贈り物の半分は、
子どもたちが「形」にして見せてくれます。
ひなのさんやみかさんが、ありのままの自分に自信を持ち、
生きいきと行動する姿を、
私たちは作文や映像を通して見ることができます。
そして、贈り物の見えない半分は、
子どもの抱いた「動機」だと、私は思うのです。
星の王子さまの描いた絵のように、
外からは見えない「動機」を私は見たいと思うのです。
子どもが、自分の病気や障害を
せいいっぱい受けとめるときの思い。
そしてそれと共に生きている自分を、
人に伝えようとする思い。
そこには、仲間を信頼し、大人を信頼し、
人と人とのつながりの中で生きることへの信頼があります。
そうした動機を抱くことのできた子どもは、
幸せだと思います。
二人の場合、そこに大切な大人との出会いがみえます。
同じ病気、同じ障害をもって生きる大人との出会いが、
彼女たちの背中を押し、そして抱きしめているのがみえます。
子どもの「動機」が生まれる出会い。
それは、ひなのさんといずみさんが、
同じ病気というだけではありません。
みかさんとのり子さんが、
同じ障害だというだけではありません。
同じ経験を共有していることが、
距離を縮めるきっかけにはなるでしょう。
そこには、言葉で説明できなくても、
分かってもらえる安心もあります。
でも、それは出会いの条件の一つにすぎないと思うのです。
同じ病気、同じ障害だけに焦点を当てると、
大事なことを見落とす気がします。
ひなのちゃんが出会った、山田いずみさんは、
ガンという病気にかかる前から、
誰よりも子どもを、人間を信頼する素敵な人でした。
いずみさんの言葉を紹介します。
去年の2月、亡くなる半年前のインタヴューの言葉です。
□ □ □
…私はもともと人に教えたいと思って学校に入ったんじゃない、
子どもたちと話したいというのが願いだったんだけど、
…特に病気になってからは、
いつもどこかで「時間がない」と思ってた。
…来年の今は学校にいないかもしれん、
そういう緊張感がずっとあった。
だから子どもたちとは、いつも真剣勝負のつもりだった。
そして本気で語れば、本気で子どもたちは考えてくれる、
それは繰り返し繰り返し実感できた。
…28年間、振り返ってみて、
私、子どもは信じられるというのは
本当に心の底からそう思える。
子どもは信じられるということを
ずっと信じてやってこれたんで、
これで良かったかなって。
良くやったねって、自分に拍手していいかなって。
…せめて、学校だけは
「人は信じられるんや」ということを伝えてほしいんよ。
社会に出て、人に裏切られて、
どんなに惨めな人生であっても、
子どもの時、友達は信じられる、
信じられる大人がいたという思い出があれば、
やり直しがきくと思うの。
『いのちの恩返し』山田泉 高文研
□ □ □
その子だけの夢、その子だけのあこがれ、
その子のなりたいもの、そこにつながる
「その子の物語の動機」が生まれるところ。
こんな豊かな場所は、地上には、
子どもたちのいるところしかありません。
そのとき、その一瞬の出会いの持つ力が何かを、
わたしは知りたいと思うのです。
その思いをもって、子どもの前に現れ、
出会う人の、「思い」とはどういうものでしょう。
その子どもの心の動機を始動させる、
出会いの力はどんなふうに生まれるのでしょう。
一人の子どもが、人と人とのつながりの社会を信じて
生きていく「動機」を抱くことそのものが、
私たちの心を豊かにしてくれます。
だから子どもたちのいる場所は、
子どもたちがいるというだけで、
限りなく豊かな場所なのです。
笑顔の豊かさ、泣き顔の豊かさ、生き生きしい豊かさ、
命のエネルギーが一番あふれている場所。
一人一人の心が、たくさんの出会いを繰り返し、
その子だけの物語を生き始める場所が、
子どもたちのいるところです。
だから、子どもたちのいるところから、
子どもを抜き出したり、分けたりして、
居場所を奪っていけないのです。
世界のどこにも、自分のこころのどこにも、
居場所を失った子どもは、
「生まれてきたのが間違いだった」
と思う以外にないのですから。
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