「自閉症者が語る人間関係と性」
グニラ・ガーランド著
東京書籍1800円
(75ページ~)
軽度の知的障害がある30歳の自閉症の女性の里親は、
親になることについて彼女と語りあったことを、
次のように話す。
「子どもができても大丈夫かしら?」
と、ある日彼女は私に尋ねました。
「子どもを産むことは大丈夫だと思うわ。
でも、ずっと子どもの世話をすることはできるかしら?」
と私は答えました。
「やさしくするから」
と彼女は言いました。
「そうね。だけど、子どもが大きくなっていくと、
やさしくすること以上に、
もっと多くのことが子どもには必要になるでしょう」
と答えたのです。
そこで会話は終わりました。
でも、少し後で、彼女はまたこの話題を取り上げたのです。
「もしも自分の子どもを世話できないとしたら、
子どもはどうなってしまうの?」
と尋ねてきました。
「あなたに起こったのと同じことが起こるかもしれないわね。
他の誰かが、その子の世話をするかもしれない」
と私は答えました。
「でも、それでもかまわない」
と彼女は答えました。
その後しばらくは、子どものことに関しては黙っていましたが、
やがて、再びこの話題に彼女は戻ってきました。
「もし子どもを産んだら、その子も私のようになるの?」
と、そのとき尋ねてきたのです。
つまり、彼女は、自分の子どもも自閉症になるのか、
と考えたのです。
「そうね。もしかしたら、あなたのようになるかもしれないわね」
と私は答えました。
「だけど、それは、どうってことないわ。
だって、とにかく私はその子を好きになるかもしれないし」
と彼女は答えました。
「そうね。そうなるかもしれないわね」
と私は言い、
「だけど、障害をもった子どもの親になるのは、
とても大変なことなのよ」
と続けました。
これはまだ途中経過です。
彼女はきっとまた、このテーマに戻ってくるに違いありません。
このことについて話し合うこと、
そして彼女がこれらの質問を口にできること、
それが大切です。
私は心の中では、彼女が子どもを産まないようにと願っていますが、
このことを彼女には言えません。
☆
こうした会話ができるようになるために、
この本は役にたちます。
いえ、こうした会話ができるようになりたいと思うために、
この本は役にたちます。
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