子どもたちからの贈り物 (その1)
《贈り物の半分》
ひなのさんが、クラスのみんなの前で、
白血病という自分の病気のことを話したこと。
みかさんが、一年生の教室で、
自分の足と義足のことを話したこと。
二人の行動から、
私たちが受け取ることができるもの。
二人の行動と結果だけに感動し
誉めたたえるだけでは、
二人からの贈り物の半分しか
受け取っていないことになると思います。
子どもが自分で考え、
自分で行動した結果を肯定することに、
違和感があるのではありません。
信頼できる大人が、自分の行動を認めてくれれば、
子どもは「これでよかったんだ」と思えるでしょう。
子どもにとって、うれしいことだと思うし、
新たな行動に向かう自信にもなるでしょう。
私は、二人の行為について
違和感があるのではありません。
それを受け取る大人が、
そこにある子ども同士の世界に起きていることを、
ちゃんと理解できているのか、
よく分からない気持ちになることがあるのです。
先日の新聞記事もそうでした。
目に見える形や結果を評価することは、
それが「感動した」という素直な言葉であっても、
その「素直さ」のなかには、
健康な者だけの社会、健常者中心の社会で、
疑問なく育ってきた私たちの「感性」が
そこにはあります。
その自分の感性の育った環境を疑うことなく、
すごいね、えらいね、とみる見方は、
二人を遠い世界へ突き放すことにはならないだろうか。
そう思うのです。
子どもが大人になっていく中で、
『NO PITY』のシンディのように、
「もてはやされていたのは
自分が素晴らしいからではなく、
ポリオだったからだ。」
と思わされる子どもが、
いまの差別的な価値観の社会では、
たくさん出てくるだろうと思うのです。
□ □ □
《ポスターチャイルドのイメージ今・昔》
ポスターチャイルドが初めてアメリカの歴史に
登場したのは、1940年代から50年代にかけてだった。
この初期に「醸し出されたイメージは『回復』だった」
と、ポスターチャイルドの変遷等について研究する
マリリン・フィリップスが言う。
彼女によれば、
ポスターアダルト(大人が寄付集めのモデルになること)
なるものは一度も存在しなかった。
無心でかわいい障害児がモデルになってこそ、
障害に襲われて耐えられないだろうとか、
哀れみをかけてやろうという気持ちを
人に呼び起させることができるのであって、
大人は決してそのイメージを醸し出せないからだ。
確かに当時の典型的なポスターチャイルドは、
健常者の大人の膝に座ったり、
腕に抱きかかえられ、
守られているというイメージで描かれている。
ポスターのうたい文句は、
大人が寄付をすればかわいそうな子どもの病気が直り、
健康が回復すると示唆している。
『哀れみはいらない』
(NO PITY 全米障害者運動の軌跡)
ジョセフ・P・シャピロ
現代書館 1999年 3300円
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