
このため、ミンスキーは法人税と賃金に対する源泉税とに反対していた。これに対する
代替案としてミンスキーが提示したのは、広範な付加価値税である。また、
石油の消費に対する「罪悪」税の活用も主張していた。(実は後の章では、
法人税をゼロにするアイディアが紹介されている。これは、
企業の当期利益が全部株主に配当されたものとみなして
株主にその分を課税する、というものである。)

また、ミンスキーは、政府支出の優先順位を、雇用・児童手当、公共施設投資を上位にし、
防衛および、高齢者・医療・障害手当等に対する給付を除く補助金等の諸支出・給付の
優先順位を下げることを主張していた。これは一つには、雇用プログラムが改善されれば
高齢者向けの所得移転措置を除く全所得移転プログラム費用の削減が
可能になると考えていたからである。アメリカに関しては、
特に黒人貧困層の雇用・所得状況が悪く、これが医療や治安、その他の諸費用を
膨らませている、という認識があるようで、これが改善されれば
諸社会費用は大幅に削減できる、という考えだったようである。
ただし、これまた後の章で説明することになるが、
ケネディ・ジョンソン政権下で行われた「貧困に対する戦争」については
ミンスキーは一貫して批判的であったという。特に「メイク・ワーク」プロジェクトとは
一見すると似ているが、全く異なったものである。
ミンスキーはELR(最後の雇用者)政策を、当時のケインズ派の
「呼び水政策」に代わるものと位置付けていたのである。


マクロ経済政策に関して言うと、
ミンスキーは政府支出が巨額になることで、集計レベルでは、債務の償還が
安定化するという。これは個別企業・銀行の破たんを防ぐという意味ではない。しかし、
債務の償還が安定化することにより、企業の独占価格追及は、弱まるという。
企業がなぜ独占を志向するかというと、
債務償還を確実にするため、巨大化し、価格支配を確立することが必要になるからだ、
と考えていた。したがって政府支出が巨額になり、債務償還が安定すれば
企業の独占への志向は下がると思っていたわけだ。
こうした考え方の背後には、too big to fail を避けなければならない、という
思いがあった。後の章で説明するが、ミンスキーは、
シュンペーターの言う「資本の経済発展」という状況を
望んでいた。そのためには、大企業ではなく、中規模企業及び中規模銀行が発展したほうが
好ましかったのである。
「競争市場は、効率性促進には都合よいが、
市場が生産・加工の十分なレギュレーターであるのは、市場支配や外部性がない場合である」
とも語っていたという。

そして、反トラスト法には、独占企業が発達するのを食い止める力はあるが
小規模企業を育てる力はない。

ミンスキーは反トラスト法のようなものではなく、
もっと中小企業を育成するための政策が必要だと考えていた。

大体、第1章のおしまいの方に書かれていたのは
こんな感じ。そして、第2章の最初の部分が、以前に粗訳したところ。


なんか、急いで書いたせいか、
調子悪い感じだが、
今日はここまで。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿