断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

Money and Banking Part 5 FAQ

2017-03-08 20:49:26 | MMT & SFC

これはもう大分先に取り掛かったもので Part5です。

実は 前回のPart15に続いてPart16も FAQなので、ちょっと話が混乱するかもしれないけれど

FOMCミーティングの議事録をどんなふうに訳したもんか なんか、

よくわかんなかったんだけれど、

取りあえずもう意味が分かればいいや、という結論で。。。。。。

https://drive.google.com/file/d/0Bz2V1zKzg0azenVnNE9jZjd2NXM/view?usp=sharing

 

だいぶ前の話だけれど、 今回も一部 "lend" と "advance" の使い分けのニュアンスが

まあ、なんとなくわかるんだけれど、 訳し分けができなくて、

お尻にlend とadvance をつけてごまかしている。

"lend" というのは、物理的なものを手渡しして貸す、 といったニュアンスであるのに対し、

"advance" というのは 「前払する」「立て替え払いする」というような

ニュアンスなんだろうなあ、、、、ということになるが。。。 取りあえず、本文。。。

 

 

 

 

 

Money and Banking – Part 5

 

Posted on February 7, 2016 by Eric Tymoigne | 9 Comments

By エリック・ティモワーニュ

 前回のブログではFedのバランスシートFedのバランスシートの定義と相互関係貨幣政策の関係を学習した。今回のブログでは、いくつかの貨幣政策及び中央銀行に関するFAQに答えることにする。個々の質問と回答は、それぞれ独立したものとして読めるように書かれている。

 

Q1: Fedは準備の量や貨幣の量を目標にしている/コントロールしている/設定しているのではないか?

  

Fedは準備の量を設定していないし、マネーサプライ(M1)もコントロールしていない。準備を獲得するための費用を設定している。それですべてだ。

  

準備について言うと、そもそもFedは「弾力的通貨」供給のために設立された。つまり、平時・緊急時に関わらず経済システムが必要とするマネタリーベースを供給するためである。経済システムが日常的に必要とするマネタリーベースと無関係にそれを硬直的に設定するという貨幣政策を実行することはその目的に反している。マネーサプライについて言えば、Fedは直接的な影響力を持たない。連邦準備券(FRN)でさえ、民間銀行を通じて供給されており、そして民間銀行は顧客の現金払い戻し要求に従ってのみそれを供給している。FedはFRNを強制的にばらまくことはできない。つまりFRNは貨幣政策を通じて「ヘリコプターからばらまく」わけにはいかない。仮にヘリコプターからばらまくとなると、連邦準備法に違反することになるというのはともかくとして、FRNを拾った国民がそれを銀行に持ち込めば銀行は超過準備を保有することになり、FFRが低下しFedは超過準備を回収してFFRを引き上げようとする――結局元に戻る。

 

Fedはマネーサプライについては、FFR目標を変化させることで間接的な影響力を行使できる。というのは、信用費用が変化すれば債務を発行しようという経済主体の意欲に変化が生じると思われるからであるが、しかしこのリンクは曖昧である(Q10参照)。

 

 Q2: ボルカーの実験は準備目標が可能なことを示したのではなかったのか?

 

 1970年代、マネタリスト派が政策立案者内に一定の影響力を得た。マネタリストの議論によれば準備の量とマネーサプライの間には密接な関係があり、そして中央銀行の役割は準備の量をコントロールしてマネーサプライと最終的にはインフレーションに影響を与えることだ、ということである。Fedはポール・ボルカーのリーダーシップのもと、準備及び貨幣集計量をより密接にコントロールする貨幣政策手続きを実行しようと試みた。これで二けたのインフレ率を飼いならそうと考えたのである。

 

実務的にはFedが行ったことは金利目標を幅の狭いものから幅の広いものへと変更したわけだが、その結果劇的にFFRの水準が引き上げられ変動は大きくなった(図1)。

 

Fedは、準備総量を目標とする政策という言葉で含意されているはずの水準までFFRが気ままに動くことを許したわけではない

 

 

 

 

図1 FFR(玄関の平均及び標準偏差)

出典: Federal Reserve Board, NY Federal Reserve Bank

 

 ボルカーの実験とは実際のところどの程度「マネタリスト」的だったのかについては、論争がある。そしてその論争は、当時のFOMC議事録に反映されている。

 

1. ルース: ではもし借入の水準が我々の予想を上回っても、非借入準備の水準を落とす[ことはできない]のか?もしFF市場での調整を無視してしまえば予想外の借入増加や予想を下回る借入水準になってしまう場合でも、公開市場操作で調整はできないのか?何が起ころうと、供給したり吸収して準備を調整することはできないのか?

 

[…]

 

ボルカー理事長

委員会としては、短期的には[調整]できません。準備の量は固定されているんですから。ある意味では、今のように人々がもっと借りようとし続けるのなら、長期的にはできるでしょう。割引率との差を考えれば、我々が期待しているよりは多くの借入をするかもしれません。しかしある週をとってみれば、固定されているんです。

 

1. ルース:準備を追加せざるを得ないということ?

 

ボルカー理事長 そうせざるを得ないでしょう。

 

1. ルース:[なぜ]準備を追加せざるを得ないんです?準備を追加しなければ、商業銀行がフェデラルファンドを借りるなり買うなりして、FFRが上昇するでしょう。

 

(FOMC meeting, September 1980, page 6)

 

 

ルース氏はFedの態度にまったく不満だった。FedはいまだにFFR目標を持っている。単にその幅が広くなっただけだ。Fedは3か月ごとにM1の成長と結びつけた総準備成長目標を持っているといっているが、もし銀行が目標以上の準備を必要とすれば、FFRに対する圧力を緩和するため目標を超える準備を供給するだろう。

 

ルース氏はこの曖昧な準備目標に反対の論陣を張り、いかなるFFR目標も全面的に放棄し総準備目標を厳格に運用することに賛成した。1981年には、彼はこういっている。

 

私は、明示的にであれ暗黙にであれ、金利をコントロールしようとしながら貨幣目標を達成しようとするのは根本的に矛盾していると思っている。はっきり言っておくが、私は金利[目標]についてはどんな特殊なものも全て完全に廃棄すべきだ、と考えている。(Roos, FOMC meeting, February 1981, page 54)

 

 

大部分の連邦公開市場委員会メンバーはこの貨幣供給量を目標とする立場に反対であった。その理由はそもそもFedの役割は弾力的マネタリーベースを適切に供給することだからである。Fedは準備の量を支配するため設立されたわけではない。銀行間の債務の決済をスムーズにし、レンダー・オブ・ラストリゾートとして行動し、そして金利目標を定めることを通じて流動性問題をなくすために設立されたのである。加えて、銀行が準備を保有する理由は大部分[自分たちの意志ではなく]そうするように求められているからだ。だからもしFedが所要準備を満たすのに十分な準備を供給しなければ銀行は法律を破る[それが正当化される]であろう。

 

実験は、貨幣政策としては失敗であった。Fedは準備・貨幣目標を達成できたことはなかったし、この実験も一つの理由となって巨大な金融不安定性と二番底の不況が引き起こされた。中にはこの実験は長期インフレ率を引き下げるのに重要な役割を果たしたと考える人もいるかもしれないが、そちらに大きく関わっているのは原油価格下落傾向、原油節約政策、大規模な国際労働競争などである。

 

物価を安定させたことはそれほど賞賛されるべきことではないはずです。私は物価上昇の責任のすべてが我々にあるとは思っていません。OPECや食糧問題に散々苦しめられたのです。また、OPECや食糧問題が落ち着いたという事実に貨幣政策がそれほど関係あるとも思っていません。ものすごく長期的な話は別として。 (Teeters, FOMC meeting, July 1981, page 46)

 

 しかし、ボルカーの実験はPR上の成功をおさめた。多くのFOMCメンバーは準備目標が可能ではないことを知っていたが、そのおかげで当時の高金利には自分たちは責任がないと主張することが可能になった。

 

 貨幣集計量は、私たちにとってそれがなければとてもできなかったであろう物事をするための政治的シェルターを提供してくれたものと思っている。(Teeters, FOMC meeting, February 1983, page 26)

 

 

私はこれを重要な議論だと考えており、そして、こうした手法が取られていた本当の理由は基本的には政治的なものだったと思っている。私たちは、いいことだと思っていたわけではないが、実際に自分たちがそうすべきだと考えているようにFFRを動かすためには、わざと曖昧に、判りにくくするしかないと感じていた。つまり、私たちは本当にFFRを動かしたりしていませんよ、準備を目標にしているのであって、市場が勝手にFFRを押し上げているのですよ、というわけだ。当時、こうしたやり方はそれなりに妥当性があったし、私自身ある程度そう思っていた。しかし、時間が経つにつれ私はだんだんこのやり方で、国民、議会、そして市場を騙すこと、そして時には私たち自身を欺くことに不安を感じるようになってきた。(Black, FOMC meeting, March 1988, page 12)

 

 

勿論、FFRが高く、変動が激しくなったのはまさに貨幣政策上の手順変更の結果である。FOMCメンバーの中には、必要とあれば将来も同じことをするつもりだと語った人もいた。

 

 

私としてはこれらに付け加えることは少ししかない。Tom Melzer 氏は多分正しい。実際上の理由でもあるいは今回のように政治的に有利だからという理由でも、可能な場合には必要に応じて焦点を貨幣供給(諸)手段へとそらすでしょう。(Stern, FOMC meeting, December 1989, page 50)

 

 

Q3: FFR目標は、インフレ的か?

  

ボルカー氏の実験の失敗によって、FOMCは1990年半ばに至るまで、オペレーション上不確実性の時代に入った。Fedは幅の狭いFFR目標へと戻った(1991年までは幅は依然として広くとられていたのだが、目標はその幅の中心とされた)。そしてこれはFOMCメンバーにとっては大きな不満であった。

 

我々はプラグマティック・マネタリズムから完全な折衷主義へと進んだ。(Corrigan, FOMC meeting, October 1985, page 33)

 

 

いいえ、私としては我々は解決方法を見つけなければならない特別なオペレーション上の問題を抱えているのだ、と言いたい。FFRを固定するだけ、というのは、私に言わせればもっとも単純な貨幣政策だ。そんなものうまくいかない。(Greenspan, FOMC meeting, October 1990, pages 55–56)

 

 貨幣政策活動を導く貨幣集計量を失ってしまったら、我々は自分たちの取るべき方向を手さぐりするだけの存在になる。

 

(Jordan, FOMC meeting, March 1994, page 49)

 

 

FedはFFRを目標にしていることを公表しようとはしなかった。そして政策上の目的には使えなかったが貨幣集計量の成長幅を目標にしていると説明し続けた。

 

我々が大きな影響力を行使できるということ――我々が金利を引き下げればM2を望みの範囲へと引き上げることができるだろう、という決まり文句――[に対しては]、私としては「ゴミくずだ」と言いたい。そういいながら、私は自問する。「いったい我々はどうすればいいんだ ?」何しろ、私たちの後ろには法規がある。法規さえなければ、そんなもの全部忘れてしまえ、というところです。政策上の目的はないのに、何だってそんなことをしなければならない ? 法律があるから、私たちはこんな見通しなんか公表しなければならない。そうしなければならないのなら、最も害を少なくできるやり方でやらせていただきたいものだ、と、そういうことです。(Greenspan, FOMC meeting, February 1993, page 39)

 

 

実際、私たちはハンフリー=ホーキンスの会合で、Mいくつをどうするというような貨幣政策を論じてはいませんでした。ドン・コーン氏は、ご自分でそうするべきだと考えていることに忠実に話をされているのでしょうが、しかしそれは私たちの貨幣政策に関する考え方とは違っています。(Rivlin, FOMC meeting, February 1998, page 91)

 

 

一般国民にFOMCはFFRの水準を目標にしている、と知らせることはあらゆるマネタリスト原理(準備目標、貨幣乗数理論、貨幣数量説)に反することになったであろう。利子率を目標にすることは、つまり弾力的に準備を供給する(所与のFFRTのもとでホリゼンタルな準備供給を行う)ことは、Fedがもはや貨幣供給量を、したがってインフレーションをコントロールできない、と言っているように思われた。実際FOMCメンバーはそう考えていた。

 

 

Fed内外関わらず多くのアナリストは、FFRを目標の選択肢に用いれば貨幣目標のほうは繰り返しオーバーシューティングすることになるだろう、と論じていた。 (Meulendyke 1998 49)

 

 

FFR目標について語ることはタブーとなり、「委員会は意図的に外部に対してFF目標を公表することやFFRの動きを狭い幅に制限していることがわかるようなことは避けるようになった。」(Kohn, FOMC Transcripts, March 1991, page 1)。

 

 

 

FFR目標以外に何もできないのかという問いに、はいそうですと答える、あなたはそれでいいかもしれないが、私はそんなことは何としてもやりたくないといわざるを得ない。(Greenspan, FOMC transcripts, March 1991, page 2)

 

 

現実問題として、我々は今はFF[R]目標体制になっている。我々はこのことを意図的に公言しないできた。我々が実際にしていることを国民に語ることはいいこととは言えない。そして、そんなことは語らないことが正しいと思う。しかし内部では、我々は皆、我々が何をしているかすべて知っている。(Melzer, FOMC transcripts, March 1991, page 4)

 

 我々はのちになぜマネタリストの全ロジックが壊れているかを見るつもりだ。貨幣政策は常に所与の利率の下で弾力的に準備を供給することに関わっている。このこととインフレの間には、内在的な関係はない。「弾力的に通貨」を供給するとは通常、銀行が望むのであればいくらでも準備の額を供給できるということを意味するだけであり、そして銀行は通常それほど多くの準備を望まない。

 

 このことはボルカーの実験よりはるか前から数多くのエコノミストによく理解されていたことではある(例えば、カルドアを参照)が、FOMCメンバーがFFR目標を素直に受け入れるようになるには1990年代半ばまでかかった。

 

 

 

Q4: Fedが自由に使えるその他の手段は何か?

 

 

貨幣政策は常に少なくともどれか一つの利子率を定めることに常に関わっている。今日ではFedのオペレーションは大部分FF市場を通じたものであるが、それ以外の利子率にも影響を与えるために使えるその他の手段がある。

  

ひとつは(再)割引率で、これは銀行が借入準備を獲得する際の利率である。この金利は現在ではFFR目標より高いが、1960年代半ばから2003年までは通常は割引率の方が低かった。FedはFFRに天井を据えFRRの上方への動きを制限するため、割引率をFFR目標より高くすることを決めた。

 

所要準備率もFFR目標を補助しうる。この比率によって、銀行自身の発行した預金との比率で銀行がバランスシート上に保有していなければならない準備の総額がいくらか決まる。ちなみに今日の合衆国におけるこの比率は以下の通り

 

 

 

 

 

 

もし銀行が小切手口座に1520万ドル以下しか発行していないなら準備を保有する必要はなく、1520万ドルから1億1020万ドルなら3%、それを超えると10%の準備が必要である。

 

この比率はしばしば銀行が小切手口座で信用創造を行う能力との関連で議論されるが、実際の目的はここでもまたFFR目標達成をしやすくすることである。所要準備率を引き上げることで準備に対する需要はより予想しやすくなる。というのは利用可能な準備のうち、より大きな部分を銀行は保有し続けなければならないからである。準備需要がより安定すれば、FFRの変動は減少する(リンク先参照)。

 

 

Q5: QEと資産価格の間のリンクは何か?

 

銀行が超過準備を保有している場合にはリンクは一つではありえない。というのは銀行は超過準備を使って流通市場で資産を購入できるからである。以前のブログでみたとおり、銀行は部門全体としては超過準備を使って外部から資産を購入できるわけではない。銀行は互いに資産を買いあうことはできるが、もしすべての銀行が準備を過剰に抱えていると感じていたとしたらそれもできない。というのはどの銀行も準備を手に入れるため資産を売ろうとしはしないからである。

 

リンクは以下の経路を通じたものである。

 

1. Fedは銀行から多額の証券を購入する。それにより価格が上昇し収益が低下する。

2.  それら証券の収益が低下すれば、経済主体はより高い収益を提供する資産を探そうとする。 銀行が資産を探すときには、キャピタルゲインが大きなものを求める。特に他の銀行が同じ問題を抱えており「より高い収益を探している」と知れば一層である。銀行はそうした証券を買い続けるだろう。その結果証券価格は上昇するが、それもすべてのリスク調整後収益率が均等化するまでのことである。

 

金融企業は次のステップへと向かう。というのはステークホルダーたちに約束した収益率目標を達成しようとするためである。年金受給者は年金ファンドから十分な収益率を期待しているし、富裕層の人はヘッジファンドから十分な収益率を期待しているし、ミューチュアルファンドの株主だって十分な収益率を求めている、、、、、で、彼らは皆四半期ごとに金融会社が約束した目標に見合うようにやってくれているかどうかチェックしている。長期国債はこの約束に合わせる安全で簡単な方法を提供していたのだが、今はもうそうではない。

 

 

Gill Gross (著名なポートフォーリオマネージャーで債券トレードを専門にしている)はこの点を鮮やかに指摘している。彼はFedがFFRを引き上げ目標収益率を簡単に達成できるよう配慮することを期待している。彼はこう 説明している  。FFRが低いと貯蓄者はヘルス・ケアや退職金、その他の費用を支払うのに十分な収益を上げることができない。というのは金融資産の収益率は期待されている7~8%と比較するとあまりに低いからである。もしFedがFFRを引き上げることで手助けしなければ、金融市場参加者は資産側(投機的な、高い信用リスク、および構造化証券)でも負債側(高レバレッジ)でも高いリスクをとることで目標収益率を達成しようとするだろう。

 

 

しかし問題は広範にわたる。生活水準の成長率が低い経済で、どんな理由で7~8%もの収益期待を持続可能だと期待するのだろうか。こうしたことを達成するにはキャピタルゲインやレバレッジを使うしかないが、しかしこれらの組み合わせというのはひどい中毒症状を持つものだ(のちのブログで金融不安定性を扱うときに、その理由を検討するつもりだ)。FedはFFRを引き上げるのではなく、自分で金利所得者になるべきだ。ただし自ら収益率期待を引き下げる金利所得者だ。年率2%で成長する経済では、いくら背伸びしたところで2%を超える実質収益を長期にわたって提供することは不可能である。高齢化社会の挑戦に応じるためには、経済の金融化を進めるよりもっと他の手段 が必要なのである。

 

 

Q6: 準備の水準はいつごろどのようにして危機以前の水準に戻されるだろうか。いわゆる「正常化」(出口)政策について

 

 正常化政策 とはFedが二つのことをしようとする意思のことである。第一に、FFRをもっと正常な水準に引き上げること、第二に、超過準備の水準を危機以前の値に戻すためバランスシートの規模を縮小すること。FFRについては、以前のブログ でいかにしてそれが行われるかを示した。準備残高に関しては、前のブログ でそのドル金額が下記のように決定されることを示した。

 

 

L2 = Fed資産 – (L1 + L3 + L4 + L5 )

 

 

今では大部分のL2が超過準備で構成されている。これは異常だ。このバランスシート方程式を視覚的に表示したのが図2である。

 

 

 

 

 

 

 

 

図2 Fedのバランスシートと準備残高

Sources: Federal Reserve Series H.4.1.

 

 このバランスシート方程式の含意は、準備残高が減少するのは所与の負債残高の下でFedの資産が減少するか、あるいは所与の資産の下でFedの負債が増加するか、何れかの場合だ、ということである。それぞれのケースについて順に見よう。

 

準備預金以外の負債を所与とすれば、準備が減少するのは、Fedが保有する証券に以下のことが生じる場合だけである。

 

 ・Fedに口座を持っていない経済主体によって発行された証券(これを簡略化して「民間証券」と呼ぶことにしよう)が満期となるとき

・Fedが手持ちの証券の一部を銀行に売却すると決定したとき。

  

Fedが財務省証券の満期をそのままにすれば、準備預金ではなく、財務省預金口座(L3)から引き落とされる。

  

Fed保有の民間証券、一般にはエージェンシー保証付きモーゲージ債 agency-guaranteed MBSが満期になると、以下のことが起こる。

 

 

 

 

もしFed保有の全MBSが一斉に満期を迎えると、準備預金の残高は約2兆ドル減少する(Fedは保有しているMBSを大量に売却する計画 を立てているわけではない)。

 

 

資産を所与とすると、準備預金が低下するのは銀行が銀行以外のFed口座開設者に支払いをする必要がある場合か、銀行が準備を現金と取り換える場合である。例えば、財務省が財政余剰で運営されれば準備預金はL2からL3へと移されることになり、減少する。Fedはこれまでも財務省に貨幣管理政策の助力を求めてきたし、今も求めることがあるが(この点は次回のブログで扱う)、Fed自身は負債側に何事かが生じて準備預金に影響するとしてもそれを管理することはほぼできない。

 

 

最後に一つ付け加えると、資産や負債の変化の他にも、準備残高を減らすことなく超過準備を減らす方法がもう一つある。所要準備率を引き上げることである。準備が通常の水準に戻るのがいつになるか、誰にもわからない。減少のペースは経済環境の変化によって変わるだろう。

 

 

Q7: マイナス金利債というのはあるのか?

 

 

これはまさしく2013年的な質問だ。マイナス債というのはないし、過去のブログ でこの点についてはかなり詳細に説明した。思い出してほしいが、Fedは準備の価格を設定している。Fedは自分の望む水準にこれを設定できる。「これがFedのやり方です。嫌ならどうぞお好きに。」

どの金利がゼロ以下になり得るのか。Fedが望むなら、どの水準でもなり得る。

 

 

コリドーの枠組み で運営されている金利(DWR、FFR、IOR)は、Fedの全面的管理下にあり、マイナスにしようと思えば簡単にできる。スウェーデン中央銀行は、コリドーの枠組みの下でこれがどのように行われるかを示した(図4)。スイス中央銀行は、オーバーナイトのインターバンク金利の幅をどのようにしてマイナスにするか示した(幅のあるマイナスFFR)(図3)。

 

 

 

 

 

 

 

図3 オーバーナイト金利目標レンジおよび日中・夜間の金利 (単位:パーセント)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

Figure 4. Corridor of the Sveriges Riksbank, Percent

図4  スェーデン・リクスバンクのコリドー

 

 

 

勿論、もし中央銀行がマイナス金利政策をとり当面それが続くと期待されているとすれば、それはポートフォーリオ戦略に組み込まれるだろうし、長期金利もマイナス領域へと押しやるだろう(図5、6)。しかし、ヨーロッパ中央銀行はさらに進んで大量の政府債券を購入している。そして、金融市場参加者はこうした各国中央銀行の行動に関する通達 を受け、ECBが介入するものという期待に基づき政府債を購入していた。今日、金融市場参加者はECBが多量の証券を買うであろうことを確信しており、それゆえ打歩付きで証券を購入し続けているのである(満期保有時の収益は、マイナスである)(図4)。彼らはECBに売る――唯一満期まで保有し損失を引き受けようという存在に。

 

例えば額面1000ドルの1年物ゼロクーポン債のことを考えよう。通常、この証券は割引価格で取引される。つまり、経済主体はこれを1000ドル未満でしか買わない。というのはクーポンが一切つかないのだから。この証券を購入した者は証券を財務省が満期に1000ドルで買い戻すまで保有し続けることで収入を得る。もし証券を800ドルで購入したのであれば、収益率は$200/$800 = 25% (収益率とは、得たものと払ったものの比率)となる。ユーロ圏の1年物政府証券の収益率がマイナスになるのは、その証券が打歩付きで売られるからである。例えば、もし1年物のゼロクーポン券を1200ドルで購入した場合、満期に1000ドルしか得られなければ、収益率は-$200/$1200 = -17% である。誰かが翌日だか翌月だかにこの証券を例えば1300ドルで購入してくれるという期待がない限り、誰もこれを買わないだろう。ECBはそうするつもりであり、そして満期には300ドルの損失(収益率は-23%)を引き受けるつもりである。その一方で、金融市場参加者は$100/$200 = 8% の収益を得る。

 

 

 

 

 

Source: The Economist

図5 政府債のイールド

 

 

 

 

 

 

Figure 6. スェーデン性負債の収益(単位:パーセント)

Source: Swedish Central Bank

 

 

 

Q8:マイナス金利政策の効果は何か?

 

それはどの金利を念頭に置いているかによる。まずは銀行について考えよう。銀行の利潤を単純化すると以下のようになる。

 

銀行の利潤 = (ROA × その他資産 + IOR x R) – FFR × FF債務

ROAとは銀行が保有している資産の収益率である(例えば1000ドルの抵当を所有しており、そこからの金利収入が5%であるとすると、ROA × 抵当証券 = 5% × $1000 = $50 となる)。IORは準備預金の金利であり、Rは準備預金残高である。FF市場で(Fedまたは銀行以外の市場参加者から)準備を獲得するために発生した負債以外には負債はない(インターバンクローン金利の支払は銀行部門全体では相殺される。つまりある銀行の収入は他の銀行の支出になる)。

 

 

・他の条件にして同一の場合、FFRがマイナスだと銀行は準備を借り受けることで金利を受け取ることになるので、収益が増加する。

・Given everything else, negative IOR lowers the profitability of banks, this is especially significant today given how large reserve balances are.

・他の条件を同一とすると、マイナスIORによって銀行の収益は悪化する。今日これが特に問題になるのは、準備の残高が極端に大きいからである。

 

                  

銀行はいくつかの方法でこれらの影響に対応して、収益性を守ろうとした。マイナスIORに対しては、三つの方法で対抗することができる。

 

 

・顧客の小切手口座に手数料を課す(大口のものにも課したり、手数料無料となる下限の預金残高の額を引き上げるなど)

・銀行のプライムレート(つまり、最も信用力のある経済主体に対する貸出金利)を引き上げる、あるいは、よりリスクの大きな資産を入手してROAを引き上げる

・レバレッジを引き上げる

 

 

もし銀行口座手数料をかなり大きな額にするなら、顧客は現金を払い戻しして口座を閉じようとするかもしれないが、実際には以下の条件を考えれば銀行にとって大した問題にはならない。

 

 

1. FFRがマイナスになら、銀行は必要な準備をいつでも借入れられるし、そうすることで費用が掛かるどころか報酬を得ることになる。今日銀行は過剰な準備を抱えているのでこの効果は限られたものでしかないし、さらに現金払い戻しに備えることも容易になる。

2. 銀行は貸付金advances を預金口座に振り込むし、電子決済といった業務もあるので、預金がなくなることはない。加えて、誰かが現金(連銀券)を入手するには、まず誰かがそれに先立って預金口座を持っていなければならないし、銀行は貸し出しをすることでこうした口座に残高を創り出す。貸付金には金利が支払われる。

 

 

IORの付利をマイナスにする場合、本当の問題は巨額の超過準備という文脈で生じる。これは一種の税金で、銀行にはよりリスクをとるようなインセンティブが生じる。この効果は、銀行にはFF市場で借り入れをする必要がなくそれゆえFFRをマイナスンすることでマイナスIORの負の影響を相殺する能力が限られているのだから、きわめて強いものになる。

 

 

マイナスの国債金利について言うと、その影響は債券保有者が中央銀行にそれを売却することによってキャピタルゲインを得られることである。中央銀行としては債権保有者がそのキャピタルゲインを消費に使い、それが経済を刺激することを望んでいる。現在の資産格差を所与とすると、このチャンネルの効果は疑わしい。一種のトリクルダウン経済である。

 

 

Q9 中央銀行はマイナス金利及びQEをどう言って正当化していたのか。

 

 

次のようなロジックだ。

 

1. デフレ(あるいは低インフレ/ゼロインフレ)局面ではマイナス政策金利によって、実質金利を低く保つことができる(実質金利を下げることができる)。経済主体が債務を発行する際に関心があるのは実質金利(名目金利マイナスインフレ率)である。もし政策金利がマイナスになれば、経済主体に債務発行のインセンティブが与えられるであろう。

2. 銀行から大量の証券を買い取ることで、銀行は多額の超過準備を保有することとなり、それによって信用供与に弾みがつくだろう。そしてそれに対する需要は第1段階で与えられている。

3.   IORをマイナスに設定することで、銀行では準備保有に粘着するインセンティブが減り、信用を供与するだろう。実際、銀行が純を保有し続ければ、マイナスIORによって損失を被るだろう(Q8参照)。さて、QEによって銀行がまとまった超過準備を得るとすると、銀行はそれを「貸出す」と想定されている。もしそうならなければ、中央銀行は銀行がそうするようになるまで罰を与えるだろう。

4.   銀行信用に対する正の影響は別として、マイナス政策金利と量的緩和はそれ以外の金利にも下方圧力をかけることとなり、それが証券保有者のキャピタルゲインを増やし、消費を刺激する。

 

 

こうした議論にはいくつかの問題があるが、大きなものを3つ取り上げよう。

 

 

1.      銀行の信用を供与する能力は銀行が保有する超過準備の額とは関係ない。すでに見たとおり、銀行が準備を大量に必要とすることはあり得ない(今後のブログで民間銀行のオペレーションを観察する予定だ)。中央銀行は準備を銀行に数トンでも供給できるし、マイナスIORによって銀行の収益性を脅かすこともできるのだが、しかしそんなことをしても死んだ馬に鞭を当てるようなものである。銀行は準備を抱えたまま動かない。

2.不況下で債務が過剰に発行されている経済において経済主体にさらに債務を発行するようインセンティブづけることは誤った政策である。

3.量的緩和及びマイナス収益率が表象しているトリクルダウン経済の形態は、機能したためしがない。我々に必要なのは、ボトムアップ・アプローチ である。つまり、仕事を創り、貧困と闘い、国民的不足物を満たすことに焦点を当てる政策である。財政政策がその手段である。

 

 

Q10 Fedは経済を微調整するべきか?

 

 

Fedは経済の「微調整」にずいぶんと関わってきた――経済が過熱(インフレ)することもなく冷却(失業)することもないようにFFR目標を上げ下げする――が、Fed(およびその他の中央銀行)が設立されたのはそのためではない、ということを忘れてはならない。中央銀行が創設されたのは、王家/国家の資金調達のため、および金融の安定を図るため(次回のブログでみる通り、両方の目標は実際には密接にかかわっている)である。

 

エコノミストの中にはハイマン・ミンスキーのように微調整と金融安定性の促進とは両立しない目標であり、そして中央銀行は時として金融安定性の促進に集中し、金利を低く安定させ、適切な規制、監督および懲罰を用いるべきだ、と考えるものもある。Fedはまた、「ポンツイ金融」(細かくは次回以降)を促すような金融商品を適格担保として受け入れることを拒否することで、金融イノベーションに影響を与えることもできる。[ポンツイ金融に手を付けない場合には、]経済を金利によって微調整するということは拡張期には金利を上昇させるということを意味しているが、それは最終的には債務償還問題の発生につながる。債務発行の決定に金利はそれほどかかわっていないとすると、金利を引き上げることは経済主体に既存の負債を返済するためさらに大きな負債を発行するよう促すだけである。所得とキャピタルゲインで最終的に負債を完済できることにしか希望はないのである。

 

さらに広く言うと、FFRと、最終目標である雇用・インフレとを結びつけるリンクはあいまいでひねくれたものである。例えば

 

 

・金利と事業投資の間の結びつきはとても弱く、企業による投資は圧倒的に将来のキャッシュフローに依存している。

・金利が上昇すればビジネスに掛かる費用は増加し、企業はその費用を顧客に転嫁する。その結果、インフレになる。

・利子率が上昇すれば資金提供者の所得と、そして消費支出が増加する。もし国内経済に占める資金提供者の比率が大きければ(年金受給者、富裕層個人等々)、これによってインフレになるかもしれない。

・金利が高くなれば償還負担が大きくなり、金融不安定性を高める。

・金利の不安定性が高まれば、金利の変動による利益への影響を取り除くための金融イノベーションが促される。

・FFRの上昇は小さいし、経済単位が信用コストの上昇によって意思決定が影響されるのを避けるための調整ができるように、充分な時間をとって前もって発表されている。

 

 

インセンティヴを刺激して民間部門に支出を促すより、エコノミストによってはもっと直接的なアプローチを支持する人もいる。危機の時期、大規模財政支出の実行によって国民的必要性を満たせというわけだ(合衆国に関して言えば、国民が必要とするインフラストラクチャーは全くひどい状況である)。政府はかつてニューディール政策(WPA、CCCなど)で行われたのと同じやり方でいつでも国民を雇用することで直接就業創出を行うことが出来る。就業保証プログラムである。拡張期には、金融イノベーションを常にチェックし、金融業務の中でもポンツイ金融に関係するようなものについては禁止するか、最低でもこうした業務に関わるセーフティーネットを取り除いておく。

 

 

最後に、FFR目標を設定する方法については論争 がいくつかある。より主流派寄りの文献では、この問題はテイラー・ルール(所与の経済状況の下、最適FFR目標はどうあるべきかを決定するルール)に含まれるものは何か、このルールに作用するそれぞれの要素にどれだけのウエイトを置くべきか、という方向に煮詰められている。非主流派アプローチでは議論はもっと広く、貨幣政策の分配や金融安定性へのインパクトに関する論争を含んでいる。中には中央銀行が特定の金利を目標とすることで資金提供者の所得を安定させ経済の生産上昇に結びつけることを求める論者もいる。それとは別に貨幣政策を「停車」し、FFRを長期的に低いままに維持し、その他の金利についてはそれぞれ信用リスク、インフレリスク等々と関わりの中で決まるようにすることを求めている論者もいる。正のFFRとは資金提供者に超過所得を加えているだけであり、何かのリスクに対する報酬ではない。

 

 

FOMC議事録から、先の論点のうちのいくつかを説明する話を3つほど抜粋しよう。第一に、金利に対する感応性の欠如について

 

 

先週の金曜、副理事長のシュルッツ氏がサンフランシスコ連銀を訪れた時、我々は通常の会合で使用する資料や通常のリサーチスタッフやディレクターからの情報のほかに、民間銀行家、ビジネスマン、学者による特別な小会合を設け、実に率直な意見交換を行った。私たちは彼らが経済及びFedの政策についてどのように感じているかを聴いた。そして、正直を言うとそれはかなりあけすけで、ある意味ではいささか屈辱的だった。銀行家たちは大体みんな、これまでのところ高金利によって全体的に信用に対する需要が減少するという効果を示すエビデンスはほとんどない、という意見だった。ただ、付け加えるが、私たちは普段から銀行家や銀行役員からの聞き取りをしていて、その際には事業向け中規模貸付市場――小企業向け――およびモーゲージローン、小農家向け貸付けでは高金利には需要切下げ効果がある、と彼らはずっとそう表明してきた。だからこれまでずっと我が国では高金利の効果はちゃんとある、と、そう思っていた。しかし、そこにいたビジネスマンたちが大部分巨大企業から来た人たちだったにしても、全般的にはそこで出された意見とは、高金利によって自分たちの資本プロジェクトが影響されることはない、ということだけだった。いやしくも行う価値のあるプロジェクトなら、資金調達コストが1パーセントポイントや2パーセントポイント増えたところで取り下げるつもりなどない(のだそうだ)。小数意見では、すでに過大と感じられている在庫品については、さらに慎重になるよう促すだろう、という見方も表明されたことはされた。出席していたある大手の不動産開発業者は、金利が高くなっても単にプロジェクト価格を押し上げるだけで、投資を湿らせるような効果は全くない、という意見だった。(Balles, FOMC meeting, September 1979, page 27)

 

 

第二に、金利上昇の費用への影響について

 

税引後の金利は、あるいは実質値では[低い(※著者による挿入)]かもしれないが、しかし費用であることには違いないし、思うに、物価水準引き上げの原因になるだろう。(Teeters, FOMC meeting, May 1981, page 10)

 

 

金利コストやエネルギーコストに由来するインフレ率の悪化というものが現にあり、そしてそれは些末なものではない。いろいろ考えてみると、全般的なインフレ率悪化の原因となっているのは労務費だとは言い切れない。

 

 

(Greenspan, FOMC meeting, November 2000, page 85)

 

 

Q11:  Fedは民間機関なのか公的機関なのか?

 

 

ひとつには合衆国の文化的性格のため、また一つには、中央集権化に対抗する強力な経済的勢力のため、連邦準備システムとは、おかしな組織になっている。傘下銀行はシステムの発行する出資証券stocksを保有しておりこれには配当が支払われるのであるが、しかしこの配当は保証されているわけではなく、そして出資証券を保有していても投票権は全くなく、しかも取引もできない。例えば近年の話だが 下院によって配当の一部が高速道路建設費用として流用されることが決定された。

 

 

連銀システムの留保所得はすべて財務省に納付されなくてはならない。注意してほしいが、これはシステムをますますおかしな立場にする。Fedは財務省証券を保有しておりそれには金利が支払われ、そしてその一部は最終的には財務省に戻されることになる。つまり財務省は自分自身に金利を支払っている! その上、財務省はキャッシュマネジメントを通じてFedからの収入を最大化しようとしている(Santoro page 7ff参照)。

 

 

Fedの政治経済分析をより適切なものにするため、出資証券の保有や所得の支払に着目するのはやめにして、その構造および貨幣政策や緊急オペレーションに関して誰が政策決定を行っているのかに着目する。貨幣政策については、ウォールストリートの影響は大きく、FOMCには巨大銀行の出身者メンバーが大きな存在感を持っている(Fedの議長の半数は二つの巨大銀行すなわちゴールドマンとシティーバンクの出身者である)。金融部門のメンバーはタカ派になりがちであり、そして物価安定に、強迫観念を持っているとまでは言わないにしても、非常にこだわる傾向がある。そのため、彼らはFFRTを早期に引き上げることを望むようになるし、雇用水準も可能な水準より低い水準に誘導される。彼らはまた金融産業に近く、規制や金融危機に対する対応面でも融和的なものになる。規制に引っ掛かるリスクはほとんどない。

 

 

これが、理事会の経済学者たちは大部分マーケット主義のサプライサイドエコノミスト(経済成長というものは最終的にはサプライサイドで生じるものだとする)であるという事実と結びつけば、金融規制と懲罰はあまり大した意味を持たない一方で、インフレが予想される場合にはかなり早い段階で金利を引き上げるということには十分な意味があることになる。しかし、多くのエコノミストは市場が効率的であり、需要は長期的には何の役割も果たさないという考え方には疑いを持っている。

 

 

Q12: Fedがやってはいけないこと・できないこと・望めないことは?(宿題でこれ書いたやつ0点)

 

 

1. Fedは貨幣供給量をコントロールする」:いや、Fedはそんなことしていない。金利を設定している 金利を設定している(その後何が起こるかは、企業や家計および、外部資金を必要とする彼らの願望による)。

2. Fedは準備を注入することで金利を引き下げる」あるいは、もっと悪い言い方ではFedは貨幣を注入して金利を引き下げる」。通常の環境では(つまり、大不況の前、まあこういったとき大概の人が思い浮かべるような状況)、Fedは準備を率先して注入することはせず、銀行がそう申し出るのを待っている。さらに、Fedの貨幣政策では貨幣、つまりM1を直接一般の市場に送り込むことはできない。

  1. 3.  Fedは金融危機の最中、貨幣を印刷していた」:Fedはキーボードをたたいて口座に振り込んでいたのであり、連邦準備券を印刷などしなかった。何がいいたいかというと、これらの資金は一切貨幣供給、つまり一般国民が保有する資金、には含まれないのだ。

4. 「Fedは金融危機の間納税者のお金を使っていた」:実際は単に銀行の準備口座にキーボードをたたいてドルを振り込んでいただけ。

5.  「銀行は準備を使って株式や社債を買っている」:。銀行はそういう買い物のために準備を使うことはできない。

6. 「銀行への巨額の準備流入によってインフレが発生しないのは、銀行が準備を貸し出さず、あるいは準備をため込んだためである」:銀行はそのようなオペレーションを行っていない。銀行が貸出すときには振込む(信用創造)のであって、準備が引き出されることはない(次回のブログ参照)。

7. 「中央銀行は準備を貸し出すlend 」:いや、Fedは準備を貸しだすlendことはない 。なぜなら準備はFedの負債だから。[※訳の問題で申し訳ないのだが、正直lend, advance などの言葉のニュアンスを訳者が理解できていない。これまで散々出てきたとおり中央銀行は準備をadvance することはできるのだが、lend はできない、というのがここでの趣旨なのだろうと思うのだが、この言葉の違いはおいらの能力を超えている。実際、手元のPocket Oxford ではadvance の言いかえとしてlend も載っており、ちょっとなあ。。。。https://english-pal.net/archives/803 によると、lend というのは、何か物体を手渡しするようなニュアンスも強調されているけれど、同時に金銭の貸借についても触れられているわけで。。。。。ちなみに、advanceという言葉が使われている場合、経済学では「前貸し」「前渡し」「前払い」などの訳語があてられることも多いようだ。]

8. 「財政赤字は金利を引き上げる」:いや、この点に関しては以前のブログでも少し触れた。詳細は、次回以降。



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